長門有希の100冊
01 ギリシア棺の謎 エラリー・クイーン
02 エンディミオン ダン・シモンズ
03 ウロボロスの偽書 竹本健治
04 双頭の悪魔 有栖川有栖
05 魍魎の匣 京極夏彦
06 ぬかるんでから 佐藤哲也
07 クレープを二度食えば 自選短編集 とり・みき
08 誰彼 法月綸太郎
09 夏と冬の奏鳴曲 麻耶雄嵩
10 猶予の月 神林長平
11 世界のSF全集12 R・A・ハインライン
12 バブリング創世記 筒井康隆
13 〔完本〕黒衣伝説 朝松健
14 パスカルの鼻は長かった 小峰元
15 時間衝突 バリントン・J・ベイリー
16 3つの棺 J・D・カー
17 エイリアン妖山記 菊地秀行
18 順列都市 グレッグ・イーガン
19 ターミナル・エクスペリメント ロバート・J・ソウヤー
20 復活祭のためのレクイエム 新井千裕
21 精神現象学 G・W・F・ヘーゲル
22 伯母殺し リチャード・ハル
23 ゲーデルの哲学 不完全性定理と神の存在論 高橋昌一郎
24 赤い館の秘密 A・A・ミルン
25 十角館の殺人 綾辻行人
26 ヴィーナスの命題 真木武志
27 五百光年 草上 仁
28 暗号解読 ロゼッタストーンから量子学まで サイモン・シン
29 デュマレスト・サーガ E・C・タブ
30 名探偵の掟 東野圭吾
31 有限と微小のパン 森博嗣
32 魔術の歴史 エリファス・レヴィ
33 オイディプス症候群 笹井潔
34 ダンス・ダンス・ダンス 村上春樹
35 ジョーカー 清涼院流水
36 抱朴子 葛洪
37 殺人喜劇の13人 芦辺拓
38 世界魔法大全〔英国篇〕4 心的自己防衛 ダイアン・フォーチュン
39 妄想自然科学入門 菊川涼音
40 鋼鉄都市 アイザック・アシモフ
41 法の書 アレイスター・クロウリー
42 イーリアス ホメーロス
43 真ク・リトル・リトル神話大系 H・P・ラヴクラフト
44 僧正殺人事件 ヴァン・ダイン
45 衣裳戸棚の女 ピーター・アントニイ
46 殺意 フランシス・アイルズ
47 トンデモ本の世界 と学会
48 ガダラの豚 中島らも
49 悪霊の館 二階堂黎人
50 知性化戦争 デイヴィット・ブリン
51 タウ・ゼロ ポール・アンダースン
52 月に呼ばれて海より如来る 夢枕獏
53 イメージシンボル事典 アト・ド・フリース
54 椿姫を見ませんか 森雅裕
55 呪われし者の書 チャールズ・フォート
56 トリフィド時代 食人植物の恐怖 ジョン・ウィンダム
57 盗まれた街 ジャック・フィニィ
58 デッドソルジャーズ・ライヴ 山田正紀
59 暗闇の中で子供 The Childish Darkness 舞城王太郎
60 失われた時を求めて マルセル・プルースト
61 カラマーゾフの兄弟 ドストエフスキー
62 吉里吉里人 井上ひさし
63 サード・コンタクト 小林一夫
64 吸血鬼伝承「生ける死体」の民俗学 平賀英一郎
65 エイアリン刑事 大原まり子
66 落着かぬ赤毛 E・S・ガードナー
67 ブラウン神父の童心 G・K・チェスタトン
68 昭和歌謡大全集 村上龍
69 地球の長い午後 ブライアン・W・オールディス
70 リング・ワールド ラリイ・ニーヴン
71 エンダーのゲーム オースン・スコット・カード
72 たったひとつの冴えたやりかた ジェイムズ・ディプトリー・ジュニア
73 奇想、天を動かす 島田荘司
74 最上階の殺人 アントニイ・バークリー
75 夢の樹が接げたなら 森岡浩之
76 スターダスト・シティ 笹本祐一
77 陸橋殺人事件 ロナルド・A・ノックス
78 金なら返せん! 大川豊
79 海を見る人 小林泰三
80 ホッグ連続殺人 ウィリアム・L・デアンドリア
81 思考する物語 SFの原理・歴史・主題 森下一仁
82 ドグラ・マグラ 夢野久作
83 たそがれに還る 光瀬龍
84 ダーコーヴァ年代記 M・Z・ブラッドリー
85 ―――― −−−(未知の媒体に記録されているため探知不能)
86 少年エスパー戦隊 豊田有恒
87 ECCENTRICS 吉野朔実
88 太陽の簒奪者 野尻抱介
89 悪魔の系譜 J・B・ラッセル
90 底抜け超大作 映画秘宝編集部編
91 猫たちの聖夜 アキフ・ピリンチ
92 虎よ、虎よ! アルフレッド・ベスター
93 サード・コンタクト 小林一夫
94 五番目のサリー ダニエル・キイス
95 赤と黒 スタンダール
96 百舌の叫ぶ夜 逢坂剛
97 星を継ぐもの J・P・ホーガン
98 できるかなリターンズ 西原理恵子
99 海がきこえる 氷室冴子
100 ―― −(未知の言語で記述されているため解読不能)

