ある朝突然、トイレで僕を見舞ったコールタール色の警鐘。理由は明白。酒と、ちょっとした無理なイキガリだった。病名は、十二指腸潰瘍。高二にしては早すぎた勲章だ。入院した病院のTVからは「石油危機」が連日叫ばれている。けれど、そんな事はどうでもいい。何が真実で何が絵空事なのか―。全共闘世代からは外れ、ロック・ムーブメントの波にはノリ遅れ、あやふやに揺れていた時代。その宙ぶらりんな空気の中を必死に、そしてあやふやに泳いでいた73年から74年までの追憶を描く、自叙伝的処女長編。
泉麻人が、自分をモデルにして書いた小説。やんちゃしすぎて体を壊し、冒頭からいきなり入院している。一応、小説という事になっているのだが、あとがきによると、実話成分は80%らしい。作中に出てくる店も当時に実在していたらしい。という事は、登場する女性達も実在の人物か?
全共闘やロックの波には乗り遅れたかもしれないけど、この後に訪れる受験地獄や不況地獄という焦土にも巻き込まれずに済んだのだから、この世代は一番美味しいところを味わっているんじゃないのか?
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