占星師アフサンの遠見鏡
2007年10月16日 SF特集ISBN:4150110530 文庫 内田 昌之 早川書房 1994/03 ¥756
人類同様の知性をもつ恐竜キンタグリオ一族は、世襲制の国王のもとで中世ヨーロッパ的な文明社会をきずいていた。アフサンは見習い占星師。宮延占星師の弟子として勉学にはげむ毎日だが、神を絶対的なものと考え、森羅万象を非科学的に解釈する師の教えに不満を感じてもいた。そんな彼が最新発明品の“遠見鏡”を手に観察をはじめたとき、その眼前に開けた新しい世界観とは。真実を求める少年恐竜の成長を描く冒険SF。
表紙を見て焦った。ただの肉食恐竜にしか見えないやつが、スケッチブックのようなものを抱え、遠見鏡を持っていたから。(新しい表紙しか見つからなかったのだが、古いほうはこれよりもっとベタベタな恐竜人間のイラストだった。)
一見、恐竜人間を主人公にしたファンタジーみたいに思えるのだが、世界の真実に近づくにつれ、一気にSF化してくる。中世レベルの文明を築いているキンタグリオ族に、占星師見習いのアフサンがいた。彼は、神と出会う巡礼の旅で、神とされるモノの正体に気付くのだが、自分がいる世界に終末が近づいている事を知る。
彼は帝都に戻り、危機を訴えるのだが、宗教家の陰謀によって捕らえられ、悪魔として両目を潰されてしまう。なんだか……。人類以外の知的生命体でも、神が無力無能で、神を信じる者が馬鹿で、神を信じる者をさらに信じる信者が馬鹿以下の糞なのは共通仕様なのでしょうか? 科学が必ずしも正しいとは限らないが、宗教が正しかった事など、過去一度も無かったと思う。
この物語、三部作として完結しているのだけど、残念な事に邦訳されているのは第一部のこれのみ。恐竜人間が主人公だから、あんまり売れなかったんだろうな。マニアには評価が高いのだが、やはり商業的には不作だから残りが放置されたままなんだろうな……。今回が恐竜少年ガレリオで、次は恐竜少年ダーウィンらしい。続きが読みたいです。お願いします、出版して下さい。
ISBN:4334924468 単行本 荻原 浩 光文社 2004/10/20 ¥1,575
知っているはずの言葉がとっさに出てこない。物忘れ、頭痛、不眠、目眩――告げられた病名は若年性アルツハイマー。どんなにメモでポケットを膨らませても確実に失われていく記憶。そして悲しくもほのかな光が見える感動の結末。上質のユーモア感覚を持つ著者が、シリアスなテーマに挑んだ最高傑作。
若年性アルツハイマーに襲われた主人公の悲劇。最初は単なる物忘れかと思ったが、病院で受けた検査の結果、若年性アルツハイマーである事を知らされる。突如として失われてしまった未来、急速に壊れていく自分自身を必死で繋ぎ止めるための絶望的な戦いが始まる。
膨れあがるポケットのメモ、取引先とのアポは忘れてしまうし、行き先が判らなくなり路頭に迷う。やがて部下の裏切りで会社に知られてしまい、使い捨てのごとく閑職へと追いやられてしまう。もっとも、恨むべき裏切り者の顔すら思い出せなくなるという悲劇が待ち構えているのだが。心無い仕打ちである。会社に尽くした結果がこれでは浮かばれまい。会社というものはかくも理不尽で冷たいものであるが、閑職にまわされるだけマシと言えるかもしれない。優良企業でなければ、速攻でクビになるだろうしなぁ。今時は、人間を使い捨てにする会社だらけですから。
この病気が単なる痴呆と異なるのは、ほぼ確実に死に至る病であるという点。海外では回復例も見られるものの、日本においては病の進行を遅らせる薬しか認可されていないという現状。すでに欧米で臨床段階へ入った新薬を、非加熱製剤に懲りてなますを吹きまくる厚生労働省が認可する日は来るのだろうか……。
このドラッグラグ問題、今TVでもやっていた。米国でかかる認可期間は一年半、日本では四年。これが待てない患者も多い。アメリカではすでに治療が始まっているのに、日本では認可されていないがために、無念な思いで死んでいく患者がたくさんいるのだ。いや、無念という言葉では済まされないだろう。アメリカ人として産まれていたら助かったかもしれないのに、日本に産まれてしまったがために死ぬのだ。言い換えよう。日本という国家の不作為(人手が足りないから認可に時間がかかりますという言い訳)によって殺されるのだ。
ドラッグラグ問題は、疲弊国家日本に存在する数え切れない程ある不具合のごく一部でしかないかもしれない。しかし、たったひとつであっても改革出来るならば、意義の大きい一歩である。舛添大臣が現状を打破する事が出来るか否か!? これで舛添大臣がやり遂げたなら、彼以外の歴代厚生労働大臣は全員が無能フラグ成立という事で(笑)。
