幻の生物が住み、不思議な力を持つヤンに「守られてきた南洋の孤島」。この島に待ち受けているのは、開発か自然保護か―現実社会が抱える問題を軽やかな文章と卓抜な発想で描き切る南の島の冒険物語!第10回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作。

第10回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作。

この賞を読む度に思うが、ハイレベルの作品が多い。芥川賞にノミネートされる前段階の各新人賞とはレベルが違い過ぎる件!

紛争が続くため、一般人が立ち入る事が許されない南洋の孤島イシャナイに、調査団の一員としてやって来た瞳子の物語。彼女が探すのは、その存在を誰も信じないようなダンボハナアルキ。つまり、鼻行類なので、元ネタを知っておいたほうが、より楽しめるかもしれない。

島には到着したものの、政府軍にがっつり囲まれた状態では、幻の動物を見つけるのは不可能だと思った瞳子は、夜中にテントから抜け出すのだが、ジャングルはゲリラの領域なので、ここから後の展開は容易く予想が出来てしまう。

ゲリラと行動を共にする羽目に陥ってしまった瞳子は、彼らの指導者ヤンと出会う。寝ている間も、ヤンが出てくる夢を見始めるのだが、そこは現実世界とは違うイシャナイだった。

戦争が始まらずに観光の島となっていたり、欧州系の大地主に支配される貧富の国だったり、核実験で現地住民が死にかけていたりする、三つの夢世界が現実世界と並んで、パラレルワールド的な展開を見せ始める。

読み進めるにつれ、次第に夢と現実の境界が曖昧になって行き、現実パートも現実とは異なるような気分になって来る。ページ数だけで考えたら、戦争中の現実世界が一番分量があるので、他は夢で1つだけが本物だと思いながら読んだのだが、最後の最後でよく分らなくなってしまった。ヤンよりも、主人公瞳子のほうが架空の人物っぽく思えてくる。

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