青酸クリームソーダ 〈鏡家サーガ〉入門編
2009年11月26日 読書普通の大学生、鏡公彦18歳。ごくごく平均的な、何気なくコンビニエンスストアに行こうと思って出かけただけの夜。運悪く、最悪なことに目下殺人中の灰掛めじかに出会ってしまう。それを「見て」しまった責任を取らされる公彦。それは、めじかの「殺人の動機」を1週間の期限で探ることだった―。―ここから始める。ここから始まる―。「鏡家サーガ」入門編、遂に幕開け。
説明文に、“入門編、遂に幕開け”とあるのだけど、ここから入門編としてシリーズ化して行くのか? ラスボスの例え話とかもあるので、書く気満々なのかもしれないけど。とりあえず、初期作品があまり売れず、「クリスマス・テロル」でクリスマスじゃなく作家テロルな感じで大暴れしちゃった頃が懐かしいよね(笑)。
まだ普通の大学生な、鏡公彦が殺人現場に居合わせてしまった為、トラブルに巻き込まれて死にそうになる。殺人鬼は灰掛めじか。目撃した責任を取って、自分が人を殺す動機を推理しろと強要して来るのだが、断って逃げようとしたところ、とてつもなく厄介な事になってしまう。
鏡稜子が物語をサブカルチャー方面に脱線させすぎる。今回は脇役なはずなのだが、キャラ立ちしすぎて、灰掛めじかを喰ってしまった気がする。
登場キャラのネーミング・センスとか、異様に長い一人語りとか、ゲーム感覚な殺人とか、だんだん西尾維新に似てきたなぁ……。
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鏡姉妹の飛ぶ教室 〈鏡家サーガ〉例外編
2009年11月25日 読書佐奈を待つもの、それは死か? それとも死か? 誰もが365日分の1日で終わる予定でいた6月6日。鏡家の三女、鏡佐奈は突然の大地震に遭遇する。液状化した大地に呑み込まれていく校舎を彩る闇の色は、生き残った生徒たちの心を狂気一色に染め上げてゆく。衝撃の問題作、『クリスマス・テロル』から3年の沈黙を破り、佐藤友哉が満を持して放つ戦慄の<鏡家サーガ>例外編。あの90年代以降の「失われた」青春のすべてがここにある!みんなで飛ぼう!!
キチガイ・ファミリーの一員にしては、普通っぽすぎる妹キャラだな。主人公よりもさらに下の妹は、やはり鏡家らしい感じの暗黒面が備わっていたけど。
冒頭から、いきなり正体不明の大地震。そしてクラスメイトや教職員の大半が死亡フラグ。さらに、無理やりな液状化現象により、地中に埋まってしまう。そんな液状化現象の具体例、聞いた事も無いんですけど。この学校だけが大きな被害に遭っているので、本当は裏財閥の秘密兵器で、局所大地震でも起こして埋めたという設定とか?
校舎ごと生き埋め状態なのに、妙なキャラばかり生き残って、やっている事は殺し合い。相変わらずキ印入って殺伐とした内容だな。痛みを感じない大量殺人鬼に、それを捕獲しに来た姉弟。個人的に仇討ちしようと乱入するちびっ子ツインテールに、殺人鬼に憑依してしまった妹。さらに、生き残った普通キャラっぽかった同級生も普通じゃなかった。
こうしてみると、一見すると佐奈が一番パンピーっぽく思える。しかし最後がまともじゃない。やはり鏡家の一員だった! もしかして、この妹が最強なのか!? 別の話も含め、複数回死んでいるし、一般人に思えて、実はチート性能なのか?
