開発保留地区――10年前、街の中心部にあるその場所から理由もなく、3095人の人間が消え去った。今でも街はあたかも彼らが存在するように生活を営んでいる。しかし、10年目の今年、彼らの営みは少しずつ消えようとしていた。大切な人を失った人々が悲しみを乗り越え新たな一歩を踏み出す姿を描く。
妙な設定と、淡々とした語りはいつも通り。「失われた町」から直接繋がっている訳ではないが、残された人々を題材とした連作形式となっているので、やはり先に読んでおかないと厳しい。他作品とも微妙にリンクしている。
消え残った女性は町へ戻り、ただ歩き続けるだけの仕事をする歩行技師と出会う。消滅した図書館の一部で、未だに貸し出されている図書のデータを、残された人々に届ける職員。消えた人々によるラジオ局へのリクエスト。
原因不明の消滅現象だが、本書でその原因が明かされる。……なにその政府陰謀説は! 宇宙人グレイの仕業にされる位にガッカリした。これなら、次元の狭間に落っこちたとか、平行世界への転移とか、未来に飛ばされたりするほうがまだ許せる。
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