「嫌消費」世代の研究――経済を揺るがす「欲しがらない」若者たち
2010年3月25日 読書若者の消費が変化している。若者はなぜ、物を買わなくなっているのか。そこには巷間ささやかれている「低収入」「格差」「非正規雇用の増加」以上に深刻な、彼ら独特の心理=「劣等感」が強く影響している。
フィーリングだけで物を言っている人々と比べると遙かにマシではあるのだが、消費ありきという旧世代視線によるバイアスがかかりすぎている点が不満である。低収入や格差はともかく、この現象を「劣等感」という曖昧なもので論じて良いのか疑問である。若い世代特有の現象で、他の世代には劣等感が無いのか? 戦後世代だって、何もかも灰燼に帰した事による劣等感、バブル崩壊後の世代だって受験地獄で数多くの人間が振るい落とされた事による劣等感があると思うぞ。とりあえず、バブルの波に乗った世代には、劣等感など無いという訳ですねわかります!
200万円以下の人々に嫌消費性向が少ないのは、単に収入が少なすぎて、物を欲しがらないレベルにすら到達出来ないのじゃないのか? 単純にその比率を出すだけでなく、どういう調査で弾き出した数字なのか説明してもらわないと、いまいち納得出来ない。
日本の短い春の時代を謳歌したバブル世代目線で、消費しない若者をネガティブに捉えてもなぁ……。消費しないのも一種の防御行動なのだから、まず貴方達の世代がガッツリと握っている既得権益を放出し、世代間格差や産まれ年による不公平を是正しなさいよ。ワインの当たり年、外れ年じゃあるまいし……。
今の若者は車を買わないと言われるが、不良債権化したバブル世代を容易に切り捨てられないので、日本型雇用制度を守るため、身代わりで非正規雇用となり使い捨てにされている。仮に正規雇用されたとしても、成果主義で右上がりは期待出来ない。国家ぐるみの巨大なネズミ講である年金制度は崩壊寸前だし、国の借金が増えたなら「消費税あげればいいじゃない」と馬鹿な政治家が短絡的に発言するような現状、未来に期待など出来ない。この局面で金も無いのに車を買うようなやつは、やはり馬鹿扱いされても仕方がないだろう。
こんな世の中では、むしろ負担になるような不必要な物は買わないという選択肢が正常であって、バブルの大波に乗って人生を謳歌した世代に嫌消費行動をネガティブに見られてもなぁ……。若者に消費して欲しいのなら、まずは世代間格差の是正とセーフティネットの完備、そして敗者復活戦型社会の構築が不可欠だろう。
アプローチ自体は興味深いのだが、バブル世代視点によるバイアスがかかりまくっているのが残念。これでは、高度成長期やバブルの大波に乗って人生ウハウハだった事がある中高年のおっさんにはウケても、日本の不味い部分ばかり押し付けられている若者は「ああそうですか。おじさん達は良い思いばかりして凄いですね羨ましいですリア充死ね爆発しろ!」としか思わないんじゃないの? もっと客観的に論じれば良書になったのに。
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