Video Game 日本一ソフトウェア 2004/10/21 ¥2,940
これまでのシミュレーションRPGとはひと味違った新機軸のシステムを備え、充実したシナリオと個性的なキャラクターが楽しめる本作。聖パプリカという架空の小さな国を舞台に、闇の王子が蘇るときに聖なる乙女が現れるという伝説を軸に、物語は展開していく。幼くして両親を失い、12歳で聖女会の悪魔祓い「ラ・ピュセル」となった主人公「プリエ」は、聖なるバトンで戦う16歳の少女。弟の「キュロット」や教育係のシスター「アルエット」たちと共に、次々と発生する事件に巻き込まれていくのだ。

初めて日本一ソフトのゲームを買った時は、何て強気な社名をつけているんだろうと思ったのだが、このメーカーのやり込み型ゲームは本当に「日本一」と断言して良い程、秀逸である。スクエニなんか、足元にも及ばない。実は、最初に買ったディスガイアがまだ終わってないんですけどね……。

これもまだ完全攻略は出来ていないのだが、とりあえずラスボスは倒せたのでレビュー。ちょっと口が悪い聖女会の少女プリエが、光と闇の戦いに巻き込まれていく物語。世界には光の女神ポワトリーヌと闇の堕天使カラミティが存在するのだが、闇の王子と光の聖女の間で何度も代理戦争が行われ、多くの人命が失われているのでる。

聖女会のラ・ピュセル達は、数々の事件を解決していくうちに、黒幕である聖母神教会の陰謀に気づいていく。宗教絡みですか! ファイナルファンタジータクテクスでも宗教勢力が敵だったな。宗教で人は殺せますが、救う事は出来ませんからね。

ストーリー部分で強制進行していく場合があり、後半からは結構急ぎ足。当初、やり込み型で作られてはいなかったため、ディスガイアと比べるとやや物足りない。遊ぶ時は2週目はじめましたと書いてある物を選びましょう。通常版だと、2週目に突入出来ません。ちなみに、データ互換性も無いらしいので、通常版のセーブデータは使えないようだ。

各話は行動によって、バッドエンドからスペシャルエンドまで分かれるが、全体通しての結末はひとつだけ。どう転んでも結果は変わらない。ストーリーの進行によって、仲間になるキャラが入ったり抜けたりしまくるので、全員揃った状態が存在しないのが、やり込みの障害となる。最後は全員揃っていて欲しかった。

主人公は、光の聖女になりたくて頑張る少女なのだが……。光の聖女になれねぇ! というか、光の聖女はそこにいるじゃないかっ!? そして、○○も……。2週目に突入すると、聖女会の神父が驚いた時の意味深いセリフがよく判る。
 
 
 
評価:85点
購入価格:1,980円くらい。
最初は2週目が無かったので、やり込み要素はディスガイア程ではない。
Video Game ピオーネソフト 2004/02/26 ¥8,190

やってみた。鬱ゲーだった……。主人公の死亡フラグが100%立っているというのは一体!? まあ、どの選択肢を選ぼうと死にますからね。なんて可哀想な少年なんだ(笑)。雪山で人を助けようとしたら滑落、たまたま運悪く岩の間に……。しかも、人類じゃない超常的な存在の不手際で、死ぬ予定じゃないのに死んでしまうのである。

ギャルゲーだったけど、主人公視点では優等生、幼なじみ、血の繋がった妹の三人しか攻略出来ません。別の人物視点によるエキストラモードでお嬢様と保健医の先生が攻略出来るのだが、それでも5人しかいないので少なめ。しかし、本編で血の繋がった妹が攻略キャラになっているのは危ないな。普通は、血が繋がらない義妹設定だろ? 

