2008年1月1日 読書

 

2007年12月31日 読書

遊戯

2007年12月29日 読書
ISBN:4062142333 単行本 藤原 伊織 講談社 2007/07 ¥1,575

読み始める前に覚悟しておかねばならない事は、これが未完だという点である。飽きて放り出したのではなく、出版社が見捨てたのでも無い。「回流」という話を書いたところで藤原伊織が力尽きてしまったからである。ここからとても面白くなりそうなのに、もはや続きを読む事は出来ない。一体、どういう結末が用意されていたのかを知る術は無い。この物語の結末は、藤原伊織と共に永遠に失われてしまった。非常に残念である。

連作短編という事になっているが、全て繋がっているし、主役格も二名なので、各話は長編の一部分として捉えるほうが良いだろう。ネット上で出会った男女。男は派遣関係の会社に勤める中堅サラリーマンで、過去に父親から虐待された過去を持つ。女は長身でモデル系の若者。登録していた芸能プロダクションの顔を立てるために受けたオーディションで合格してしまい、CMに出演する様になる。その二人に付きまとう謎のストーカー男。男性の父親が遺した拳銃と弾薬。伏線が張られたままで、この物語は途切れてしまう。ちなみに、最後に収録されている「オルゴール」は別の短編なので完成している。

事実上の最終話となってしまった「回流」が発表されたのが2006年の3月で、5月17日に著者は他界している。病床にありながらも、ギリギリまで執筆を続けていた事になる。

 

2007年12月27日 読書

ISBN:4828825193 単行本 藤野 千夜 ベネッセコーポレーション 1996/03 ¥1,121
男子校へ通うトシヒコは陸上部のリョウに恋してる。同級生のヤマダは「間違った身体に生まれたから」と女性ホルモンを注射する。幼なじみのミカコは突然、怖くて電車に乗れなくなった。心と身体の「違和感」にふるえる3人の青春を軽妙に描く表題作に、「午後の時間割」(海燕新人賞)を併録した芥川賞作家の作品集。

主人公がホモだ……。うーん、ホモは嫌いなんだけどなぁ。主な登場人物は三人。主人公のホモ、電車の中で吐いてしまい、自転車にしか乗れなくなった少女、ホモ主人公と同じクラスのオカマ。表紙にも三人しかいないから、一番女っぽいやつが男子校で同じクラスのオカマかっ!

ホモ主人公のトシヒコは美形のリョウが好き。ヤマダはトシヒコが好きなオカマで、でも見た目が女っぽいから相手にされない。女物の私服で登校するツワモノである。「おしゃべり怪談」よりは面白かったけど、別に事件も何も起こらずに淡々としたまま終わってしまう。

同時収録の「午後の時間割」は、64歳になった電波な予備校生の話。これは、64歳という脳内設定にしているだけで、実際に歳をとった訳では無いので、単なる電波さん。本当は若い。同じ予備校のテシロギ君に告白されるものの、付き合ってみればホテルで彼のナニが役に立たず、実はゲイだと言われてしまう。またホモか! ホモはもういいよ……。この作者、ホモが好きなのか!?
ISBN:4758060428 コミック 武梨 えり 一迅社 2007/02/09 ¥580
神木を伐られたことにより現代に顕現した神様・ナギに続き、今
度はナギの妹をを名乗る「ざんげちゃん」がとある少女に憑依。そしてナギ様公式ファンクラブができたり、メイド喫茶で大騒ぎしたりとお茶の間感覚でお届けするアンバランス伝奇コミックの第2巻登場!!

2巻の表紙は妹神アイドル、通称ざんげちゃん。巷で迷える中年オヤジその他諸々を1回100円で懺悔させて大ブレイク、TV出演までする時の人にっ! もう1本の神木は教会の敷地内にあったので、このような姿になっている。

なぎは神力をアップさせるために偽学生として学校に出没。ファンクラブ効果でパワーが増幅して行くが、先生に見つかってしまい……。神様なのに、お金を稼ぐためにバイトまでしてしまうぞ。しかも、メイド喫茶で(笑)。オリジナルっぽいネタのコスプレと、何故か仏さんじょネタな行動。「ろりぽ∞」を読んでいる人にしか判らないと思うのだが。
ISBN:4758060150 コミック 武梨 えり 一迅社 2006/08/09 ¥580
御厨仁が彫った木彫りの像に"ナギ"と名乗る女神が宿った。外見はかわいい女の子だが、ハチャメチャなナギに仁の日常は徐々に浸食されていく!? 武梨えり先生の人気連載がついに単行本化!!『月姫』、『Fate/stay night』の武内崇先生との超豪華合作イラストも収録!!