ISBN:4885365392 単行本 平谷 美樹 つり人社 2005/12 ¥1,890
岩手沿岸北部を流れる「歌詠川」には18kmの毛鉤釣り専用区間が設定されている。川を守るリバーキーパーたちのほろ苦いガイドの日々、理想の川造りに残りの人生を懸けた漁協の長老、釣りにのめり込む夫と家族の葛藤、川の小さな命を守るために大人と闘う少年。そして訪れる、大災害の危機―。歌詠川の明日に希望を託した男たちの夢と哀しみを鮮やかに描き切った快作。
釣り好きなあるサラリーマンが、日常に嫌気が差し、辞めるつもりで会社をサボって釣りをするのだが、思い直して会社へ戻る事にする。その男が釣りに行っている事を知り、駆けつけた後輩が代わりに辞めてリバーキーパーになってしまう。
ストレスをガイドに発散する嫌な客が来たり、ある物を護ろうとして釣り人に石を投げる少年が出てきたり、密猟者を捕らえようと張り込んだら意外な姿をした相手が現れたり、歌詠川を舞台に様々な事件が起こる。フライフィッシングに興味が無い人が読んでもそれなりに楽しめる。
初め、同姓同名の別人が書いたのかと思った。普段はSFを書いているのに、何故か釣り小説、しかもつり人社から出ている。どうやら、趣味のために書いた話らしい。専門用語が多いので、釣りをしない人間には辛いものもあるが、知らない言葉は巻末にある用語集で調べられる。読み終えてからその存在に気づいたのは失敗であった。
DTM MAGAZINE 2007年 11月号 [雑誌]
2007年10月9日 読書ISBN:B000VZD6F0 雑誌 寺島情報企画 2007/10/06 ¥1,500
「初音ミク」を特集したDTMマガジン2007年11月号の弊社在庫分は完売しました。ありがとうございました。増刷の予定はございません。書店のほか、楽器店やコンピュータ専門店、家電量販店の書籍コーナなどにはまだ残っている可能性がありますので、お求めのかたはそちらもお探しください。
完璧に出遅れました。これを知る前日に発売、速攻でネット販売が全滅。周辺の大手書店やPCショップや家電量販店にもございませぬ……。ボッタクリせどりが5000円くらいつけてるけど、それなら本体買うって……。結局、みっくみくにはされたけれども、縁が無かったという事で、遠くから生暖かく見守るだけにします。そのうち攻略本が出るだろうから、それでも読むか。ところで、第二弾が「とかち」だという噂は本当だろうか!?
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ISBN:4048735918 単行本 朱川 湊人 角川書店 2005/03/29 ¥1,575
大を続けるオゾンホールを食い止めるため、化学物質ウェアジゾンが開発された。しかし、それは思わぬ副作用をもたらすことに。散布した空で夕焼けの色が消えてしまうのだ。開発者のテレサは八十数歳のアメリカ人女性科学者。テレサは胸の奥に秘めたある想いを達するため日本へ向った。日本に着いたテレサは小学校三年生のトモルとキャラメルボーイと名乗る若者と数奇な運命で巡り合い、最後の夕焼けのポイントへと向う。オール読物推理小説新人賞、日本ホラー小説大賞短編賞を受賞。彗星の如く現れた小説界の大本命・朱川湊人が贈る現代の寓話。
オゾン層が致命的なまでに破壊され、極地だけではなく、不意に発生し移動するオゾン・ホールまで出現する近未来。ある科学者が穴を塞ぐための化学物質を作り出すのだが、それには世界を変えてしまう副作用があった。
世界を変えるとは言っても、少なくとも肉体的な影響は無い。基本的に、安全無害な物質なのである。問題は、その物質を大気に散布すると空の風景が破壊され、夕焼けが見えなくなってしまうのである。夕焼けの代わりに出現する、ひび割れた灰色の空。未来世界では、人類の存続と引き換えに、夕焼けを見る事が出来ないのである。
美しい空が失われる事を悲観して自殺した美少女シャルロッテを初の殉教者として、国連や科学者に対するバッシングが激化して行く。そんな中で、イエスタディと名乗る人物が、化学物質を散布するための専用飛行機をハイジャックするのだが、彼の過去には、ある痛ましい出来事が秘められていた。
