ほとんど無害

2010年2月25日 SF特集
突拍子もない事故で、最愛の女性と離ればなれになったアーサー。放浪の末、サンドイッチ職人としての平安な人生を手に入れるも、突然トリリアンが彼の娘を連れて現れる。一方フォードは、銀河ヒッチハイク・ガイド社の異変に疑問を抱き…。並行宇宙を舞台に繰り広げられる、大傑作SFコメディ最終巻。

冒頭から、光速は超えられないけど“悪い噂”は別の法則に従うから超えられるというブラックに笑った。

無くなったはずの地球が残っているけど、アーサーは平行宇宙で迷子になり、自分がいたはずの地球に戻れなくなってしまう。銀河ヒッチハイクガイドの本社は乗っ取られていて、フォードのほうもややこしい事になっている。

スタヴロミュラ・ベータでアーサー絡みのトラブルに巻き込まれて死亡したとかいう宇宙人に襲われた事があるので、この先何があっても自分は死なないと思い、達観気味のアーサー本人。(スタヴロミュラ・ベータにまだ行った事が無いので。ちなみに、謎に包まれていたスタヴロミュラ・ベータという場所については、本書で明らかとなる。)

宇宙船の事故で僻地に住む事になるのだが、知らない間に娘まで生まれていた! しかも、すでに思春期を過ぎた状態。いきなり母親から産んだ覚えの無い娘を押し付けられるアーサー。

しかし、母親に置いて行かれた娘は、銀河ヒッチハイクガイドを使って宇宙船を呼び寄せる。降りてきたフォードを殴り倒し、宇宙船を奪い取って何処かへ。とんでもない娘である。誰に似たんだか。

アーサーの娘は自分の居場所を求め、本来の地球まで行くのだが、太陽系にはヴォゴン人が……。なにこれ!? まさかのBAD END!! なんでこんな、何もかも投げ飛ばした感じで終わっているのか。「こんなの銀河ヒッチハイクガイドじゃないや!」という意見には、大いに賛同したい。

6冊目が書かれる前に、ダグラス・アダムスが急死してしまったからなぁ……。

はるばる十万光年をヒッチハイクして、アーサー・デントがたどり着いた先は、なんと八年前に破壊されたはずの地球だった!!イルカが消えてしまったことを除いては、前と何も変わらない、この“地球”の正体は!?アーサーは、運命の恋人・フェンチャーチと共に、真相究明の旅に出ることに…。大傑作SFコメディ『銀河ヒッチハイク・ガイド』シリーズ第4弾。

うーん、最初の勢いが無くなってしまったなぁ。なんだかよく分からないドタバタコメディが続いているのだけど、笑うツボがよく分からないのは、人種が違うから? 欧米の人だと、ツボに嵌れるの?

悪ふざけが控えめになった分、いきなり恋愛要素が膨れ上がり、アーサー・デントが運命の恋人と出会う。フェンチャーチ相手に、アーサーが重要な話をしようとする度、横から邪魔をするおばさんがウザすぎる! もっと空気を読め(笑)。

見知らぬ男とビスケットを取り合うシーンは笑ったけど、これは著者が実際にやらかした事らしい。自分のビスケットを勝手に食う相手に対抗しているつもりが……。相手の人が、本書を読んでいると良いなぁ。
遠い昔、遥か彼方の銀河で、ギャクサツ集団クリキット軍の侵略により銀河系は全滅の危機に陥った。封印を破って甦った彼らを迎え撃つのは、よりによってアーサー・デントとその一行。果たして宇宙は救えるのか!?大傑作SFコメディ第3弾!銀河大統領の若き日日を描いた本邦初訳「若きゼイフォードの安全第一」収録。

うーむ。先の二作と比べて、なにがなんだかよく分からなくなっているなぁ。単品で考えれば、それほど悪くは無いのだろうけど、期待値が高かっただけに、微妙。

過去世界の地球に置き去りとなったアーサーは、ゼイフォートとともに、突如現れたソファーを追いかけて、現代世界のローズ・クリケット競技場へタイムスリップ。何故か、全銀河の敵みたいになっている異星人と対決する事になるのだけど、ドタバタしすぎで脱線も多いので、いまいち波に乗れない。