長門有希の100冊、何年かかるかわからないけど、地道に頑張ってみようと思う。それにしても、ラノベに出てくるキャラのくせに、ラノベが見当たらない。むしろ、かなり渋いところばかり攻めていて素敵です。これ、入手するだけでも一苦労するんじゃなかろうか……。まあ、地球外知性体の言語で書かれているらしき書籍まで含まれており、コンプリートする事は人類には不可能なので、気楽にやりますよ。って、その前に元ネタの『涼宮ハルヒ』を読めよ! と、突っ込みが入りそうだ。はい、世界中のヲタクがハルヒダンスを踊りまくる中、未だに未読です。
ISBN:4086301229 文庫 浅沼 広太 集英社 2003/04 ¥600
財政難のソーマ一行に、公認勇者エクスレイの蒼き刃が迫る。その美技の前になぜか財布の紐が緩み始める(?)ソーマたち。「同じモノをもう一個付属されたら危ない所だった…」と青年が安堵した瞬間、衝撃の新製品がッ―!?史上最凶の勇者との決戦の地と化した世界樹都市で下される、魔王・ソーマの決断とは!?フェンネルのお料理短編もついて、ほんのりシリアス風味に…魔王、始めましたッッ。

魔王始めました、第3巻。久しぶりに続編へと進むが、相変わらず馬鹿っぽいラノベである。新たに訪れた町では門番に通せんぼされた挙句、劇を演じる破目に。さらに、舞台で下手糞な劇を演じる最中、公認勇者エクスレイが迫る。そして、何故かテレビショッピングを実演!? しかし途中からシリアス路線へと変貌、今回の敵は意外にも強い。単なるお笑いキャラじゃなかった。世界樹の精みたいな少女は公認勇者に殺されそうになるし、一行も全滅しそうになるし、ペンタの正体も暴露されるし、納豆は臭いしで、もう大変なのである。
 
 
 
このラノベは、カレーの具が……。
★★★

ママの狙撃銃

2007年8月17日 読書
ISBN:457523544X 単行本 荻原 浩 双葉社 2006/03 ¥1,680
福田陽子は一見ふつうの主婦。ある時、「もう一度仕事をしてみないか」??25年ぶりのKからの電話。幼い頃米国に住む祖父の元で暮らした陽子は、祖父からあらゆることを教わった。射撃や格闘技、銃の組み立て・分解。そう、祖父の職業は「暗殺者」だったのだ。

41歳の専業主婦、福田曜子。一見、平凡な中年女性だが、その正体は……。うーむ、なんか微妙だなぁ。幼少の頃からシリアル・キラーとして過ごしてきた凄腕で冷酷無比な殺人マシーンみたいなのを予想していたのだが、実際のところ、組織の不手際で一度暗殺を手伝わされただけなのである。祖父に射撃を教えてもらっていたので、腕は一流だが、これではプロじゃなくて単なるアルバイトじゃないか。

ダメな旦那、虐められっ子な娘、聞かん坊な息子を抱えつつ、家計を助けるため、日本国内で再び隠し持った銃を手に取るというのが……。組織から家族を守るために大統領候補を暗殺しても許されるものだろうか?
ISBN:4569558461 単行本(ソフトカバー) 日比野 克彦 PHP研究所 1997/10 ¥693
「生きることとは、表現すること」―デビュー以来、既成概念にとらわれない軽やかで自由な発想から、常に「日常」に視点をおいたアートを展開してきた日比野克彦が、今度は「言葉」という作品に挑戦する。「身体記憶」「ズレ」「時間」など、数々の創作のテーマとなってきた事柄について、何を考え、何を表現しようとしていたのか。「表現する」とは、「感性」とは、そもそもどういうことなのか。ありきたりの日常を、新鮮な驚きにみちたワンダーランドへと導く一冊。