夕焼けって、無いと困るものだろうか? 少なくとも私は全く動じない。夕焼けと生存どちらを選ぶかと問われたら、迷わず夕焼けを捨てる。ほぼ全ての人類が行って来た事に対する当然の報いなのであるから、夕焼けが見られなくなる事に対する抗議行動をする権利等、存在しない。文明の利器に一度として頼らず、アマゾンやチベット奥地で原始的な生活を続けてきた人ならともかく、我々は多かれ少なかれ、オゾン・ホールを作る事に加担してきた筈である。
結末は少し幻想的と言うか、オカルトっぽいというか、別次元だか異世界だかあの世だか知らないけど、そういう代物を出してくると萎える。SFとまでは言えない、ちょっとユルい感じの物語。
ISBN:4152088389 単行本 機本 伸司 早川書房 2007/07 ¥1,680
ファーストコンタクトはカラオケボックスから始まった−−日本最後の有人月飛行クルーたちは、謎の信号の発見に“裏ミッション”の刊行を決意するが……『神様のパズル』の著者がおくる最新長篇。
最新作なのに、今までで一番評価が芳しくないのが気になっていたのだが、なるほど、これは前の三作品と較べて良くない。
日本初の有人月面着陸プロジェクト。しかし、月の向こうに正体不明の何かがある事を知ってしまったプロジェクトメンバーが、極秘に計画を変更してその何かを突き止めようと画策する。陰謀の舞台となるのがカラオケボックスなのだが、本筋には全く関係ないのに、この店舗のメイドロボがやたらと部屋に入って来るのだ。これ、その路線の萌えでも狙っているのか!? それにしては、メイドの描写は皆無、しかし何十回も部屋に出入りしてきて非常にウザイ。ここまでしつこいと逆に萎える。森博嗣の「カクレカラクリ」で、むやみやたらと出てくるコカ・コーラ位にしつこくてウザイのである。
プロジェクト無視もウソ臭いし、ほとんどの登場人物が若手だけで構成されているのもラノベっぽくて現実を無視した感じである。命令無視で計画は台無しに。しかも船長が裏切って月面着陸船を分離し、離脱してしまう。
残された二名で無理やりその場所に行ってみれば、エイリアン文明の痕跡どころか何も見つからない。正体不明の何かが彗星へと移動した事を知り、強引にそこまで行くが、衝突して宇宙船は故障、捜し求める何かは見つからない。帰還する事も出来なくて絶対絶命に! もはや生還は不可能かと思いきや、船長が迎えに来て、NASAに話をつけたからアメリカの月面基地に着陸出来るというご都合主義な展開になる。
しかし、一番盛り上がるだろうし、書き込まなければならない救出シーンが一切書かれてはいない。助けに行く直前で章が変わり、そこではすでに救出後の月面基地でエピローグとなっているのである。巨額の計画費をご破算にしてまで出かけて、この腰砕けな結末は一体……。
今までもユルユル感が多いためにSF好きからは一段低く評価され、絵に釣られたラノベラーは内容に着いて行けずに低評価という微妙な位置にいた作家だが、今回は本当に酷い。これはダメだ。SFにするかラノベにするか、方向性をちゃんと決めたほうが良いと思う。SFとラノベを足して2で割ったような内容では、両方からダメ出しされるだろう。
一作目は宇宙の作り方、二作目で救世主の作り方、三作目が恒星間宇宙船の作り方。今回はプロジェクトの壊し方!? だんだんスケールが小さくなって行くなぁ。
新機動戦記ガンダム W Endless Waltz 特別篇
2007年10月6日 映画DVD バンダイビジュアル 2002/01/01 ¥6,300
テレビシリーズ「新機動戦記ガンダムW」の後日談として発表されたOVAシリーズを元に、新作映像を加えて再構成した劇場版。従来の「機動戦士」シリーズとは異なる世界観を持ちながらも、ガンダムの名に恥じないハードなストーリー展開と、美少年キャラクターによって高い人気を博した作品でもある。アフターコロニー196年、戦争は終結し、地球圏統一国家が誕生した。が、マリーメイアを中心とする反乱軍の手により、再び平和は破られる。一度は手放したモビルスーツに乗り込み、ヒイロたちはまたしても戦地へと赴く。モビルスーツを武器とみなし、それを手放すまでを描く展開が新鮮に感じられる。演出面でも、劇場版ならではのイフェクト処理が実に素晴らしい。
夜中にやっていたので観てしまったが、これは本編観ていないと訳判らないだろうなぁ。うちの親がガンダムだからとよく判らずに録画していたが、途中で観るの止めてしまう気がする。
Wの完結編、若しくは後日譚といった感じだが、登場人物全ての役回りが非常にクサイ。元々フィクションであるにも関わらず、ヤラセが多量に混入したノンフィクション・ドラマを見せられたような気分になる。台詞もコテコテなので、これは笑うべき所なのか!?
