生まれてすぐに家族になるわけじゃない。一緒にいるから、家族になるのだ。東京から田舎に引っ越した一家が、座敷わらしとの出会いを機に家族の絆を取り戻してゆく、ささやかな希望と再生の物語。朝日新聞好評連載、待望の単行本化!

第139回直木賞候補作。

大手食品メーカーに勤める男が、企画の第一線から外され、地方の営業に。出世の目が無くなったと思った彼は、家族に相談もせず強引に田舎の古い家屋を借りてしまう。妻は仕事ばかりの夫と姑相手に不満たらたら。姑は認知症が始まり、娘は友達がいなくて孤立、息子は喘息持ちと、それぞれ問題を抱えているが、どこにでもありそうな家族の一風景。

大きな日本家屋の二階には謎の仏壇、庭には祠。引っ越してきてから、鏡に何かが映ったり、誰もいないのに足音がしたりと怪奇現象が起こる。ここで出てくるのが血塗れのお婆さんだったり、髪をふり乱した女性だったりしたらホラーだが、怪現象の正体は、小さい子供。見てしまった家族も驚くが、小さい子(座敷わらし)も驚いて逃げて行く。

座敷わらしは子供にしか見えないという伝承通り、まともにその姿を見ているのは少年と祖母(認知症)で、後は鏡で見たりするだけ。当然、お父さんはなかなか見る事が出来ない。家族関係は次第に好転するけれども、それは座敷わらしの幸運パワーではなくて、登場人物の思考がネガティブからポジティブに変わったからだろう。

結局、会社の適当すぎる方針のため、この家屋には短期間しか住まないのだが、結末が洒落ていて良かった。これでも直木賞は貰えないのか。受賞した不倫話より良いと思うんだが……。

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