ISBN:4163249605 単行本 藤原 伊織 文芸春秋 2007/09 ¥1,700
堀江の無二の友人・柿島が殺された。その謎に満ちた死に疑問を持った堀江は調査に乗り出す。そこには流通業界に横たわる新たな闇があった! 著者の遺作となった長篇ミステリー。『別冊文芸春秋』連載に加筆修正し単行本化。

てのひらの闇の続編で、遺作である。物語は完結しているのだが、途中まで加筆訂正中だったので、本来ならさらに良い出来になっていたかもしれない。てのひらの闇は、確か読んだはずなのだが、すっかり忘れている……。しかし、出てきた登場人物を使った別の物語(時系列としては数年後)なので、単品で読んだとしても全く問題は無い。

何者かに襲われ、病院に運ばれたものの死亡してしまった柿島の為、堀江が真相を究明する。警察に睨まれながらも、一銭の得にもならない調査を続ける堀江。やがて見えてきたものは……。

藤原伊織作品はハッピーエンドで終わらないのだが、これは事件に巻き込まれた当事者ではなく、被害者の友人だった男の視点で物語が進むので、他作品のようなやるせなさは少ない。何らかの企業犯罪が絡んでいるのかと思っていたら、最後はあまりにもあっけない幕切れ……。

これで全作品コンプリート。もはや新作を読む事が出来ないのは悲しい。途中で終わってしまった「遊戯」の結末が知りたかった。

気になる部分

2008年3月1日 読書
ISBN:4560720878 新書 岸本 佐知子 白水社 2006/05 ¥966
眠れぬ夜の「ひとり尻取り」、満員電車のキテレツさん達、屈辱の幼稚園時代-。ヘンでせつない日常を、強烈なユーモアとはじける言語センスで綴った、抱腹絶倒のエッセイ集。

気になった部分は、自分で自分の髪をバッサリ切ろうとしている女の子の表紙。中身とは何の関係も無い、ただのイラストだったが。髪がどうなってしまうのかは、表紙を捲るとすぐに判る。中身とは全然関係無い毛ど。

全然関係無い毛どって……。相変わらずMSの某ソフトは電波級の誤変換をしてくれるなぁ。売れなかったお笑い芸人の悪霊でも憑依したのかと思うようなボケっぷりに敬意を表して、あえて修正せずにこのまま置いておく。

名翻訳家によるエッセイなのだが、極めて濃い味付け。適当な人に適当に書かせた日記レベルではないのは幸いであるが、ここまで狙ってネタを作られてしまうと、面白くてもさすがに引いてしまう。

日常なのに普通の人が出会わないような奇想天外事件に遭遇してしまうというのがエッセイの面白さであって、理想的なのは原田宗典。話作ってるんじゃないかと疑いたくなるギリギリのラインを攻められるのは堪らないのだが、ここまであからさまにネタ作られると、エッセイの範囲を超えて小説に片足踏み込んでしまうので反則である。

まあ、チラシの裏にでも書いてくれたら良い様な、どうでもいい個人の日記みたいな三流エッセイを読まされるよりは断然面白いけどね。

フラミンゴの家

2008年2月29日 読書
ISBN:4163266909 単行本 伊藤 たかみ 文芸春秋 2008/01 ¥1,400
南口の「さかえ通り」商店街で、実家のスナックを手伝うバツイチ男。元妻が入院したため、離婚以来会っていなかった思春期の娘を預かることに。だがなかなか親子の距離は縮まらず、それどころか娘に手をあげてしまう…。

芥川賞受賞後の長編第一作目。

かつての妻が病に倒れ、長い間会っていなかった娘を預けられてしまった男。商売人の家庭に生まれ、出戻った実家が経営するスナックを任されているのだが、自分に商才が無い事には気づいている。

娘が打算的で、最初は子供らしくない凄く嫌な子に見えるのだが、両親が商売人の血筋なので、仕方が無いかもしれない。最初は、母が助からなくても父のところにだけは来ないと思うのだが、この性格は父の実家によく合うと思う。

