さよなら妖精

2008年7月6日 読書
ISBN:4488451039 文庫 米澤 穂信 東京創元社 2006/6/10 ¥780
一九九一年四月。雨宿りをするひとりの少女との偶然の出会いが、謎に満ちた日々への扉を開けた。遠い国からはるばるおれたちの街にやって来た少女、マーヤ。彼女と過ごす、謎に満ちた日常。そして彼女が帰国した後、おれたちの最大の謎解きが始まる。覗き込んでくる目、カールがかった黒髪、白い首筋、『哲学的意味がありますか?』、そして紫陽花。謎を解く鍵は記憶のなかに――。忘れ難い余韻をもたらす、出会いと祈りの物語。気鋭の新人が贈る清新な力作。

ユーゴスラヴィアからやって来た女の子は、この作品で登場した。別の作品を読む前に、ガセネタで釣られたからなぁ(笑)。まあ、この物語に出てきたのはマーヤさんで、クドリャフカさんじゃなかったけど。

ユーゴスラヴィアという国が解体し、世界から消滅していく頃の物語だった。今の中学生が、まだ生まれていない時代じゃないか……。日本にやって来たけれども、アテにしていた知人が死んでいて路頭に迷っていたマーヤさんと雨の日に出会った二人の高校生。彼らは旅館をやっている同級生に頼んで、マーヤさんを住まわせる事に成功する。

物語が始まった時点で、すでにマーヤさんは帰国しており、過去を振り返る形で物語が進む。過去パートは日本を学ぼうとするマーヤさんとの何気ない日常になっている。現在部分では、危険地帯となってしまったユーゴスラヴィアの、一体どこにマーヤさんが戻ったのかを推測するのだが、過去のさりげないシーンや言葉がキーワードになっていたりするので、ちゃんと読まなければならない。

ユーゴスラヴィアの事など何にも知らない高校生視点で物語が進むのだけれども、読み手のほうが、卒論の関係で相当深い部分まで資料を読みこんでいたので、途中に鏤められたヒントもほぼ判ってしまったのが……。当時の情勢を鑑みて、こういう結末になりそうな気はしていだのだけど……。

参考文献リストの書籍は、語学関係以外全部読んだ事あります。この物語は、ユーゴスラヴィアって何? それどこ? ぐらいに知識が無い人のほうが楽しめるかもしれないね。

人類の愚かさ故、人類が存在する限り、戦争が根絶される事は無いのだろうな。

犬はどこだ

2008年7月5日 読書
ISBN:4488017185 単行本 米澤 穂信 東京創元社 2005/7/21 ¥1680
何か自営業を始めようと決めたとき、最初に思い浮かべたのはお好み焼き屋だった。しかしお好み焼き屋は支障があって叶わなかった。そこで調査事務所を開いた。この事務所“紺屋S&R”が想定している業務内容は、ただ一種類。犬だ。犬捜しをするのだ。それなのに、開業した途端舞い込んだ依頼は、失踪人捜しと古文書の解読。しかも調査の過程で、このふたつはなぜか微妙にクロスして―いったいこの事件の全体像は?犬捜し専門(希望)、二十五歳の私立探偵・紺屋、最初の事件。『さよなら妖精』で賞賛を浴びた著者が新境地に挑んだ青春私立探偵小説。

エリートコースを歩むはずだった主人公は、病気により挫折を経験する。東京から育った町へと戻り、リハビリを兼ねて探偵業のようなものを始める。本当は、単なる動物探しをするつもりだったのに、舞い込んできた仕事は、行方不明になった美女を探してくれというものだった。

探偵になったのを聞きつけた後輩が、歩合で良いから雇ってくれと押しかけてきた直後に、古文書の謎解きという二つ目の依頼が舞い込む。一見すると無関係な二件の依頼だが、途中で繋がって行くのだった。

大抵の場合において、こういう物語は、最後にサスペンスドラマ物のような予定調和の臭い結末に終わるものだが、「犬はどこだ」は違っていた。悪党が滅びる良い結末で、個人的にはこういう結末のほうがスッキリする。悪党天国な日本においては、例え法律で禁じられていても、被害者が自力救済を行い「正義」を貫くしかないだろう。
ISBN:4163265201 単行本 橘 玲 文藝春秋 2007/11/28 ¥1650
「相談無料。地獄を見たら亜玖夢へ」 新宿・歌舞伎町裏の「亜玖夢コンサルタンツ」。異形の博士が学識の全てを傾け相談者の悩みを解決。ブラックユーモア溢れる一話一理論。