当時、アメリカで言葉狩りが流行っていたので、“ファック”という言葉が使えず、アメリカ版だけ“ベルギー”が下品な差別用語という設定になっているのが笑える。日本語版は、ちゃんと本国バージョンで読めますが。誰が最初に“ベルギー”を駄目ワードとしてジョークに取り入れたのかは謎である。
小腹を満たしに、宇宙の果てのレストランへ行く途中、攻撃された“黄金の心”号。乗っていたアーサーたちは、離ればなれになってしまう。元・銀河大統領ゼイフォードと鬱型ロボットのマーヴィンが、とだりついた星で遭遇したのは!?宇宙を揺るがす迷真理を探る一行の、めちゃくちゃな冒険を描く、大傑作SFコメディ第2弾。

前作からそのまま続いて、ひたすら馬鹿っぽいまま。ヴォゴン人から攻撃されているのに、船のコンピューターは美味しい紅茶の入れ方を調べるのに忙しくて、逃げも隠れも反撃もしてくれなくて死にかけたり、時間を超えて時の終わりでご飯を食べたりと、登場人物がひたすら振り回されて馬鹿な行動をしてしまうのだ。

宇宙の果てのレストランで世界の終わりを見た後は、駐車場? に停めてあった宇宙船を強奪するも、操作方法がわからず、致命的な場所に飛ばされて死にかける。ご都合主義的に何故かそこに設置してあったテレポート装置で逃げるが、今度は妙な移民船の中へ。

それは、役に立たないから姦計によって祖国を追い払われてしまったゴルガフリンチャム人の移民船だった。航路が自動設定されているから、またしても成す術が無いままに、ある惑星へと墜落してしまう。実はそこが200万年前の地球であり、ゴルガフリンチャム人の正体が明らかとなる。彼らが飛来(というか墜落)した事で死に始める原住民は、ネアンデルタール人なのだろう……。

ゴルガフリンチャム人(地球人)に定められた200万年後の運命を知っているアーサーは「銀河ヒッチハイク・ガイド」を川へと投げ捨てるのであった。
銀河バイパス建設のため、ある日突然、地球が消滅。どこをとっても平凡な英国人アーサー・デントは、最後の生き残りとなる。アーサーは、たまたま地球に居た宇宙人フォードと、宇宙でヒッチハイクをするハメに。必要なのは、タオルと“ガイド”―。シュールでブラック、途方もなくばかばかしいSFコメディ大傑作。

表紙と題名が面白いとは思っていたが、まさかこんな馬鹿っぽくて面白い話だとは思いもよらなかった。皮肉もふんだんに用意されていて絶品である。

自分の家が高速道路建設で取り壊される事になったアーサー・デントは抗議行動を起こし、ブルドーザーの前に寝そべるが、何年も前から(地下の薄暗い掲示板や閲覧出来ない引き出しにて)工事は告知してあったのだから、今更抗議しても無駄だと言われてしまう。必死で家を守ろうとして寝転がるアーサーは、友達のフォードに無理やり引っ張られて、飲みに連れて行かれるのだが、酒場でフォードから地球が間もなく終わってしまうと告げられるのだ。

フォードから地球の最後を告げられた直後、銀河超空間土木建設課が飛来して銀河外縁部開発計画に基き、超空間道路建設予定宙域にある地球は取り壊されると通告する。異星人は、アルファ・ケンタウリの事務所で50年も前から告知していたのだから、今更文句を言っても遅いと工事を始めてしまう。

地球は原始的な微生物さえも消滅してしまうが、アーサーだけは生き残った。友達のフォードが、実は地球人じゃなかったからである。転送光線で最寄の宇宙船へと乗り込んだ二人は、宇宙ヒッチハイカーと化すのだが、船外へ追い出されてしまう。息を止めたら30秒は生きられると頑張る二人だったが……。

物理法則や実際のデータを思いっきり無視して暴走する、限りなくお馬鹿なSFなのが素晴らしい。表紙にある宇宙クジラはただのデザインかと思ったら、本当に登場して笑った。

神様のパズル

2010年2月21日 SF特集
留年寸前の僕が担当教授から命じられたのは、不登校の女子学生・穂瑞沙羅華をゼミに参加させるようにとの無理難題だった。天才さゆえに大学側も持て余し気味という穂瑞。だが、究極の疑問「宇宙を作ることはできるのか?」をぶつけてみたところ、なんと彼女は、ゼミに現れたのだ。僕は穂瑞と同じチームで、宇宙が作れることを立証しなければならないことになるのだが…。第三回小松左京賞受賞作。