悪化の一途をたどる元妻の病状。相手の恋人はここ一番という時に役立たずで、意外にヘタレだった。父は駄目人間っぽいけれども、やる時はやる。でも、一番強かったのは、自分の死期を悟り、娘のために全てを準備していた母親だろう。
ISBN:4047150134 コミック 水無月 すう 角川書店 2007/12 ¥567

続けて2巻。
2巻はちゃんと画像出たね。

表紙のデザインが綺麗なのに釣られてしまった訳だが、絵柄はちょっと微妙だなぁ。ヘタウマというか、微妙にラインがおかしかったりするし、目の部分は瞳が入っていない無表情っぽい独特の描き方だし、時々手抜きっぽい二頭身風キャラになっているし。

カードでパンツを爆発させたりと、相変わらず中途半端に下品なネタ。パンツ大爆発事件で家がなくなり、美人生徒会長の家に宿泊させてもらえば、単なるお嬢様ではなくて、そこは極道ボスのお屋敷。お約束で入浴中の生徒会長専用湯船に迷い込み、殺されそうになる少年。

こんな感じで高性能エンジェロイドがいながら、中途半端なエロとラブコメでお茶を濁しつつ……。ラスト付近で電子戦用エンジェロイドが攻撃してきてバトル展開!? どっちつかずになりそうだから、やるなら最初からその路線にして欲しい。

これ、夜店の話で別作品JUDASの登場人物が出てきているのだが、読んでないのでいまいち反応出来ず。
そらのおとしもの 1
ISBN:4047139734 コミック 水無月 すう 角川書店 2007/09/26 ¥567

またしても画像が出ませんよ! 
一体、どうなってるんだ!?

常に地球上空を移動し続ける謎の影。そこには何かがあるはずなのだが、誰もその正体を知らない。その存在に気づいたオカルト好きでマッドな先輩や幼なじみの暴力少女とともに、その影が町の上空を通過する時間に山へ集合する事になるのだが……。行ってみれば誰もおらず、自分しかいない。そして、空から何かが堕ちて来た!

きっと、パズー少年ならこう叫んだに違いない。
「お、親方〜! 空から女の子が!!」

落ちてきたのは女の子だが、シータと違って羽根が生えてました(笑)。押しかけ女房的に正体不明の何かがヘタレ少年の下にやって来てしまうというパターンは数多く存在するが、これは天使みたいな未確認生物か……。愛玩用エンジェロイドと自己紹介するのだが、何故か戦闘兵器級の性能を有する。願いを叶えるための不思議なカードも持っているので何でも出来てしまうぞ!

お金が欲しいと言えば1000億円出してくれたりもするのだが、少年がアホなので、手違いで世界征服をしそうになった挙句、全てがリセットされてお金も無かった事に。未来から来た某ネコ型ロボに匹敵する便利な存在を手に入れても、女の子のパンツを渡り鳥みたいに空を飛ぶ飛行物体にしてしまったり、やっている事は馬鹿ばかり。

豚に真珠、猫に小判、少年に愛玩用エンジェロイド。
ISBN:4840229422 文庫 沖田 雅 メディアワークス 2005/02 ¥578
夏といえば、浴衣に水着にスイカに花火と先輩とぼく。楽しいはずの夏休みも、先輩が絡めば普通になる訳がない!肝試しでは本物の幽霊さんをキャスティングしてるし、先輩の家で二人っきりの夜もなんでこんなことに!?遊びに行った海では、なぜか無人島に漂流してしまいました…。お馴染みの愉快な仲間達も大暴走。花火大会には、さすらい中の番長さんがスペシャルゲストで登場!多方面にいじられまくる、ぼくの運命は。

