火星の長城

2007年11月14日 SF特集
ISBN:415011630X 文庫 中原 尚哉 早川書房 2007/08/25 ¥987

アレステア・レナルズだから、また異様に分厚いんだろうなと思ったら、そうでもなかった。とは言っても500ページを超えているので分量はかなりある。しかし、今までの長編が1000ページを超える嫌がらせみたいな分厚さなので、その半分しかないというだけで、薄く感じてしまうのだ。ちなみにこれは中短編を纏めて二分冊で出版されるものの第一弾らしく、本編となる壮大な宇宙史の第三弾はきっと1000ページを超えているに違いない。

短編集なので、そう気張らずに読める。一応は短編だけど、連作になっているものもあるし、長編に関わる部分も出てくる。次第に生息域を広げていく人類史になっているが、宇宙へ進出する過程で、人類には三種類の亜種が派生する。過酷な宇宙空間に適応するために、機械化を進めたウルトラ属。脳に大量の機械を埋め込んで拡張し、精神をネットワーク化した連接脳派。その中間にいるのが無政府民主主義者である。

「火星の長城」では、火星に築かれた長城内部で、地球型環境の居留地に囲い込まれた状況にいる連接脳派が宇宙に脱出して太陽系からも離脱して行く。「氷河」は、太陽系から離れた連接脳派が辿り着いた、寒冷期にある惑星での話。「エウロパのスパイ」は、木星圏におけるニ勢力の諜報戦で、エウロパの海に特化した半漁人みたいな改造種族が出てくる。「ウェザー」は、海賊に追いかけられる近光速船の話で、連接脳派の独占技術となっている近光速船の動力の秘密が明らかにされる。「ダイヤモンドの犬」は、異星文明が遺した遺跡にある部屋で、問題を解いて奥に進み、間違えると致命的な罰が与えられるという、キューブという映画みたいな話。奥に進む過程で、主人公は罰により体を失って行く。修復を続け、さらに奥へ進むために、ダイヤモンド犬のような姿へと変貌してしまう。
ISBN:4840234795 コミック まったくモー助 メディアワークス 2006/05/27 ¥599
極上生徒会とは、宮神学園極大権限保有最上級生徒会の略称である。教職者以上の権限を持ち、全校生徒の憧れである極上生徒
会。しかし、書記を務める蘭堂りのの毎日は、ドジいっぱいのトラブル続き。さらにハチャメチャなの後輩・桂みなもが加わっ
て、生徒会は今日も大忙し!! これまで秘密であった隠密部の正体や、神宮司奏と金城奈々穂の過去を描いたエピソードを含めて全7編を収録。

女子校の私立宮神学園(みやがみがくえん)を舞台に、学園を統括する極上生徒会に所属する少女達のドタバタな日常をゆるーく描いた作品。極上生徒会は生徒会長である超お嬢様、神宮寺奏が最高権力者となっている、教職者よりも権限がある組織らしい。

主人公となるのは五期生のドジっ娘、蘭堂りの(表紙)なのだが、一見何のとりえも無さそうなのに、何故か極上生徒会書記に大抜擢されている謎の人。それよりも、気になるのがいつも持ち歩いている腹話術人形プッチャン。実は、蘭堂りのが喋っているのではなくて、本当に腹話術人形が勝手に話しているというオカルト仕様なのであった。他の人が持っても喋るし、犬や烏が咥えても話しているから不気味である。呪いの腹話術人形か?

この生徒会、主人公が五期生で、生徒会長は一期生。まさか男塾三号生筆頭みたいに留年している訳でもないだろうし、中高一貫教育なのだろうか? 車を運転している人もいるし、なんだかいろいろな部分で謎だらけである。読み返していたらもっと謎な人がいた! 生徒会極上寮管理人が小学五年生というのは一体!?
ISBN:4840231958 コミック まったくモー助 メディアワークス 2005/09/27 ¥599
極上生徒会とは、宮神学園極大権限保有最大級生徒会の略称である。そして、極上生徒会の乙女たちは教職者以上の権限をもって、学園のために奉仕する存在なのだ。極上生徒会の書記の蘭堂りのはヘンテコな人形のプッチャンと一緒に、今日も生徒会の仕事に大忙し!