基本的に、物語に広がりは無く、シーンは使いまわし。選択肢によって結末が変わってくるだけである。使いまわしをしているので、物語の繋がりがおかしくなっている部分もあるし、ストーリーは微妙である。絵師は非常に上手いのに、ゲーム内容はギリギリ合格といった感じか。
 
 
 
評価:60点
購入価格:1,980円くらい。
今なら800円程度……。

銀河北極

2008年1月25日 SF特集
ISBN:4150116458 文庫 中原 尚哉 早川書房 2007/12/14 ¥987
銀河SFのあらゆるエッセンスを凝縮! 史上最大のスケールで描く遠大なる未来――2303年、イラベル・ベーダ船長が乗り組む旅客星間船イロンデル号は、ハイパー豚の宇宙海賊セブンの罠にかかり、辺境の彗星上で捕獲されてしまう。信頼を寄せていた副長マルカリアンの裏切りで、冷凍睡眠処置をされた乗客の一部を連れ去られたイラベルは、マルカリアンと乗客を追って、遙か銀河の果てへと向かった! 数万年におよぶ銀河の追跡行を無類のスケールで描いた表題作ほか、5篇を収録する宇宙史作品集・完結篇

アレステア・レナルズの壮大な宇宙史を背景に綴られた、レヴェレーション・スペースというシリーズの中短編集。先に出た「火星の長城」と同じもので、日本では二分冊されている。無理に一冊で出版されなくて良かった。

人類が宇宙に出てからそれ程経過していない初期から、遥か未来の数万年後まで話が続く。長編の「啓示空間」や「カズムシティ」に絡んで来る部分もあるので、前半部分の「火星の長城」はもちろん、長編も先に読んでおくのが正解。

「時間膨張睡眠」は、融合疫直後の近光速船内部を描いた話で、本編と少し設定が違うのは、まだ背景世界設定が完成していない頃に書かれた作品のため。「ターコイズの日々」は、海洋SFになっていて、舞台設定が数少ない癒し系か!? この作家の小説は、廃棄宇宙船内部とか、異星文明の遺跡ダンジョンとか、衛星の深海底とか、あまり楽しくなさそうな場所が多いからね。

「グラーフェンワルダーの奇獣園」は、気味悪い異星生物ばかり集めている奇特な金持ちの話で、最後のオチも気味悪い。次の「ナイチンゲール」も、ある星系の戦乱時に使用されていた病院船内部で生き残っているらしい戦争犯罪人を捕らえようとして、一行が酷い姿に変えられてしまう気持ち悪い話である。怖くは無いけどSFホラーっぽい感じがする。

この作者の世界には、人類の遺伝子を改変したらしい気味悪い生き物がいろいろ出てくる。豚人間(ファンタジーならオークか?)みたいなハイパー豚とか、エウロパの海底で使役させるために作られた半漁人みたいなデニズンとか……。「ナイチンゲール」の登場人物なんて、最後には戦争反対の広告塔として人間団子状態ですからね。
 
 
 
表題作となっている「銀河北極」は壮大すぎて、逆に脱力感がいっぱいである。近光速船が衝突事故で故障してしまい、修復するために資源を取りに行けば、ハイパー豚海賊のトラップに嵌められ、冷凍されている客を奪われてしまうのである。2303年から始まるのだが、客を奪われたイラベルと裏切り者マルカリアンの追いかけっこは40000年後の未来まで!

もはや、長編シリーズで人類に立ち塞がる星間文明の破壊者たるインヒビターとの戦いすら過去の時代になっている。未来世界では、インヒビターに代わり、テラ・フォーミング機械による銀河規模の大災厄に見舞われている。

船に積んであったテラ・フォーミング機械がハイパー豚海賊側から流出し、しかもどういう誤作動をしたのか、周囲の星々を飲み込んで自然界には存在しない、緑色に輝く恒星に変えているのだ。

銀河系は、人類どころか周囲にいたであろう種族まで巻き込んで滅亡しそうになっているのである。狂ったテラ・フォーミング機械は、周囲の星系に広がり、惑星を分解し、恒星を緑色の膜で覆っていく。40000年後の未来には、すでに銀河系の一部の腕(恐らくオリオン腕でしょうね)は緑色に変色した状態に! 数少ない人類の生き残りが脱出して来て追いかけっこ状態の二船に助けを求めるのだが……。

数多くの星間文明を滅ぼしてきたインヒビターよりも、人類が開発したテラ・フォーミング機械の方が危険だというのは一体!?