最近のパワレルワールドガンダムには定番で出てくるシャアもどきな人が、マスク外して登場したので素顔が見えて良かったというのが、唯一の収穫か? それにしても、なんとなくカトル様に似ているぞ。大人になったらあんな感じになるのでは!? もしかして、お兄さん? そんな訳無いか……。どうでも良いけど、トレーズの娘がミネバもどきにしか見えない。
微妙評価な位置付けのWではあるが、聖闘士(或いは天空戦記でも良い)方式でやたらと美少年Gパイロットを出してきて、男の子アニメだったガンダムに腐女子層を大量に取り込んだ功績は、意外に大きいのではないかと思う。
評価:B
この日、新しいガンダムが始まった。主題歌がラルク、キャラ原案は高河ゆん……。そして、宇宙世紀でもアフターコロニーでもアフターウォーでもなくて、西暦!! なんとなく力が入っているのは判るけど、どうなる事か。「種」や「種死」みたいに転ばないで欲しいところである。
三ヶ月の魔法
2007年10月5日 このライトノベルがすごい?ISBN:4757707118 文庫 上島 拓海 エンターブレイン 2002/01 ¥672
突然「意思の力」でモノを動かせるようになった長野県松本市の市民たち。しかし、高校2年生の主人公"大町大五"だけは、この「魔法」を使うことが出来なかった…。そんな時、彼の前に現れたイングランドの魔法使い"武石エドワード"によって大五の運命は大きく変わっていく…。
ある日、松本市に住む人々ほぼ全員が魔法を使えるようになってしまった。全員ではないところがミソである。唯一、魔法が使えないままの少年が主人公となるのだが、みんなで空を飛んでいるのに自分だけ凡人という状況は耐え難いだろうなぁ。魔法の効果範囲は松本市周辺だけで、その外側に出ると使えなくなってしまう。逆に言えば、市外から入ってきた人々は魔法が使えるようになってしまうのだ。魔法効果によって賑わい、景気が良くなる松本市。しかし主人公だけは魔法が使えない!
このように、設定としては面白くなりそうなのだが、終盤に向けての盛り上がりがイマイチ。この摩訶不思議現象を起こしているのが、グランと呼ばれる悪戯大好きな性悪魔法使いのジジイなのだが、飽きて来ると効果範囲内にいる人間を眠らせたまま去って行こうとするのだ。しかし、主人公だけは眠らない。魔法攻撃が効かないのである。魔法が使えない代わりにその影響も受けないという、類稀なアンタッチャブルだという存在だったらしい。
英国から派遣されてきた魔法使い組織の男エドワードと共に、グランと対峙する事になるのだが、バトルがまた盛り上がらない。癇癪ジジイとのヘタレな戦い。そしてその結末もショボ……。素材は良いのだから、もう少し何とかならなかったのかね?
真夏が舞台なので、眠らされている人々が夜に凍死する事は無いだろうという部分があるが、ならば道端で倒れている人々は日中に熱中症で死ぬのでは!? 日本語も物凄くおかしい部分があって萎える。下手とかじゃなくて、明らかに文章がおかしい。例えば78ページ。
もう一人いたジーンズの男が支払いを終え、キャッシャーからカウンターに行ったつかさに、つかさの父が声をかけた。
「ほぉ、あれがつかさのボーイフレンドか?」
と思いつつ、つかさは父親の背中をバンバン叩きながら、「あれは同級生の大町大五」とだけ言った。
(78ページより抜粋)
いろんな父がいるのならともかく、つかさの父しか出てないんだから、父で良いような気もするけど、重複程度ならばせいぜい悪文の範囲。しかし、その後の繋がりは!? つかさの父が「ほぉ、あれがつかさのボーイフレンドか?」と声をかけたのかと思ったら、その後に“と思いつつ”とあるから、声をかけたのは別で、この部分は思っただけの心の声か!? しかしその後に、つかさは父親の背中をバンバン叩くので、思ったという主語はつかさ? ラノベ好きな高校生あたりが勢いで書いて受かってしまったのかと思いきや、著者は結構な年齢だった。ならば、もう少し何とかならなかったのか!? プロなんだから、出版物になる前に、もう少しチェックしてあげたら良いのに、ラノベって編集者もレベル低いのだろうか?
このラノベは、日本語が変!
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ふしぎの国のアリス (POP WORLD)
2007年10月5日 絵本ISBN:4591092062 大型本 ぽっぷ ポプラ社 2006/04 ¥1,365
へんてこな白ウサギのあとをおいかけて、ふしぎの国にまよいこんだアリス。そこで見つけた、小さなびんのくすりをのむと、アリスの体はきゅーんと小さくなってしまったのです…。キュートでかわいい、新しいアリスの絵本。
絵本でありながら、絶対に子供よりも大人がたくさん買っているはずだ。チャールズ・ラトウィッジ・ドジソン(ルイス・キャロル)が創り上げた永遠の少女アリス、無論、その原型となったのは実在した人物アリス・プレザンス・リデルであるが、今となってはその面影はない。今や完全に、金髪の少女で青いエプロンドレスというのが定番となってしまったが、このイメージに固定したのはディズニーですか?