なんだかギャルゲーみたいだ。原作はギャルゲーなのだろうか? コミック版では不法侵入して来る名も無き脇役男しか出てこないので、女キャラは沢山いるものの、ギャルゲーではなくてギャグゲー? 調べてみたらゲームですらなくて、アニメが起点となっていた。コナミ、恐るべし。どんんどん訳判らない会社へと変貌して行く。いろんな意味でヤバイ会社だから、あまり悪口は書けないけどね。

中身は馬鹿っぽくない適度なバラエティ路線だけど、外見が桃色なのは少女チックで少し恥ずかしい。ちなみに、「もっと極上生徒会」とかいう青い表紙のやつもあるみたいだが、それはアンソロジーで中身も微妙らしく、不人気である。
ISBN:4103020326 単行本 島本 理生 新潮社 2007/08 ¥1,575
十二歳の野宮朔は、舞踏家の父と二人暮らし。夢は、物語を書く人になること。一風変わった父の仲間たちとふれ合い、けっこう面倒な学校生活を切り抜けながら、一歩一歩、大人に近づいていく。そんな彼女を襲った、突然の暴力。そして少女が最後に選んだ、たった一つの復讐のかたち――。『ナラタージュ』から二年、新たな物語の扉が開く。

帯のキャッチの中に
一歩、一歩、大人に近づいていく彼女を襲った、突然の暴力
というのがあったから、また「ナラタージュ」みたいになるのかと一瞬怯んだ。

まあ、それらしい事は起こるけど、「ナラタージュ」程の無理やりっぽさは無い。その行為自体を肯定するつもりは無いけれども、問答無用で手加減無しでは無い分、まだ救いはある。それにしても、別にコレは無くても少女の内面は描けたのでは?

父子家庭で育つ、ちょっとファザコン気味の大人びた小学生が主人公。こんな大人っぽい小学生っているのだろうか? 主人公だけなら例外で済まされるけど、友人も言動が異様に大人びているしなぁ。最近のお子様はゆとり教育の弊害で頭がアレだから、もっともっとガキな気がするぞ。学校教師すらガキだらけになっているのに、小学生がここまで大人風味だと、ちょっと不気味である。

エピソードはともかく、今までで一番上手かった。力作扱いの「ナラタージュ」よりも進化したと思う。

一千一秒の日々

2007年11月12日 読書
ISBN:4838715927 単行本 島本 理生 マガジンハウス 2005/06/16 ¥1,365

短編集だけど、独立した別個の物語ではなく、他の話に出てきた主人公が脇役として絡んでくる連作短編。それにしても、島本理生の作品はどれも、人間の薄汚れた部分を書き流してしまうので、さほど不快感は抱かずに済むものの、心に響いて来ないアッサリ風味。

構成は結構面白かったけど、もう恋愛小説自体には何の反応も出来なくなって来た全俺が泣いた! こういう作品にシンクロ出来る現役世代を見ると、「これが、若さか……」と、カミーユに殴られたクワトロ・バジーナ大尉みたいに涙を流したくなって来る。いや、本当に羨ましいです。人生の春なんてアッと言う間に過ぎてしまいます。枯れ果ててから「短けぇ夢だったなぁ……」と、融解した巨神兵を見ながら嘆いたトルメキア軍所属の貧乏軍人クロトワみたいな溜息つかなくても済む様に、せいぜい人生を謳歌して下さいまし。

トリック -劇場版-

2007年11月11日 映画
DVD 東宝 2006/12/15 ¥2,940
自称売れっ子天才奇術師の奈緒子(仲間由紀恵)と、天才物理学者・上田(阿部寛)の凹凸コンビが超常現象を解き明かす人気TVドラマシリーズの劇場版。 ある日、奈緒子は災いが起こると言い伝えられる村で「神を演じてほしい」と依頼を受ける。しかし村には自称「神」を名乗る3人の男が待っていた…。

TV版も観た事が無いので、まさか中身がこんなモノだとは思わなかった。連続殺人犯人のトリックを華麗な推理で暴く名探偵物のミステリーかと思ったら、詐欺師紛いの手品師じゃないか……。しかも、至る所コメディ満載。かなり馬鹿っぽいけど、映像としての見せ方は上手いと思う。仲間由紀恵の神様コスプレは微妙だった。