特撮戦隊の紅一点、悪の女幹部、魔法少女と、先輩のお遊びに翻弄されまくるボクだが、今回は本物の幽霊を使った肝試しによって、子猫の霊に憑依されてしまい、猫少女に!?
台風の夜には、先輩の家で二人きりになって襲われそうになるし、海へ行けば買ったはずの水着が入れ替えられていて、貝殻とセクシー水着とスクール水着の三択になっているし、沖へ出れば意図的にボートが流されて無人島で二人過ごす羽目になってしまう。

ヤクルト飲んで酔っ払った宇宙人に脳みそを入れ替えられた二人だが、元自分の身体相手にイジりまくる先輩と、それに翻弄され、なすがままのボクという図式は4巻に至っても健在。
 
 
 
このラノベは、脳みそは男だけど先輩な身体のボク。
★★★
ISBN:4594049664 単行本 リリー・フランキー 扶桑社 2005/06/28 ¥1,575
読みやすさ、ユーモア、強烈な感動! 同時代の我らが天才リリー・フランキーが骨身に沁みるように綴る、母と子、父と子、友情。この普遍的な、そして、いま語りづらいことがまっすぐリアルに胸に届く、新たなる「国民的名作」。『en-taxi』連載、著者初の長編小説がついに単行本化。

売れ過ぎたから、なかなか図書館でも借りられなかった。ブームも去り一段落した今になって、ようやく本棚に並んでいるのを発見。やっと読む事が出来た。

一時期モテはやされた程ではないな。物語として読ませる勢いはあるのだが、やはり本職ではないので小説として見れば稚拙か!? エンタとして、またビジネスとしては大成功したと言えるだろう。

それにしても、やりたい放題で酷い主人公だ。こんな駄目息子のために人生をかけて育て、最後には癌に蝕まれて死んでいく母が哀れである。オカンは立派だけど、息子はロクデナシだ。

こういうのは、泣ける人間か否かで評価が変わってくるんだろうなぁ。私はもう一生分の涙が枯渇したので、目薬を点した時以外は泣けません。逆にあざとさを感じて気分が萎えてしまう。

それにしても、オトンは本当に時々しかいないな(笑)。
ISBN:4150204500 文庫 月岡 小穂 早川書房 2007/09/21 ¥798
あたくしの名前はアイヴィ・タムウッド。〈生ける吸血鬼〉にして〈異界保安局〉のもと敏腕捜査官。赤毛の女魔法使いレイチェルといっしょに局をやめ、二人で私立探偵をはじめることにしたのだけれど、まったくレイチェルったら! もと上司のデノンに、首に賞金をかけられるわ、その賞金めあての殺し屋につけ狙われるわ、あげくに大富豪トレントの犯罪を暴くため屋敷に忍びこんで捕まるなんて、ほんとうに手がかかる相棒だわ!

後半へ。

魔女のほうが主役なのに、黒魔術を使うのが嫌で弱いままなのがもどかしい。ミンクになった状態で犯罪者トレントに捕まってしまい、ペット状態になるのは笑える。あまり活躍しないけれども、コンビを組んだアイヴィの方が桁違いに強い気がする。キャラを食われてしまうからあまり動かさないのだろうか?

相変わらず異界保安局の元上司に差し向けられた暗殺者に狙われつつ、違約金を稼ぐためにトレントの悪巧みを暴こうとするのだが、結局は黒幕を逮捕するには至らないので、あまり盛り上がらないなぁ。

敵になるトレントも、本格的な犯罪者といった感じではなく、遺伝子操作で自滅しそうになった人類が禁じ手にしてしまったテクノロジーを使っているだけだしなぁ。世界が滅びかけた原因だったために、トマトが人類のトラウマになっているという設定なのは……。
これ、題名だと魔女物みたいだけど、吸血鬼物に分類されてしまっているな。現代風吸血鬼小説には恋愛相手がつきものだが、本書では主人公も相手の吸血鬼も女なので、百合っぽい。時々襲われそうになるのだが、まだ未遂なのでかろうじてノーマル。
 