「宇宙は“無”から生まれた」と、彼は言った。「すると人間にも作れるんですか? 無なら、そこら中にある――」

冒頭の掴みは完璧である。こういうズレたセンスは大好きである。実際ところ、無に見える部分にも何かが詰っているのだが。物質を限界まで拡大していくと、物質と物質の間に横たわる空間は無と言えるのかもしれないけど、それでも空間はあるよなぁ。本当の“無”なんて、人間の心の闇にしか……。

それはそうと、文庫版の帯が気になります。映画化!? 本当に映画になるのか? アニメ化のほうが良いんじゃないのか? 巨大な粒子加速器以外はSFっぽい物が出てこないから、国産映画でも何とかなるのかもしれないけど、ペラい映画になりそうで嫌だなぁ。

老人が感じた宇宙に関する疑問が元で、宇宙の作り方を研究する事になるゼミ生達。もっとも、天才少女と主人公以外の全員が宇宙は作れない派にまわる事になるので、凡庸大学生である主人公青年には苦難が待ち構えている。人類には作れないだろうけど、少なくとも1個は出来ているのだから、宇宙を作るためのレシピは存在するはずである。人類が拙いから知らないだけで、答えは必ず用意されている。しかし凡庸大学生に作れるとは思えない。

誹謗中傷、盗撮、マスコミの悪意ある攻撃、人為的に生み出された自らの存在意義……。いろいろあって精神が不安定になった天才少女は、シミュレーションからある答えを導き出し、粒子加速器を使って宇宙を発生させようとするのだが……。実際には、そんな簡単には作れないだろうけど、実験の成功が、今の宇宙の終りだなんて! 

それにしても、解らない事が多すぎる。解らないままに、天才が見つけた解答を覚えて、とりあえず知った事にしているのが凡人であるが、それで良いと思う。全ての事象を本当に理解するまで頑張るとなると、上手く行けばエジソンみたいになれるが、そうじゃなければ単なる馬鹿で終わってしまう。

本書でも、素粒子、量子力学、電磁気力、重力、強い力、弱い力……、次々と難しい話が出てきて辛くなりそうなところ、主人公も出来が悪い理系学生という設定なので、読み手だって物理学の理論なんて判らないまま、素直に読み進めてOKです。もし天才少女のほうが主人公なら、嫌味なだけで終わっただろうな。
種子島に鉄炮を伝えた男ゼイモト、冒険商人ピント、イエズス会宣教師ザビエル、『日本史』を著したフロイス…。16世紀、日本にやってきた7人の西洋人の目を通して、「日本という国」を浮き彫りにする連作短篇集。西洋文化と接したことによって、日本は、どのように変わったのか。そして変わらなかったのか ―。

短編七つに分かれているので、結構サクサク読み進める事が出来た。戦国時代の日本に到達した西洋人達の物語。その設定上、宣教師絡みが多く、キリスト教視点で日本が描かれているので、少し嫌な感じだけど。

八百万の神々が宣教師によって悪魔扱いされているけれども、人類史において最も多くの人間を虐殺している宗教がキリスト教ですからね。やっている事を考えれば、一体どっちが悪魔なんだか。

宣教師絡みの話より、一攫千金を夢見たホラ吹き男や、美しすぎる呪いで波乱万丈人生の美形男の物語が楽しく読めた。ところで、美しすぎるのは呪いなんでしょうか? 醜悪な容姿で波乱万丈人生もあるのだから、美しすぎるのは、せいぜい禍福程度でしかないと思う。本物の呪いは、そのような生易しいものではない。

ルイス・フロイス等、実在の人物が出てくるだけに、自由度が低い。勝手な事を書くわけにもいかないからか、ちょっとハジケ具合が足りないかな。

恋細工

2010年2月19日 読書
一匹狼の職人・時蔵と女だてらに細工師を志す錺工房の娘・お凛。周りと打ち解けず、独り黙々と細工に打ち込む天才肌の時蔵に振り回されながらも、お凛は時蔵に惹かれていく。そして、反発し合っていた二人の心が銀細工を通じてかさなった時、天保の改革で贅沢品が禁止された江戸の町に活気を取り戻す、驚天動地の計画が動き始めた…。若い男女の哀しく切ない恋模様を描く本格時代小説。