カラフルな闇

2007年11月10日 読書
ISBN:4062133288 単行本 まはら 三桃 講談社 2006/04/20 ¥1,365
気まぐれな母親は、赤。私の過去を知るあの人は、紫。不幸をもたらす「闇魔女」にゆれる、女子中学生・志帆の複雑な色模様をうつしとる。第46回講談社児童文学新人賞佳作受賞作。

かっこいいじゃん、闇魔女
このキャッチに、思わず借りてしまった。

街で目撃情報が相次ぐ謎の闇魔女。ちょっとした都市伝説みたいになっていくのだが、闇魔女を見て幸せになった人もいれば、不幸になった人も出てくる。果たして闇魔女の正体は? そして、出会うとラッキーなのか、アンラッキーのどちらなのか!?

女子中学生が主人公の児童文学。両親の離婚、友人とのすれ違い、不良糞女との対立、それなりに悩みや問題を抱えて生きている。闇魔女という謎の存在が出てくるが、オカルトやホラー要素は皆無。

第46回講談社児童文学新人賞佳作。初めての作品にしては、まあ良かった。電撃の銀賞や文芸賞あたりと比べたら上出来。
ISBN:4163688102 単行本 東野 圭吾 文藝春秋 2007/01 ¥1,260

なんだか意味深な書名だが、これでエッセイは最後にして、小説に専念するという意味合いらしい。ちなみにこれが5冊目のエッセイ。ほとんど著作を読んだ事も無いのに、いきなり最後のエッセイから始めて良いのだろうかとも思うが、最近の東野圭吾は人気あるから、図書館に帰ってきたのから手当たり次第に読まないと全然読めないので仕方が無い。

これは、ある程度読み進んだ人が手にすれば一層面白いと思う。ちょっと、エッセイというよりはファンムック的な内容が多いので。著者の人生を年表にしたようなモノや、今までの著作を解説する部分が含まれる。

それにしても、なかなか賞が獲れないから苦労している作家なのかと思いきや、結構順風満帆な作家人生を送っているではないか。1作目から乱歩賞の二次選考通過、2作目で最終候補、三作目で受賞とは!
ISBN:4103049510 単行本 桜庭 一樹 新潮社 2007/06 ¥1,470
東京・山の手の伝統あるお嬢様学校、聖マリアナ学園。校内の異端者だけが集う「読書クラブ」には、長きにわたって語り継がれる秘密の〈クラブ誌〉があった。そこには学園史上抹消された数々の珍事件が、名もない女生徒たちによって脈々と記録され続けていた――。今もっとも注目の奇才が放つ、史上最強にアヴァンギャルドな“桜の園”の100年間。

題名とは裏腹に、青年どころか年齢問わず男なんてほとんど出てこない。物語の舞台となるのは、聖マリアナ学園という超お嬢様学校。当然、女子高である。連作短編なので、各話で登場人物も主人公も、語られる時代すら変わっていく。過去、この学園が作られる以前のフランスから、まだ訪れぬ未来まで、100年に亘る壮大な学園の物語。

聖マリアナ学園の正史からは抹消され、語られない黒歴史を、学園南にある旧校舎を根城とする異端者集団、読書クラブだけが極秘ノートに記している。各話で、それぞれの時代に起こった事件が語られ、最後に読書クラブの一人がそれをノートに記していく。

殺人事件が起こったりする訳ではなくて、封印された黒歴史のほとんどは些細な出来事に過ぎないのだが、筆者の力量で読ませる物語に仕上がっている。

いっぺんさん

2007年10月30日 読書
ISBN:4408535060 単行本 朱川 湊人 実業之日本社 2007/08/17 ¥1,680
いっぺんしか願いを叶えない神様を探しに友人と山に向った少年は神様を見つけることができるのか、そして、その後友人に起きた悲しい出来事に対してとった少年の行動とは……。感動の作品「いっぺんさん」はじめ、鳥のおみくじの手伝いをする少年と鳥使いの老人、ヤマガラのチュンスケとの交流を描く「小さなふしぎ」、田舎に帰った作家が海岸で出会った女の因縁話「磯幽霊」など、ノスタルジーと恐怖が融和した朱川ワールド八編。