地獄に叩き堕とされる感じは「笑うせえるすまん」のノリだが、読後にやるせなさが残らないのは、やはり災難に遭う被害者の大半が、ロクデナシだからだろう。ロクデナシじゃない人も出てくるが、その場合には救済策が用意されている。

堕ちる人間の悲劇と、堕とす側の悪意を、経済理論を使って解説している。普通に考えたら美味い話なんて転がっている筈も無いのだが、こうも騙される人間が多いとは、やはりこの世は馬鹿だらけなのだろう。
ISBN:4270003189 単行本 小島 てるみ ランダムハウス講談社 2008/4/3 ¥1575
ある日、母が「男」になった。それが始まりだった。以来、シルビオの世界は少しずつゆがみはじめた。人に言えない悪癖にとりつかれ、他者と交わることもできなくなったシルビオ。そんなとき、背徳と情熱の町ナポリで男でもない女でもない、謎めいた大学教授に出会う。教授の出す奇妙な課題はさらに尋常ならざる世界へとシルビオをいざなう……。年老いた女装街娼や去勢された男性歌手、伝説の人魚や両性具有の神たちが織りなす哀しくも優しい異形の愛の物語。

幻想的で妖しげな雰囲気。また凄い新人が出てきた。やはり、物書きは努力じゃなくて才能だと思う。面白くない作家は、何作書いてもツマラナイ。次々と新しい才能が出てくるので、作家という職業も厳しいよなぁ。

母が失踪し、男となって戻って来た。母を失った青年は、女装して町に出て、襲われかけたところを真性半陰陽の教授に助けられる。トランスセクシャルだけではなくて、男にも女にも分類出来ない人まで出て来るが、倒錯気味な萌えブームに乗っかっただけの駄作とは違い、カストラート、ギリシャ神話、人魚伝説と、使われる題材も素晴らしい。
ISBN:4152089067 単行本 小林 泰三 早川書房 2008/03 ¥1785
科学文明と無縁に育った青年が天空にのびる“天橋立”で出会った女の子は、とびきり可愛い宇宙旅行の案内係だった?無垢な若者が初体験するめくるめく恋と大気圏離脱を描いた表題作、“ロボット工学の三原則”の間隙を突く「灰色の車輪」、男女の権利格差が逆転した社会の秘密を描く「性交体験者」、異星人との驚くべき最悪のコンタクトが語られる「三〇〇万」等、バラエティに富んだアイデアを論理的に突き詰めた、全8篇収録の奇想SF博物館。『海を見る人』に続く傑作ハードSF短篇集。

『海を見る人』ほど奇想天外な異世界っぽいSFではなくて、普通になっている。表題作であり、表紙にもなっている「天体の回転について」は、遥か未来、すでに科学文明が終わってしまい、軌道エレベーターが遺跡化している時代の物語である。科学技術を失い、後退してしまった世界の少年が軌道エレベーターに乗ってしまい、ホログラムとして現れるエレベーターガールに惹かれつつ、そのまま宇宙旅行をする事になってしまう。この話は「宇宙旅行はエレベーターで」を読んでいると、非常に判りやすい。

「銀の船」は人面石の話が出てくるので、すっかり火星探査隊の近未来物だとばかり思っていたら、その結末にしてやられた! 小林泰三らしい作品もあるけれども、『海を見る人』と比べたら無難なものが多いかな?

 

2008年6月27日 読書

ISBN:4093862117 単行本 白石 一文 新潮社 2008/4/24 ¥1050
白石一文が問う、00年代「人間失格」の書。人間は、どこから来て、どこに向かうのか--。生きがたい思いを漫然と抱くすべての人に、作者から突き付けられた八万文字分の言葉の爆弾。

著者の知り合いで、他界したK***氏が遺した文章という事になっているが、どうやらそれは設定上そうなっている様である。K氏による独白だけがひたすら続くので、普通の小説だと思って手に取るとダメージが大きいと思う。

しかし、書いてある事は、その辺の教祖様やエセ知識人の戯言と比べ、真実に近いと思うのだが。こんなに酷い世界を創り上げた何者かは、それに意思があるかどうかに関わらず、きっと、「神」などと崇めるような存在ではなく、ひたすら邪悪な何かに違いない。

みんな元気。

2008年6月25日 読書
ISBN:4104580023 単行本 舞城 王太郎 新潮社 2004/10/28 ¥1470
空飛ぶ一家と家族の交換。額に書かれた自分の名前。バットでボコボコ僕のプリウス。学校襲撃絶対ノンノン!夢と嘘と優しさと愛と憎しみと悲しみと平和と暴力。どうして目に見えないものばかりが世界に満ちているのだろう?

