廃墟に乞う

2010年2月15日 読書
13年前に札幌で起きた娼婦殺害事件と、同じ手口で風俗嬢が殺された。心の痛手を癒すため休職中の仙道は、犯人の故郷である北海道の旧炭鉱町へ向かう。犯人と捜査員、二人の傷ついた心が響きあう、そのとき…。感激、感動の連作小説集。

第142回直木賞受賞作。

もうかなりのベテランなのに、まだ貰えていなかった佐々木譲、ようやく受賞となりました。ミステリ畑だと、なかなか直木賞貰えないからね。ラノベ畑からの転向組と比べて、あまりにも険しい道である。

ミステリであり、警察小説でもあるので、直木賞受賞作じゃなかったら、きっと手に取らなかったと思う。元々ミステリが苦手だし、警察に対しては不信感しか無いので。あと、キチガイに人が殺される話は読んでいて憂鬱になるし。

ある事件が原因で休職中となった一人の警部補が、舞い込んで来る事件に関わって行く。連作になっており、それぞれの分量が少なく、主人公の仙道が事件を華麗に解決するといった感じにはなっていないので、結末が気になるものが多い。

「オージー好みの村」では、オーストラリア人が殺人事件の犯人にされかける。「廃墟に乞う」は、過去に二人を殺し服役した男が、新たに三人目を殺害。仙道に連絡を取って来るが、身柄確保直前に自殺。なんでキチガイに甘いのか。最初の事件を傷害致死ではなく殺人にし、死刑にしておけば三人目は死なずに済んだのに。

「兄の想い」だけは、殺されても仕方が無い悪党が被害者なので、あまり不快感が残らなかった。「消えた娘」は、監禁王子を超える性犯罪者の家から、女性を拉致して拷問したらしき痕跡と、行方不明となった二人の女性の遺留品、血痕が見つかる。しかし、逃亡しかけたキチガイ王子がトラックに撥ねられ即死したので、被害者の遺体が発見されないまま。結局、仙道が目星をつけたところで終わるので、結末は分からない。初犯じゃないんだし、キチガイはもう全部隔離しておけば良いのに。

「博労沢の殺人」も、その結末が描かれないままでスッキリしないのだが、未解決殺人事件の容疑者が被害者となり、因果応報のような事になっている。「復帰する朝」で、ようやく休職に至った事件が明かされる。

人間の愚かさはよく表現されているけど、仙道が休職中の警官という中途半端な身分だからか、事件に最後まで付き合わないのが物足りない。それぞれを長編として、事件解決までガッツリと読みたいところ。

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