表紙は、魔法少女用玩具を持った女の子にしか見えないけれども、ただの人間ではありません。というか、人間ではありません。人間に見るけど、一応は神様。産土神(うぶすなかみ)が降霊する梛(なぎ)の大樹が罰当たりにも伐られてしまうのだが、その木片を使って少年が木彫りの精霊像を作ったところ、梛が人型として顕現するのである。

人間ではないので、ちょっとズレた行動が多いなぎ。そんな美少女神様と同居する事になってしまった少年の物語。後半、もう一本ある神木の神である妹も出現。こちらは神木ではなく、生身の人間に憑依しているので、普通の生徒として現れるのだが、ちょっと腹黒い。
シュプルのおはなし
ISBN:4840226601 文庫 雨宮 諒 メディアワークス 2004/04 ¥578

第十回電撃ゲーム小説大賞選考委員奨励賞受賞作。物語の中で、シュプルという少年が、周囲にある物などから想像を巡らし、物語を作ってしまうという入れ子構造。物語の中で語られる小さな物語。現実を照らし合わせたら少し変な部分もあるけれども、それも含めて小さな男の子が作った話だから妙な部分があるという設定だと思えば許容範囲。作者が下手なのではなく、意図的にやっている気もするし。

おじいさんの宝箱から出てきたガラクタを元に、突拍子もない物語を考えてしまうシュプル。おじいさんは戦争に行ったり、風船売りの娘と駆け落ちしたり、ギャングスターになったりと、いろいろ大変だ。勿論、本当にあった過去の出来事ではなくて、シュプルが勝手に作ってしまった物語なのだが。
 
 
 
このラノベは、シュプルの脳内妄想が結構面白い。
★★★
ISBN:4880861510 単行本 大田 直子 成甲書房 2003/08 ¥1,680
かつては愛され、大切にされていたアメリカを無残に切り刻んだ怪物ウォルマートが、今度は世界中の小さな町や個人商店に猛攻撃をかけている。恐れを知らぬテキサスの新聞記者ビル・クィンは、本書でウォルマートのいかがわしい事業活動を詳細に報じている。クィンは、なぜウォルマートがほぼ間違いなく、アメリカで、そして今や世界中で最も恐れられ、軽蔑される企業なのかを明らかにしている。ウォルマートの嘘にうんざりしている消費者も、廃業の瀬戸際に追いつめられた個人商店主も、力ずくの策略に搾取されている納入業者も、ウォルトン家の利益を殖やすために働かされている従業員も、本書を読めば、身のまわりに取り憑いているウォルマートを振り落とし、追い払う方法がわかるだろう。

世界最大のチェーンストア、ウォルマートを負の側面から論じる。サム・ウォルトンは現場を重視し、競合店を徹底して調査、ストアコンパリゾンを行う事により成功した……とされている。しかし、本当にそれだけで人間は成功出来るのだろうか? そんな簡単な事だけで会社が大きくなれるなら、どんな会社でもごく当たり前の事をするだけで成長するはずだ。果たして、やるべき事をやった全ての会社が成功して大きくなっているだろうか?

