ISBN:4812453577 コミック ひろせ みほ 竹書房 2000/03 ¥590
相変わらずご都合主義な話が多いけど(でもそれを言うと、この手の話は物語として成立しなくなってしまうのだが)、これより先に読んだ二作も同じ感じで、しかもその二作は読者投稿による本当にあった話だったので、だったらこれも無問題なんじゃないかと思ってしまう。一見ご都合主義的でも、どこかの誰かにとっては十分発生し得るのだから、例え入院先で白衣の天使が夜中に夜這いして来ようと……。
第2話にメイド物。時は大正時代、帝都にある論客が集う店カフェ・カランドリエがあって、出てくる若き女店主がメイドさん。
少女七竈と七人の可愛そうな大人
2007年9月8日 読書ISBN:4048737007 単行本 桜庭 一樹 角川書店 2006/07 ¥1,470
わたし、川村七竈十七歳はたいへん遺憾ながら、美しく生まれてしまった。鉄道を愛し、孤高に生きる七竈。淫乱な母は、すぐに新しい恋におちて旅に出る。親友の雪風との静かで完成された世界。だが可愛そうな大人たちの騒ぎはだんだんと七竈を巻き込んで……。
題名が少女七竈なのに、冒頭に出てくる女性は25歳。ちょっと少女と呼ぶには無理がありすぎるんじゃないかと思いきや、この人は主人公ではなく、少女七竈を産む事になる母親なのであった。面白みに欠ける人生を真面目に生きてきた母は、突然壊れ、短期間に七人もの男を喰らい尽くす。そして産まれて来たのが七竈。
淫乱の母を持ち、父親が誰なのかは判らないはずなのだが、凡庸な母に似ず、とても美しく育つ七竈の姿が、誰の遺伝子を受け継いでしまったのかを、ほぼ証明してしまっている。かつて母と交わったうちの一人で、唯一の超美形だった男は、今では幼馴染の少年雪風の父親。鉄道模型で硬く結びついた二人だったが、お互いに、あえて核心からは目を逸らしたままで生きている。しかし、どんどん似てくる二人。雪風の妹、夢実も七竈そっくりに成長し始める。やがて訪れる少年との決別。
白雪姫と七人の小人みたいな話かと思ったら、全然違った。七竈と雪風の満たされぬ想いはせつなくて可愛そうだけど、大人たちは可愛そうじゃないです。
ISBN:4101265372 文庫 米村 圭伍 新潮社 2006/12 ¥700
敵は将軍吉宗さま? 父を襲った刺客を追い、音に聞こえたやんちゃ姫・豊後温水藩の蜜が隠密行脚にいざ参る!凛々しい若侍に姿を変え、四国、備前に尾張、江戸。嫁入り話はひとまずおいて、従えるは忍び猫のタマ、謎の忍者・笛吹夕介だ。さあさあ姫の運命やいかに―。尾張柳生の暗躍や天一坊事件などをふまえ、史実と伝奇を変幻自在に行き来する痛快無比のエンターテインメント。
豊後温水藩の藩主が暗殺されそうになる。刺客を放ったのが将軍徳川吉宗だと早合点してしまった暴れ姫は、吉宗を倒すために脱藩する。姫の道中を守るために母君が選んだのは黒猫! しかしこの黒猫、ただの猫ではなくて忍者猫なのであった。
道中、海賊に襲われて海に落ちたり、柳生剣士に襲われて絶体絶命の危機に陥ったりと、トラブルだらけ。最初は蜜姫と黒猫だけだった旅も、船頭や忍者、さらには母まで加わりとんでもない事に。そして、次第に見えてくる黒幕の正体。
面白いけど、やはり話の途中で作者がしゃしゃり出てくる。一気に現実世界に引き戻されてしまうから止めて欲しいのだが……。
ISBN:4087747832 単行本 清水 義範 集英社 2005/11 ¥1,575
文学、映画、TVの名作を究極パスティーシュ。"パロディの達人"が文学、世界的ヒットの映画、昼メロ原作まで古今東西の名作を縦横無尽にコラボレーション! 鮮やかな仕掛けと切れ味鋭いユーモアと毒、脳みそも唸る、究極のパスティーシュ小説集。