それにしても、これはヤバイ。中身は普通の「不思議の国のアリス」でしかないのだが、なんせ絵がコレだから……。検索かけたら「赤ずきん」と「おやゆびひめ」まで出てる。ポプラ社の策略に嵌ってしまいそうだ。
ひとり旅は楽し(中公新書1742)
2007年10月4日 読書ISBN:4121017420 新書 池内 紀 中央公論新社 2004/04/25 ¥756ひとり旅が自由気ままと思うのは早計というもの。ハードな旅の「お伴」は、厳選された品々でなければならない。旅の名人はみな、独自のスタイルをもっている。山下清の下駄や寅さんの革トランクにしても、愛用するには立派なワケがあるのだ。疲れにくい歩き方や良い宿を見つけるコツから、温泉を楽しむ秘訣、さらには土産選びのヒントまで、達人ならではのノウハウが満載。こころの準備ができたら、さあ旅に出かけよう。
題名に魅せられて……。ひとり旅って本当に楽しいと思う。どこへ、どのタイミングで行くか、行かないか、その決定権が全て自分にあるが故に、金銭的、時間的制約さえクリアすれば、思う存分に旅を楽しむ事が出来るからだ。誰かと一緒だと、自分の意のままにはならないから、どうしても不満が出てくる。
著者はかなりの旅名人に思えるが、それを鼻にかけず軽いエッセイか紀行文のようになっているのも良い。それにしても、「旅」とは特権階級にのみ許された最高の娯楽のひとつである。普通の会社に勤めたなら、まず旅に出られるような休みなんて貰えないからね。そんな事は無いだろうと思った方、貴方は優良企業に勤めているに相違ございません。弱き物の実態と現状を知らぬが故に出てくる世迷言……。リストラされ黒企業に転職して地獄を見ないためにも、せいぜい精進して下さいませ。
ISBN:4758432856 文庫 機本 伸司 角川春樹事務所 2007/05 ¥861
ヒマラヤで発生した氷河湖決壊。下流のダム湖に浮かび上がったのは古代の「方舟」だった。その内部から発見された木簡には驚くべきメッセージが秘められていて…。「救世主の作り方」を提示するSFエンターテインメント。
地球温暖化の影響で決壊したヒマラヤの氷河湖から流れ出てきた古代船。紀元前5000年頃の物と思われるその船からは謎の木簡が出てきた。果たしてこれは箱舟なのか!? 木簡に描かれた蓮模様は、古代言語の一種なのか!?
ヒマラヤの工事現場へ飛ばされていた主人公は凡人だが、押しかけてきたロータスと名乗る暑苦しいキャラによって事態が急展開。製薬会社の社員その他諸々を巻き込んでの謎解き。蓮模様がDNA情報だと判ったメンバーは、救世主を現世に誕生させようとするのである。
これが並のSFならば、完成するのはスピーシーズみたいに人類より邪悪な存在になるのが定番なのだが、機本伸司作品なのでもっとゆるい感じのままになるのだろうと思ったら、まさにその通り。生命倫理なんて無視して突っ走り、産まれて来たのは第三の目を持ち、背中に触手みたいなのがついた菩薩人間みたいな生命体。この事を独占したまま秘密にしておきたい超大国が陰謀を張り巡らし攻撃して来たので、全てをネットで公開して戦う事に!?
