ショート・サーキット
都市生活を暗部で支える配電工事の労働を通して、現代が孕む危うさを高密度の文体で捉えた。芥川賞候補作を含む最新作品集。

第12回野間文芸新人賞受賞作。
第103回芥川賞候補作。

題名を見てレースの話だと思っていたけど、サーキットは自動車競走用の環状道路の事ではなくて、電気回路のほうだったのか。三篇入っているのだが、すべて同じ主人公で、「雛の棲家」から続いている。単品でも読めるけど、繋がっているので先に「雛の棲家」を読んだほうが良いと思う。

「雛の棲家」の後半で配電工の仕事にありついた主人公だったが、本書ではすでにベテランとなっている。とはいっても、年齢は若いのだけど。子供が三人も生まれてしまい、必死に生きるのだが、暮らしは豊かじゃないし、嫁には拒否されるし、堪らんなぁ。子供のうち二人は病を抱え込んでいるし。危険な現場で作業しているから、自分もアスベストで体をやられて行くし。

やたら配電工事の描写が詳しいと思ったら、実際にそういう仕事をしていたのか。その絡みでアスベスト被害の本も出しているんだね。アスベストの危険性なんて、もうこの頃には世界的には認識されていたのに。この国を牛耳る奴らは金儲け優先で、使い捨てにされる人間の命なんて屁とも思っていないからね。

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