文庫本しか出ない。さすが楽天クオリティ! これに関してはノートの検索力が原因じゃなくて、楽天クオリティっぽい。楽天で検索しても文庫本だけしか出なかったので。

実際に読んだのは単行本。違いに拘るのは、内容が若干異なるからである。単行本収録作が分けられて「みんな元気。」と「スクールアタック・シンドローム」の二冊になり、収録短編も単行本未収録のものが増えていたりする。なので、普通に読むなら文庫二冊で良いと思う。我が町の図書館には無いので、単行本を借りてきましたけど。

半分くらいは表題作の「みんな元気。」だが、幻想と妄想が乱れており、しかも文体が女子高生が書いた日記みたいになっているので、非常に読みにくい!! 姉が寝ている最中に浮かんだり、空から攻撃してきた飛ぶ家の家族が妹を攫って、代わりにその家の弟を置き去りにして、強制的に家族を交換されたりと、最初から最後まで意味不明系統。

他の短編も意味不明なのばかりで、キチガイがたくさん出てくる。
AmazonのWebServiceの仕様変更により現在対応中です。

 商品レビューはこちらをお使いください。

この機能は、β版(試験中)につき、うまく動作しない可能性があります。
この機能は、β版(試験中)につき、うまく動作しない可能性があります。
この機能は、β版(試験中)につき、うまく動作しない可能性があります。
この機能は、β版(試験中)につき、うまく動作しない可能性があります。
この機能は、β版(試験中)につき、うまく動作しない可能性があります。
この機能は、β版(試験中)につき、うまく動作しない可能性があります。
この機能は、β版(試験中)につき、うまく動作しない可能性があります。
この機能は、β版(試験中)につき、うまく動作しない可能性があります。
この機能は、β版(試験中)につき、うまく動作しない可能性があります。
この機能は、β版(試験中)につき、うまく動作しない可能性があります。
この機能は、β版(試験中)につき、うまく動作しない可能性があります。


……さすがに嫌気がさしてきました。

×AmazonのWebServiceの仕様変更により現在対応中です。
○AmazonのWebServiceの仕様変更により現在未対応です。

×この機能は、β版(試験中)につき、うまく動作しない可能性があります。
○この機能は、β版(試験中)ですが、うまく動作する可能性もあります。

コピペだからなかなか進まないものの、ここまで楽天検索が使えない仕様だと、もはや本格的にノイエラント(新領土)を使うしかないかもね。

だんだん避難先じゃなくなって来た気がするバックアップ先。
http://blitzkrieg666.blog17.fc2.com/
ひたすらコピペ中。

密林使えないまま3ヶ月頑張ったけど、そろそろ限界……。
ISBN:4785926279 コミック 塩野 干支郎次 少年画報社 2006/3/27 ¥550

ブロッケンの血族。それは錬金術によって生み出された人工魔女の一族。しかし、主人公は男! 最近、男なのに魔女っ子物なのが増えているけど、これも腐女子パワーの影響かね!?

男なのに、無理やり魔法少女(女装?)として戦わされる健一。変身後のコスチュームからして、かなりの羞恥プレイだが、怪しげなメイド喫茶に潜入したり(当然、メイド服)、女学院に潜入したり(当然、女子高生の姿)、挙句の果てには女性アイドルとして強制デビューまでさせられてしまうという、この手の路線にありがち要素を全て詰め込んだ感じの強烈な一冊である。

敵もひたすらおバカなキモキャラだらけで、低次元の戦いに終始しているので、主人公がますます哀れに見えてくる。
秀英中学2年生の立石亜由を慕う転校生の佐倉仁菜。仁菜はなんと魔法王国から留学してきた魔女っ子だった! 秀英中を舞台に、亜由と魔女っ子仁菜、そして男の子たちが繰り広げるラブ・コメディ。

DVD全6巻。

名前が「ウルトラマニアック」なので、超ヲタっぽい秋葉原系統のものすごく濃いアニメなのかと思ったら全然違った。ただの魔女っ娘物じゃないか(笑)。名前に騙されて「ナースウィッチ小麦ちゃん」級の凄いやつだとばかり思っていたのは内緒。

