アリスの服が着たい―ヴィクトリア朝児童文学と子供服の誕生
2009年4月23日 読書『不思議の国のアリス』や『小公子』から子供服は誕生した。その誕生と普及に絵本が果たした役割と、服に投影された人々の欲望を描く。児童文学作品に登場する「無垢でかわいらしい」主人公の服は、従来の服にはなかった「子供らしさ」を価値として規定し、発信することによって子供服という商品を誕生させた。ヴィクトリア朝後期、中産階級の勃興と消費文化の確立を背景に、児童文学作品から子供服が生まれた経緯を辿り、服に投影された人々の欲望を描き出す。
「アリスの服が着たい」なんて題名になっているから、コスプレ系統の話に思われそうだが、これは子供服の誕生と変遷の歴史を辿る真面目な本である。
昔は子供服が無かったというのが驚き。そもそも、17世紀頃まで子供という概念自体が無くて、小さな大人として扱われていたのだから、着るものも単に大人服のダウンサイジング版という事になる。子供服が本格的に登場するのはヴィクトリア朝後期になってからである。本書では、主にアリス、ハバードおばさん、小公子、セーラー服等に着目して行く。
まずアリスだが、初期の挿絵はフリフリの可愛いエプロンドレスではなく、いたってシンプルである。次第にアップデートされ、見た目も洗練されて行くのだが、挿絵だけではなくて巷でもアリス系統が着られるようになる。
ハバードおばさんというのは、日本では馴染みが薄い気がするのだが、昔の英米映画で女性がよく着ているような感じのものなので、イメージはしやすいと思う。
小公子であるが、ここに出てくるフォントルロイ・スーツというのは、かなりの地雷(笑)。フォントルロイ・スーツって何? という感じだが、古い映画でいいとこのお坊ちゃんが着せられているアレである。とっても恥ずかしい見た目のアレである。着せられる本人には不評でも、着せる母親からは絶賛されたというから恐ろしい。
最後のセーラー服であるが、これはそのまま水兵服である。日本では、女子中高生用の制服みたいに見られているが、本来は軍服ですからね! 水兵→男の子用→ユニセックスという流れなので、別に女の子の服ではない。どこかの島国では女子学生に着せているけど、本当はそっちのほうが水兵のコスプレさせているだけですからね!!
コメント