もう、表紙からして最高(笑)。思いっきり指輪物語のパクリ。チワワ庄を旅立つ子犬、中途半端なままに終わってしまう短編。続編は翻訳予定無しらしい。「ティンカー・ベルの日記」は妖精の毒舌だらけ。「亀甲マン」は何かと思ったら、某アメリカン・ヒーローのパクリだった。「渚のカルメン」は三井戸ケイというヒロインの名前に笑った。「プロフェッショナルX」は、そのまま某番組のパクリで、題材はロビンソン・クルーソー。一番やられたのが「ハートブレイク・ツアー」で、心に傷を持つ男女数人を旅に出し、その人間模様を放送するという、よくあるヤラセ番組のパクリなだけかと思っていたら……。
バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3
2007年9月5日 映画DVD ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン 2005/04/08 ¥1,565
1955年に取り残されたマーティは、1885年へと旅だったドクのメモから、残されたデロリアンを発見する。そこにはドクの墓も。かくてマーティは、ドクを助けるため1885年へと向かうのだった。 「PART2」と一緒に作られたという、大ヒットしたタイムスリップ・シリーズ3部作の完結編。
1885年からの手紙で、鉱山跡に封印されたデロリアン号を発掘し、それで未来へ帰るように言われるマーティ。だが、鉱山付近にドクのお墓を発見、手紙を書いた直後にドクが殺されてしまう事を知ったマーティは、さらに過去世界へと飛ぶ事に。
過去へ飛んだ直後にインディアンの襲撃! 矢を撃たれて燃料タンクからガソリンが漏れてしまうのだが、デロリアン号を隠した穴は熊の巣だったから慌てて逃げ、転がって気絶。マーティを助けたのは、どうやらご先祖様。いつの時代でも出てくる人間が似ているのが、なんとなくドラえもん的で笑える。タネン一族はどの時代でも悪人だし。
ここでドクは運命の人に出逢う。馬が暴走して谷底へ転落するはずだったクララ・クレイトンを助け、恋に落ちる。ここでも、さりげなく歴史改変。ショナシュ峡谷は、女教師が転落した事により、マーティがいた時代にはクレイトン峡谷と呼ばれていたのだが、クララを助けた事でイーストウッド峡谷になってしまう。何でイーストウッドになったのかは、映画を観ればわかる。
この時代でタイムスリップに必要な速度を出すには、蒸気機関車を使うしかないという事で、列車強盗となるドクとマーティ。機関車部分だけを使い、前方にデロリアン号を配置、押して速度を得るという方法で未来へ戻ろうとするのだが、クララが追いかけてきたから、彼女を助けるためにドクが離脱。この時代でクリント・イーストウッドと名乗るマーティだけが未来へと。
未来世界へ戻った直後、列車が接近してきてレール上のデロリアン号を破壊、過去へ行く手段は失われてしまう。ドクを助ける術が無くなったマーティの前に出現したのは、蒸気機関車仕様の最新型のタイムマシン。中から出てきたのはドク、クララ、そして二人の子供達……。
評価:SA
すでに、この映画の撮影中にパーキンソン病の兆候が現れていたらしいマイケル。
病気がなければ、まだまだ力作が出てきたはずなのに、残念だ。
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バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2
2007年9月4日 映画DVD ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン 2005/04/08 ¥1,565
スティーブン・スピルバーグとロバート・ゼメキスが贈るSFアドベンチャーシリーズ第2弾。現代に戻って来たマーティは、2015年から帰って来たドクに連れられ今度は未来へ飛ぶことに。
続いて二作目。内容はそのまま続いているのだが、前作が1985年でこれは1989年公開だから、結構時間が空いている事になる。三作目が1990年公開となっているのは、これで話が完結の予定が、長くなりすぎて分けたかららしい。つまり、二作目と三作目は同時製作で、公開を半年ずらしただけ。