やはり、企業というものは多かれ少なかれ悪事に手を染めずして短期間に巨大化する事は出来ない気がする。優良企業とされているようなところでも、土壌汚染とか、賞味期限偽装とか、リコール隠しとか、下請けから設計図巻き上げて中国へ横流しとか、いろいろやっているじゃないですか。

チェーンストアに関しても、本場を真似して日本で作った協会に加盟している企業では、相当酷い事をやってますからね。周囲をどんどん潰して行き、最後には何も残らない、蝗の群れや焼畑農業に例えるのが妥当なこのやり方は、決して褒められたものではないと思う。

エブリディ・ロープライスで商品が安く買えると錯覚してしまうが、気がつけば辺りはゴーストタウン、さらに収益を上げるために巨大店舗は周囲の店と合体して超巨大店舗になり、今まで行っていた店は消え失せる。地域経済は崩壊し、店も無い、職場も無い、勤める人間は労働法無視で奴隷以下、購買力を圧力にして生産者は締め付けられ、運送業者は決められた時間通り運行するための長時間労働を余儀なくされ、商社の営業マンは休日出勤でスーパーの品出しに借り出される。

これで一体、誰が幸せになっているというのか!? チェーンストアを宗教として肥え太る一部のコンサルタントと、全てから搾取する創業者一族だけが、数多くの人間を踏み台にして人生を謳歌しているだけじゃないのか!?

私は人間を不幸にするこのシステムを支持しない。今から就職活動をする大学生は、チェーンストア協会加盟企業には気をつけたほうが良い。その中には、年間労働時間が6000時間を超える暗黒企業も含まれている。
ISBN:4087484742 文庫 原田 宗典 集英社 1998/02 ¥680
一見、どこにでもいそうな高校生ノムラノブオの指先には、超能力とも呼ぶべき力が秘められていた。鋭敏な感覚を生かした、神業のようなスリの手腕である。そんな彼の力に目をつけた同級生スウガクと、可憐な女子高生キクチ。三人は自らの未来を賭けた、大それた計画を企てるのだが…。大都会の暗部を軽やかに疾走する、新世代の冒険小説。

名前はこんなのだけど、本家のトム・ソーヤーとはあまり関係のない内容。別に、インジャン・ジョーと洞窟内部で対決したりしないし。少年二人に少女が一人、これがハック、ベッキー、トムに当てはまるという程度か。

高校生スリ師ノムラノブオ、秀才のスウガク、小さい子供じゃないのに自分の指を吸う女子高生キクチ。この三人が早稲田の入試問題を極秘に入手すべく、行動を開始する。原田宗典の小説は、純文学に傾倒しすぎでイマイチなのが多いのだが、これに関しては爽やかなジュブナイル小説になっていて良い感じだ。

「戦線スパイクヒルズ」という題名でコミックにもなっている。
ISBN:477780335X コミック (著) 辰巳出版 2006/09/15 ¥600

表紙に釣られてしまった。普通のホテルが舞台なのだが、清掃係であるルームメイドの制服がメイドそのものという、神仕様な職場でのイロイロな出来事。指定マークは付いていないけれども、八月薫だからエロ系統なんだろうなと思ったら、やはりその通り。絵柄は萌え系統じゃなくて、劇画っぽい感じ。
ISBN:4751521136 単行本 佐竹 美保 あすなろ書房 2002/01 ¥1,470
3つの氏族が対立する水辺の民マリス。長らく友好を保ってきたマリスとリンの間には、ひそかに伝えられてきた、大切な約束があった。使者の、突然の到来により、その驚くべき事実を明かされたローワンは…。水晶の守り手を選ぶため、水辺の民マリスの村へ向かったローワン。だが、そこに待ち受けていたのは…。意外な結末に向けて、物語は一気にすすんでいく。スリルあふれるミステリアス・ファンタジー。

ローワン三作目。今までは弱虫でパッとしなかったローワンだが、今回は少し成長した。

侵略者ゼバックから海岸を守っている部族に水晶の司がいるのだが、死にかけているために三派に分かれている中から後継者を選ばなければならなくなるのだ。そして、その後継者を選ぶために外部の人間であるローワンの母が選任役として旅立つのだが、何者かによって毒に倒れるのである。代わりに選任役となったローワンは、母親を救うために一般人が立ち入る事が許されていない島へと渡り、毒消しの材料を捜し求める。

星へ落ちる

2007年12月16日 読書
ISBN:4087748979 単行本 金原 ひとみ 集英社 2007/12 ¥1,155
一つの恋愛と三人の孤独――
元彼の部屋を出て、「彼」と付き合い始めた「私」。「彼」が女と浮気をしていると知り、自殺を考える「僕」。突然去った「彼女」を待ち続ける「俺」。愛するほど孤独になる、三人の絶望と激情。