題名を見て「何だコレは?」と思ったのだが、8万文字で絵を描くという内容ではなかった。PCの二進数でも使って絵をデジタル化でもしてみるのかと思ったのだが、実際のところ、本書を作るために必要な、原稿用紙における文字数なのであった。

文系にも理系にも分けられない人々は何と言えば良いのか? 芸術系!? こういう方々の柔軟な思考は、凝り固まった頭を柔らかくしてくれるから心地良い。絵に絡んだ内容をエッセイ風味に仕上げている。気軽に読めるし、内容も楽しい。
ISBN:4763181149 文庫 船井 幸雄 サンマーク出版 2000/11 ¥550
「よいところばかりあって、副作用というか、わるい面がほとんどない」商品や技術が多くあります。それらは、単純な原理で解明できるうえ、万能で即効性があります。これらを私は「本物」と呼んでいるのですが、ともかく、いま、本物の商品、本物の技術、本物のノウハウ、本物の人などがどんどん出てきたように思います。そして、この「本物」が、これからの新しい時代のキーポイントになっていくように見えるのです。そのへんのことを、今後の十年をふまえて、著者なりにまとめ、具体的にいくつかの本物を紹介しながら、読者に一つの提言をしようというのが本書のねらいです。ベストセラー「これから10年」シリーズ第2弾。

よく知らない頃に投げ売りコーナーで買ってしまったのだが、これは酷い。生命素だの波動だの眉唾な内容だらけで香ばしいトンデモ本。波動が乱れると病気になるらしいよ(笑)。波動の話はリュウケン使いと宇宙戦艦ヤマトだけで十分です。

船井総研といえばオカルト・コンサルティング会社だから仕方ないか。こういうオカルト的な会社を信奉する経営者が結構いたりするから困る。もはや、一種の宗教ですな。自身がのめり込むだけなら良いのだが、この手のコンサルティング宗教に騙される社長というのは部下にも布教し改宗を強要しがちだから始末が悪い。占い師みたいなコンサルタントにすがるより先にやるべき事が山ほどあるだろうに……。とりあえず、この本が『本物』でない事だけは確かでしょう。

人獣細工

2007年8月14日 読書
ISBN:4043470029 文庫 小林 泰三 角川書店 1999/12 ¥520
パッチワーク・ガール。そう。わたしは継ぎはぎ娘。その傷痕の下には私のものではない臓器が埋められている。傷痕を見ていると皮膚が透けて、臓器がゆっくりと蠢動し、じゅくじゅくと液体が染み出してくるのが見えてくる。わたしのものではない臓器。人間のものですらない臓器。…第2回日本ホラー小説大賞短編賞をあの名作「玩具修理者」で受賞した著者が、内臓の匂い漂う絶望と恐怖の世界を構築した表題作に、二編を加えた待望の第二作品集。

表題作は、豚の臓器を移植されまくって生きながらえる少女の苦しみ。単に臓器移植を取り上げただけではなく、やはり小林泰三らしくひたすらグロい。最後の最後が、やはり邪悪。

「吸血鬼狩り」は、ちょっとアッサリしすぎだった。ラストにドンデン返しが待っているとばかり思っていたら、そのまま素直に終わってしまい、伏線も何も無かったので物足りない。

「本」は、同級生に配られた謎の本の影響で、読んだ人間が次々に狂っていくホラー。一見、普通の呪いに思えるが、もっと大きな何物かの意思が働いており、暗黒神話体系みたいな気味悪さが残る。

ららのいた夏

2007年8月5日 読書
ISBN:4087474003 文庫 川上 健一 集英社 2002/01 ¥700
ふたりの出会いはマラソン大会で走っている最中だった。小杉純也はプロを目指す高校球児。坂本ららは走ることと笑うことが大好きな高校生。ららは、運動会から始まってロードレース、駅伝、フルマラソンと次々に記録を塗り変えてしまう。オリンピックすら視野に入って来た。純也もスカウトの目にとまって、プロ野球の選手としてデビューした。涼風のようなふたりの恋。青春長編ラブストーリー。

最初のほうは、古臭いドラマでも見ているようで気恥ずかしい感じだった。マラソンが始まってからは、走る事が大好きなららの圧倒的な強さが爽快になる。最初のマラソンでは実績が無いので最後尾からスタートするも、先頭集団に加わったのちトップ選手に話しかけまくり、首位を独走して応援に来た彼氏と立ち話、ゴール直前で、海で溺れている子供を助けるためにコースアウトして消えてしまう。次の駅伝ではアンカーとして下位から先頭を狙うも、走ってきた子供の自転車集団に衝突されて骨折、足を引き摺りながら大会閉会直前にビリでゴール。明らかに、主催者側の不祥事だと思われる事故だが……。

