ありったけの話

2009年8月2日 読書
6年前に別れた恋人・静佳にはある事情があった。彼女を一度は受け入れると決めたのに、突き放す形になってしまった過去。ユキヒロはその謝罪をしたいと思っているが、なかなか一歩を踏み出せないでいる。そんなユキヒロのところに、父親を雪山の事故で亡くした甥っ子の葎が預けられることに。葎との生活のなかで、少しずつ前へ進み始めたユキヒロは、静佳に手紙を書こうとするが―。死別よりつらい男女の別れとその6年後を描く期待の新鋭、初の書下ろし長編小説。

第138回芥川賞候補作となった「空で歌う」が微妙だったので、さほど期待はしていなかったのだけど、三冊目は断然良い出来栄え。

病気ネタは入っているけれども、白血病になりました、死んでしまいました、全米が泣きましたといったありがちパターンではないのも好感が持てる。まぁ、死には至らない病なのだけど……。死なない病でも、当事者達にとっては大事な訳で、これを受け止める包容力を高校生男子に期待するのは酷だろう。

父を亡くした甥っ子の葎を預かるユキ(ユキヒロ)。リツとかユキとか女みたいだけど、両方男デス。甥っ子と書いてなければ、葎は女だと間違えそうだ(笑)。

高校時代につるんでいた四人のうち、事情により元恋人の静佳だけが町からいなくなっているが、鴇田と、その彼氏であるチャラ男風のエザミは残っているので、物語に絡んで来る。

病気になった静佳は、ほぼ回想シーンでしか登場せず、過去に縛られた主人公が六年間もウダウダやっている現在が舞台となるので、ヘタレ男に思えて仕方が無い。それに対して、姉や鴇田の性格が(良い意味で)何と男前な事か。友人のチャラ男はヘタレじゃないけど、ロクデナシな感じ。

左側ページの下にあるパラパラマンガは、読み進めると単なる落書き以上の意味が付与される。

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