幼少の頃に見た、対岸を走る「黒くて巨大な機関車」、「マグロのような大きさの鯉」、そしてある日を境に消えてしまった友人A――過去2作を経て著者が到達した、小説に内在する無限の可能性を示した大傑作!
デビューするのが遅いので、かなり苦労した人だとばかり思っていたのだが、超一流私大から超一流商社勤務。しかも保坂和志と知り合いで、勧められて書いたら受賞してしまったという順風満帆人生なのか。幸運や才能も、同じ場所に集まるんだね……。
最近の純文学は、ペラい会話で誤魔化したり、奇抜設定で狙ったり、自分だけが酔いしれて書いたような糞面白くないのが多いけど、これは普通に読めた。
幼少の頃に見た謎の機関車、ありえない大きさの鯉。妙な体験をすると聞こえてくる謎の声は、それを誰にも言ってはならないと諭す。実際にあった不思議な出来事なのか、感受性が豊かで大げさに見えているのか、或いは全くの白昼夢なのか、よく分らないまま曖昧になっている。
ファンタジーが混ざっているのか、ただの純文学なのかよく分らないまま、あっと言う間に少年は大人となり、ナイジェリアに駐在して十年以上が経過。利権が絡み合う石油関連事業は遅々として進まず、そのまま帰国して結婚。中年に差し掛かり、娘の何気ない一言が、一気に現実として迫って来るのに愕然とする。
不思議な雰囲気のまま、何処までも続けられそうなのに、突然、物語から投げ飛ばされたかのような終り方。えっ!? こんなところで終わるの? 結局、何が世紀の発見なのか、ちっとも分らなかった。読んでいる最中は面白かったのだけど、結末が意味不明。
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