前作のラストと続編のオープニングは、そのまま続いているのだが、映像としてはそのままではないらしい。していなかった腕時計が増えていたり、カーテンが変わっていたり、車のナンバーが変わっていたり、ガレージの農具が変わっているそうだ。
1955年から1985年に戻ったマーティは、テロリストに撃たれたドクが自分の運命を知って、無事に生き延びた事を喜ぶのだが、今度は未来が大変な事になっていると、2015年の未来世界へ行く事に。
車が飛んだり、スケボーが飛行ボードになっていたり、服に自動乾燥システムがついていたりと、思いっきり未来世界。どうも、あと数年でこんなハイテク化はしそうにないのだが、やはりSFは大げさなくらいが丁度いい。変に現実に即して未来予測すると、古臭くなってしまうから。現に、リアルな未来世界を追求しすぎた結果、今の人間が読むとSFとは思えない普通の世界を描いてしまい、古臭くて読まれなくなってしまった小説もある。
2015年で、息子の犯罪を未然に防ぐのだが、未来世界にいた悪役ビフ老人がタイムマシンの存在に気づいて無断使用。1955年の自分に1950年代から2000年までの試合結果が網羅されているスポーツ年鑑を渡して、スポーツ賭博で儲けるように仕向ける。2015年に戻ってきたビフ老人が苦しむシーンが謎だったのだが、どうやら時間旅行酔いしたのではなく、過去改変の影響で1996年頃に妻に射殺されてしまい、消滅する寸前らしい。
無事に2015年のトラブルを解決して1985年に戻ったはずが、ビフが過去を変えてしまったから大変な事になっている。ビフの過去改変を阻止するために、またもや1955年に行く事になるマーティ(今回はドクも一緒)。前作のマーティがいる側で、近作のマーティも出てくるのが面白い。これ、最初から三部作で、よく見たら前作にも続編のマーティがいたりしたら神作品だったのに。
苦労の末、若者ビフからスポーツ年鑑を取り返す事に成功するのだが、直後、デロリアン号が雷に撃たれてドクが消滅してしまう。呆然と佇むマーティの前に現れた謎の男から、ドクからの手紙を渡されるのだが、その手紙によるとドクは1885年に飛ばされたらしい。ドクを救うために、またもや1955年のドクを頼る事に。
前作のラスト、雷が落ちて無事にマーティを未来へ送った事に感激するドクに助けを求めるマーティ。今、未来へ送ったばかりの男が目の前にいて驚き、倒れるドク。そして物語は1885年にTO BE CONTINUED...
評価:SA
多少は、歴史改変のパラドクスがあるかもしれないが、細かい部分は気にしない。
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バック・トゥ・ザ・フューチャー
2007年9月3日 映画DVD ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン 2004/07/07 ¥2,090
1985年10月25日、ブラウン博士は手伝いの高校生マーティを、深夜の秘密実験に呼び出した。博士は愛車のデロリアンをタイムマシンに改造していたのだ。かくてマーティは30年前へと旅立った…。
スティーブン・スピルバーグが製作総指揮し、ロバート・ゼメキスを一流監督に仲間入りさせた、タイムスリップを背景にしたアクション・コメディ。戻っていく世界が、アメリカの黄金時代というべき1950年代というのがおもしろい。アメリカではアイゼンハワーが大統領で、日本では鳩山内閣時代。マーテイの両親が、ちょうどマーティと同じ年ごろだった時代に戻ることで、笑いが倍加する。以後のタイムスリップ映画を方向付けた名作で、その後「2」「3」とシリーズ化された。
BSで特集やっていたから観た。1985年の映画だから、もう随分昔なのだが、今となっても古臭くないのが凄い。数多くあるタイムマシン物の中でも秀逸な出来栄え。細かい部分で矛盾点はあるけれども、それはパラレルワールド説を採っているのと、映像的に判りやすくするための妥協という事で。
