旧ユーゴスラビアの都市で地下生活を送るアキラを中心に繰り出される言葉は、随時、語り手を替え、詩人や兵士や市民の言葉が引用され、報告、告白、手記、詩、批評と、絶えず口調を変えながら、セルビア人にもクロアチア人にも、ボスニア人にも、アメリカ人にも書きようのないテクストを編んでいる。第23回すばる文学賞受賞作。

第122回芥川賞候補作。

最近の芥川賞系統の話のように、ただ気取った文章を書きたかっただけとしか思えない作品とは違い、明確なテーマがあるのだが、ユーゴ戦争を書いているだけに、凄惨な内容すぎて胃が痛くなりそうだ。

徹頭徹尾、残虐シーンばかりで、互いに敵を虐殺するキチガイみたいな人間ばかり。唯一救われるのは、主人公達は巻き込まれて身動きが取れなくなっただけで、狂気の戦争に参加していない点か。

それにしても、悪魔でもここまで酷い事はしないぞ。やはり人類はこの世界で最も邪悪な存在だ。ひょっとすると、自らに似せてこの愚かな生命体を創造した神とかいう奴が、より邪悪だという可能性は残されているけど。

人類なんて滅びてしまえば良いと思いたくなる一冊だった。

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