都会に潜む“洋梨形の男”の恐怖を描いた傑作ホラーの表題作をはじめ、身勝手な男が痩身願望の果てに“猿”に取り憑かれる「モンキー療法」、変わり果てた昔の友とのおぞましい再会譚「思い出のメロディー」、ひとりの作家の内面に巣くう暗黒をあぶり出す「子供たちの肖像」、酒場のホラ話ファンタジー「終業時間」、チェスの遺恨を晴らそうと企む男のSF復讐劇「成立しないヴァリエーション」の全6篇を収録。ネビュラ賞・ローカス賞・ブラム・ストーカー賞受賞。
奇想コレクションは、表紙で結構釣られてしまう。奇想だけあって、ファンタジーなのかホラーなのかSFなのか分らない作品が混在しており、オチも見えずにどう楽しめば良いのか分らないものが多い。しかし、ジョージ・R・R・マーティンに関しては、きちんと理解出来るオチが用意されていたので、奇想コレクションの中ではかなり良かった。
それにしても、ブラック成分が濃くて、主人公が酷い目に遭う話が多い。最初の「モンキー療法」から、猿に取りつかれて痩せて行く話だし。こんな強制ダイエットは地獄だろうなぁ。
「思い出のメロディー」は、メロディー=曲ではなくて人名だった。大学時代に四人で暮らした男女だが、時を経てメロディーだけが人生から落ちこぼれ、他の三人の疫病神と化してしまう。最後まで身勝手なメロディーの呪いにはウンザリしそうだ。
「子供たちの肖像」は、家を出て行った娘から、自分が書いた小説の登場人物を描いた肖像画が次々と送られて来て、毎晩怪異が起こるというもの。最後の最後で意表をつく幕切れ。
「終業時間」は、とっても馬鹿らしい理由で世界が終わってしまう話だが、自動車に詳しくないと、いまいち楽しめないかもしれない。
表題作の「洋梨形の男」が、一番ブラックで救いが無いなぁ。洋梨形の男に関わってしまった女の悲惨な結末。何も悪い事をしていないのに、これはちょっと酷すぎる。
「成立しないヴァリエーション」は、学生時代にチェスをやっていた四人のうち、一人だけが大成功している話。運命の廻り合わせで一人だけ成功したのではなく、彼の成功には、ある理由があった。そして、残り三人が人生の敗者となってしまったのも……。
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