 
シリーズ化しており、5作目まで出ているので続きが気になる。
順調に翻訳されますように!
ISBN:4150204497 文庫 月岡 小穂 早川書房 2007/09/21 ¥798
あたしの名前はレイチェル・モーガン。優秀な魔法使いで〈異界保安局〉のもと敏腕捜査官だ。本来なら邪悪な魔法を操る黒魔法使いの逮捕や、人狼や吸血鬼がらみの難事件があたしの仕事。なのに、このところ上司のデノンはネチネチと嫌味ばかりで、ロクでもない仕事しかまわしてこない。あたまにきたあたしは、同じ捜査官仲間の〈生ける吸血鬼〉アイヴィといっしょに局をやめて、私立探偵をはじめることにしたのだが……。

異界保安局の敏腕捜査官だった魔法使いレイチェルは、糞上司デノンに干されまくり、ロクな仕事を与えられないので活躍する事すら出来ず退職する事に。しかし、同時に生ける吸血鬼であるアイヴィも辞めてしまったから、デノンに逆恨みされてしまい、呪い攻撃を受けまくったり暗殺部隊を送り込まれてしまう羽目に陥る。

いきなり住処も追い出され、アイヴィと一緒に住む事になったのは郊外の教会だし、相手は吸血鬼だから襲われそうになるしで、散々な目に。異界捜査局を辞めてからも、大きなネタを追うのだが、逆に敵に捕らえられてしまうところで上巻は終わる。

それにしても酷い上司だな。暗殺部隊まで送り込んでくるのだから逆襲して殺してもOKでしょ!?

阪急電車

2008年2月20日 読書
阪急電車
ISBN:4344014502 単行本 有川 浩 幻冬舎 2008/01 ¥1,470

なんだかマイナーなネタであるが、これは阪急今津線利用者には堪らないだろう。宝塚から西宮北口までの、僅か八駅の間に起こる人間模様。駅毎に主人公が代わって行くのだが、同じ車両に乗り合わせているので、他の話の登場人物もチラリと登場したりする。

そして、西宮北口からは折り返して再び宝塚まで。この折り返し部分は、そのまま戻るのではなく、後日譚であるから、数ヶ月後のお話になる。前半で登場した人々が、その後どうなったか描かれる。片道わずか15分の間に、出会いもあれば別れもある。

様々な人物が登場するが、婚約者を寝取られてしまい、披露宴に花嫁以上に美しい純白のドレスを着て討ち入りする翔子さんが格好良すぎる。婚約者の男は阿呆である。

次は宝塚線でやってもらいたいところだが、駅数が多いから大変だろうな(笑)。

ネタバレ注意↓
 
 
 
 
 
図書館でよく見かける、好みのタイプの女性が隣に座り、外に見える「生」の文字がきっかけで恋が始まる青年。恋が始まる瞬間を見て辛く感じる純白のドレスを着た美女は、婚約者を地味女に寝取られて、披露宴に討ち入りを果たした直後。その美女をお嫁さんだと勘違いする小さな孫娘と祖母。話しかけられた老婆に勧められて途中下車する美女。それを見かけて常識問題で諍いとなるカップル。男の方はロクデナシ。逆ギレして競馬に行くロクデナシ。それを見て別れたほうが良いと老婆に言われる女。年上の彼氏の馬鹿っぷりでのろける女子高生。たまたま同じ車両に乗っていた、自分と同じ大学に通う女性と意気投合する青年。
ISBN:4101265356 文庫 米村 圭伍 新潮社 2005/09 ¥500
またもや退屈で死にそうだっためだか姫。今回の一大事は、小文五の将棋の弟弟子・拓磨の身分違いの恋。一介の冷飯が大名の末娘に懸想してしまったのだ。「まあ、すてきすてき!」俄然、縁結びに燃える姫君。だが、ここにも田沼意次の魔手が…。家康より拝領の「水無瀬駒」を巡る藩命の掛かった知恵比べ。加えて貞操の危機も。めだか姫はいかにして立ち向かうのか。文庫書き下ろし。

