時は、21世紀の初頭。マンフレッド・マックスは、行く先々で見知らぬ誰かにオリジナルなアイデアを無償で提供し、富を授けていく恵与経済の実践者。彼のヘッドアップ・ディスプレイの片隅では、複数の接続チャネルが常時、情報洪水を投げかけている。ある日、マンフレッドは立ち寄ったアムステルダムで、予期せぬ接触を受けた。元KGBのAIが亡命の支援を要請しているが、どうやらその正体は学名パヌリルス・インテルルプトゥス―ロブスターのアップロードらしい。人類圏が特異点を迎える前に隔絶された避難所へと泳ぎ去りたいというのだが…。この突飛な申し出に、マンフレッドの拡張大脳皮質が導き出した答えは…“特異点”を迎えた有り得べき21世紀を舞台に、人類の加速していく進化を、マックス家三代にわたる一大年代記として描いた新世代のサイバーパンク。2006年度ローカス賞SF長篇部門受賞作。

天才なのに、すでに貨幣経済の枠組みから逸脱しており、アイデアを無償で他人にあげてしまう恵与経済の実践者、マンフレッド・マックス。彼の元に押しかけ、無理やり結婚してしまうパメラは、旧態依然とした資本主義経済に組み込まれた徴税官であり、本来マンフレッドが利益を出していた筈の金額を算出し、納税を迫る。

結局、二人が上手く行く筈もなく、破局を迎えるのだが、パメラはマンフレッドが知らないうちに、勝手に娘を産んでしまっていた! そこから徐々に娘であるアンバーの物語へと移って行く。マンフレッドが主人公という訳でも無かったのか!

アンバーは厳格で古いしきたりに縛られた母から逃げ出すのだが、手引きしてくれた父の思惑をも超越し、地球圏外へと逃亡してしまう。逃亡には、父が飼っていたアイネコが関わるのだが、最初は日本製のロボペットに過ぎなかった存在が、次第にとんでもない何かに変貌して行く。

宇宙へ逃げたアンバーは、木星圏に到達し、そこで環(リング)帝国を築き、女帝として君臨する。さらには、太陽系に近くなった褐色矮星ヒュンダイ+4904/-56に地球外文明の痕跡を求めて、コーラ缶程の大きさしかない超小型宇宙船に自分達のコピーを入れ、加速して送り出す。

コピー達が新世界に到達したアンバー達は、異世界文明に囚われて困難な状況に陥るのだが、ネットワークの存在を明らかにしつつ、一計によって離脱し、太陽系へと帰還する。

ところが、木星圏ではリング帝国が破産して崩壊し、オリジナル体は消失していた! しかも、別の男と結婚して子供まで生まれているという(笑)。かくして、産んでいないはずの子供と、異様に若い母親が出会う。

近未来の話なのに、内惑星が解体され、マトリョーシカ構造のダイソン球世界が形成されているし、背景設定が大仕掛け。基本的にサイバーパンク系統なのだが、人類がアップロードしたりコピーしたりしすぎで、オリジナルとの区別がつかなくなって来る。主要な人物も、結構死んで再生しているし。アンバーなんて、自分が知らない間に……。

未訳だけど「glasshouse」というのが同じ世界設定で、人類が銀河へ広がった27世紀の話になる。人類テクノロジーでは無理だけど、近所に地球外文明が築いたネットワークがあるので、それを利用して広がる話なのかな。

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