タイムマシンを完成させたものの、燃料として使われたプルトニウムを巡り、リビア系テロリストに狙われてしまう。ドクは撃たれ、マーティは慌ててタイムマシンで逃げるものの、1955年で燃料切れになってしまう。1985年に戻るために1955年のドクに助けを求めるのだが、この時代ではプルトニウムなんて入手出来ず、途方に暮れる。どうやら、1.21ジゴワットという謎な単位のエネルギーが必要な模様。これは、ギガワットを間違えてしまい、そのまま使用したらしいのだが、1.21ギガワットは原子力発電所の発電用原子炉1機分の電力とほぼ同じらしい。結局、落雷を使って1985年に戻るの事に。雷では原子炉レベルのエネルギーは得られないと思うのだが(笑)。
過去世界に滞在する間も、様々なトラブルに巻き込まれてしまう。車に轢かれそうな父親を助け、代わりに自分が轢かれてしまったために、父と母が出会う運命が変わってしまい、自分が消滅してしまいそうになったりするのだ。
この映画、最後に「TO BE CONTINUED...(つづく)」というテロップが入っているから、最初から三部作だ思っていたのだが、本来は単発作品だったようだ。TV放映の際、ジョークで入れたら続編の問い合わせが殺到してシリーズ化されたらしい。
評価:SA
これ、最初から三部作計画じゃなかったんだ。ちょっと驚いた。
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ISBN:4878923229 単行本 Robert F. Young 青心社 2006/12 ¥1,680
妖精を思わせる異性人と純朴な少年との心暖まる交流を描いた表題作「ピーナツバター作戦」。さまよえるオランダ人の伝説をモチーフに、宇宙をさまようパイロットと流転の美少女との、結ばれるべき愛の運命を描いた「われらが栄光の星」。未来の軍事国家で許されぬ恋に落ちた男女を描く「星に願いを」など。抒情性で根強い人気を誇るヤングが、心優しき愛をうたいあげたSF短編集。
SF界では結構有名なのに、あまりにも著作が少なすぎるヤングの短編集。本国でも少ないですが、日本では二作しか邦訳されてないっぽいですからね。この時期に出してくれた青心社に感謝。SFってあまり売れないから、ハヤカワと創元社くらいしか、本気でやってくれないんだよなぁ。難解で、頭に不自由していないクラスしかついていけないからか?
ヤング作品は一昔前、まだSFとファンタジーが未分化な頃に書かれたものなので、全然ハードSFではありません。SFとは言っても少し不思議系。表題作「ピーナツバター作戦」では妖精が出てくるし。厳密には妖精ではなくて、別の存在な訳ですが。妖精がピーナツバターを必要とする理由が……。そんなものでどうにかなるとは思わないけど、科学を全く無視したかのようにピーナツバターを欲しがるの設定が非常に良い。SFだけど、かなりファンタジーが入っている。
ISBN:4878923237 単行本 井上 央 青心社 2006/12 ¥1,680
地球に降り立った異星の子供たちが見つけたすばらしい遊びとは…表題作「子供たちの午後」をはじめ、世界で一番みすぼらしい男が宇宙一の美女と出会い愛しあうさまを描いた「究極の被造物」。“働かない種族”レックで一番の娘の結婚とその後の顛末を語る「アダムには三人の兄弟がいた」など、処女短編「氷河来たる」を含む11短編を収録。シニカルなユーモアとペーソスで人気のラファティが贈る異色SF短編集。
いかにもラファティらしい、意味不明系の話が多い。SFっぽくないものも非常に多い。どう考えてもSFじゃないだろう、こんなの詐欺だ! と思う一編は、文字通り詐欺師のお話。どこをどう読めばSFになるのやら(笑)。
やはり、表題になっている「子供たちの午後」が一番良かった。子供たちは普通の子供ではなく、彼ら、彼女らが過ごす“午後”には様々な出来事が起こる。遊び飽きた彼らは去っていくのだが、本当に全員がいなくなったのかは不明。そして、子供たちに翻弄される人類は、ただの玩具ですか?