続いては初めて挑む長距離マラソン。今度は彼氏とマラソン・デートで記録達成。これで東京女子国際マラソンの出場資格を得る。そして、伝説となる本番、世界の強豪達と共に先頭集団に食らいついていくらら。だがゴール直前で……。

ありがちな最強伝説だが、きちんと練習しないのに強いというのはキラ・ヤマトもビックリなご都合主義。コーディネーターだったんですかね? いや、あの結末が待っているから違うな。彼氏のほうも、甲子園に行けなかったのに指名されていきなりプロ入り。一軍で大活躍なご都合主義。さらに、ヘタクソバンドマンだった同級生もヒットを飛ばし、ベストテン一位で歌うというご都合主義の嵐、嵐! 嵐っ!!

題名から容易く予想出来てしまうけど、最後には安易なお涙頂戴的悲劇が訪れる。やはりそう来たか……。最初から先が見えてしまうだけに泣けませぬ。うーん、確かにストーリーは面白かったけど、ご都合主義のフルコースなのはお腹が一杯でもう食べられません。
ISBN:4757712022 文庫 新井 輝 エンターブレイン 2003/08 ¥672
曲渓学園にも夏休みが。自由に遊べる時間!―のはずが、多可雄は、またもや母・静香に問答無用で拉致され、気づくと常夏の島へ。そこに追い討ちをかけるように多可雄の命を狙う少女・赤音が現れ、いきなり大ピンチに!?葵の水着姿やカウンセラーの穂香の登場で南の島も良いかもと思い直す多可雄だったが次の日、彼は想像を絶するトラブルに襲われることに!それでもナンデモ水着と危険がいっぱいの美少女わんさかコメディ第二弾、むにっと登場。

全五巻完結を目標としているようだが、これ以降進展が全く見られないのは気のせい? 詰め込みすぎで売れなくて打ち切りなのか? 何にせよ、このままだと非常に中途半端。

今回は夏の島。いきなり拉致されブラックゴーストとかいうスタンドのパクリとしか思えない超常能力を鍛えるべく、特訓させられることになる主人公の少年。またしても前半2/3も使ってドタバタ劇を展開、物語がちっとも進まない。敵対している異能力者集団の全貌も全く見えてこないし、夏の海を舞台に格闘娘の妹が命を狙ってくるし、さらには説明皆無である日目覚めたらいきなり主人公が女に性別変更されているし、そしたら命を狙っていたはずの妹キャラが実は百合な人で、今度は執拗に迫られまくる破目に……。相変わらず謎なままのメイドが話を脱線させまくるし、もう無茶苦茶。極めつけは、実の母親が正体を偽って登場すると、見た目同じなのに、話し方が違うのと白衣を着ていないという理由だけでアッサリと騙されてときめいてしまう、危ない少年少女。マザコン疑惑浮上。

最後のほう、敵が二人出てきて少しだけバトルが展開されますが、ちっとも盛り上がらない。作者、やる気無いだろ!? 続きはどうした? ジャンプ作品みたいに投げて終わりか!?
 
 
 
このラノベは、とりあえず母親が美女で若すぎ(笑)。
★★
ISBN:4757709862 文庫 新井 輝 エンターブレイン 2002/09 ¥672
高校に入ったら、ガールフレンドをつくって…逆木多可雄はそんなささやかな夢をもつ普通の少年…のはずだった。が、身に覚えのない事件をきっかけに運命は大きく変わる。母親に転校を決められ、寮で生活することに。気づくと彼以外、全員女の子!ラブチャンスに心うずく多可雄だが「恋愛禁止。違反者は即死刑」という妙な校則が頭にひっかかっていた。やがてモテモテの彼に大事件が!?恋と危険がいっぱいの美少女わんさかコメディついにスタート。

キャラクター小説としては秀逸な出来具合だな。これでもかというほどに、パターン化された人物が出まくり。そして、物語はちっとも進まず、内容が無いよう系。延々と妙なキャラが出てきまくりで、ちっとも内容が見えてこない。後半どころかページの2/3も経過した時点でようやく進展が見られるものの……。何この劣化版ジョジョの奇妙な冒険スタンド編みたいなのは(笑)。