退屈姫君第三弾。題名だけ見れば、不倫するのかと思ってしまう。確かに恋に燃えてはいるのだが、恋に堕ちるのは別の人。退屈で堪らないので、身分差のある二人の恋を成就させるべく燃えるのだ。ちなに、めだか姫は嫁いでいるので、本当は姫じゃなくて正室になっているのだけど。

またしても、悪の権化たる田沼意次が敵となる。この憎らしさが堪らない。息子の田沼意知が完璧に馬鹿息子になっているのは少し可哀想であるが。確かに実績は上げているけれども、汚職を肯定する気にはなれないので悪役で結構。どこかの島国にいる、実績も上げずに汚職だけやりたい放題の政治家と比べたら、はるかに立派なんだけどね。

何か事件が起こると目がキラキラと輝いて喜ぶめだか姫だけじゃなくて、根来くの一やデブ棋士、はては将軍様まで、脇役もキャラ立ちする濃い面々ばかりなのが面白い。美形の棋士拓磨と萌姫の恋、どう転んでも身分が違いすぎで成就するとは思えないのだが、どうなるかは読んでみてのお楽しみ。
ISBN:4101265348 文庫 米村 圭伍 新潮社 2004/09 ¥500
今日も江戸の上屋敷であくびをかみ殺していためだか姫。そこへ舞い込んだのは、夫である風見藩藩主・時羽直重が失踪、ついでに冷飯食い数人も消えたという大ニュース。姫が直ちに千石船を仕立て、お仙と海上を一路讃岐へ向かってみれば…。お城は六波羅景望なる謎の武士に牛耳られ、風見藩はまさに乗っ取り寸前。殿は何処へ。めだか姫は藩の危機を救えるのか。

退屈姫君の二作目を読む。米村ワールドも、さりげなく他作品とリンクしている。別の話に出てくるじゃじゃ馬姫は、退屈姫君の50年前の物話だった。未読だが、風流冷飯伝ともリンクしているらしい。

田沼の陰謀を見事に阻止した姫だったが、今度は参勤交代で江戸から領内へ戻っている殿が行方不明になったと聞かされて血が騒ぎ出す。大藩である実家に頼んで船を借りると、江戸から四国へ。

またしても田沼の陰謀かと思ったら、思いもよらない敵が相手だった。他の作品で朝廷隠密なんて奇抜な存在が出てきたが、それに負けず劣らず意表を衝かれた。藩を乗っ取ろうと画策する、怪しい力を持つ謎の美男。何故か天守閣で倒れていた、記憶喪失の美女。陰謀を挫く為に姫が思いついたのは、またもや奇想天外な反撃技。
ISBN:4840224730 文庫 安曽 了 メディアワークス 2003/08 ¥578
ある晴れた日の午後、ピクニックに出かけたラハール目がけて、突然空から暗殺者が降ってくる。一緒にいたエトナの機転で暗殺は未遂で済んだものの、怒り心頭に発して暗殺者に詰め寄るラハール。その暗殺者は、やけに無礼な一匹のプリニーだった。その場で縛り上げられたプリニーは、そのまま魔王城へ強制連行。しかし、そのプリニーの存在が、魔界を揺るがす大きな火種になることを、まだラハールは知るよしもなかった…。フロン、バイアス、プリニーちゃん。またまたお馴染みのキャラを巻き込んでお贈りする、抱腹絶倒の第二弾でぇい。

ノベライズというより、これはもう完全にオリジナルだな。作品そのものの出来は悪くないと思うのだが、主人公になるのが名も無きプリニーという設定が微妙である。物語の中核となるラハール、エトナ、フロンのどれかを主役にしたほうが良かったと思う。

プリニーが主役で、暴君ラハールに対して反乱(というよりも単なるストライキ!?)を起こしてしまうという、オリジナル仕様。そして、その反乱を焚きつけたのは、ラハールの腹心であるエトナ。