不思議な話、ちょっと気味悪い話が盛り沢山の短編集。少し不条理系の話も入っているのだが、この系統の物語を書く他の作者と違って、後味が悪くて嫌な感じが残る事は少ない。舞台設定を過去に遡る事で、ノスタルジックな雰囲気を醸し出しているからだろうか。不幸な結末を迎えてしまう話でも、ノワール小説やホラー小説を書いている作家の作品みたいな胃のむかつきは残らない。

冒頭にある表題作「いっぺんさん」と、一番最後にある「八十八姫」が秀逸。しかし、古き良き時代とまでは行かなくても、まだ多少なりとものんびりとした感じが残っていた昭和という時代を知る世代じゃないと、これは楽しめないのではないかと危惧してしまう。今や、ネットの中だけでなく現実世界までドッグイヤー状態で、時間にも心にも、少しも余裕が無い平成の世の中。果たして、こんな殺伐とした時代に生まれ育った平成生まれでも、昭和世代と同様にこれを「読んで」いるのだろうか?
ISBN:4916016564 単行本 光吉 夏弥 瑞雲舎 2005/09/10 ¥1,050
ちびくろ・さんぼに、ふたりの弟が生まれました。ちびくろ・さんぼは、弟たちがかわいくてよく面倒を見ていましたが、悪いさるたちがふたりをさらってしまい…。岩波書店版の後半部分を復刊。

ちびくろさんぼの続編を読んだ。さんぼに弟が出来ていた。ちびくろうーふとちびくろむーふである。書いてないけど、同じ大きさだからきっと双子。この二人が悪い猿に攫われてしまうのだ。弟を取り戻そうと、さんぼは頑張るのだが……。

それにしても、何で猿はいつも悪者なんでしょう? やはり、知性が備われば悪くなるのかね!? 頭が良くなりすぎて65億以上に増殖した猿なんて、大量虐殺してみたり、北極の氷溶かしたり、オゾン層に穴を開けたり、最近では宇宙にまでゴミを撒き散らしたり、悪さばかりしてますからね。もし神が実在するならば、きっと最凶に邪悪な存在に違いない。

とりあえず、復刊した瑞雲舎の勇気に敬意を表したい。言論弾圧に屈した岩波はヘタレ認定。

きみはポラリス

2007年10月27日 読書
ISBN:4104541052 単行本 三浦 しをん 新潮社 2007/05 ¥1,680

今回の三浦しをんは特に酷い。短編集なんだけど、どれもこれも嫌がらせとしか思えないくらいに面白くない。これで下手糞だったら貶して腐して終りなのだが、文章だけは上手いから性質が悪い。なんか、精進料理みたいな小説を味わされている感じで、苦行みたいだ。

発想は良さげなのに致命的なまでに下手な山田君と、文章は上手いのに苦行させられている感の三浦しをん。一体、どちらが精神的ダメージ大きいのだろうか……。もともと、読み手自身に恋愛小説を読む感性が欠如しているというのも原因のひとつではあるけど、それでもこれは本当に面白くなかった。勘弁して下さい(笑)。
ISBN:408774678X 単行本 中島 らも 集英社 2003/12 ¥1,785
瀬戸内海の小島をレジャーランドにするためにヘリを飛ばし下見に来た男二人は、セラピー施設に治療のためと称して入院し一週間を過ごすことになった。しかしすでにそこには女二人、男一人の患者―クライアントがいた。五人は投薬と催眠術を使った治療で、こども時代へと意識は遡る。三分の二は笑いに溢れ、最後の三分の一は恐怖に引きつる。鬼才・中島らもが遺した超B級ホラー小説。

ホラーだという情報を入手していたのに、全然怖くなかった。発想はともかく、その内容はむしろ馬鹿らしい。中島らも本人は傑作が書けたと満足しているが、微妙作だと思う。「こどもの一生」という題名なのだが、出てくるのは大人ばかり。集められた大人が催眠療法と薬物により子供化してしまうのだ。こどもとして島で生活するから、外見は大人なのにやる事はこどもという笑えない状況に。そして、実業界で成功した老人みっちゃんが虐めっ子となって大暴れ。みんなは、みっちゃんに仕返しするために架空の人物、山田のおじさんを捏造する。しかし、その事を知ったみっちゃんが、パソコンに入力されていた山田のおじさんデータに、おじさんは頭がおかしいから出会った人間を殺すと書き加えるのだ。直後、なぜか存在しないはずの山田のおじさんが施設を訪れ、連続殺人の幕が開く!?