もはや金原ひとみには期待していないのだが、コンプリートするために惰性で読んでいる感じ。読んでいても消化試合をしている気になる。

今回も、ちょっと病的な男女が絡んでドロドロな恋愛仕様。短編集かと思ったら、登場人物が繋がっているので連作形式。捨てられた男、飛び出した女、新しい男、その男の彼! うーむ、ホモ絡みもあるのはちょっと萎え気味。

構成は結構面白いのだけれども、ドロドロした金原っぽさはそのまま。どれを読んでも金太郎飴みたいに同じなのばかりだ。まあ、金太郎飴戦法で同じ恋愛小説ばかり大量生産して売れている女流作家は結構いるので、金原も信者を率いて、これからも生き残っていけるだろう。

温室デイズ

2007年12月15日 読書
ISBN:4048735837 単行本 瀬尾 まいこ 角川書店 2006/07 ¥1,365
今最注目の作家が贈る、痛くて沁みる極上青春小説。トイレでタバコが発見される。遅刻の人数が増える。これらの始まりの合図に教師たちはまだ気づかない。私たちの学校が崩壊しつつあることを。私には一体何が出来るのだろうか……。

「ゴールデンスランバー」で憂鬱な気分になったまま、一気に読む。これも嫌な感じの設定だったので、二度も嫌な気分にはなりたくないので、滅入ったままで一気読みしたほうが得策かと思って。

学級崩壊に虐め、嫌なテーマである。どれもこれも糞だけど、やはり最低なのは狂師(ろくに教えるべき事も教えられない馬鹿者を教師とは呼びたくないので、別に誤字ではなく意図的です)だろう。見て見ぬ振り、デモシカどころかウマシカだらけで辟易して来る。まあ、教師なんて生徒のなれの果てだから仕方が無いか。他の仕事から転職した人はともかく、大抵は一生学校から外界に出ず引き篭もっている妙な人々だからね。

「良い教師は死んだ教師だけだ」

今のは運悪くデモシカやウマシカや暴力狂師にしか当たらなかった私の戯言だから、ムキになって反論せず、バーボンでも飲んで聞き流して欲しい。

ゆとり教育や義務教育にも弊害があると思う。腐ったミカンは放逐しないと周りがどんどん腐るのだけど、義務教育だとそのミカンを箱の外に捨てられないからね。秀才も馬鹿も同じ授業、虎もウサギも同じ教室、こんなのはナンセンスだ。他人の権利を侵害する馬鹿は容赦なく切り捨てて良いと思う。もはや、この国に馬鹿を飼うだけの余力は無いだろうに!?

赤い人「卒業証書がついてないじゃないか」
整備兵「学校なんて飾りです。偉い人にはそれが判らんのですよ」

どうしても学歴が欲しいのなら、大学検定を受けて大学だけ出たら十分だと思う。腐った温室にいると自分まで腐ってしまう。文部科学省の愚民化政策で堕落した義務教育なんかに頼らなくても、いくらでも方法はあるのだから、ウサギの親は無理にウサギを虎の檻に入れないで頂きたい。我が子が噛み殺されてからでは遅いですからね。
ISBN:4104596035 ハードカバー 伊坂 幸太郎 新潮社 2007/11/29 ¥1,680
俺はどうなってしまった? 一体何が起こっている? 首相暗殺の濡れ衣を着せられた男は、国家的陰謀から逃げ切れるのか? 二年ぶり千枚の書き下ろし大作。

「娯楽小説」というキャッチがついているものの、単純に娯楽として楽しむには不快な内容だった。首相暗殺の犯人にデッチ上げられて逃げ惑う男の悲劇、これを娯楽と言って良いのか? 娯楽と言うからには、結末にはハリウッドみたいにご都合主義的展開とハッピーエンドが待っているのかと思ったら、悲劇のままだし……。謀略小説とかサスペンスとか言うならまだしも、売るためにこんなキャッチ付けないで欲しかった。