それにしても盛り上がらない。わざわざ名前すらついていないプリニーを主役にしなくても良かったと思う。せめて、初期配置されているエトナ専属のヴァピュラとかネーブルあたりにしておけば……。
 
 
 
このラノベは、名も無きプリニーの物語。
★★
ISBN:4840223157 文庫 秋倉 潤奈 メディアワークス 2003/05 ¥578
見習い天使のフロンは、ある日大天使から、1つの指令を受ける。「魔界へ行き、魔王に会ってくるように」と。期待と不安の中、魔王城を訪れたフロンが出会ったのは、とんでもなく性格の悪い魔王の息子ラハールと、一筋縄ではいかなそうなその腹心、エトナだった。魔王クリチェフスコイは、2年も前に亡くなっていたのだ。失意のどん底のフロンに、津波のように追い打ちが訪れる。天界への扉が開かなくなって魔界に取り残され、ラハールたちは、世話してやった報酬をよこせと迫った。かくして、フロンの魔界貧乏生活が始まる。果たしてフロンは再び平安の日々へと戻れるのか。

日本一ソフトの名作をノベライズしたもの。フロン視点で物語が進むので主役がフロンっぽくなるが、原作の良さは損なわれてはいない。ただ、短いのでラスボスがマデラスになっている。つまり、ゲームだと前半部分だけ。天使長ブルカノや表のラスボスである大天使ラミントンまで行き着かないのである。

このゲーム、裏ボス達がやたら強いです。大天使はラスボスだけど雑魚。ましてや魔王の座を狙ってくるマデラスなんて、仲間になっても戦力外通告してしまう位の超雑魚なのである。まあ、無理に詰め込んでグチャグチャになる事を考えれば、マデラスまでで物語を終わらせるのもアリか。

ゲームは途中までやったけど、裏ボス軍団に勝てない。プリニー神までは何とかなったけど、地球大統領とラ・ピュセルで主役だったプリエとマージョリーと超魔王とプリニーになった超魔王がまだ……。なんか、攻略ページで超魔王のHP1220万とか書いてるんですけど(笑)。究極のやり込みゲームだな……。
 
 
 
このラノベは、ノベライズだけどマデラス戦までで終了。
★★★
ISBN:408775281X 単行本 中山 可穂 集英社 2001/02 ¥1,470
ジャン・ジュネの再来とまで呼ばれる新人女性作家・塁と、平凡なOLの「わたし」はある雨の夜、書店で出会い、恋に落ちた。彼女との甘美で破滅的な性愛に溺れていく「わたし」。幾度も修羅場を繰り返し、別れてはまた求め合う二人だったが…。すべてを賭けた極限の愛の行き着く果ては?第14回山本周五郎賞受賞の傑作恋愛小説。

これもまた、レズビアン小説か。ひょっとして、この作者の作品って全部レズ小説? 「天使の骨」以上に濃厚で強烈。狂気さえ秘められた二人の不毛な愛の先には、何も残されていない気がする。

性格が破綻した掟破りの純文学作家に出会ってしまったビジネスウーマンが、瞬く間に絡め取られていく。全身全霊を使った直球攻撃で、そこには打算も駆け引きも無い。獣のような欲望だけが存在している。何度も別れようとするが離れられず、父の病気が発覚してからは孫の顔を見せようと男性と結婚するも事件に巻き込まれ、結婚生活は破綻して行く。

冒頭で二人の結末が書かれてしまっており、そこから過去世界へと戻っていくのだが、彼女の身に何が起こったのかは書かれていない。これは非常に気になる。続きは無いのか!?