これは、役柄変化による巧妙なトリックなのだとばかり思っていたら全然違った。大人がこどもになってしまったように、登場人物の誰かが山田のおじさんに成り代わり、次々にみんなを殺して回る推理小説なのだとばかり思っていたら、思いもしない直球勝負で、しかも全てが夢オチに匹敵する馬鹿らしさ……。

素材は面白いのだが、捻りが無く微妙。こども変化した後はひらがなだらけだから非常に読み辛いし、作中に出てくる歌が入った付属CDもあまり良くなかった。

アビシニアン

2007年10月22日 読書
ISBN:4344000072 単行本 古川 日出男 幻冬舎 2000/06 ¥1,470
「あなたには痛みがある」そう言った彼女は字が読めなかった。ぼくは激痛の発作におびえながらも急いで書かなければならない。僕と彼女の愛についての文章を。気高く美しい者たちの恋愛小説。

表紙がこれだから、猫小説かと思ったら全然違った。

親に飼い猫を捨てられた少女は、自分がいた世界を捨てて生きる。生き延びていたアビシニアンと再会した少女は、野生化して聖域で猫と暮らす。第一部は冬を生き延びられなかった猫とともに終わる。

第二部で、身体の一部に不具合を持つ青年が登場する。彼は目に過度の光が入ると偏頭痛が起こり、視界にも影響が出るのだ。自らの境遇に絡んでいるかのような物語を作っているその青年は、ある店で不思議な少女に出会う。

第三部で語られるのは、猫の死から、姉となる女性に出会い拾われ、妹として店を手伝う事になる経緯。ここで、第一部と第二部の間にある空白が埋まる。恋愛小説として分類されているようだが、あまりそれっぽくない。
想いはいつも線香花火
ISBN:484022837X 文庫 一色 銀河 メディアワークス 2004/10 ¥578
炎術使い御火速霊流の宗家に生まれながら炎術を使えない優夜が、修行の先に送り込まれたのは三人の姉妹が暮らす高倉家。これはおいしいシチュエーションかと思いきや、優夜の姉匠となる長女の彩雲はヤンキーあがり、三女の美風は端から優夜に冷たく、唯一友好的なのは次女の美空だけ。それでもめげない優夜は、エッチな妄想を膨らませながら、今日も修行に励むのだった…。第6回電撃ゲーム小説大賞“銀賞”受賞作家が放つラブ(?)コメディ。男子ごころをくすぐります。

シマシマはいい。乾いた心を潤してくれる。

これも酷いなぁ……。脳内エロ妄想全開の少年による独り語り状態で、ドタバタしているだけでちっとも内容が無い様系。特殊能力を使える一族という設定も、過度なドタバタに圧倒されてしまい、ちっとも生かされておらず盛り上がりもしない。

なんか、その辺の高校生が書いたような勢いだけの内容で、書いた本人だけが楽しんでいるのじゃないかと思いたくなる酷さ。まあ、続編が4巻まで出ているから、この暴走っぷりにハマった人は楽しめるのかもしれないけど。ちなみに、イラストは本物の女子高生(当時)が書いてます。ああ、なんかもうイラストだけでいいや。本文酷すぎ。やたら、別作品に依存したギャク鏤めているし、ファーストガンダムネタとか、今時の子供が食いついてこれるのか謎。
 
 
 
このラノベは、女子高生が描いた女子高生のシマシマで乾いた心を潤してくれる。

株式会社ハピネス計画
ISBN:4093877297 単行本 平山 瑞穂 小学館 2007/07/31 ¥1,470
「幸せ」をめぐる怒濤のエンタテインメント

婚約破棄、リストラ…不幸のどん底に落ちたサラリーマン・氏家譲が働くことになったのは「幸せ」を売る会社だった。そして、ある謎めいた女性が譲の運命を動かし始め…。怒濤のノンストップ・エンタテインメント!