この作者も、レベル高めの作品が多いので安心して読める。ゴメスは時代小説風味でありながら、設定がSFっぽい感じだったのだが、最近のは本当に時代小説になっている。

錺工房の娘、お凛は、江戸に流れてきた天才細工師の時蔵を迎え入れるよう言われていたので、捕えられていた彼の身元を引き受ける。しかし、時蔵は周囲の職人と対立ばかりする困ったちゃん。されど誰も見た事が無いような技を習得しており、腕前は抜群。

工房の四代目が跡目を決めぬまま病死してしまったのだが、遺言により、五代目の候補を決めるのは三年後。工房にいる数人の職人が候補なのだが、その中には時蔵も入っていた。

金には興味を示さず、ただ新しい細工に命を懸ける時蔵。細工が大好きなのに、女が職人になるのは認められないような江戸時代に産まれてしまったお凛。二人は次第に心惹かれあって行くのだが、天保の改革により贅沢品が禁止され、工房が存亡の危機に陥る。

それにしても、天保の改革というより改悪だよな。パイが縮小するばかりで不況になっただけ。経済も混乱し、貸し渋りが横行。結果は幕府の力を弱め、薩長のような雄藩が力をつけただけ。重農主義ではなく、重商主義で消費税みたいなものを導入したほうが良かったんじゃないのか? 

でも気が狂ったとしか思えないほどの借金はこさえてないから、不況とはいえ、何処かのの某金権腐敗政党と比べたらマシか(笑)。水野忠邦絡みで、妖怪奉行も名前が出てくるのだが、鶴太郎の顔がチラついて仕方が無い。

はむ・はたる

2010年2月19日 読書
心に傷を負った若き侍と、江戸の下町でたくましく生きる孤児たちの、強い絆とままならぬ過去への思いを描く青春時代小説。

ふらふらと旅をしている長谷部家の次男坊と、孤児達の連作短編集。江戸に戻って来た柾だが、実は道場の師匠を殺した相手と、原因となった美女を追っていた事を、孤児達に知られてしまう。

人攫いがあったり、猫神様が消え失たりと、事件が起こる度にそれを解決して行く柾達。そのうち、探していた相手が現れて……。

高利貸しの婆さんが出てくると思ったら、登場人物が「烏金」と繋がっているのか。

雨ふる本屋

2010年2月18日 読書
いらっしゃいませ。ここは、あなただけの物語が見つかる本屋さん。こんな雨の日には、ほんとうの自分に出会えるかもしれません―。

買い物帰りのルウ子が、雨に降られ、図書館に入ったところ、いつの間にか妙な場所へ。妹に悪戯するつもりで捕まえたカタツムリが逃げ出し、それを追いかけているうちに、図書館内部なのに迷子になってしまう。

カタツムリを追ううちに、雨が降っている本屋にたどり着く。店主はドードーだし、助手? の舞々子さんも、なんか変。そこは、忘れさられた物語が雨となり降り注ぐ本屋だった。だが、最近は物語が綺麗に仕上がらない。人間しか立ち入れないので、ルウ子が物語の種があるほっぽり森で起きている異変を確かめに行く事に。

店主のドードー鳥が、やたら短気ですぐ怒る。まるで沸点が低すぎる、ゆとり脳のモンスター・ペアレンツみたいだった。書名に惹かれて図書館で予約を入れたものの、受け取ったら童話系統の児童書だった。世俗の腐臭に穢されて、心が荒み切った者が読むには辛い(笑)。最後、夢オチ的な結末で終わらないのは良かった。
ウルトラマンたちは、なぜ命を賭けて戦うのだろう。異星人である私たちのために。若き地球防衛隊員を通して描く、ウルトラマンメビウスの活躍と葛藤。一級品のSF小説として描かれた、ファン必読の新たな「ウルトラマン」像。

朱川湊人がこんなものを!? 素材がウルトラマンメビウスなので、新刊リクエストするのが恥ずかしいなぁと迷っていたら、誰かがリクエスト入れてくれた。誰か知らないけどGJ! どうも有難うございます。

何でウルトラマンメビウスなんて特撮物SFを書いたのかと思ったら、放映されたうち三話の脚本を担当しているんだね。過去のウルトラマン・シリーズまで絡め、細かい部分まで書き込んでいて、結構ノリノリである。