紅無威おとめ組 かるわざ小蝶
2007年8月26日 読書ISBN:4344010574 単行本 米村 圭伍 幻冬舎 2005/10 ¥1,575
時は寛政。老中・松平定信が緊縮財政に躍起の時代。ひょんなことから義賊の一味に加わった小蝶は、頭領の幻之介に率いられ、萩乃、桔梗とともに田沼一族の隠し金強奪計画を決行する。忍び込む先は…エッ、松平定信の下屋敷!?隠し金はなぜ定信の手元にある?幻之介の真のねらいは?三人娘誕生の鍵をにぎる「チャーリー」は誰?息をもつかせぬ展開とどんでん返しの連続。興奮度100%のネオ時代小説。
本を読み続けていると、本が本を呼ぶというか、全然関係が無さそうな二冊が、あるキーワードで引き寄せあっていたりする不思議現象が多々起こる訳で……。今回、チャーリーズ・エンジェル少年少女探偵団なアメリカ風ダメラノベに痛恨の一撃を喰らってしまった訳ですが、同時に借りてきたこの本も、チャーリーズ・エンジェル! こちらは大江戸版チャーリーズ・エンジェルなのであった。
田沼から松平定信に政治の中枢が変わった頃の江戸。田沼が利権の温床に仕上げてきた地区を取り潰すべく、幕府が介入して来る。小蝶がいた見世物小屋もなくなる事になり、役人に反抗した親方は縛り付けられたまま水中へ落とされてしまう。復讐を誓った小蝶は、松平定信を暗殺するのだが、殺した相手は影武者で……。
仇討ちに失敗した小蝶は、幻之介という謎の男に囚われるが、そこには後二人、侍ガールとキテレツ女がっ! かくして、軽業師、女武者、発明家の三人娘は田沼が不正で蓄財し、今は松平定信の下にある六万両を狙うのだった。しかし物語は二転三転して、思いもよらぬ方向へと進んでいく。
先に読んだ『キッズ・スタッフ』の影響で、かなり良作に見えてしまうが、時折本文に作者がしゃしゃり出てきて要らぬ薀蓄を垂れるのは、興醒めするから止めてほしい。
メイド・イン・プリンセス
2007年8月24日 このライトノベルがすごい?ISBN:4829657529 文庫 わかつき ひかる フランス書院 2005/05 ¥680
王女修業を嫌い、メイド姿になって城を抜けだしたワガママお姫様・エリシア。ところが、匿ってもらうはずのじいやは、お屋敷にはいなかった!それどころか、本物のメイドとして幼い頃イジメていた年下の少年・アシェンに仕えることに…。ちょっと、私はプリンセスなのよ!怒るエリシアも、一緒にお風呂へ入ったり、生まれて初めて××を見ちゃったり…少しずつ可愛く優しい少年に惹かれていく。もうっ!ご主人様はエリシアがいないと、な~んにもできないんだからぁ。
花嫁修業のために修道院へ行かされる事になった王女は、身の回りを世話する娘を身代わりにし、服を交換して逃亡を企てる。じいやである伯爵の屋敷へ逃げ込もうとするも、伯爵は不在、服を交換したからメイド姿、たまたま屋敷で新しいメイドが来る予定になっていたから間違われて次期当主である少年の身の回りを世話する破目に。しかも、その少年は昔、自分が虐めていた男の子だった。次第に少年に溺れていく王女だったが、少年の政略結婚が整いつつある事に気づく。相手が伯爵より高貴な身分ならば少年が断る事など出来ない。そう考えた王女は、王宮へ戻ろうとするのだが……。
本来高貴な身分なのにメイドという、今となっては典型的な黄金パターン。身分差プレイが萌えるんですかね? 最後の最後はハッピーエンド。
このラノベは、題名そのまま。
★★★★
悠久展望台のカイ