魔法の国から来たニナが……。あれ? 何を集めるんだっけ? 観たのが昔だから忘れた(笑)。―――検索中――― 5つのストーンをすべて集めることができたら魔法王国で最高の魔女になることができるらしい。

しかし、黒魔術大好きなライバル魔女の織原マヤも人間界に転校してきて、ストーンを狙うのだ。ちなみに、原作とアニメは中身が違って、原作だとマヤは出て来ないらしい。

それにしても、21世紀の魔女はハイテク化が進んでいる。乗るのは箒じゃなくてエアボードだし、魔法を発動させるのもバトンやステッキじゃなくて携帯パソコンだし。

充分に発達した科学技術は、魔法と見分けが付かない。(クラークの三法則)

すでにエアボードは見分けが付かないよな。ウルトラマニアックだと魔法で飛んでいるけど、バック・トゥ・ザ・フューチャーだと科学技術で飛んでいるし。

13ゴースト

2008年6月21日 映画
DVD ソニー・ピクチャーズエンタテインメント 2003/02/26 ¥3,990
母親を亡くし、失意のどん底にあるアーサーの家族に舞い込んだ突然の幸福。それは音信不通だった大富豪の叔父からの遺産相続だった。想像以上の“豪邸"を目の前にし、以前のような明るい生活を取り戻せるかのように見えた家族。だが彼らは気づいた。豪邸は地獄の扉を開く暗黒の儀式のために設計された巨大な装置であり、凶暴な12人の悪霊たちの巣窟だったのだ…。出口なし。逃げ場なし。やがてそこは、死者と生者の凄惨なバトル・グラウンドと化していく!

楽天反応が非常に使えなくて、かなり萎え気味だが、「パンが無いならケーキを食べればいいじゃない」という感じのやけくそモードなプラス思考で逝ってみまつ……。読了した本をネタに使えないとハイパー萎えます。無料とはいえ、ストレス溜まるので、そろそろ修正して(TT)

とりあえず、「本が駄目なら映画があるじゃない」という事で。
べ、べつに映画レビューをやりたくて書く訳じゃないんだからねっ!!

映画はそこそこ反応してくれそうだとはいえ、最近観てないからなぁ。過去に観て書かなかったものを頭の引き出しの中から出してきて……。とりあえず、このお化け屋敷物は書いてないらしい。書いてない時点で、ショボい気が(笑)。

遺産相続でお屋敷を貰ったら、妙なカラクリだらけで、おまけに捕獲した幽霊が暴れまわっていて殺されそうになるというホラー。ホラーだけど、結構アホっぽいから怖くは無い。幽霊を捕獲するカラクリが凄くて、映像も綺麗で、だけど肝心の物語はショボい感じで、あまり印象に残らない映画だった。
 
 
 
評価:B
とりあえず、お化けカラクリ屋敷が凄い。ストーリーはどうでもいい感じ。

 

2008年6月20日 読書

 

2008年6月19日 読書

ISBN:4150114188 文庫 ロバート・J・ソウヤー 早川書房 2002/10 ¥987
人類は初めてエイリアンと遭遇した。四光年あまり彼方のアルファケンタウリに住むトソク族が地球に飛来したのである。ファーストコンタクトは順調に進むが、思いもよらぬ事件が起きた。トソク族の滞在する施設で、地球人の惨殺死体が発見されたのだ。片脚を切断し、胴体を切り裂き、死体の一部を持ち去るという残虐な手口だった。しかも、逮捕された容疑者はエイリアン…世界が注目するなか、前代未聞の裁判が始まる。

飛来した人類外の何者かによる宇宙船。中から出てきたのは、人類とはあまりにも異なる姿をした、αケンタウリ星系のトソク族だった。

このSFは普通じゃない! ファースト・コンタクトを描いた物語に留まらず、殺人事件が発生して、宇宙人が容疑者として逮捕されてしまうのである。荒筋を聞いただけだと、単に殺人犯を普通の人間から宇宙人に置き換えただけのゲテモノみたいに思えるが、さすがソウヤー、ただでは終わらない。

宇宙人が容疑者という前代未聞の裁判だけでも面白いのだが、物語の終盤になって、恐るべき真実が明かされる。単に容疑者を宇宙人にしただけの法廷小説じゃない。この凄さは実際に読んでみないと判らないだろう。
ISBN:4152089237 単行本 COCO 早川書房 2008/5/23 ¥1050
早川さん、帆掛さん、岩波さん、富士見さん、国生さん、おなじみ本オタクの面々がくりひろげる、本と読書の日常と非日常。お値段そのままでマンガ大増量! ハッキリ申しましてかなりお得です。