それにしても、出てくるのはクセのある奴らばかりで、それぞれの一人語りが多すぎる。西尾維新の登場人物並に、お喋りを止めてくれない(笑)。何が「例外編」なのかよく分らなかった。
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水没ピアノ―鏡創士がひきもどす犯罪
2009年11月24日 読書工場で働く単調な日々に鬱々とするヒキコモリ気味の少年。少女を見えない悪意から護り続ける少年。密室状況の屋敷内で繰り広げられる惨殺劇。別々に進行する三つの物語を貫くものは、世界を反転させる衝撃の一文と、どこまでも深い“愛”である。なぜピアノは沈んだのか?著者渾身の戦慄純愛ミステリー。
キチガイファミリー鏡家シリーズの三作目なんだけど、鏡創士がほぼ脇役で、関係無さそうな三つの物語が同時進行。駄目人間一歩手前な感じの青年と、ある研究所で脳を壊されてしまった影響で家族を殺しまくるキチガイ女と、大好きな娘のために敵を抹殺していくキチガイ少年。
鏡創士が脇役としてしか登場しない。他の鏡家の面々と比べたら人を殺しまくったりもしないし、随分とまともな人間に見えるぞ。しかし、最後の最後でバラバラだった三つの物語が一気に纏る。物語の接着剤として、鏡創士が必要だったのか! 物語としては同時進行だったけど、実際のところ時系列は……。
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Rozen Maiden Entr’acte
2009年11月23日 コミックRozen Maidenファンの作家によるアンソロジーコミック。シリアスからギャグまで、気高くも愛らしい薔薇乙女たちを堪能!
アンソロジーにしては、珍しく高水準なのだが、品切れどころかAmazonからも消滅してしまった。と思ったら、いつの間にか復活してるし。(復活しているのに、検索で探してこないDiary Noteのダメっぷりは相変わらずか……。)
何で消え失せたのかと思っていたら、一部に盗作疑惑が生じて黒歴史化したようである。よく似たシーンがあったようなのだが、トレースではなくて模写らしい。Rozen Maidenのアンソロジーな時点で二次創作なんだし、トレースでないのなら、言いがかりに屈服する必要は無いと思うのだけど。
黒歴史化したためか、高騰している。安いうちにゲットしていて良かった。
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古書店アルバイトの大学生・菅生芳光は、報酬に惹かれてある依頼を請け負う。依頼人・北里可南子は、亡くなった父が生前に書いた、結末の伏せられた五つの小説を探していた。調査を続けるうち芳光は、未解決のままに終わった事件“アントワープの銃声”の存在を知る。二十二年前のその夜何があったのか?幾重にも隠された真相は?米澤穂信が初めて「青春去りし後の人間」を描く最新長編。
大学を休学し、古書店を経営する伯父さんの居候となっている青年が主人公なのだが、淡々としたままで盛り上がらない。
ある日、店を訪れた北里可南子に、父が書いた五つの小説を探して欲しいと依頼されるのだが、店主である伯父には内緒で勝手に受けてしまう。お金が必要だからとはいえ、そんな姑息な事をしてもすぐバレるだろうに。
北里可南子の父が遺した小説は、リドルストーリーとなっており、結末だけが欠落している。そして、最後の一行は北里可南子のもとに。この作中内小説が、どれも気取った純文学風の嫌味な文体なのだが、それでも最近の芥川賞候補作なんかよりは完成度が高い。
五編の小説を追っていると、アントワープの銃声と呼ばれる事件の秘密が見えてくる。リドルの解答にもう一段階、秘密が隠されていたりと、なかなか凝っている。しかし、最後の最後まで、真実は明かされないままで終わってしまった。
依頼中に見つからなかった五編目に残された一文「すべてはあの雪の中に眠っていて、真実は永遠に凍りついている」に秘められたかのように、この物語全体が大きなリドルストーリーとなって終わっている気がする。
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秋期限定栗きんとん事件 下
2009年11月19日 読書ぼくは思わず苦笑する。去年の夏休みに別れたというのに、何だかまた、小佐内さんと向き合っているような気がする。ぼくと小佐内さんの間にあるのが、極上の甘いものをのせた皿か、連続放火事件かという違いはあるけれど…ほんの少しずつ、しかし確実にエスカレートしてゆく連続放火事件に対し、ついに小鳩君は本格的に推理を巡らし始める。小鳩君と小佐内さんの再会はいつ―。