裏の説明で『恋と危険がいっぱいの美少女わんさかコメディついにスタート(はぁと)』なんて書いていながら、いきなり格闘物に変貌するのはどうかと思うが。しかも敵と戦う際に「おらああああ!」とかいいつつ殴るのは、思いっきりパクリとしか思えませんが。実質上女子高(一応共学なのだが、諸事情により男がいない)に転校させられて訳わからない主人公が、パターン化された人々にもみくちゃにされるギャルゲー仕様かと思いきや、最後のほうでブラックゴーストとかいうスタンド使いのパクリ対決に変貌してしまう。

キャラが意味不明に暴走しすぎで物語が置いてけぼりなのは頂けない。巨乳貧乏女、腹話術人形抱えるオカルト少女、涼宮茜をパクったような外見の格闘娘、さらには正体不明の押しかけメイドまで登場して訳わからん事に……。
 
 
 
このラノベは、キャラでばりすぎ! 物語進まなさすぎ!
★★
ISBN:4575233811 単行本(ソフトカバー) 荻原 浩 双葉社 1999/10 ¥1,680
中学の頃にフィリップ・マーロウのようなクールな探偵になることを心に決め、とうとう脱サラして事務所を開いた私。だが、来る依頼は動物の捜索ばかり。おまけにとんでもない婆さんを秘書に雇うはめになり…。

絵に描いたようなガチガチのハードボイルド男が主人公なのだが、クールな二枚目ではなくて、格好良いハードボイルドに酔っているだけの間抜け男なのが哀れ。やる事成す事ダメダメで、自分ではキメているつもりで、その実、単なるコメディアンで終わっている。

ハードボイルド探偵に相応しい美女を秘書にしようと募集してみれば、相手の策略に嵌って、現れたのは婆さんだし。その婆さんと無理やりコンビとなり、事件解決を目指すのだが、初めて関わる殺人事件は思いもよらぬ方向へと転がって行く。

単なるコメディかと思いきや、最後のサプライズで爆弾が用意されていた。とてつもなく嫌な結末が待っていた。B級ホラー並みに気分が萎える。
ISBN:4048734512 単行本 貴志 祐介 角川書店 2003/02 ¥1,155
戦慄の新感覚ゲームノベルが、新装丁・コレクターズアイテム版で再登場!! 藤木はこの世のものとは思えない異様な光景のなかで目覚めた。視界一面を覆う、深紅色の奇岩の連なり。ここはどこだ?傍ら携帯用ゲーム機が、メッセージを映し出す。「火星の迷宮へようこそ。ゲームは開始された」

これ、ハードカバーも出ていたんだ……。まずハードで出して、暫くしたら文庫というのがパターンだが、最近は文庫からハードカバーに昇格というのが増えてきたな。それにしても、文庫の後でハードカバーを出して売れるのだろうか? 有川浩の「塩の街」みたいに変更点も無さそうだし、完全にコレクター・アイテムですな。

今までこれが初期作品だと思っていたのだが、『十三番目の人格(ペルソナ)−ISOLA』が最初だった。貴志作品の中ではちょっと文章が微妙なので、最初に書かれたのかと思ったのだが……。

火星の迷宮と呼ばれる場所へ送り込まれてしまった男が、生き残るために戦うゲーム感覚ノベル。読者に選択肢が存在しないゲームブックを読んでいる気分だ。この斬新さがウケたのだろう。異様に評価が高い。二度は使えない技だ。貴志がやってしまったから、この後に誰がやっても二番煎じとしか思われない。ゲーム世代はこういうの好きだろうな。
 

ISBN:4582850901 新書 福田 直子 平凡社 2001/05 ¥714
風変わりな表題である。休んだドイツ人は何をしているのかといえば、長期の休暇(ウアラウプ)は旅行である。ヨーロッパを陸路旅すると、あちこちでドイツ人を満載した観光バスに遭遇する。アフリカ、南米でも最初に目につくのはドイツ人旅行客。彼らは大まじめで群れ、今でも「民族大移動」中なのである。彼らが目指すカッコいい旅先はいまや南極、近未来は宇宙だ。なぜドイツ人はそんなに休めるのか? その鍵は「労働時間法」である。部下が休まなければ、上司が処罰の対象になる。部下は当たり前に休み、上司も休む。自分たち(の代表)が決めた法律を遵守しないことに何の価値もない。サービス残業という倫理観は、彼らにとっては非倫理的なのである。