題名はウルトラマンメビウスだけど、視点は研修中の若手隊員だった。ウルトラマン目線じゃないのか。五話で構成されており、厄介な敵ばかり登場する。気色悪い魔法の杖みたいなのとか、地球を全部自分に融合させようとする植物とか、精神に寄生して食堂のおばちゃんを乗っ取る奴とか、謝罪と賠償を求める宇宙人まで出て来るし……。

主人公のカナタ青年は、父をエイリアンの攻撃で亡くしており、ウルトラマンメビウスも敵視している。とんがりすぎて、他の隊員にも突っかかるし、嫌な感じのキャラになっている。

それはそうと、ウルトラマンメビウスの正体がバレバレになっているじゃないか。放映されたやつでもバレてるの?

 

2010年2月16日 アニメ

 

2010年2月16日 アニメ

 

2010年2月16日 アニメ

 

2010年2月16日 アニメ

 

2010年2月16日 アニメ

 

2010年2月16日 アニメ

廃墟に乞う

2010年2月15日 読書
13年前に札幌で起きた娼婦殺害事件と、同じ手口で風俗嬢が殺された。心の痛手を癒すため休職中の仙道は、犯人の故郷である北海道の旧炭鉱町へ向かう。犯人と捜査員、二人の傷ついた心が響きあう、そのとき…。感激、感動の連作小説集。

第142回直木賞受賞作。

もうかなりのベテランなのに、まだ貰えていなかった佐々木譲、ようやく受賞となりました。ミステリ畑だと、なかなか直木賞貰えないからね。ラノベ畑からの転向組と比べて、あまりにも険しい道である。

ミステリであり、警察小説でもあるので、直木賞受賞作じゃなかったら、きっと手に取らなかったと思う。元々ミステリが苦手だし、警察に対しては不信感しか無いので。あと、キチガイに人が殺される話は読んでいて憂鬱になるし。

ある事件が原因で休職中となった一人の警部補が、舞い込んで来る事件に関わって行く。連作になっており、それぞれの分量が少なく、主人公の仙道が事件を華麗に解決するといった感じにはなっていないので、結末が気になるものが多い。

「オージー好みの村」では、オーストラリア人が殺人事件の犯人にされかける。「廃墟に乞う」は、過去に二人を殺し服役した男が、新たに三人目を殺害。仙道に連絡を取って来るが、身柄確保直前に自殺。なんでキチガイに甘いのか。最初の事件を傷害致死ではなく殺人にし、死刑にしておけば三人目は死なずに済んだのに。

「兄の想い」だけは、殺されても仕方が無い悪党が被害者なので、あまり不快感が残らなかった。「消えた娘」は、監禁王子を超える性犯罪者の家から、女性を拉致して拷問したらしき痕跡と、行方不明となった二人の女性の遺留品、血痕が見つかる。しかし、逃亡しかけたキチガイ王子がトラックに撥ねられ即死したので、被害者の遺体が発見されないまま。結局、仙道が目星をつけたところで終わるので、結末は分からない。初犯じゃないんだし、キチガイはもう全部隔離しておけば良いのに。

「博労沢の殺人」も、その結末が描かれないままでスッキリしないのだが、未解決殺人事件の容疑者が被害者となり、因果応報のような事になっている。「復帰する朝」で、ようやく休職に至った事件が明かされる。

人間の愚かさはよく表現されているけど、仙道が休職中の警官という中途半端な身分だからか、事件に最後まで付き合わないのが物足りない。それぞれを長編として、事件解決までガッツリと読みたいところ。

月長石の魔犬

2010年2月14日 読書
右眼に藍玉(アクアマリン)のような淡い水色、左眼に紫水晶(アメジスト)のような濃い紫色の瞳をもつ石細工屋店主・風桜青紫(かざくらせいし)と、彼を慕う女子大生・鴇冬静流(ときとうしずる)。先生に殺されたいと願う17歳の霧嶋悠璃。境界線(ボーダー)を彷徨う人々と、頭部を切断された犬の首を縫い付けられた屍体。異常と正常。欲望と退屈。絶望と救い。根源を射つメフィスト賞受賞作!!

