美女に会ったら伝えてくれ。俺は嫁を大事にする男だと。妄想と執筆に明け暮れた、多忙にして過酷な日々。森見登美彦氏を支えてくれたのは、竹林であった。美女ではないのが、どうにも遺憾である。虚実いりまぜて、タケノコと一緒に煮込んだ、人気文士の随筆集。
一応はエッセイという事なのだが、著者の妄想が暴走しまくるので、本人が出てく小説にしか思えなくなって来る。しかも、妄想による嘘だらけなので、私小説ではない感じで(笑)。
京都の西、桂にある知り合いの竹林で竹を切るという、あんまり面白くもなさそうな題材なのだが、ちっとも竹を切らずに妄想ばかりなのが笑える。題名が美女と竹林なのに、ちっとも美女が出てこない。
森見が作家を引退し、竹林で大儲けして、机上どころか月面まで竹林で覆い尽くそうかという壮大な物語になって行く。しかも、竹林の奥で美女を拾って結婚、幸せな人生を謳歌する。一緒に竹を切っていた司法試験狙いの友人は、未だに美女を拾う事が出来ず独身、何で俺が独身のままなのだと森見にクレームをぶつけるのであった。
無論、全ては著者本人の妄想な訳で、現実ではない。このエッセイはフィクションであり云々と、但し書きをつけねばならぬ程に嘘ばかりである。ここまで豪快にやられると、竹を切る友人や、竹林を所有する知人、手伝いに来た編集まで実在せず、本人の脳内妄想なのではないかと疑いたくなる。これ、ひょっとして90%は嘘で出来てない? これをエッセイと呼んで良いのだろうか。
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