天災ですべてを失った中学生の信之。共に生き残った幼なじみの美花を救うため、彼はある行動をとる。二十年後、過去を封印して暮らす信之の前に、もう一人の生き残り・輔が姿を現わす。あの秘密の記憶から、今、新たな黒い影が生まれようとしていた―。
突然、襲ってきた津波で、島は壊滅。生き残ったのは、夜中に逢引しようとして高台にいた信之と美花、それにお邪魔虫の輔だけ。夜が明けて集落に戻ると、そこは瓦礫と死体の山。父親から虐待され続けていた輔が喜んでいたところへ、輔の親と観光客と灯台守の爺さんが現れる。
美花に色目を使っていた観光客のカメラマンが、彼女を押し倒している現場を見てしまった信之は、助けようとしてその男を殺害する。大災害の後だっただけに、事件は発覚せずそのままになってしまうのだが、二十年後、新たな火種となって還って来る。
三浦しをんにしては珍しく、暗い内容で救いが無い。最初から最後まで闇で覆われた感じなのだが、この「光」という題名は、一体何を指しているのだろうか。まともな人間が全滅してしまい、残されたのはロクデナシばかり。
美花を守るために手を汚す信之。美花の本性が悪女でそれを望んでいたのか、信之の身勝手な脳内妄想によってもたらされた結末なのか。何の落ち度も無い人が殺されて行く内容ではないので、それほど不快感は無かったけれども、後味が良くない物語だなぁ。
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