それにしても、「神様のパズル」と較べてラストがスッキリしない。
ご奉仕大好き! メイド本 エプロンドレスで尽くします
2007年10月1日 読書ISBN:4890486941 大型本 NANDY小菅 日本出版社 2003/11 ¥1,995
代表的メイドアニメ大紹介やメイド喫茶日本縦断など、メイドな貴方を徹底的に癒します。
MAID in ANIMATION―メイドさんが出てくるアニメ20選
横山三菜子メイド写真館
日本縦断メイドさんが居るお店
Special PRESENT
メイド喫茶ができるまで―Cafeブリジットの場合
特別付録 一般メイド学基礎論覚書
THE MAID徹底対談東京大学メイド研究会「一般メイド学基礎論の課題と展望をめぐって」
BOOK派の貴方に!!The MAID COMICS
メイドオンリー同人誌即売会 帝国メイド倶楽部
6分の1メイドさんドールを使った戦略シミュレーション めいどはんまー
某所で冥途特集をするために(というか、もうすでに始めている)勢いで買ってきた。後悔はしていない! でも、これが本棚に並んだまま急死したりしたら、ちょっとハズイかもしれない。
それにしても、表紙から濃いなぁ。中身もいろんな意味で濃いけど。メイドが出てくる出版物特集から、実在店舗まで幅広い。しかし、出版時期が古いので、移転していたり潰れていたりする場所もあるかもしれない。当然、出てくる実在店舗のメイドは入れ替わっているだろう。
ここまで氾濫してしまったメイドさんだが、果たして本物は実在するのか? メイド喫茶にいる人達は、メイドのコスプレをした人にすぎず、本職じゃないですからね。とりあえず、日本で雇っている人はいないよね!? タイにはいるらしいけど、さすがに普段着で雇われているだけでは、単なるお手伝いさんだし。イギリスに住んでいた人が、在住期間にメイドを雇っていたらしいから、没落していない英国貴族の豪邸には本物がいそうだけど。
ISBN:408772736X 単行本 椎名 誠 集英社 1990/03 ¥1,325
カタストロフィのはるか後、異常生物が徘徊する腐敗都市。そこは“広告”が支配する驚愕の未来だった。黄金時代のSFの香気がただようファンタスティックなシーナ・ワールド。第11回日本SF大賞受賞作。
分厚くて躊躇してしまったが、奇妙すぎる未来世界が描かれていて、読み始めると一気に最後まで行ってしまった。様々な危険生物に侵食され、寸断されてしまった人類世界。一体何が起こったのかは明かされず、二人の兄弟が失踪した父を探して都市へと旅立つ。
途中で正体不明の男が仲間になるが、最初に入った町で撃ち殺されてしまう。その男は人間ではなかったのだ。死んだはずの男はボディを修理され、軟禁状態の兄弟の下へ再び現れる。三人は地上を走る巨大生物に乗り、海岸付近まで逃走する。苦労の末、目的地へ。進入経路が途絶えた都市に、地下鉄跡を抜けて入る兄弟だが、そこは広告に支配される無人地帯だった。
意図的だろうが、様々な物事が説明されないままに物語が進行するので、よく判らない事が多すぎる。これは、気にせず先へ進むしかない。物語が佳境に差し掛かった頃には、謎の答えが見えて来るだろう。だが、最後になっても、何故世界がこのように変貌してしまったのかは語られない。世界の全貌が全く掴めないままに、主人公達は再び旅立つのだ。紀行文だけではなく、SF小説を書いても、やはり「旅」なのですね。
ささきむつみ画集 ART WORKS 1998-2005
2007年9月27日 読書ISBN:4840232954 大型本 ささき むつみ メディアワークス 2006/02/28 ¥2,940
ささきむつみ代表作から厳選した至高の100点を1冊に。『双恋』『Memories Off』『HAPPY★LESSON』3つの代表作からイラスト81点をセレクト。その他、商業作品、同人誌などで描かれたイラストも32点収録。表紙をふくめイラスト3点を描き下ろし。
今では代表的な萌え絵師の一人であろう、ささきむつみ。ああダメだ。最近、この手の絵柄だと反応して買ってしまう。どんどんアキバフィールドへと吸い込まれていく。なんだか、電車男の真逆を生きている気がしてきた。イケメン→Aボーイへの道!? 遠すぎるから聖地まで巡礼しに行く気は無いけれども。
何事も、一線越えてしまうと歯止めが利かなくなる。ワインだって極めるために、多分1000万円は飲んでるからなぁ……。「血はカベルネ、涙はシャルドネ」とか言ってる女優がいるけど、血液中に含まれるカベルネ濃度は負けていない自信あるよ。毎年1000万ワイン買う知り合いのお姉様には負けたけど。
脱線した……。そんな訳で、歯止めが効かなくなって買いました。「双恋」「Memories Off」「HAPPY★LESSON」を中心に、作品群から厳選された100点を収録。圧巻です。
作者は性別非公開というスタンスだが、wiki情報によれば、どうやら男らしい。ここでも、女みたいな名前だと男の法則が……。別にどっちでもいいけど。レビューで、凄く気にしている人がいたけど、そんなに気になるならコミケでも行って確認すれば判るだろうに……。
ISBN:4334925324 単行本 宮下 奈都 光文社 2007/01/20 ¥1,680
別に凝った素材が使われている訳でもなく、意表を衝くような展開が待っている訳でもない。実家が営む骨董品屋と、就職後に出向させられる高級靴店という特殊な環境は出てくるけれども、それ以外は目立った大道具が使われる訳でもなく、むしろ淡々とした日常を描いているにすぎない。にも関わらず、雰囲気だけで終わってしまう純文学系作家と異なり読み応えがあるのは、完成度が高い文章の成せる業だろう。最近出てきたばかりの作家だとは思えない、澱みの無い洗練された文章が心地良い。何作も仕上げてなお、この水準に到達しない作家なんて腐るほどいるのにな……。やはり、小説は努力じゃなくて才能だと思うのですよ。下手な人は何作仕上げても、下手なままだからね。これ、下手な芥川賞受賞作より上なんじゃないか?
