わたしたち人類がゆるやかな衰退を迎えて、はや数世紀。すでに地球は”妖精さん”のものだったりします。平均身長10センチで3頭身、高い知能を持ち、お菓子が大好きな妖精さんたち。わたしは、そんな妖精さんと人との間を取り持つ重要な職、国際公務員の”調停官”となり、故郷のクスノキの里に帰ってきました。祖父の年齢でも現役でできる仕事なのだから、さぞや楽なのだろうとこの職を選んだわたしは、さっそく妖精さんたちに挨拶に出向いたのですが……。田中ロミオ、新境地に挑む作家デビュー作。

ラノベにしては異様に注目度が高くて気になっていた作品。これがデビュー作だけど、ただの新人ではない。シナリオライターなので、物語がちぐはぐだったり、描写が足りていなかったり、齟齬や矛盾が生じたりという、新人にありがちな水準の作品ではなく、安定している感じ。

人類は衰退しました。滅亡でも絶滅でもなく、衰退というところにセンスを感じる。ゆるやかな黄昏の時を迎えた人類が、その座を妖精さんに明け渡し、旧人類となった未来世界。

物語は国連の調停官となった主人公視点で進む。対人恐怖症な少女と、やや頭がお花畑系な妖精さんとの、とぼけた会話が面白い。妖精さんは超科学? の力により、一夜にして大都市を建設したりもするのだが、行動基準となるのは楽しいか否か。楽しいと妖精密度が高まり、様々な事件が発生する。お菓子を好み、お遊びに飽きると離散する。

それにしても、高度に発達した科学は冗談と見分けがつかないとは(笑)。これ、様々な分野から小ネタを仕込んで隠し味にしているから、楽しめるかどうかは読み手の知識量次第になると思う。少なくとも、ラノベしか読まないお子様では、本当の味を楽しむ事は出来ないだろう。

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