灰に埋め尽くされ、僕は穴になってしまった文学界新人賞作家の最新作。目眩がするような観念戯れ、そして世界観――。不条理文学のさらに先を行く、新鋭の、やりすぎなまでに先端な、純文学。
何だかよく分からない話なのだが、下に注釈がつけられていて、これが理系的というか、SF風味の思考で満たされているが故に、とても面白くなっている。通常、注釈はつまらなくて読む気になれないものだが、本書は注釈のほうが面白い。
過去の文豪が書いたものはともかく、最近の芥川賞系統にみられる文章は、大抵は何を書いているのか、何を言いたいのか、よく分からない駄文で満ちていると思っていたけど、こうやって注釈をつけられてみれば、物凄く深い事を書いているのではないかという気分になってしまう。もっとも、そういう気分になってしまうだけであって、円城塔が特別なのであり、やはり他の作家が書いているのは自慰行為の域を出ていないのだろう。
とりあえず、こんなに注釈が面白い小説は、今までに出会った事が無い。
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