天国はまだ遠く

2008年1月22日 読書
ISBN:4101297711 文庫 瀬尾 まいこ 新潮社 2006/10 ¥380
仕事も人間関係もうまくいかず、毎日辛くて息が詰りそう。23歳の千鶴は、会社を辞めて死ぬつもりだった。辿り着いた山奥の民宿で、睡眠薬を飲むのだが、死に切れなかった。自殺を諦めた彼女は、民宿の田村さんの大雑把な優しさに癒されていく。大らかな村人や大自然に囲まれた充足した日々。だが、千鶴は気づいてしまう、自分の居場所がここにないことに。心にしみる清爽な旅立ちの物語。

天国というのは楽園の意味で使われているのかと思ったら、死後の世界か……。上手く行かない事だらけの女性が、自殺しようとする。旅先で睡眠薬を飲むものの、自殺すら失敗してしまい、何も無い田舎村の民宿にずるずると宿泊し続ける事に。

ストレスフルな都会から鄙びた村にまで逃げてきて、ほとんど営業していなかった、名ばかりの民宿に泊まり続けるうちに元気を取り戻す話。民宿の持ち主相手にフラグが立ちそうになるものの、恋愛には至らぬうちに物語は終わる。

意表を衝かれるような展開は無いが、何でもないような日常を題材にしても、小説として纏っているのは良い。芥川賞系統も、読み手に優しくない自慰行為ばかりではなく、せめてこのレベルで仕上げてもらいたいところである。
ISBN:4832275690 コミック 愁 一樹 芳文社 2006/03/27 ¥860

親同士が結婚して、幼なじみ→兄妹になってしまった二人。しかし、「お兄ちゃん大好き」系統の物語ではなく、ごく日常のままなので、全国1000万の妹スキーなお兄ちゃんは過度に期待しないように!

兄の説明で、ちょっとシスコン(?)と書かれているが、実際は重症だった。妹はノーマルでちゃっかり者。義妹よりも、兄のクラスメイトで常時うさぎの髪留めをしている人の方が気になる。料理が出来るしっかり者な性格なのに、見た目がうさぎで、名前もどこかの薔薇乙女みたいな……。

優しい音楽

2008年1月21日 読書
ISBN:4575235202 単行本 瀬尾 まいこ 双葉社 2005/04 ¥1,260
受けとめきれない現実。止まってしまった時間-。だけど少しだけ、がんばればいい。きっとまた、スタートできる。家族、恋人たちの温かなつながりが心にまっすぐ届いてしみわたる。希望に満ちた3編を収録。『小説推理』掲載。

ちょっと変な人々が出てくる短編集だった。表題作は、駅で会う女性に声をかけられ、やがて交際する事になる男の顔が、実は死んだ女性の兄に似ていて、相手の家族も息子の代わりの様に振舞うという話だった。ブラコン疑惑……。

二話目の「タイムラグ」は、不倫相手の娘を一晩預かる事になってしまった女の話。女に子供を預けて旅行に行ってしまう不倫男は駄目っぽいが、娘は大人しくて可愛らしい。会ったことの無い祖父に会いたいとお願いされ、子供を押し付けられただけの部外者なのに、何故か本当の母親の代わりに、一緒に祖父の家まで行く羽目になってしまう。

三話目は、公園でおじさんを拾ってきてしまう女の話。同棲している男が帰宅してみれば、拾ってきたものがあると言われ、見てみると普通のおじさんで仰天してしまう。人間を拾ってくるなんて、かなり電波入った人だ。
ISBN:4488017398 単行本 大崎 梢 東京創元社 2007/04 ¥1,575
同一書籍に四件の取り寄せ依頼。ところが連絡を入れると、四人が四人ともそんな注文はした覚えがないと…。「ファンの正体を見破れる店員のいる店でサイン会を開きたい」―若手ミステリ作家のちょっと変わった要望に、名乗りを上げた成風堂だが…。駅ビル内の書店・成風堂を舞台に、しっかりものの書店員・杏子と、勘の鋭いアルバイト・多絵のコンビが、書店に持ち込まれる様々な謎に取り組んでいく。短編五本を収録した本格書店ミステリ、好評シリーズ第三弾。

成風堂書店シリーズ第三弾。

また連作短編に戻った。長編よりも短編のほうがテンポも良く読みやすい気がする。「配達あかずきん」と較べたら、ややインパクトが足りない感じがするが、ほのぼの系ミステリーなのは変わらず。