オールカラーのマンガであるが、侮ってはいけない。これは本読みのためのマンガであり、普段マンガしか読まないような人々が100%楽しむ事は出来ないだろう。ネタがネタだけに、ちょっとは読書もします的な人ではなくて、ヲタ濃度が高ければ高いほど、真価を発揮するタイプのマンガになっている。

全ジャンル網羅するような活字中毒ならば、文句なしにお勧め。SF者、ホラー者、ラノベ者あたりも、それぞれの守備範囲で反応出来るだろう。新キャラにてん子というのが出てくるが、正式名称Tindalosと書いてあると思ったら……。なんか、人外まで出てくるようになったね(笑)。

それにしても、かなりディープなネタが鏤められている。この作者は凄い! 作者自身がSF者でホラー者でラノベ者で文学者でなければ、ここまで広範囲にネタを入れられないだろう。かなりの量を読み込んできたのだと思う。

小さい子みたいなティンダロスの猟犬が、風呂場でダゴン人形を使って遊んでるシーンは笑える。ラストの過去改変は、あれっ? 目から汗が……。
ISBN:4048735543 単行本 小林 泰三 角川書店 2004/8/31 ¥1680
吸血鬼最強と怖れられたヨブ。少女・ミカとの約束で自らに血を吸うことを禁じた吸血鬼―。娘と妻の復讐のため、吸血鬼を退治する組織「コンソーシアム」に入った人間・ランドルフ―。吸血鬼を食べ、己の肉体に吸血鬼の臓器を収め、さらに強力なものへ変身する、追跡者・J―。ミカを守ろうとするヨブ。新兵器に身を包んだランドルフ。さらに強力になったJ。三つ巴の戦いが始まる。炸裂する、書き下ろし!ハード・SF・アクション・ホラー・小林泰三ワールド。

ハードバイオレンスホラーSF小説といった感じか。吸血鬼物なのに、重火器や新兵器が出まくるので、SFっぽくなっている。少女を守る最強の吸血鬼ヨブ、妻と娘を殺されて復讐に燃えるランドルフ、人類と吸血鬼の敵ストーカー。三つ巴の戦いが繰り広げられる。

別の作家が作ったキャラを捨て駒にするのは微妙であるが、物語としては楽しめた。全貌が語られないまま終わってしまうので、少女の役割がよく判らなかった。結末が、ちょっとB級的すぎる。
ISBN:4270003359 単行本 ブラッドリー・C・エドワーズ, フィリップ・レーガン ランダムハウス講談社 2008/4/23 ¥1890
2029年、宇宙エレベーターが実現する。アーサー・C・クラーク、本書を大絶賛!

SFじゃなくて現実としての話であるが、SFに入れておいたほうが参考にしやすいので。
 
 
えっ!? エレベーターなんかで宇宙まで行けるの? と思ってしまうが、本書を読めば、それが決して夢物語ではないという事がよく判る。かつては軌道エレベーターと呼ばれていたもので、今では宇宙エレベーターと呼ばれるのが普通になって来た。

SFに出てくるエレベーターがバベルの塔構造になっている場合が多いので、どうしてもそのイメージで捉えてしまうのだが、実際に計画されているのは蜘蛛の糸構造のものである。エイリアンテクノロジーでも使わない限り、現段階では人類がバベルの塔方式の宇宙エレベーターを建造する事は出来ない。

蜘蛛の糸でも無理なのではと思うかもしれないが、バベルの塔のように巨大な重量を地上で支えるのではなく、宇宙から梯子を垂らす状態になるので、十分実現が可能なのである。

現在、垂らすための糸として使用可能なカーボンナノチューブという新素材が発明された事により、夢物語から一気に現実の物となりつつある。但し、どこにでも建造可能という訳ではなく、地球上における気象条件等を加味した結果、その予定地はある程度決まっている。

それにしても、物凄い予算が必要なのでは? と思っていたら、著者は2兆円程度と試算している。たったの2兆円!? それなら、ビル・ゲイツ級の金持ちなら1人で出資出来る金額ではないか! 2京円くらいはかかるのかと思っていたのに……。どこかの馬鹿な島国がドブに捨てたお金で何百本も宇宙エレベーターが造れるじゃないか……。