小佐内さんと付き合う瓜野は、連続放火事件を追ううち、犯人が近くにいるのではないかと思い始める。事件現場にいたらしい、小佐内さんが非常に怪しい。気になって受験勉強に影響が出る小鳩常悟朗も、別口で犯人を追い始めるのだが……。
状況から見ると、小佐内が非常に怪しい。という事は、絶対に小佐内さんが犯人ではないのだろうと思いつつ……。だって、いかにも怪しい人物がそのまま犯人だったのでは、ミステリーとしてちっとも面白くならないからね。
これは小説だから、穿った見方をして読むのでミスリードはされないけれども、実際に身近で事件が起これば、やはり小佐内さんを疑ってしまいそうだよなぁ。
クライマックス直前、小鳩は教室に呼び出されて、カップル解消。二股三股状態なのを知りつつ、嫉妬もしてくれない小鳩を「最低」呼ばわりして去って行く元彼女。しかし、どう考えても女の方が最低だと思うが。
二股三股女と、それに嫉妬しない無関心男。どちらも人間性には問題あるかもしれないけど、彼我の差は作為と無作為の作為程に隔たりがあると思うけど。殺人で例えたら、積極的に人を殺すのと、溺れている人を助けず見殺しにする位は「最低」に差があるんじゃないの? 小鳩が最低なら、仲丸十希子は最低の最低レベルだと思う。自分が二股三股しておいて嫉妬しろと言うのは、「ああっ、嫉妬されちゃうあたしって素敵!」みたいな、恋に恋する馬鹿女によくあるシチュエイションではあるけどね。
犯行現場に現れた小佐内さん。
続いて現れた小鳩。
さらに、彼女を追って現れた瓜野。
瓜野はすっかり、小佐内さんが犯人だと確信しているのだが、実際のところは……。えっ!? あいつが犯人なのか。
それにしても、、何で小佐内さんは、これほどまでミスリードするような言動を取るのかと思ったら……。そんな理由で怒るのか!? 小佐内さん怖い(笑)。暗黒属性が健在で良かった。かくして、二人は元の鞘に収まるというか何と言うか……。やはり、小鳩&小佐内カップルじゃないとね。
ところで、犯行現場に現れた小佐内さんは、何で別の学校のセーラー服を着ていたのか? 謎のままのような気がするんだけど。あと、小鳩が相手でも、勝手に……しようとしたら怒るんだろうか?
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秋期限定栗きんとん事件 上
2009年11月19日 読書あの日の放課後、手紙で呼び出されて以降、ぼくの幸せな高校生活は始まった。学校中を二人で巡った文化祭。夜風がちょっと寒かったクリスマス。お正月には揃って初詣。ぼくに「小さな誤解でやきもち焼いて口げんか」みたいな日が来るとは、実際、まるで思っていなかったのだ。―それなのに、小鳩君は機会があれば彼女そっちのけで謎解きを繰り広げてしまい…シリーズ第三弾。
中身がちっとも小市民じゃないのに、凡庸であろうとする小鳩常悟朗。傍から見れば、その存在自体が小市民にとって嫌味であるが、方向性の違いから、小佐内ゆきと決別したまま、秋期限定。
前回、一年ブランクが開いていたので、そのまま三年になっているかと思ったが、二年の秋から始まる。そして、そのまま連続放火事件に絡んで、ぐるりと一周。今回は小鳩視点だけでなく、新聞部に所属する下級生の瓜野視点でも物語が進むので、波に乗るまで少し読みにくい。
冒頭で小鳩は差出人不明の手紙に呼び出されるが、指定場所で待っていたのは、名前すら覚えていないクラスメイト。そこでいきなり、フラグ成立! ええーっ、小佐内さんじゃないのか……。
一方、夏に起こった誘拐事件の真相に迫ろうとする新聞部の下級生、瓜野と絡んで、小佐内さんもフラグ成立! お互い、別の相手と付き合い始める事になるのだが……。
この巻でようやく、生徒指導のキチガイうんこ教師が登場。やはり糞教師だった(笑)。夏場の誘拐事件を暴けなかった瓜野は、クラスメイトの氷谷に情報を貰った連続放火事件を追い始めるのだが、この糞教師に横槍を入れられてしまう。しかし、その直後に人事異動が! 単なる偶然なのかもしれないけど、これすら、小佐内さんが何かやったんではないかと思いたくなるよなぁ(笑)。
せっかくカップル成立したのに、彼女そっちのけで日常の謎解きに忙しい小鳩。そして、謎を解かれているのに、ワトソン役どころか、一般人程度にも反応してくれない相手。謎解きにすら気がついてくれないレベルだと、さすがに虚しいよね。
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バイト雑誌を立ち読みしていたビンボー大学生・結城は、ひとりの少女から声をかけられて……。この夏、鮮烈なミステリーがはじまる。