本屋絡みの事件が起こるのだが、アルバイトの多絵ちゃんが華麗に解決。本屋さんミステリーではあるけれども、謎解きはあまり無い。予め読者にヒントが与えられていないので、推理は出来ない。一緒になって謎解きをする気は全く無いので、ヒントは貰えなくても良いけど。

ちょっとずつ月日が流れているなぁ。シリーズが進んで多絵が大学を卒業してしまったらどうなるんだろう? 客になって謎解きか、正社員になってしまうのか、それとも時間稼ぎで法科大学院にでも入れてしまうのか……。今はまだ謎のままである。

おたから蜜姫

2008年1月15日 読書
ISBN:4104304069 単行本 米村 圭伍 新潮社 2007/11 ¥1,995
かぐや姫が求めた宝を見つけよ。竹取物語に隠された暗号が大江戸の天下を揺るがす。存続すら危うい風見藩時羽家に伊達家から縁談が持ちかけられた。蜜姫の嫁入りを破談にし、千載一遇の好機に飛びつこうとするが、厳しい条件がひとつ。あの五つの宝物のうち、どれでもよいから、ひと品持参せよという。太古から時空を超え襲いかかる、途方もない謎解きと謀略の数々。好評「蜜姫シリーズ」第二弾。

温水藩の暴れ姫、再び! 今回は、自分がかぐや姫だと信じる電波入った伊達の姫が所望する秘宝を探して大暴れ。母も加わり、かぐや姫伝説に新たな自説まで盛り込みつつ、謎解きに挑む。いつの間にやら宝探しはかぐや姫が望んだレアアイテムから、大久保長安が脱税して隠したとされる埋蔵金探しへと変わる。

物語を読み進めるための解説文や薀蓄がたくさんあるのでちょっと疲れる。かぐや姫がエイリアンというパターンがSFでよく使われるけれども、本書は、ある勢力の巫女的な扱いなので、宇宙人説よりも意外で独創的だった。

忍者猫タマも、前回よりパワーアップした捨て身の必殺技を「ギャオーン。ギャオオーン!」と披露する。本当に中身も猫なのか!?
ISBN:4047139513 コミック 高野 うい 角川書店 2007/08/09 ¥567

これもギャルゲーが原作か? 女子高から共学になった学園でのフラグ立ちまくりな学生生活。ちょっと凶暴な幼なじみ、血が繋がらない妹、町で助けた美少女優等生、無口でミステリアスな薙刀女、何故か洗濯バサミを髪留めにしているツンデレツインテール……。強烈なキャラが次々と出て来て、あちこちでフラグ立てまくりな主人公。

恋愛授業という訳判らない勉強があるし、担任はヤン姉、補助につくのは大和撫子風な外見のオカマ先生と、現実世界では有り得ない設定である。

秋の牢獄

2008年1月14日 読書
ISBN:4048738054 単行本 恒川 光太郎 角川書店 2007/11 ¥1,470
十一月七日、水曜日。女子大生の藍(あい)は、秋のその一日を、何度も繰り返している。毎日同じ講義、毎日同じ会話をする友人。朝になれば全てがリセットされ、再び十一月七日が始まる。彼女は何のために十一月七日を繰り返しているのか。この繰り返しの日々に終わりは訪れるのだろうか――。 まるで童話のようなモチーフと、透明感あふれる精緻な文体。心地良さに導かれて読み進んでいくと、思いもかけない物語の激流に巻き込まれ、気付いた時には一人取り残されている――。

惜しい! 題名がこれだから、もう少し早く出せば、もっと売り上げ伸びたと思う。長編ではなく、短編が三つ入っている。

表題作は、同じ一日に閉じ込められてしまった女性の物語。ケン・グリムウッドの「リプレイ」みたいに、同じ人生が繰り返されるのだが、期間がより限定されていて、たった一日となっている。何かをしても、それは翌日には持ち越されない。次の“同じ日”に持っていけるのは記憶だけ。

何度目覚めても翌日へは行けない。閉鎖された時間に囚われていない人々は、全く同じ事を繰り返すのだが、ある日、本来はその場所にはいないはずの人物に出会う。自分と同じ人間に出会い、独りではなくなった彼女は、一日に囚われた人々の集会に参加するようになる。

しかし、閉鎖された一日の無限ループから消えてしまう者もいて、それは北風伯爵と呼ばれる異形の存在の仕業とされていた。北風伯爵に捕まると食べられて消滅してしまうのか? それとも、翌日へ行けるのか?

