追想五断章

2009年11月20日 読書
古書店アルバイトの大学生・菅生芳光は、報酬に惹かれてある依頼を請け負う。依頼人・北里可南子は、亡くなった父が生前に書いた、結末の伏せられた五つの小説を探していた。調査を続けるうち芳光は、未解決のままに終わった事件“アントワープの銃声”の存在を知る。二十二年前のその夜何があったのか?幾重にも隠された真相は?米澤穂信が初めて「青春去りし後の人間」を描く最新長編。

大学を休学し、古書店を経営する伯父さんの居候となっている青年が主人公なのだが、淡々としたままで盛り上がらない。

ある日、店を訪れた北里可南子に、父が書いた五つの小説を探して欲しいと依頼されるのだが、店主である伯父には内緒で勝手に受けてしまう。お金が必要だからとはいえ、そんな姑息な事をしてもすぐバレるだろうに。

北里可南子の父が遺した小説は、リドルストーリーとなっており、結末だけが欠落している。そして、最後の一行は北里可南子のもとに。この作中内小説が、どれも気取った純文学風の嫌味な文体なのだが、それでも最近の芥川賞候補作なんかよりは完成度が高い。

五編の小説を追っていると、アントワープの銃声と呼ばれる事件の秘密が見えてくる。リドルの解答にもう一段階、秘密が隠されていたりと、なかなか凝っている。しかし、最後の最後まで、真実は明かされないままで終わってしまった。

依頼中に見つからなかった五編目に残された一文「すべてはあの雪の中に眠っていて、真実は永遠に凍りついている」に秘められたかのように、この物語全体が大きなリドルストーリーとなって終わっている気がする。

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