訪問者

2009年9月12日 読書
山中にひっそりとたたずむ古い洋館―。三年前、近くの湖で不審死を遂げた実業家朝霞千沙子が建てたその館に、朝霞家の一族が集まっていた。千沙子に育てられた映画監督峠昌彦が急死したためであった。晩餐の席で昌彦の遺言が公開される。「父親が名乗り出たら、著作権継承者とする」孤児だったはずの昌彦の実父がこの中にいる?一同に疑惑が芽生える中、闇を切り裂く悲鳴が!冬雷の鳴る屋外で見知らぬ男の死体が発見される。数日前、館には「訪問者に気を付けろ」という不気味な警告文が届いていた…。果たして「訪問者」とは誰か?千沙子と昌彦の死の謎とは?そして、長く不安な一夜が始まるが、その時、来客を告げるベルが鳴った―。嵐に閉ざされた山荘を舞台に、至高のストーリー・テラーが贈る傑作ミステリー。

事故死した若き映画監督に関する取材という名目で、朝霞家の一族が住む古い洋館を訪れた男。だが、男は取材に来た雑誌記者などではなく、映画監督峠昌彦の遺言を持ってきた弁護士であると判明する。

不審な死を遂げた実業家と、その後に事故死した映画監督。実は事故ではなく事件だったのではないかという疑惑が生じる中、この世にいないはずの実業家、朝霞千沙子らしき人物が洋館の外にいるのを一同が目撃してしまう。

監督の弁護士、DVから逃げてきた女性、二階から押し入ろうとしたDV夫の死体、そして、幽霊を演じた役者。物語が進むにつれ、館への訪問者が増え、人間関係が複雑に絡み合って行く。

面白くなりそうなまま、物語は淡々と進むのだが、戯曲を手掛けた事で悪い癖でもついたのか、現実感が乏しく劇でも見ているかのような展開。そして、予想した通り、正解が得られないまま煙に巻かれて物語は終わりを迎える。

結局、事件なのか事故なのか、何かが仕組まれていたのか偶然なのか、様々な部分が曖昧なままで物語から放り出される。終盤に奇想天外なトリックや謎解きがあれば、上質のミステリーになるところ、いつも通りの何が何だかハッキリしない結末だからなぁ。

後半で失速してグダグダになっていないのは良かったけど、ラストにインパクトのある捻りを入れるようにしないと、いつまで経っても直木賞に届かないと思う。

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