物語は主人公の少女時代から社会人になるまで、スコーレ(学校)No.1から順にNo.4まで進んで行く。器量の良い妹にコンプレックスを抱く少女時代。親族に淡い恋心を抱く高校時代。妹と離れたくて遠くの大学を受け、やがて輸入商社へ就職したは良いものの、高級靴専門店へと出向させられて戸惑う新人の時代。最後は本社へ戻されて血の通わない数字と格闘する無味乾燥な日々の中で、欧州への買い付けへ行くことになり、水を得た魚のように仕事が乗ってくるお話。
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生きづらい<私>たち (講談社現代新書1740)
2007年9月22日 読書ISBN:4061497405 新書 香山 リカ 講談社 2004/10/19 ¥735
「心がバラバラになって」
「消えてしまいたい」
境界を生きる若者たちを解き明かすすべての日本人への処方箋
●死にたいわけじゃないのに自傷せずにいられない
●現実を受けとめきれない傷つきやすい私
●家出するより家族を殺害
●2駅離れた彼女の家は「遠すぎて」会いに行けない
●トラウマがなくても人格がすぐ解離
●記憶のない買い物
●プロポーズされたのも忘れてしまう
●落としがちな命
●整形し「自分じゃなくなってほっとした」
様々なキティさんが登場して、笑えば良いのか憤れば良いのか……。最近、キティな人が増えたような気がすると思いきや、単なる気のせいではなくて、実際に増殖しているのではないかと感じ始めた今日この頃。これって、一種の先進国病なんでしょうか? どうも、先進国に増えている気がしてなりません。
医学の進歩によって症例の分析が進むから、なおさら病気(と分類されてしまう状態)が増えてしまうのか、社会環境その他諸々が要因となっているのかよくわからないけど、いつの時代でも生きづらいのであって、過去数千年と比較しても現在がとりわけ劣るという訳ではない。しかも、明らかに日本より生きづらいであろう“失敗国家”の人々よりも、日本人にキティが増殖しているのを見ると、これは一種の甘えとしか思えないのだが。
ここで書いてるキティはサン●オのキャラじゃなくて、頭がキ印な人の事なので、念のため。
ISBN:4022579293 単行本 松本 仁一 朝日新聞社 2004/07/16 ¥1,470
フセイン大統領が捕まったとき、日本人外交官が殺害されたとき、若者三人が誘拐されたとき、いつもそこにあった―。「悪魔の銃」、カラシニコフ。ひとびとや国家にとって、銃とはいったい何なのだろう。朝日新聞大好評連載、待望の書籍化。
悪名高き自動小銃を巡るノンフィクション。第三世界の悲惨な現状を、単に銃の責任にせず、その背後にある構造的な問題点にまで迫る。カラシニコフ本人にもインタビューを行った力作である。安易にカラシニコフ氏や銃を悪者扱いせず、何故、世界にこの自動小銃が蔓延したのかを探っていく。
アフリカを中心として、世界に散らばる失敗国家。そこでは国の運営や発展等に全く無関心の独裁者が、油田や鉱山といった権益を私物化し、実入りの良い首都周辺、空港といった重要拠点のみを支配する。取り残された地方や農村地帯は疲弊し、国の富を狙って武装勢力が蜂起する。彼らも国家のためではなく、独裁者が啜る甘い汁を横取りしたいだけなのだ。ゲリラは扱いやすい子供を誘拐して子供兵に仕立てる。カラシニコフは過酷な環境でも故障しにくく、取り扱いが簡単なので子供でも1週間の訓練で使えるようになる。その性能は桁違いで、ベトナム戦争やイラク戦争でも、米兵は故障した自軍装備を捨て、敵兵から奪ったカラシニコフを使用していたり……。
失敗国家ではテロ組織の関与が疑われる、謎の建物が存在する。国土が疲弊し、まともな購買層が存在しない地方に謎のコーラ工場があったりするのだが、そういう不審な建物のいくつかは、実際にテロ組織の秘密工場だったりするのだろう。独裁者が統治に関心を示さず、地域を見捨てた国家では、資金を獲得するために、テロ組織と密約を結んでも、何ら不思議ではない。そういう失敗国家にせっせと資金を供給する日本……。金をばら撒いた後の使い道に無関心でも、資金援助によって独裁者がより強大化するとなれば、結果的にテロ組織が無法地帯で活動する土壌を作るのに貢献している事に他ならないよね!?
