きみがいた時間 ぼくのいく時間-タイムトラベル・ロマンスの奇跡-
2010年2月8日 SF特集至上の愛は時を超えられるのか? 映画化(東宝)、演劇化(キャラメルボックス)された、あの「クロノス・ジョウンターの伝説」を超える書き下ろしに、定評のカジシン短編を揃えた珠玉のアンソロジー。演劇集団キャラメルボックス主宰の成井豊との情熱対談も収録。
タイムトラベルを題材にした短編集。うちひとつは「クロノス・ジョウンターの伝説」と同じ世界観を共有する。クロノス・ジョウンターとは別の理論によって過去へ行くのだが、事故死した妻を救うために跳躍するというお約束は変わらず。やはり、女が死ぬんだよな。男が死んでも女は過去を改変せず、別腹人生を謳歌しそうだしなぁ。
「きみがいた時間 ぼくのいく時間」今回は別理論なので、過去から弾かれたりはしないのだが、行ける先は調整出来ないのだ。螺旋状の時間を重ねた時に、現在と合わさるのは39年前なのである。つまり、妻や自分が生まれる前の世界へ飛んで、その時が来るまで待ち続けなければならないのだ。細かい部分でタイム・パラドックスが解消されていないけれど、気にしない気にしない。
「江里の“時”の時」は、古代で石を動かした事によって別の未来へと迷い込み、自分の代わりに存在してタイムマシンを開発した女性に恋する科学者の物語。だが、別の未来へは干渉する事が出来ない。そのうち、彼女の世界はある施設の事故で発生した連鎖融合現象で滅亡寸前だと知り苦悩する。
「時の果の色彩」は、未来の自分自身から送られたタイムマシンで過去と未来を行き来する社長の話。この話の設定では過去も未来も現在を起点に19年しか存在していないというもの。時間の波が現在を中心として、その範囲にしか広がっておらず、そこから向こうの過去は消滅してしまい、未来はまだ形成されていないのである。存在しない過去へは行く事が出来ず、病死した女と会えなくなる時期が目前に迫り、一人の新入社員にある事実を告げる。
「美亜へ贈る真珠」は。航時機と呼ばれる未来への一方向タイムマシンへ入った男と外界へ残された女の話。航時機の中は時間の経過が遅くなり、外界の一日が一秒にしかならなくなるのだ。時がほぼ止まったままの男と、それを見つめ続けながら年老いていく女の物語。
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