うーん、どうしたものか……。不条理で不気味な処女作を書いた平山瑞穂は、二作目で切ない系の恋愛を書いた平山瑞穂は、どこへ行った!? なんかこれ、素材も内容も普通すぎで、肩透かしを喰らった感じである。

読んだら幸せになること間違いなし!
(ジュンク堂書店池袋本店 小海さん)


とかキャッチついてるから、「ペイフォワード」みたいな深遠さが隠されているのかと思ったら、馬鹿を相手にインチキ商法で儲ける悪逆非道な会社じゃないか……。読んで幸せになるよりも、むしろ“辛せ”になりそうだった。ちなみに“辛せ”は誤字脱字変換ミスじゃないからね。最後まで読めば意味が通じると思う。

同僚がたてる音にキレて暴れてしまい、諭旨解雇となった男。直後、恋人にもフラれてしまい駄目人間化しているところを、少年時代の同級生に誘い出され、そいつの二号さんの面倒を見る事に。さらには、株式会社ハピネス計画という胡散臭い会社で働く羽目になってしまう。

二号さんに無理やり連れて行かれたインチキ霊能者に御祓いされた後に、多少は不思議な出来事を体験はするのだが、その部分の良さはインチキ商法に関わっている部分で相殺されてしまう感じだ。
ISBN:4093877297 単行本 平山 瑞穂 小学館 2007/07/31 ¥1,470
「幸せ」をめぐる怒濤のエンタテインメント

婚約破棄、リストラ…不幸のどん底に落ちたサラリーマン・氏家譲が働くことになったのは「幸せ」を売る会社だった。そして、ある謎めいた女性が譲の運命を動かし始め…。怒濤のノンストップ・エンタテインメント!

困った。最近、アマゾンの画像が表示されずに×マークになってしまうのが多すぎる。これ、自分のPCが原因の不具合で、他の人にはちゃんと見えていたりするのだろうか? これ、画像出てますか?
ISBN:4087748731 単行本 中島 たい子 集英社 2007/09 ¥1,260

第133回芥川賞候補作

「漢方小説」のすぐ後に書かれているはずなのに、一向に書籍にならず、他の作品ばかり出てくるからどうしたのかと思っていたら、ようやく出てきた。しかし、妄想系の痛い主人公で、漢方小説より悪くなってしまった。期待していたのだが、どうもイマイチである。

すでに付き合っている状態で「結婚するかも」と思う話かと思ったら全然違った。少し電波入っている女性が、これはと思う異性が出てくるとすぐに「この人と結婚するかも」と、妄想に耽ってしまうのである。ただの友達、既婚者、英会話教室にいた男、スーパーですれ違っただけの男……。これは痛い。かなりの電波さんである。大道珠貴作品みたいな毒電波女じゃなかったので、まだマシではあったけど。こういう妄想垂れ流し系は、あまり食指が動かない。妙齢の女性が読めば、上手くフィットするんじゃないでしょうか?

もう一編入っている括弧「ケイタリング・ドライブ」は、男性版の妄想垂れ流し系。しかも登場人物独り語りで妄想垂れ流しなので、相当キモイ。しかし、こちらのほうが面白かった。

山奥で行われるパーティで料理を作らされる羽目になった男が、借りてきたレンタカーに食材を積んで目的地へと向かうのだが、意中の女性が上手く落ちなかったので(何の行動もしていないのだから当然ではある)ウダウダグダグダと悩みつつ、パーティ会場へ行くか行かないか悩みつつ、途中で寄り道して時間に遅れつつ、それでもキッパリと決断出来ずに到着してしまうのである。こちらは、モテナイ君な男性陣が読めば、上手くフィットするんじゃないでしょうか?

