自分とセックスしている夢を見て、目が覚めた―。女から女へと渡り歩く淫蕩なレズビアンにして、芝居に全生命を賭ける演出家・王寺ミチル。彼女が主宰する小劇団は熱狂的なファンに支えられていた。だが、信頼していた仲間の裏切りがミチルからすべてを奪っていく。そして、最後の公演の幕が上がった…。スキャンダラスで切ない青春恋愛小説の傑作。俊英の幻のデビュー作、ついに文庫化。
劇団を失い放浪の途上にある「天使の骨」より過去にあたる部分。「天使の骨」で第6回朝日新人文学賞受賞を受賞しているのだが、これが持ち込み原稿による本当の一作目。三部作になるようだが、三作目は出ていない。
小劇団と主宰し、芝居と同性愛だけで生きているような王寺ミチル。商業劇を見下しているが、これは作者の思いそのものなのかね? 傍から見れば、金にもならない劇なんて、単なる自己満足であって、芸術だ本物だと主張してみても、資本主義的観点からすれば単なる自慰行為に過ぎないと思うのだが……。
それにしても、内容の大半が同性愛ポルノと化しているし、主人公の性格がキ印一歩手前で無茶苦茶すぎる。こんな暴走機関車みたいな人間相手だと、どんなに我慢強い奴でも仕舞いにはついて行けなくなるだろう。一緒に薬を飲んで死にかけた中学生がどうなったのか心配だ。
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