安全保障とは何か(平凡社新書004)
2009年12月2日 読書安全保障に幻想はいらない。国家の枠組が緩み、多様な脅威が噴出しつつある現在、日本はどうしていけばいいのか?徹底したリアルな眼で描く、安全保障の基本と現状。
書かれてからすでに10年が経過している訳だが、内容はちっとも古びておらず、ミリタリー・バランスに関する未来予測も、かなり高精度で当てている。経済学者が1年後の予測すら外しまくりなのと比べると、雲泥の差である。
在日米軍問題に関しても、かなり深い部分まで読み取っている。この問題は、国内だけでなく、東アジア一帯を網羅する形で考えなければならないだろう。基本的に、右も左も思考停止状態のウマシカさんだらけなのだが、在日米軍問題に関してだけは、左翼のほうがより胡散臭くて愚かだと思う。
沖縄に負担がかかりすぎるから移転しろと五月蝿いのだが、国内情勢しか考えておらず、諸外国からすれば、極めて自己中心的な考えである。台湾問題や半島問題だけでなく、マラッカ海峡等の安全確保まで責任を負っているのだから、その辺りを解決出来る様な代案を持たずに反対するだけでは、ただの我がままである。(但し、実際に現地で暮らす人が、どうにかしてくれと要求するのは正当な権利であるから除く。)
台所で考えたとしか思えない主婦の論理で反対している左翼思考の人々は、本書をふまえた上で、納得出来る具体策を提示すべきである。本土への基地分散では、国内問題しか解決しないし、東アジア全域の安全保障をないがしろにしている。
米軍が出て行った分は、自衛隊を増強して、有事の際には責任を持って半島や台湾、南太平洋まで護りますというのなら、まだ話は分るけど。いざという時に、米軍に代わって北朝鮮や中華人民共和国と対峙する覚悟も無いものが、容易く弄って良いような問題ではないだろう。
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