世界中の人間には、それぞれに一日だけ、すべての願いが叶う日がある。それが、サービスデー。神様が与えてくれた、特別な一日。本来は教えてもらえないその日を、思いがけず知ることになったら。直木賞作家の幸運を呼ぶ小説。

店舗のサービスデーかと思ったら、高位次元から贈られる人生のサービスデーだった。世界中の誰にでも、願いが叶うサービスデーが一日だけ用意されているという内容。普通は、当事者にその事は知らされず、本人が気づかないうちにサービスデーが終わってしまうのだが、主人公の場合、女悪魔が出てきて秘密を暴露してしまうのである。

嫁は太り、娘は気難しい年頃で、自宅は会社から遠く離れ、会社では抜かされた後輩上司からのリストラ勧告、部下はライバル会社に取引先を奪われそうにと、とんでもない状態なのだが、サービスデー効果で強引に物事が逆転して行く。しかし、嫌な上司が出張する際に、飛行機が落ちればいいのにと願ってしまった事により……。

ちなみにこのサービスデー、公平に与えられるのではなくて、人によっては生後3日後とか、死亡確定の2日前だったりするという意地の悪さ。どちらにしても、まともに願いが叶う筈もない。自暴自棄になって世界滅亡を願っても、同じ日に何千人もサービスデーとなっているので、相殺されてしまうという、微妙に使えないモノなのである。

他の短編は、他人の不幸を肴に幸せを味わうという悪趣味な「東京しあわせクラブ」、手だけの幽霊が出てくる「あおぞら怪談」、兄を見返してやろうとザリガニと格闘する子供の「気合入門」、死後の世界へ片足突っ込んだ女性の「蒼い岸辺にて」。

死後の世界ネタは、王道な展開と着地になっているけれども、実際はそう上手く行かないのが人生。人により、当たりがたくさん入っている人生もあれば、ハズレばかりの人生もある。生きていればそのうちバランスが取れて良い事も訪れるというのは、単なる都市伝説だと思う。不幸と幸せもお金と似ていて、淋しがりやだから同じ場所に集まるものである。

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