天使の骨

2008年2月17日 読書
ISBN:4087473538 文庫 中山 可穂 集英社 2001/08 ¥500
ぼろぼろの守護天使たちがわたしにつきまとう…。人生のすべてをかけた劇団を失い、世捨て人のように暮らす劇作家ミチル。絶望の果てに、彼女は天使の幻覚を見るようになる。この天使たちを葬るために―。イスタンブールからリスボンへ、そしてパリへ。ヨーロッパを彷徨うミチル。再生の光は果たして見つかるのか?魂の巡礼を鮮烈に描く青春小説の傑作。第6回朝日新人文学賞受賞作品。

しまった! 第6回朝日新人文学賞受賞作品だから、これが最初かと思ったら、実は二作目だった。単独でも読めるように書かれているけれども、「猫背の王子」の続編だった。幻のデビュー作は図書館に無いな、困った……。

劇団が無くなった後、気が向いた時だけアルバイトをし、後は閉じこもって生きる屍と化している劇作家、王寺ミチル。一緒に劇をやりたいと現れた女性に渡された大金で、欧州を放浪する。その最中にも女絡みの恋愛情事を重ねて行く。

百合物というより、生々しいからやはりレズビアン物と呼ぶのが妥当だろう。腐女子が男同士で興奮するのと同じようには楽しめないが、女同士なので無難に読める。女よりも男が読む方が、同性愛に対する抵抗は少ないと思う。

それにしても日本へも戻らず、中途半端なまま終わっているな。このままではお金を出した女性も、劇団員で因縁のある男との関係も、放置されたままじゃないか。シリーズだからまだ続編が出るとは思うが……。
先輩とぼく 3
ISBN:4840228353 文庫 沖田 雅 メディアワークス 2004/10 ¥599
「…足りないな」その先輩の一言で、OMRの一員にさせられたのは不思議少女の桜さん!占いマニアでポーカーフェイス。凰林高校の変人博覧会のこの部に、またまた濃い~娘が入ってきました。そんな無表情な彼女に、これまた無表情な真太郎が一目惚れしちゃったからもう大変!面白いことを見つけて大喜びの先輩、親友の願いを叶えてあげたいぼく、やたらに首を突っ込む嵐ちゃんず。みんながてんでバラバラに真太郎を応援(!?)し始めたので、大騒ぎにならない訳がない!!そんなこんなで最後はホロリとくるはずの第3弾!ちなみに魔法少女始めました…。

またしても画像無いのか。密林の画像有り無しは、どういう基準で決まるんだ? 古すぎるのが画像無いのは良いとして、同じ時期に出てる書籍で有無があるのは……。amazonで注文があった際に出版社から納入され、その時点で画像取り込みをするというのも、絶対に誰かが買っているであろう商品にもついていなかったりするから考えにくいしなあ。単に、社員様の気分次第とか!?

帯に「魔法少女はじめました♪」なんて書いてあった。戦隊ヒーロー物の紅一点から悪の女幹部へ、そして今度は魔法少女ですか。元々は自分の体なのに、この先輩はとことん弄ぶね。他人が入ってしまった自分の体で遊ぶなんて、ある意味すごく変態的である。

魔法少女から宝探しから転生ネタまで、いろいろ入っているが、疲れてきた。後2+1冊頑張らないと……。
 
 
 
このラノベは、魔法が使えない魔法少女……。
★★★
ISBN:4575833517 コミック 袴田 めら 双葉社 2007/04/12 ¥630
魔法使いだけが通うことを義務付けられた孤島の学園。突如魔法の力に目覚めた少女・桜田暁も強制的に編入させられるはめになるのだが、暁には実は離れ離れの姉探しという目的があり…。友情あり青春あり恋あり百合あり決闘ありちょっぴり切なくもありな、魔法使いだらけのお間抜けコメディ!!

