日本の難点(幻冬舎新書122)
2010年2月13日 読書現代とは「社会の底が抜けた時代」である。相対主義の時代が終わり、すべての境界線があやふやで恣意的な時代となっている。そのデタラメさを自覚した上で、なぜ社会と現実へコミットメント(深い関わり)していかなければならないのか。本書は、最先端の人文知の成果を総動員して、生きていくのに必要な「評価の物差し」を指し示すべく、「現状→背景→処方箋」の3段ステップで完全解説した「宮台版・日本の論点」である。
過激な発言はともかく、自分の主張をゴリ押ししているだけで、他者を納得させるための根拠があまり書いてないなぁ。著者と思考の方向が同じベクトルの人は楽しめるだろうけど、上手くシンクロ出来ないと拒絶反応を起こしそうである。
「スゴイ人」しか他者に対する感染力が無いと言われても、そもそも駄目人間だらけで、肝心の「スゴイ人」が絶滅危惧種な現状、一体、どうすれば良いのだろう。「スゴイ人」がいないのに、「スゴイ人」頼みでは、そりゃ虐めはなくならないよね。宮台さんはスゴイ人なのだろうから、頑張って愚民どもを感染させて、光輝く方向へと導いて下さいな。
早期教育は役に立たないとか、東大を出ているような人に言われても……。高偏差値大学における質の低下だって、少子化で説明出来るんじゃないの? 受験人口が半減したのだから、定員も半分にしなければ、従来なら入学出来なかったはずの低レベルが混ざってしまうのは当然である。「ガリベン」が「地アタマ」の良い人間に勝てないというが、「ガリベン」にならなければ、ただの駄目な人で終わるのだから、そこを否定するのは如何なものか。要は俺「地アタマ」が良い人でSUGEEEEEE! という訳ですね。
「馬鹿保守」や、規制強化主義者達の抵抗勢力となっている部分は肯定したい。「他人に迷惑をかけなければ何をやってもいいのか」と反論しつつ、他者の権利を侵害しているのは、規制強化主義者達のほうですからね。やはり、筆者の主張するゾーニング方式のほうが、遙かに健全である。追い立てられれば、アングラ化して目に見えなくなる。自分の目が届く範囲が綺麗になったからと安心する規制強化勢力は、全体主義者か、ただの馬鹿である。
ブッシュといえば、アメリカ史上最低の大統領であろう。選挙での誤魔化しもあり、正当性すら疑わしい、9.11テロも阻止できず、あちこち攻め込んで大量殺戮をした最悪な大統領であるが、筆者が見るように、オバマ登場への布石だと考えると、必要悪にも思えてくる。なるほど、ここまで最低最悪な大統領がいなければ、オバマ大統領は誕生しなかったかもしれない。
主観による断言が多く、何故そうなるのかという理由を述べないまま次の題材に飛んで行くのが本書の難点。勝間和代程ではないが、自慢話が多いのも鼻につく。
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