東西格差や移民問題を抱える今となっては、そう手放しで喜べるような状況でも無いような気もするのだが、諸事情を差し置いてもやはり、ドイツ人が日本人とは比べようも無いほど豊かな人生を謳歌出来る民族である事は確かなようである。

労働法が徹底され、遵守しないと上司は無能の烙印を押されるどころか、処罰の対象にまでなる。一度労働した後のインターバルまで緻密に設定されている優等国においては、どこかの島国のような強制サービス残業など愚の骨頂に相違あるまい。極めつけは、二ヶ月にも及ぶ長期バカンス。日本では一億年先になっても有り得ないだろう。いっそ、ドイツに占領されてしまえばいいのにと思ってしまう。それにしても、日本人と比べたらあまりにも働いていないのにあの国力と生活水準、やはりドイツ人は世界一ですな。

日本は二ヶ月の夏休みどころか、年間休日ほぼ皆無、年間労働時間6000時間超過という企業がゴロゴロ存在するような、労働後進国ですからね。欧州の倍も三倍も強制労働させて国際競争力をつけている行為は、労働力のダンピング以外の何物でも無いのだから、ILOが圧力かけるか、欧州諸国が不買運動でも展開してくれたらいいのだが。

まあILOについては、常任理事国として拠出金で口を塞ぐ見返りに、国内では好き放題するのを黙認させているような気もするが。未批准条約もたくさんあるし、ILO勧告も遵守しないからね。やはり日本は、ドイツ軍に占領されて属領となったほうが……。
灰色のアイリス?
ISBN:4840223092 文庫 岩田 洋季 メディアワークス 2003/03 ¥662
朝霧奏の願っていた平穏の日々は、美木響紀の手により奪われてしまった。響紀らの襲撃による葵原勇吾の死や矢志奈姫子の無惨な姿。さらに、何よりも大切な未来までも響紀らに人質に取られてしまい、奏は恐怖の底で打ち震える。―未来だけは無事であってほしい…。響紀の隠れ家を知る由もない奏は、もはや屈する以外に手の打ちようがなかった。一方、響紀らとともにいるイリスは、未来の持つ灰色の異空眼の謎に迫りつつあった。異空眼の謎が解ける時、奏と未来、そして世界の運命は―!?朝霧奏、未来、美木響紀、イリス…。それぞれの思惑が交錯する中、物語もいよいよ佳境!シリーズ第四弾。

うーむ。まだ少しムラがあるなぁ。それに、話の盛り上げ方が下手だ。せっかく強敵揃えて絶望的な状況にまで持って行きながら、さして活躍もしないままに倒されていく悪党側の面々。もうちょっと見せ場作って盛り上げないと駄目だろう。ジャンプマンガじゃないのだから、中途半端な捨てキャラみたいに消費するのはどうかと思う。敵ボスの能力は、よくわからないままに死んでも死んでも復活するが、裏切った女性を殺した事で、その女性を愛していた仲間の召喚する死の視線を持つ化け物に見られて完全死亡。どうやって復活しまくっていたのか説明皆無。

最強の敵は、主人公が自らの体を犠牲にしつつ隙を作り、少女を刺して倒す。とは言っても、負傷して逃亡しただけなのだが。最後に、命のやり取りが大好きな狂人が姪(妹)をさらって逃亡、主人公にタイマン勝負を挑むも敗北して死亡。そこに舞い降りる天使の羽根。ここで止めておいたらキレイなのに、その後に次回予告編的に最終ボスが出てくる演出がまた微妙。ジャンプマンガじゃないのだから、一冊終わる毎に纏めないとダメだろう。なんで、中途半端に次の話を始めるんだ? 明らかに、ジャンプの作り方に影響されているな、この作者は……。
 
 
 
このラノベは、ジャンプのマンガかよ!?
★★

ラッシュライフ

2007年7月26日 読書
ISBN:4101250227 文庫 伊坂 幸太郎 新潮社 2005/04 ¥660
泥棒を生業とする男は新たなカモを物色する。父に自殺された青年は神に憧れる。女性カウンセラーは不倫相手との再婚を企む。職を失い家族に見捨てられた男は野良犬を拾う。幕間には歩くバラバラ死体登場――。並走する四つの物語、交錯する十以上の人生、その果てに待つ意外な未来。不思議な人物、機知に富む会話、先の読めない展開。巧緻な騙し絵のごとき現代の寓話の幕が、今あがる。