ゲーム感覚で人が殺されて行き、連続殺人鬼を狙う連続殺人鬼がいるという構図は、いかにもメフィスト賞らしい。最初から先生絡みでミスリードを狙っているのがバレバレなのは残念。

沈黙したままの連続爆弾魔、連続少女絞殺犯、連続人肉嗜食殺人鬼。数々の事件が未解決のまま途切れて迷宮入り。連続少女絞殺犯と連続人肉嗜食殺人鬼に関しては、容疑者らしき人物が最後の被害者となっており、その共通点は、左腕が消えているという点。

連続殺人鬼をターゲットに連続殺人を行う存在が疑われているが、解決には程遠い。そんな中、首が切断され、代わりに犬の首が縫い付けられるという猟奇殺人が発生する。

構造はなかなか良さそうなのだが、登場人物の名前が風桜青紫(かざくらせいし)、鴇冬静流(ときとうしずる)、霧嶋悠璃(きりしまゆうり)とかだらけのDQNネームな厨設定。しかも記号化されすぎで、人物描写が物足りない。

美女ばかり出てくるのも、なんだなぁ。石細工屋店主を慕う女子大生も美女。近所に住む臨床医も美女、連続殺人犯の現場を目撃し、殺されたがっている少女も可愛い設定。連続殺人鬼に痛いコードネームばかりつけたがる電波さんな警視も美女だし、殺されて行く被害者も全員美女。ここまれ美女オンパレードでは、価値が下がる。

石細工屋店主の華麗な推理により事件が解決する訳でもなく、女子大生が活躍する訳でもなく、連続殺人鬼を殺して回る殺人犯をメインにしたノワール小説でもなく、何もかもが中途半端な感じだった。暴走しまくって役立たずな美女の警視も嘘臭い。
現代とは「社会の底が抜けた時代」である。相対主義の時代が終わり、すべての境界線があやふやで恣意的な時代となっている。そのデタラメさを自覚した上で、なぜ社会と現実へコミットメント(深い関わり)していかなければならないのか。本書は、最先端の人文知の成果を総動員して、生きていくのに必要な「評価の物差し」を指し示すべく、「現状→背景→処方箋」の3段ステップで完全解説した「宮台版・日本の論点」である。

過激な発言はともかく、自分の主張をゴリ押ししているだけで、他者を納得させるための根拠があまり書いてないなぁ。著者と思考の方向が同じベクトルの人は楽しめるだろうけど、上手くシンクロ出来ないと拒絶反応を起こしそうである。

「スゴイ人」しか他者に対する感染力が無いと言われても、そもそも駄目人間だらけで、肝心の「スゴイ人」が絶滅危惧種な現状、一体、どうすれば良いのだろう。「スゴイ人」がいないのに、「スゴイ人」頼みでは、そりゃ虐めはなくならないよね。宮台さんはスゴイ人なのだろうから、頑張って愚民どもを感染させて、光輝く方向へと導いて下さいな。

早期教育は役に立たないとか、東大を出ているような人に言われても……。高偏差値大学における質の低下だって、少子化で説明出来るんじゃないの? 受験人口が半減したのだから、定員も半分にしなければ、従来なら入学出来なかったはずの低レベルが混ざってしまうのは当然である。「ガリベン」が「地アタマ」の良い人間に勝てないというが、「ガリベン」にならなければ、ただの駄目な人で終わるのだから、そこを否定するのは如何なものか。要は俺「地アタマ」が良い人でSUGEEEEEE! という訳ですね。

「馬鹿保守」や、規制強化主義者達の抵抗勢力となっている部分は肯定したい。「他人に迷惑をかけなければ何をやってもいいのか」と反論しつつ、他者の権利を侵害しているのは、規制強化主義者達のほうですからね。やはり、筆者の主張するゾーニング方式のほうが、遙かに健全である。追い立てられれば、アングラ化して目に見えなくなる。自分の目が届く範囲が綺麗になったからと安心する規制強化勢力は、全体主義者か、ただの馬鹿である。

ブッシュといえば、アメリカ史上最低の大統領であろう。選挙での誤魔化しもあり、正当性すら疑わしい、9.11テロも阻止できず、あちこち攻め込んで大量殺戮をした最悪な大統領であるが、筆者が見るように、オバマ登場への布石だと考えると、必要悪にも思えてくる。なるほど、ここまで最低最悪な大統領がいなければ、オバマ大統領は誕生しなかったかもしれない。

主観による断言が多く、何故そうなるのかという理由を述べないまま次の題材に飛んで行くのが本書の難点。勝間和代程ではないが、自慢話が多いのも鼻につく。

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