2007年8月23日 このライトノベルがすごい?ISBN:4840115729 文庫 早矢塚 かつや メディアファクトリー 2006/07 ¥609
本日、響依泉子はブルーだった。一大決心して精一杯おしゃれした依泉子はクラスメイトの男子に告白したのだが、あえなく振られてしまったのだ。ショックのあまり「バカ!」と叫んで平手打ちしてしまい、私って嫌なやつ…と落ち込んでいた帰り道の橋の上で、依泉子は見知らぬ男の子に声をかけられる。同じ高校の制服を着た、どこにでもいるような印象の彼は、「依泉子はいい子だと思う」となぞめいた言葉をかけ、あっという間に消えてしまった。いったい、誰だったのか―?知らない、なのに懐かしい。依泉子はもう一度彼に会えないだろうかと考えるのだが…。出会えないはずのふたりが出会うとき、優しくせつない物語が始まる。
誰からも、何者からも認識されず、ただ世界を見つめ続けていた存在。ソレの存在を初めて認識した少女、響依泉子は、やがて“彼”に惹かれていく。人間ではない存在、“世界”との恋愛、ちょっと不思議風味だが、盛り上がりには欠ける。
別の話が出てきて、途中までは纏りの悪い連作短編みたいだ。最後にはひとつに纏るが。せつない系の物語を書きたかったのかもしれないが、いまいち力量不足か。淡々としすぎでせつない気分には浸れない。文章は下手でもないので、一発屋で終わらず頑張って欲しいところ。
このラノベは、もう少しメリハリが欲しかった。
★★★
下妻物語・完―ヤンキーちゃんとロリータちゃんと殺人事件
2007年8月23日 読書ISBN:4093861536 単行本 嶽本 野ばら 小学館 2005/07 ¥1,470
ダメ親父のバッタもの商売が原因で尼崎を追われ、茨城県は下妻に越してきたロリータ少女・竜ヶ崎桃子は、絶滅寸前のヤンキー少女・白百合イチゴと出会い、ふたりは無二の親友となった(ここまで前作。ただし、親友については桃子は認めていない)。桃子は、大好きなブランドBABY、THE STARS SHINE BRIGHTでモデルをやるようになっていたイチゴと、連れだって代官山へ行くようになっていたが、ある日いつものように高速バスに乗ると殺人事件に巻き込まれ、足止めを食らってしまう。殺されたのは歌舞伎町のヤクザの幹部。アリバイがないのと疑惑たっぷりの見た目で、イチゴに容疑がかけられる。桃子探偵は真犯人捜しを始めるが…。
一作目に引き続き、暴走する冷酷なロリータ。その容赦の無い機械のような性格がいい味出しています。ヤンキーのほうが真っ当な人間に見えて仕方が無い。ちょっと馬鹿だけど。
今回は、二人揃って留年だ! ヤンキーは単に頭がアレだから留年で、ロリータのほうは、体育の授業で体操服を着るなんてエレガントじゃないという理由で拒否していたから成績が1になってしまい……。そんな二人が東京から下妻に帰るために乗車したバスで、殺人事件発生。とはいっても、ミステリー要素はあまりないので、推理小説として読んではいけません。
留年決定な春休みなので、BABY,THE STARS SHINE BRIGHTでアルバイトをしようと決める桃子。初日から凄い! 自分のイメージ通りの服を作ろうと集中しすぎで、声をかけられて我にかえるとすでに翌日の昼過ぎだったりして。目の前にある服は常人ではとても作れないデザインになっていて、驚愕する社長。天才伝説の始まりか!?
前作での重要人物が●●だったり、●●でしまったりなのは……だけど、面白い。これは映画にならないのだろうか?