この物語は構成が凄い! 一見バラバラに進行する5つの話が最後に繋がる。時系列が上手くズラされているから、作者の意図が読んでいる途中では見えにくいのだ。上手く隠されている。なんとなく繋がっているのは判るけど、過去と現在が意図的にズラされているのが素晴らしい。登場人物が他作品ともリンクしているので、やはり執筆順に読み進めるのが良いだろう。ちょっと失敗した……。

殺人事件は起こるのだけど、謎解きは無い。オカルト的な要素が濃すぎで、これはミステリーの範疇には入るのだろうけど、推理物では無い。死体がバラバラになって、またくっ付くという都市伝説風なオカルトには答えが用意されていたものの、教祖みたいになっている男の超常能力については明かされないままで終わる。

核となる登場人物がここまで多いのに、最後に収束していく力量は見事っ! 下手な作家なら、視点がボヤけすぎで纏りない駄作で終わっただろう。
ISBN:4488017002 単行本 伊坂 幸太郎 東京創元社 2003/11/20 ¥1,575
引っ越してきたアパートで出会ったのは、悪魔めいた印象の長身の青年。初対面だというのに、彼はいきなり「一緒に本屋を襲わないか」と持ちかけてきた。彼の標的は―たった一冊の広辞苑!?そんなおかしな話に乗る気などなかったのに、なぜか僕は決行の夜、モデルガンを手に書店の裏口に立ってしまったのだ!注目の気鋭が放つ清冽な傑作。第25回吉川英治文学新人賞受賞作。

大学入学直前の若者が、出会ったばかりの隣人河崎にそそのかされ、書店に押し入る手伝いをする破目に。金銭目当てではなくて、広辞苑を盗むという行動理由が判らない犯罪行為に加担する事になり、戸惑う若者。

全体像が見えてこないまま、物語は書店襲撃時の現在パートと、ペット虐殺事件が多発していた過去パートに分かれて物語が進行する。過去部分では、ペットショップに勤める琴美と、河崎、ブータンから来た外国人の三人が、ペット虐殺事件に巻き込まれて行く。やがて、犬や猫を虐殺してまわるキチガイな不良三人組と対峙する事を余儀なくされる琴美。

途中から、なんとなく物悲しい現在パートの結末が見えてしまうのは残念だが、隣人であるはずの河崎に意外な秘密が秘められているのが驚き! 広辞苑を盗みたがる河崎の真意とは……。

ちょと悲しい結末が待っていた。キチガイが全滅してくれたら良かったのだが。
ISBN:4104596027 単行本 伊坂 幸太郎 新潮社 2007/01/30 ¥1,470
あの作品に登場した脇役達の日常は? 人気の高い「あの人」が、今度は主役に! デビュー第1短編から最新書き下ろし(150枚!)まで、小気味よい会話と伏線の妙が冴える伊坂ワールドの饗宴。

しまった……。まだ過去作品を全部読みきれていないのに、この本を読んでしまった。なんか、いろいろな部分でさりげなく過去作品とリンクしている。ほんの隠し味程度で、恩田陸がやるみたいに前作読んでない人不可なあざとさは無いので、別段問題は無いのだけど、ちょっと失敗した気分。まだ未読の人は、これ以前の作品を押さえてから読んだほうが良いです。過去作品も微妙に繋がっているのがあるので、執筆順に読み進めたほうが良い。

相変わらず上手いけれども、小奇麗に纏まりすぎていてサプライズが足りない。やはり、伊坂は長編のほうが良いね。以下、ちょっとネタバレっぽい感想あり。要注意!

「動物園のエンジン」は、ニヤリとする部分がよく判らず戸惑う。これは、何を楽しめば良いのか……。過去作品を全部読んでいないから駄目だったのだろうか。

「サクリファイス」は、人里離れた寒村を舞台にした、ちょっとだけ気味悪い話。真実が明らかにされないまま、主人公が探していた人物が遺体で発見されたという事実だけが残る。村人も秘密を隠したままで気味悪いのだが、それに動じない主人公も得体の知れない男なので負けてはいない。

「フィッシュストーリー」は、過去、現在、未来が交錯する形で、伊坂作品らしい出来栄え。過去の出来事が現在に、現在が未来に影響を及ぼす。小道具の使い方も良い感じだ。

「ポテチ」は、ちょっとだけ感覚がズレた泥棒が良い味を出している。
ISBN:4257770104 文庫 梶尾 真治 朝日ソノラマ 2003/06 ¥630
もしも過去に跳べることができたら、今は亡き、愛する人を救いにいける。すでに滅びた物を目の当たりにできる。それだけでなく、過去の世界で、新たな恋に落ちるかもしれない。ついに「クロノス・ジョウンター」という機械が開発され、誰もが夢見るそれが現実となったとき、そこにさまざまな物語が生まれた。さあ、「時」と「おもいで」の一流シェフの腕前をじっくりとご堪能を。