日本各地の固定された場所に出現と消滅を繰り返し、家守となった者は外に出られなくなる「神家没落」、幻術を使う老婆の後継者となってしまうが、金儲けを目論む悪人に拉致監禁されてしまう女性の「幻は夜に成長する」も面白い。それにしても、何かに捕まってしまう話ばかりだな。

 

2008年1月13日 読書

エオマイア 下

2008年1月12日 SF特集
ISBN:4575940321 コミック タカハシ マコ 双葉社 2006/09/12 ¥980

町に隕石が落下した時、そこにいたのは三人。同級生の少年と、隣の変質者、そして自分。半分になった遺体が発見され、変質者扱いの青年が周囲から疑われるが、少女は彼が自分と同じ存在になった事に気づく。

少女は、少年と仲良くしている事に反感を持つ二人の同級生から嫌がらせを受けるのだが、直後、その二人は水に覆われたまま行方不明となってしまう。無理やり先生から頼まれて、プリントを持って行ったら、家には誰もいなくて液状化した粘液だけが室内を覆っていた。

落下する隕石に付着するウイルス説、液体に襲われる恐怖。なんだか、ストラトスフォーとアナザヘブンを足して2で割ったような感じだな。一応、町内を襲った犯人は明らかとなるのだが、全ては語られないまま、後味の悪い結末を迎えてしまう。

エオマイア 上

2008年1月12日 SF特集
ISBN:4575940313 コミック タカハシ マコ 双葉社 2006/09/12 ¥980

こんな可愛い系の絵柄だけど、恋愛マンガや萌えマンガではなくて、SFホラーだった。各地に隕石が落下し、その周辺で多発する行方不明事件。ある日、表紙になっている主人公の少女も、隕石落下の現場に居合わせてしまう。翌日、自室で目覚めてみれば、周囲は水浸しになっていた。

失われた味覚、異様なまでの食欲、液体化する体、そして下半身が溶けた状態で発見されたクラスメイトの遺体。ひょっとして、無意識のうちに友人を食べてしまったのではないかと怯えはじめるのだが……。

クローバー

2008年1月11日 読書
ISBN:4048738178 単行本 島本 理生 角川書店 2007/11 ¥1,365
世界はうつろい、大切なものさえ変わってゆく??それでも一緒にいたいよ。ワガママで思いこみが激しい、女子力全開の華子。双子の弟で、やや人生不完全燃焼気味の理科系男子冬冶。ふたりの恋と未来は???キュートで痛快、やがてせつない恋愛長編。

さらに上達したと思う。性別の違う双子が主要人物。当初は女の方を主役にする予定だったのが、絡む男が最初の方で固定されてしまった為に、男のほうが主役となってしまったらしい。

今風で自由奔放でかなりわがままな姉の華子。華子に振り回される感じの、人生不完全燃焼男な弟の冬冶。この二人周囲の人間に絡む形での恋愛模様。あとがきで書かれているように、恋愛小説でも青春小説でもなく、モラトリアム小説というのが妥当か。ちょっとモテナイ系のオーラが無くなり洗練されてきた。

エロ小説やオナニー散文に受賞させているのだから、そろそろ島本理生にも芥川賞をあげて良いのではないのか!? 青山七恵より上手いだろ? 何で青山が受賞しているのに、島本は貰えないのか謎。今回なんて、ノミネートすらされてないし……。
ISBN:4393741498 単行本 田村 安 春秋社 2007/04 ¥1,680
オーガニック・ワインは、ワイン本来の味と香りを持っていておいしいだけでなく、深刻な地球環境問題にもひとつの回答を与えるものである。農薬や化学肥料を使わない本物のワインの魅力を語る、ロハス生活のためのワイン読本。