カズムシティ

2007年10月18日 SF特集
ISBN:4150115710 文庫 中原 尚哉 早川書房 2006/07 ¥1,512
身近警護の専門家タナー・ミラベルは、雇い主一家を惨殺した黒幕レイビッチを追って、故郷から遠く離れたイエローストーン星に到達した。だがそこで目にしたのは異形の都市カズムシティだった。謎のウイルスによる“融合疫”の発生により、建築物はあたかも新種の植物のように成長し、複雑に融合しあって奇怪なジャングルと化していたのだ…異形の街を舞台に展開するノンストップ・ハードボイルド・アクション超大作!英国SF協会賞受賞作。

またしても長い! これは本当に嫌がらせでしょうか!? アレステア・レナルズが分冊禁止とでも注文つけたのか? 何でこんな分厚いままなのか疑問である。全部で1135ページ。前作よりも長くなってしまった。背表紙に負担がかかりすぎて本が痛むっちゅうに!! 読んでいる間も重くて手が疲れるし。

圧倒されて読む気力すら無くなりそうな、まるで辞書のような分厚さではあるが、テンポは良いのでそれほど苦労はしない。これで文章が難解なら悪夢だろう。「啓示空間」は異なる恒星系と近光速船という、空間を隔てたパートで別々の話が収束していく形だったが、この作品では時間によって各パートが隔てられている。

愛する者を奪われた戦士が復讐のために敵を追い、戦乱に明け暮れる辺境惑星スカイエッジから繁栄を極めたイエローストーンへ。別パートでは人類初の大規模移民計画で他の恒星系へと向かう五隻の宇宙船内部の出来事が語られる。今回は空間ではなくて時間によって隔てられているので、最後に繋がるとは思えなかったのだが意外な接点で纏ってしまった。

次から次へと事件が起こり、一見すると本筋には全然関係無い脇道にしか思えないのだが、全てがラストへ向けて張り巡らされた小道具であり、過去と現在も最後で繋がる。隠し味的に、「啓示空間」の登場人物もさりげなく登場する。

それにしても長かった。しかしこの長さが英国標準? 当初は半分の長さだったのを、短くて売りにくいから長くしてくれと言われて、こんな長編になってしまったらしい。日本人にとっては、半分でも十分に長いですよ(笑)。続編も翻訳進行中っぽいので、出たらきっと読むだろうけど、また異様な分厚さなんだろうなぁ……。

啓示空間

2007年10月17日 SF特集
ISBN:4150115338 文庫 中原 尚哉 早川書房 2005/10 ¥1,470
その内部には「啓示空間」があり、驚異の科学技術が隠されているといわれる謎の空間シュラウドからただ一人生還したダン・シルベステは、リサーガム星で異星種族の遺跡を発掘中、その滅亡の原因を解く鍵として、中性子星ハデスを差し示す手がかりを得るが…99万年前の異星種族絶滅の謎、巨大ラム・シップ内の暗闘、中性子星に隠された秘密などを背景に、人類の存亡をかけた戦いをグランドスケールで描く迫真の宇宙SF。

無茶苦茶長い! 嫌がらせかと思うような分厚さである。文庫なのに、全部で1039ページ。値段も税込み1,470円と高額。どうして上下二冊に分けなかったのか謎である。読む時も重くて腕が疲れるし、こんなに太かったら背表紙が痛むだろうに……。

99万年前に滅亡した異星人アマランティン族の遺跡を発掘調査する考古学者、その考古学者を狙う暗殺者、融合疫に汚染された船長を救うために考古学者を探す近光速船。このバラバラの物語が出揃い、一箇所に纏るのは500ページを超えてから。並の小説ならもう終わっている頃にようやく中盤戦なのである。

全てのカードが出揃った後は、近光速船で中性子星であるハデス星系に存在する謎の惑星ケルベロスへ。近光速船内部の描写がまた気持ち悪くて、映画「エイリアン」みたいな雰囲気。終盤(とは言っても終盤だけで200ページくらいあるのだが)にむけて明らかにされる銀河の歴史。銀河系に生命体が存在していない理由が明らかにされて行く。

かつては生命が満ち溢れていたのだ! それが、周辺にある二つの銀河(恐らくは大マゼランと小マゼランだと思われる)まで巻き込んだ黎明期戦争と呼ばれる大戦争により数百万もの知的種族が巻き込まれて荒廃してしまったらしい。そして、戦後現れたインヒビターと呼ばれる存在によって、二度と銀河大戦を起こさないために、新たに勃興した星間文明はことごとく滅ぼされていたのだ。考古学者が調査するアマランティン族もその餌食となっていた。知らぬうちに人類存亡のキーパーソンとなってしまった考古学者だが、気づいた時にはすでに……。

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