ANGEL2
2007年8月22日 このライトノベルがすごい?ISBN:4829162384 文庫 深月 晏子 富士見書房 2004/01/10 ¥588
癒し系ラブ・ミステリー第二弾! 父を亡くし、おまけに失恋した少女・舞夢は、父の残した莫大な借金のかたに、結局〈ホテル黒城館〉に住み込みで働くことになった。大好きだった父の秘密が、オーナーの意外な一言で明らかになったとき、舞夢は……。
二作目。これで終わってるけどね。
今回は、ホテルがテロリストに占拠されてしまう。一見、アラブ系過激派のフリをして、無理な要求をする敵集団。しかし、それは隠れ蓑で本当の目的は、このホテルに隠されている世界各国の黒いリスト……。
しかし、盛り上がりに欠けるなぁ。キャラの会話に頼りすぎじゃないだろうか。始終、ピーチクパーチク喋り捲りだから、物語のスピードは上がるけれども、会話に含まれない部分の描写が無いのは困りもの。ノリと勢いだけはあるけれども、これでは絵がついていないマンガだ。ちょっと前作よりも劣化してしまった。だから、二作で終わってしまったんだろうけど。
このラノベは会話に頼りすぎ。
★★
ISBN:4062139596 単行本 中村 文則 講談社 2007/06/12 ¥1,575
浮浪者たちに輪姦されている精神薄弱の女・やっちりを目撃した私と友人・冴木。夜の工場跡地で体験した、暴力の光景。後日、やっちりは死体となって発見される。少年時代に体験したひとつの死。二人の生き方は、成長するにつれだんだんと社会から逸れていってしまう。ある日、大人になった私のもとに冴木から電話がかかり、二人は再会する。数日後、私が自宅に帰宅すると自分の部屋の中で、ひとりの女が死んでいた。それは、よく指名するデリヘルのエリコだった……。心の闇、欲望、暴力とセックス、そして人間とは何か。暴力と人間をテーマに描く芥川賞作家が全精力を傾け、ミステリアスな物語とスピード感あふれる文章で描き出した傑作長篇小説。
ある日、私のベッドの上で、女が死んでいた
帯に書かれた強烈なキャッチ。
ミステリーとしてはありがち設定だが、これは推理物ではない。当初は自分が疑われるものの、警察の調べにより、すぐに犯人が主人公の友人だと発覚する。彼は連続強姦魔として手配されていた!
幼少の頃、二人で家出しようとした夜、廃工場に住み着く浮浪者達が集団で女の浮浪者を襲っている現場を見てしまう。それが原因で狂っていく二人の人生。この強烈な体験故に、親友だった男の性癖に異常をきたして犯行に及んでしまった。そういう物語なのかと思いきや、遺書代わりにメールが届く。そこには、どんどん追い込まれていく男の悲痛な叫びが……。結局、真実が語られぬままに男は自決してしまう。本当に彼が犯人だったのか判らないままになってしまった主人公は、真犯人かもしれない女と……。
これも力作だが、重くて暗い。読了後、安易に悪を描いたノワール小説みたいな胃のむかつきは覚えないけれども、この手の物語は精神的に疲れる。
ISBN:4087748502 単行本 荻原 浩 集英社 2007/03 ¥1,680
木はすべてを見ていた。ある町に、千年の時を生き続ける一本のくすの巨樹があった。千年という長い時間を生き続ける一本の巨樹の生と、その脇で繰り返される人間達の生と死のドラマが、時代を超えて交錯する。
千年の時を生きる大樹を軸に、二つの時間が交差する短編の連なり。短編同士も微妙に繋がっている。枠組みとしては面白いけど、救いの無い話ばかりが続いて憂鬱な気分になる。
謀反により山中へ逃れたものの、妻も自らも息子も命を落とす国司。太平洋戦争で落命する少年。大樹の枝で首を吊ろうとする少年。幹の側に穴を掘り、人を埋めようとする極道。千年樹の周りで繰り広げられる陰惨な人間模様で、樹が禍々しい物に思えてくる。全ては、虫けらの如く惨めに死に逝く人間が、愚かな生き物であるが故の出来事なのだが。
この作者は、人間の愚かさ加減を書くのが得意ですな。読んで人間が嫌いになる話が多い。読み終わってもハリウッド映画みたいな爽快感は微塵も感じられない。