表紙、新しくなったんだ。図書館に置いてあった旧版よりも、このほうが売れると思う。見た目は結構大切である。

自然の力で農作物を育てるというのは大変な労力を必要とする。しかし、その見返りは少ない。手間暇かかって収入は増えないどころか、下手すれば減ってしまう。地域によっては農薬や機械が売れなくなるので妨害すら入りかねない。そこまでしてオーガニック・ワインを造ろうとする行為は、もはや農業を超えて哲学である。

目先の利益だけに群がった結果、人類は自らの首を絞めつつある。ごく一部の人々であっても、この様な試みをしているのは素晴らしいと思う。しかし、この微々たる力で滅びに向かって走る愚かな二足歩行生物の歩みを止められるとも思えない。資本主義が自壊するのが先か、人類が滅亡するのが先か……。

厭犬伝

2008年1月7日 読書
ISBN:4103059516 単行本 弘也 英明 新潮社 2007/11 ¥1,260
戦うことで、俺たちは成長していく――美青年と少女、そしてその分身たちが決闘、また決闘! 魑魅魍魎が跳梁跋扈する妖しげな異世界。ここでは人間の骸から生えた「汚木」から、操り人形の「仏」を作る風習がある。主人公の厭太郎は、ひょんなことから仏師の娘・犬千代と、命を懸けてお互いの仏同士を決闘させるはめに。格闘ゲームの狂気と民俗学的世界観を見事に融合させた、25歳の俊英が贈る傑作☆新種ファンタジー!

第19回日本ファンタジーノベル大賞受賞作。

毎回思うのだが、この賞は他と比べてやたらレベルが高い。この賞を受賞する人々は本当に新人なのだろうか? 文芸賞あたりと比べたらもう、段違いどころか桁違いである。

この作品は和風ファンタジーといったところか。賞の名前が日本ファンタジーノベル大賞であるのに、全然ファンタジーっぽくない作品が多いのが困り物なのだが、これは普通にファンタジー作品だった。

物語の舞台は東国。とはいっても東国王府という独立した存在になっているし、現実世界の古代日本ではなくて、日本っぽい異世界での物語。背景世界についてはほとんど語られないので詳細は不明。

主人公の厭太郎は山野に分け入り罪人の追跡、監視を行う岳稜警の一員である。ある時、国の上層部とも繋がりがある男を殺してしまい、何者かの圧力により、咎人側からの仇討ちを受けなければならなくなってしまう。相手は、殺した悪人の娘、犬千代。普通の果し合いではなくて、合(あわせ)での決闘を行う事になってしまうのだが……。合というのは自らが戦うのではなく、汚木から作られた仏同士を戦わせるというものである。

せっかく興味深い異世界なのに、物語の大半が合による仏同士のバトルなのは残念。ゲームにしたら面白そうだが、延々と文章で読まされるのは辛い。筆力はあると思うので、次回作に期待したい。

94627

2008年1月6日 読書
94627
ISBN:4828825126 単行本 石黒 達昌 ベネッセコーポレーション 1995/08 ¥1,529
戦争、クスリ、多重人格―90年代の生と死。マラソンの素人に近かった女性ランナーがクスリを使用し、世界記録を上回るペースで来た40キロ過ぎに突然死した。その死を巡って複数の毒物に関わった研究者、医師が、麻薬や毒物の研究と症例を生々しく裁判の証言で語る表題作ほか2篇を収録した最新作品集。

これは、「平成3年5月2日、後天性免疫不全症候群にて急逝された明寺伸彦博士、並びに、」と比べたら面白みに欠ける。小説というよりも、全部が何かのレポートみたいになっているし。設定としては面白いのだけれども、小説として楽しむには異端すぎる。文章も硬質だから、学術系の専門書を読まされている感じになる。

湾岸戦争絡みの傭兵に焦点を当てた、イラク内部にある国家内国家といった感じの勢力に関するレポートみたいなもの。特殊な薬を使用した医学関係者に対する証人喚問みたいな形式のもの。刑務所の囚人による反乱事件に絡んだ、ある精神異常者に関するレポートみたいなもの。全てが小説っぽくない。
平成3年5月2日、後天性免疫不全症候群にて急逝された明寺伸彦博士、並びに、
ISBN:4828817387 単行本 石黒 達昌 福武書店 1994/05 ¥1,529
今回の芥川賞候補作の中の不思議な魅力を備えた作品が本になった。石狩川上流に長年繁殖したがついに絶滅したハネネズミの種の生存最後のドラマは人類滅亡のメタファーである。卓抜な発想と透明な叙情性をもつ表題作他2編。