表紙は可愛いのだけど、随分と殺伐とした内容だった。ノワール小説とかメフィスト系統の話が好きな人は気に入るかも。
誤植したとしか思えない金額が書かれた怪しいバイトに参加した十二人。ある者は半信半疑で、ある者は怪しいと思いつつ、ある者は切羽詰ってと、それぞれが様々な事情を抱えながら集められる。
コンビニには似つかわしくない金持ち令嬢風の女に、バイトを探していると相談された主人公。彼が求人情報誌を捲っていたところ、掲載された広告の中に、一一二0百円という怪しげなバイトがあった。
1120円の誤植だと思いつつ応募してみたのだが、本当に時給11万2千円だという怪しい話だった。集められたのは十二人。その中には、コンビニで出会った金持ち風の美女もいた。
とても危険なバイトのように思えるのだが、その内容は契約するまで一切教えられない。身の危険を感じつつ、仕事をする事に決めた十二人が連れて行かれたのは、地下に造られた暗鬼館という場所。
各自に用意された鍵がかからない寝室と、箱の中にある人殺し用の道具。参加者は、ここで人を殺したり、殺人犯を見極めたりすれば破格のボーナスが上乗せされると説明される。お互い、疑心暗鬼に陥る中、一人ずつ何者かに殺されて行く。
舞台装置と殺害方法、謎解きが優先で、メフィスト賞っぽい嘘臭さを感じる。ゲーム感覚な内容だが、推理するのが好きで、古典的名作も読みこなして来た人なら楽しめるのかも。
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D.C.~ダ・カーポ~ダブルサイドストーリー Vol.2
2009年11月17日 コミック朝倉音夢と白河ことりの視点からストーリーが展開していくアンソロジー・コミック。新ヒロイン・アイシアを加えて、おなじみのヒロインたちの一夏の物語が描かれていく。
100円だったので、もう一冊。これも、Vol.1とさほど変わらず。しかし、右にいる人知らないし……。誰!? ゲームやった事ないからほとんど内容を把握してないのに、何で買ってるんだろう。……100円だったからか(笑)。それにしても、妹キャラ強いな。アニメでも勝ち組になってるし。
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D.C.~ダ・カーポ~ダブルサイドストーリー朝倉音夢&白河ことり
2009年11月17日 コミックたにはらなつき・あらいぐま・木場智士・森崎くるみ・新匠・須田さぎり・内村かなめ・近永早苗・・・マルチサイドで楽しめる、新機軸のコミック・アンソロジー!
100円だったので買ってみた。アンソロジーだから絵柄は期待していなかったが、激烈に下手なのは混じってなかった。こういうのはジャンプの一番最後にあるような、落書き級地雷が入っているものだけど、無くて良かった(笑)。それなりに自分の本を出している人や、エロマンガ家も混じってた。
それにしても、何で表紙に出てる二人だけの話になっていて、他キャラが追いやられてるのかは謎である。
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古今黄金譚(平凡社新書002)
2009年11月14日 読書みっちゃんは、なぜなめちゃったのか? 人はなぜ尾籠な話が好きなのか? 国文学者リンボウ先生が古典文学を解説しつつ、日本人の糞尿大好き的ココロの奥深い謎に迫る。
黄金譚とは何なのか、疑問に思うかもしれないが、要はアレやコレの事である。って、サブタイトルに「古典の中の糞尿物語」と書いてあるので、別に感が鋭かったり、そういう趣味の人じゃなくても分るか(笑)。
お子様には肛門期というものがあって、やたら「うんこ」に反応する時期があるとされるが、大人だって「私は下品ではありませんわよ」というポーズを取っているだけで、実際はその手の話が好きな筈である。そして、それは現代人だけはでなく、昔の人も同じで、その手の話題で盛り上がっていたのだと思う。
例えば、宇治拾遺や今昔で、好きな相手に相手にされない男が、だったら嫌な部分を見て嫌いになってしまおうと、女の糞尿を取ってくるよう家来に命じる話が出てくる。ところが、手に入れてみると臭いどころか大変香ばしい。思わず男はそれを……。
実は●●●を食してしまったという話ではない。男の行動を先読みした女が、食べ物でソックリの偽物をこさえていたとかいうオチだったりする。それにしても、古典文学にこんな話が入っているのに驚く。
こういう、シモな話がたくさん出て来るのだが、リンボウ先生が書いているだけに、通常の三倍は面白くなっている気がする。
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