ボトルネック

2009年4月21日 読書
恋人を弔うため東尋坊に来ていた僕は、強い眩暈に襲われ、そのまま崖下へ落ちてしまった。―はずだった。ところが、気づけば見慣れた金沢の街中にいる。不可解な想いを胸に自宅へ戻ると、存在しないはずの「姉」に出迎えられた。どうやらここは、「僕の産まれなかった世界」らしい。

東尋坊で転落死した彼女の弔いで現地へ行ったところ、兄が死んだから帰れと連絡が入る。その直後、自分も同じ場所から転落してしまい、気がつけば自分が生まれなかったパラレルワールドへ。

家に戻れば、そこには生まれなかったはずの姉がいた。僅かではあるが、自分のいた世界とは違いが生じている平行世界。だんだん、自分の代わりに存在している姉の力で、自分では成す術もなく壊れてしまったものが、悉く保たれているのに気づいてしまう。

壊れてしまった家族関係は修復され、通行の妨げになっていた木は無くなり、助からなかった食堂の爺さんは元気で営業を続け、そして、死んでしまった彼女の元気な姿と再開してしまう主人公。大学受験に失敗して自分探しの旅に出た直後、事故で意識不明となったはずの兄さえも、大学生として姿を現わす。

どうしようもないと思われた出来事も、パワレルワールドでは姉が存在する事で良い方向へと修復されていたのだ。自分の存在価値を見出せなくなった少年は……。

ボカされてはいるけれども、米澤穂信作品にしては嫌な感じの結末になっている。こんなやるせない終わり方をしなくても良かったのに……。

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