「この胸いっぱいの愛を」の元ネタがこれなのは知らなかった。恋人を失った男が過去改変に挑むタイムトラベル物。しかし、登場するのはタイムマシンではなくてクロノス・ジョウンターという機械。過去へ行けるという基本原則は踏まえつつも、ウェルズが創り上げたタイムマシンとは違い、欠陥が多いのである。

第一の欠点は、過去へ行ってもその時間へ留まり続ける事は出来ずに、極めて短時間で跳ね飛ばされてしまうのだ。未来からの侵入物が異物と看做されて過去から弾かれるのか、未来から引っ張られるのかは明らかでないが、苦労して過去へ到達しても、その直後に未来へと行ってしまうのだ。第二の欠点は、一度到達した過去以前には、二度と赴く事が出来なくなるという点。過去へは一度しか行けないのである。第三に、これが最大の欠点なのだが、過去から跳ね飛ばされて向かう先は現在では無く、出発前よりも未来へと到達してしまうという点。さらに、重ねて過去へ向かうと(最初に到達した過去よりも少しだけ未来に該当する過去へは到達出来る。)未来へと跳ね飛ばされる時間が増大していくのだ。

最初のタイムトラベルで恋人の事故死(1995年に発生)を改変する事に失敗した男は、一年八ヶ月後の未来へと飛ばされる。二度目の改変を試みるがまたもや失敗、七年後の世界へと飛ばされる。欠陥の多さから倉庫入りしたクロノス・ジョウンターを探し当て、三度目の遡行を試みるも失敗して2051年へ。すでにクロノス・ジョウンターは博物館の展示品と化している。一度遡行した過去以前には戻れないという制約から、事故までの残り時間を考えると残されたチャンスはあと1回。しかも、過去改変に成功したとしても、その後に飛ばされる先は西暦5187年。つまり、恋人が存在しなくなってから3000年以上も後の未来世界なのである。

語られない過去にハッピーエンドは待っているのだろうか。画像は増補版だけど、図書館にあったのが初期バージョンだから、二つ目の話までしか収録されてないんだよなぁ……。残りの二話が気になります。

ISBN:4048737414 単行本 恒川 光太郎 角川書店 2006/11 ¥1,575
現世から隠れて存在する小さな町・穏で暮らす少年・賢也。彼にはかつて一緒に暮らしていた姉がいた。しかし、姉はある年の雷の季節に行方不明になってしまう。姉の失踪と同時に、賢也は「風わいわい」という物の怪に取り憑かれる。風わいわいは姉を失った賢也を励ましてくれたが、穏では「風わいわい憑き」は忌み嫌われるため、賢也はその存在を隠し続けていた。賢也の穏での生活は、突然に断ち切られる。ある秘密を知ってしまった賢也は、穏を追われる羽目になったのだ。風わいわいと共に穏を出た賢也を待ち受けていたものは―?透明感あふれる筆致と、読者の魂をつかむ圧倒的な描写力。『夜市』で第12回日本ホラー小説大賞を受賞した恒川光太郎、待望の受賞第一作。

前作よりも、さらに力強くて魅力的。「夜市」も悪くは無いけど、短いから物足りなかった。今回は、かくれ里のように怪しげな「穏」と呼ばれる場所が舞台。下界と呼ばれる現世からは隔絶された場所で、そこには雷の季節が存在するのだ。そして、雷の季節には鬼にさらわれて人が消える。少年の姉も雷の季節に消息を絶ち、同時に風わいわいという憑き物に囚われる。何かが自分に憑依している事を隠して生活する少年は、穏の外れにある墓町へ出入りするようになり、闇番と共に、行方不明となった少女の亡霊に出会ってしまう。連続殺人事件に巻き込まれた少年は、鬼衆に処刑される前に逃亡するのだが……。

後半は別パート。下界で邪悪な継母に殺されそうになった少女は、より邪悪な男の手にかかり、自分達が暮らす世界から隔絶された場所にさらわれて殺される寸前、風霊鳥の助けで逃げ延びる。

前半と後半で一見バラバラの物語が、最後で見事に融合する。時系列も異なるのだが、上手くラストまで繋がっていく。二作目にして、ここまでの技を出してくるのは素晴らしい。

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