「MAGi MAGi 」はほとんど魔法が出てこなかったのだが、これはちゃんと魔法が出てくる。しかし、魔法があるから便利というようなものではなく、魔力を持つ人間は危険だから隔離され、強制的に島にある魔法学校に入学させられるのだ。しかも、卒業しても政府に管理され、危険な任務にあたるエージェントにされたりする模様。一見すると萌え絵ではない単なる可愛い系の漫画、しかし、差別と迫害の要素が背景にある気が……。

主人公は、田舎に住んでいて魔法の事など何も知らず、自分が魔女だという事すら知らないまま生きてきたのだが、ある日、怖い人たちがやってきて拉致、魔法を封じる甲冑に押し込められて魔法学校まで連行されて来る。

という訳で、不恰好な甲冑姿のまま、転校生として紹介されるのだが、中の人は美少女だった。甲冑の中に美少女って、うる星やつらに出てくる水野小路飛鳥みたいだな。

シルエット

2008年2月16日 読書
ISBN:4062749262 文庫 島本 理生 講談社 2004/11 ¥440
女性の体に嫌悪感を覚える元恋人の冠くん。冠くんと別れ、半ばやけでつき合った遊び人の藤井。今の恋人、大学生のせっちゃん…人を強く求めることのよろこびと苦しさを、女子高生の内面から鮮やかに描く群像新人賞優秀作の表題作と15歳のデビュー作他1篇を収録する、せつなくていとおしい、等身大の恋愛小説。

ようやく島本理生もコンプリート。これが一作目になるのだが、図書館に蔵書していないので最後になってしまった。読んだのは文庫版。シルエットより後の「リトル・バイ・リトル」や「生まれる森」よりも出来が良いと思ったら、文庫化される際に修正しているようだ。どの程度修正したのは分からないが、もし執筆当時からこのレベルならば驚きである。

女子高生(当時)が書いたにしては、かなり高水準になっている。基本的な文章作法すら備わっていない作家志望中高生が書くネット小説と比べたら、その隔たりは月とスッポンである。小ネタに文学作品も使用されているし、きっと、数多くの文学に触れてきたに違いない。

オーソドックスとか安易だとか言われてしまう様に、ごく平凡な日常を描いた作品が多いので、一見地味だけど、こういう地に足がついた作家こそ芥川賞に選んでいくべきじゃないのだろうか。最近の選考委員は派手だったり奇をてらったゲテモノばかり選びたがるからなぁ。困ったものだ。
ISBN:4092903251 ハードカバー 橋本 恵 小学館 2007/07/06 ¥1,575
大好評のうちに幕を閉じた翻訳児童文学『ダレン・シャン』全12巻シリーズに続く、著者ダレン・シャン氏の児童文学第2弾『デモナータ』シリーズです。今回の作品は、前作よりさらにパワーアップし、怖さも増しており、みなさんをスリリングな世界に引き込むことになるでしょう。『デモナータ』1幕となる『ロード・ロス』の主人公は、グラブス・グレイディという少年。生意気な口をきいたり、先生や親をからかったりするけれど、心の底では家族をたいせつに思っている少年だ。ところがグラブスの幸せな日々は「悪魔」というおぞましい存在によって、ある日とつぜん断ち切られてしまう。 しかしそれは、グラブスをまちうける苦難の幕あけでしかなかった――。 待望の第5作では、いったいなにがおきるのか?

再びグラブス少年が主人公。急に魔力が湧き出てきて戸惑うグラブス。同時に、体内で致命的な変化が生じつつある事にも気づく。自分もまた、姉や弟のように人狼へと変化しつつあった。

体調が落ち着かない中、友人達と宝探しをしているうち、謎の洞窟を掘り当ててしまう。三人で中へと入るが、そこは邪悪な気配に包まれていた。前作で封印されたデモナータと現世界を繋ぐための回廊だ! 友人ロックが、洞窟奥の壁を登り始めるが転落して頭を強打し、死亡。頭部から漏れた血は、何故か消えうせるのだが……。これは、封印が解ける伏線だろうか。

ますます体調がおかしくなり、月が満ちるに従い自分を制御出来なくなるグラブス。ついには狼化して人を殺害した挙句、3幕で登場したジューニーに連れられて逃亡を開始。飛行機に搭乗して追っ手から逃れたと思いきや、機内に悪魔と魔将ロード・ロスが現れる。そして、この悪夢に加担したのは……。

この後どうなるんだろ? 続きが気になる。

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