新素材の登場により、技術的にはほぼ可能な状態が整った。(実際には、理論値まで新素材の強度を高める必要があるが、これは数年でクリア可能だと考えられている。)予算も、国家どころか人によっては個人で賄える金額。後は、政治的な調整と駆け引きだけである。宇宙エレベーターを所有した勢力が、21世紀の勝者となるので、利害調整は絶対に必要となる。国家ではなく勢力としたのは、巨大企業や投資家でもその利権を獲得出来る可能性があるからである。

宇宙エレベーターが出来れば、世界はどう変わるのかという点についても言及している。現在、宇宙へ行くためにかかるコストの98%は打ち上げにかかっている。これがなくなるので、98%オフの値段で宇宙へ行けるようになる。材料も燃料もエレベーターで運んでから使う事が出来るので、宇宙ステーションやコロニー、太陽光発電施設を簡単に建造出来るようになるし、月や火星まで探査船や移民船を飛ばせるようになる。これにより、人類の版図は木星まで広がると予想される。(宇宙エレベーターまでのテクノロジーだと、土星より遠くは手が届かない訳だが、それでも地面にへばりついているだけの現段階からすれば、格段の進歩である。)

月へ到達してから四十年近く経ても火星にすら行けないのだから、もうすっかり諦めていたのだが、自分が生きているうちに人類が火星よりも遠くに行ける可能性が出て来たのは驚きである。

どこかの島国がドブに捨てたお金でエレベーターを造っていれば、今頃は借金帳消し、エネルギー問題解決、月や火星の資源取り放題だったのにな(笑)。まあ、アダルトゲーム規制でピーピー啼くような小物政治家しかいない国では不可能ですが。

実際に造る順番は本書予測の通り、アメリカ、アメリカ、EU、ロシア、中国、インドで、日本はその後になるのだろうな。アメリカが二回なのは、間違いではなくて、最初の二本はアメリカだろうという予測である。

アメリカが最も覇者に近い。EUも恵まれている。ロシアは立地的に不利で、中国とインドは技術力と立地に難あり。日本は、立地、技術力、政治力、全てが問題となるだろう、ご愁傷様。

少女ノイズ

2008年6月13日 読書
ISBN:4334925898 単行本 三雲 岳斗 光文社 2007/12/14 ¥1785
ミステリアスなヘッドフォン少女の美しく冷徹な論理。欠落した記憶を抱えた青年と心を閉ざした孤独な少女。彼らが出会った場所は無数の学生たちがすれ違う巨大な進学塾。夕陽に染まるビルの屋上から二人が見つめる恐ろしくも哀しい事件の真実とは――。気鋭の作家が送る青春ミステリーの傑作!

表紙に釣られて読んでみた。銀色なのはかっこいいのだが、ラノベ風なセーラー服美少女の絵は、借りる時、少し恥ずかしい。一応はミステリーなのだが、本格的なものではなくて小さく纏ってしまい、盛り上がりに欠けるのが惜しいところ。

主人公のほうが聞き役で、しかもある意味、奴隷扱い。ヒロインのほうが天才美少女で名探偵役だった。事件を解決する際の解答部分がアッサリしすぎなので、ちょっとキャラクター小説寄りか。主人公が他の女と喋ったりすると、機嫌が悪くなるヒロイン、ちょっとツンデレ要素ありか。続編作ってデレ部分も見せて欲しいところである。

白蝶花

2008年6月12日 読書
ISBN:4103038322 単行本 宮木 あや子 新潮社 2008/02 ¥1470
抱いて。ずっと忘れないように――戦中の日本で恋に命をかけた女たちを描く純愛ロマン。昭和十九年、福岡県知事の屋敷に奉公にきた少女・千恵子。書生の政吉と恋に落ち初めて結ばれた途端、政吉は徴兵されてしまい……千恵子の波乱に満ちた人生を中心に、戦前・戦中・戦後の激動の日本で、それぞれの愛を貫き通した5人の女たちが織りなす恋物語。デビュー作『花宵道中』で圧倒的支持を得た著者による注目の最新作!

二作目がイマイチだったが、これは持ち直した感じである。戦前から戦後にかけてのロマンス。大きな流れになっているのではなくて、基本的には独立した短編が4つ。ハッピーエンドで終わらないものが多い。平成の世では完璧に女性のほうが勝ち組だけど、昔は女も苦難の時代があったんだね……。

それぞれ別の時代、別の話で主人公も違うけれども、他の話の人物が脇役で絡んでくるので微妙に繋がっていて面白い。

< 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 >

 

最新の日記 一覧

<<  2025年6月  >>
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293012345

お気に入り日記の更新

この日記について

日記内を検索