屋上ミサイル

2010年5月24日 読書
大統領がテロ組織に拉致監禁されるという大事件がアメリカで発生していたものの―日本の高校生たちにとって、それは遠い国の出来事だった。それよりも、もっと重要なことがある。例えば、校舎の屋上でスケッチをすることだとか。美術の課題のため、屋上にのぼった高校二年生の辻尾アカネ。そこで、リーゼント頭の不良・国重嘉人や、願掛けのため言葉を封印した沢木淳之介、自殺願望を持つ平原啓太と知り合う。屋上への愛情が共通しているということから、国重の強引な提案で“屋上部”を結成することになった四人。屋上の平和を守るため、通行人を襲う罰神様騒動、陸上部のマドンナ・ストーカー事件、殺し屋との遭遇などに巻き込まれることになる。それらはすべて、ひとつの事件に繋がっていた!『このミステリーがすごい!』大賞2009年第7回大賞受賞作。

『このミステリーがすごい!』大賞第7回大賞受賞作。

受賞したばかりなのに、もう文庫化されているのか。この7回は、選考委員の評価真っ二つで、かなり揉めたらしい。それで二作受賞となっているのか。片方はまだ読んでいないので、現時点ではなんとも言い難い。しかし、やはり密室で決まってしまう胡散臭さは感じるよなぁ。どちらかの選考委員が病欠したりしたら、バランスが一気に崩れて片方が泣きを見るという事だからね。芥川賞ほど世間とのズレは無いものの、読者より先に選考委員受けしないと駄目だというところが……。かなり主観入るし、結局、好き嫌いになってしまうからね。

アメリカで大統領拉致監禁という大事件が発生しているのに、それとはほぼ何の関係も無く、屋上を舞台にした物語が進行して行く。屋上に絵を描きに来た女子生徒や、不良っぽい少年、屋上から好きな子を覗いているストーカーっぽい少年等が集まり、屋上部として活動を始める。

しかし、殺害されたと思われる人物が写った写真を拾ったり、誰かが置き忘れたらしい本物の銃をたまたま拾ったりと、選考委員にも指摘されている通り、かなりご都合主義な部分がある。話が盛り上がり始めるのも遅いし、面白いからという理由だけで自分達から事件に首を突っ込んで行くのが嘘臭いなぁ。

様々な事件がバラバラに発生するのだけど、これがなかなか繋がらない。死体写真の謎も、何故か置いてあった銃の謎も、ラスト付近まで結びつかないし。主人公の弟が何者かに襲われたり、ストーカーっぽい少年が別のストーカーと間違えられたり、変な都市伝説を作っている犯人やら、いきなり追いかけて来る殺し屋とか、無関係に思える出来事がバラバラになりすぎていて、なかなか物語の核心が見えて来ない。これが伊坂幸太郎のように、ラスト付近で一気に繋がれば凄いのだが、ようやく束ねたという感じでスマートじゃなかった。

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