第110回芥川賞候補作収録。

なんか、異様に題名が長い! しかし、これは冒頭の文章から取ったものであり、本当は無題らしい。題名が無いままだと、書籍にして売る時に不都合があるからね。三篇入っているのだが、「今年の夏は雨が多くて」は、小説というよりも手紙みたいになっている。

表題作は、絶滅したハネネズミに関するある疑惑について。嘘論文みたいな形式で、表や写真までついているので、何も知らないで読んだらハネネズミが実在したと騙されてしまう人がいるかもしれない。他作品でも出てくる動物なのだが、これは作者が考えた架空の生き物です。

真ん中にある「鬼ごっこ」が結構良かった。身内に末期癌が発見され、患者の身内としての立場と、医者としての立場から宙ぶらりんになり、どちらにもなり切れない男の苦悩を描く。その方面でもプロであるから、手術シーンも生々しいしリアルである。

ちなみに本書は縦書き作品と横書き作品が混じっているので、両方から読むというスタイルになっている。最近の書き手オナニー作品群と比べたら、この頃の芥川賞関連作品のほうが出来が良いかもしれない。

晩夏に捧ぐ

2008年1月4日 読書
ISBN:4488017304 単行本 大崎 梢 東京創元社 2006/09/30 ¥1,575
以前成風堂にいて、今は故里に帰り、地元の老舗書店に勤める元同僚の美保から、杏子のもとに一通の手紙が届いた。勤務先の宇都木書店、通称「まるう堂」に幽霊が出るようになり、店が存亡の危機に立たされている、ついては名探偵のアルバイト店員を連れて助けに来い、というのだ。杏子は気が進まぬながら、多絵を伴って信州の高原へと赴く。そこで待ちかまえていたのは、四半世紀ほど前に弟子の手で殺されたという老大作家の死に纏わる謎であった…!「本の雑誌」二〇〇六年上半期ベストテンの堂々第二位に輝いた「配達あかずきん」で今もっとも注目を集める著者、初の長編推理小説。

成風堂書店シリーズ第二弾。

前回が連作短編だったのだが、今回は長編になっているので長く感じる。全体通してひとつの話だけ。一作目の密度が濃かったので、どうしても希釈されてしまったように感じてしまうのは仕方が無いか。

幽霊騒動が持ち上がった別の書店からの応援要請を受け、杏子と多絵のコンビが事件解決に挑む。かつて起こった作家殺人事件も絡んで来て、事件と幽霊騒動に何らかの繋がりがあるのではないかと考える二人。

SFベスト201

2008年1月2日 SF特集
ISBN:440325084X 単行本 伊藤 典夫 新書館 2005/05 ¥1,680
ヴォネガットからニール・スティーヴンスンまで、厳選した名作SFを一流執筆陣が徹底紹介。作風が一目でわかるレーダーチャート付き。SFの凄さを思い知らされる現代の名作201冊。

このジャンルは読者が限定されるのか、情報が乏しくて困る。旬を逃すと、どこにも見当たらなくなる作品も多々あり。きっと、かなりの力作、良作に出会えないまま、知る事も無いまま終わっているのだろうと思っていたら、こんな本があった! やはり、知らない作品が結構ある。とても参考になります。

しかし、せっかく紹介されて読みたくなっても、入手難易度の高いものばかりなのが難点。この本の責任ではないけれども、サンリオSF文庫や、何十年も前のハヤカワや創元社発行書籍が意外に多く紹介されている。流通していないし、図書館にも無いので読めません……。

金にモノを言わせれば、どれでも読めるのだろうけど、さすがに、プレミアム価格ついたサンリオSF文庫を買う気にはなれないし。Amazonの個人売買でも、ちょっと前に品切れしてしまった商品が、数万円も値上がりしていたりするけど、ボッタクリバーより性質が悪いと思う。仕方がないから地道にブックオフ回りますよ。出版業界も、新古書店に責任転嫁する前に、欲しい本が新品では買えない現状をどうにかするべきだと思う。

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