なんだ、世界最大のテロ支援国家は日本だったんだ!(笑)
アナスタシア―消えた皇女
2007年9月20日 読書ISBN:4042778011 文庫 広瀬 順弘 角川書店 1998/07 ¥1,050
1920年2月、一人の若い女がベルリンの運河に身を投げた。彼女はすぐさま病院に収容されたが、所持品から身元を明らかにすることは出来なかった。翳りのある青い瞳、気高さの漂う身のこなし。ロシア宮廷について豊富な知識を持つこの不思議な女性は人々の噂になり始めた。驚くべきことに、彼女こそ、ロシア最後の皇帝ニコライ二世の娘、アナスタシアではないかというのだ。皇帝一家はロシア革命の際、全員銃殺刑に処せられたとされている。果たして、この女性は、真実、ロマノフ家の生き残りなのだろうか…?一人の女性の数奇な運命を綴る、今世紀最大の歴史ミステリー。
アナスタシアらしき女性がベルリン運河に身を投げたという話は聞いた事があったが、そこで死んでしまったとばかり思っていた。実際には、すぐに助け出されていたのだが、もしも本書に書かれた事が本当ならば、ディズニー映画とあまりにも異なる凄惨かつ衝撃の事実に愕然とする。果たして彼女は本物のアナスタシアだったのだろうか? 今となっては謎に包まれている。
一度は彼女をアナスタシアだと認めつつも、ロマノフ王朝の海外資産を狙い彼女を否定する亡命貴族達。その真偽を巡って長きに亘る争いとなる。数奇な運命を歩んだアナスタシア。本書はノンフィクションの形になってはいるが、どこまでが事実なのか混乱してくる。
それにしても、ロマノフ王朝の遺産はどこへ消えてしまったのだろうか。皇帝一家のものとされる遺骸を詳しく調査しないのも、アナスタシアについて曖昧なまま放置しておくのも、真実が白日の元へ晒されると都合が悪い何者かが、闇へ葬り去ろうとしているからではないのか!?
エレキ源内 殺しからくり
2007年9月13日 読書ISBN:4087753425 単行本 米村 圭伍 集英社 2004/10 ¥1,890
平賀源内の娘にうまれたのが血の因果、つばめが巻き込まれた源内秘宝を巡っての、大田直次郎(狂歌師・四方赤良)、娘武芸者、黒頭巾の一団、軽業一座、忍者…入り乱れての大騒動。黒幕の正体を暴かんとする、つばめの巻き返しはなるか。
えっ!? これ源内が主役じゃないのか。いきなり死んでるし……。まあ、表紙見たら描かれているのが源内じゃなくて女の子だけどね。
事件を起こし捕らえられた源内は、獄中で死んでしまうのだが、どこかに隠された源内秘宝をめぐり、各勢力が暗躍する。源内は、幕府中枢の恐ろしい陰謀劇に加担していたのである。
という訳で、源内本人はアッサリと死亡フラグが成立してしまい、主人公となるのは平賀源内の隠し子つばめ。将軍の座を狙う一橋家の陰謀に巻き込まれて酷い目に。さらには田沼派も先代将軍が暗殺された証拠を掴もうと、源内秘宝を狙って来る。さらに、朝廷隠密みたいなのまで……。
他の話みたいに二転三転はしないけど、ラスト付近の源内秘宝は奇妙奇天烈な大仕掛け。今なら何でもない電気やライターも、この時代だと最先端か!?
ISBN:4809674215 単行本 鷹音 美緒 東洋出版 2002/09 ¥1,050
「ネコ岩の下の猫を掘り出してはいけない」。突然パソコンに映し出された謎のメッセージ。あくる日、ゑい子の頭の中には猫が棲みついていた。幻覚か?現実か?「猫と暮らす」「猫の人語発話についての研究序説」「続・猫の人語発話についての研究序説」の三部作で「頭の中の猫」の謎に迫るエンターテイメント哲学小説。
ストーリー自体はホラーっぽいのだが、怖くはない。突然、画面に表示された「ネコ岩の下の猫を掘り出してはいけない」という文字。その後、主人公の女性は新車を届けるアルバイトで、駐車スペースにある岩が邪魔だから掘り起こすよう納入先の男から言われるのである。
岩を掘ってみると、それは猫の形をしており、しかもその下には猫が埋まっていた! しかも、その猫が動き出すのだ。彼女は埋まっていた猫を連れ帰るのだが、翌日になるとその猫は骨だけになっており、頭の中に居場所を移していた。それから、頭の中に住む奇妙な姿の猫が増え始め、猫の世話で日常生活に支障をきたし始めた彼女は、この現象を解明しようとするのだが……。
ホラーになりそうでならない中途半端さ。悪意のある人間が数多く出てきて、オカルト要素もあるが、盛り上がらないままに話が終わるのは惜しい。