青春の彷徨をみずみずしい感性で描く著者のデビュー作。レッド・ツェッペリン、闘い、リンチ殺人事件、ジャズ喫茶、バスケット・シューズ、コーラ・ブラウンのストッキング;遊園地…。危機の予感のなかで語られる。失われた70年代への鮮烈なレクイエム。第20回「群像」新人賞優秀作受賞。他1編。
これがデビュー作らしい。二編入っているが、どちらも学生運動が燃え盛っていた頃の話なので、当時学生だった人なら、懐かしい感じがするのかもしれない。
運動から離脱して距離を置きつつも、人生に乗り切れず怠惰な毎日を過ごす男。彼女は卒業して部屋から出て行き、ひとり残された部屋で悶々としている。学生運動と警官隊の衝突を見に行き、勢いで参加してボコられたりもする。
組織同士の対立で殺人事件が発生するのだが、学生運動をしている奴らがやってきて、身代わりになれと脅されたりして、とんでもない目に遭ったりもする。
この世代の喪失感みたいなものは伝わってくるのだけど、高度成長やバブルの波には乗っかれて、結構美味しい部分を味わっているのだから、このやる気の無さには全くシンクロ出来ない。50年代、60年代生まれの人間が、日本の美味しい部分を最も享受していると思うのだが。
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