確かに力作ではあるけれども、嫌な展開に嫌な結末。どうもスッキリしない。日本最大の暴力組織に追い回されるし、親友も殺されるしで散々な目にばかり遭う。これはフィクションにすぎないかもしれないけれども、舞台を日本に移し変えただけで、内容はケネディ暗殺事件同様ですから、現実に有り得る(というか、そういう目に遭った人間がかつていた。オズワルドは無念だっただろう)物語である。自分がその立場に陥れられない限りは他人事に過ぎないかもしれないけれども。

首相暗殺程の大きな事件に巻き込まれる可能性はそうそう無いとしても、痴漢や性犯罪の冤罪事件は多々ありますからね。富山でもゲシュタポ(その悪逆非道ぶりから、あえてゲシュタポと言いたい)に誤認逮捕されて有罪になり、強制収容所(あえてこう言いたい)送りにされた人がいたからね。他人事だと思っていた人だって、当局に陥れられる可能性は十分にある訳です。

いくら力作でも、こういう憂鬱な気分に浸れる物語は好きじゃない。
ISBN:4163238409 単行本 朱川 湊人 文藝春秋 2005/04/23 ¥1,650
小さな妹がある日突然、誰かの生まれ変わりだと言い出したとしたら-。大阪の路地裏を舞台に、失われてしまった懐かしさを描く作品集。表題作のほか、「トカビの夜」「妖精生物」「摩訶不思議」など全6篇を収める。

第133回直木賞受賞作。

ノスタルジックな雰囲気の、もっと普通の物語かと思っていたので、あんまり食指が動かなかったのだが、これも朱川作品らしい不思議系の物語だった。「都市伝説セピア」は少しホラー要素が強く、暗い作品が多かったけど、これはもっと温かみのある不思議な話が多い。

体が弱かった在日の少年が、死後トカビ(朝鮮の鬼みたいな妖怪?)になって近所で不思議な事が起こったり、露店で買ったクラゲのような妖精生物の不思議な能力で絶頂体験にハマる少女とか、助からない人の最期を看取り、死の呪詛により苦痛から解放する送りん婆などなど、全てが不思議な物語。

表題作は、前世の記憶を持って産まれて来た妹の話。まだ幼いのに急に大人びてきて、習った事も無い漢字を使い、どこの誰だか知らない人間の姓名を綴り、それが過去の自分であると言うのだ。住んでいた場所が彦根で、家族の名前まで覚えており、自分がどこでどうやって死んだかまで覚えているのである。聞かされた兄は、妹が別の誰かではなく、自分の妹のままでいるよう必死になるのだが……。

配達あかずきん

2007年12月11日 読書
ISBN:4488017266 単行本(ソフトカバー) 大崎 梢 東京創元社 2006/05/20 ¥1,575
「いいよんさんわん」―近所に住む老人に頼まれたという謎の探求書リスト。コミック『あさきゆめみし』を購入後、失踪した母の行方を探しに来た女性。配達したばかりの雑誌に挟まれていた盗撮写真…。駅ビル内の書店・成風堂を舞台に、しっかり者の書店員・杏子と、勘の良いアルバイト店員・多絵のコンビが、さまざまな謎に取り組んでいく。初の本格書店ミステリ、第一弾。

本屋に関わるミステリー。本屋内部視点で物語を紡ぐだけならば、書店員で書ける人なんていくらでもいるだろう。単なるミステリーならば、もういろんな人が書いている。しかし、本屋とミステリーを融合させた本書みたいなのは見た事がない。

中は連作短編。題名も上手いけど、どの話も本読みが反応するポイントを衝いて来る。最初にある、意味不明の暗号みたいなものをヒントに読みたい本を探す話からいきなりやられる。パンダまでは判ったけど、謎の言葉までは判らなかった。暗号だとばかり思っていたら……。

物語に深く関わってくる部分は創作された架空作品になっているが、実在する書籍も結構出て来るのが興味深い。それにしても、デビュー作からかなりハイクオリティなものを投入して来る。

退屈姫君伝

2007年12月10日 読書
ISBN:4101265321 文庫 米村 圭伍 新潮社 2002/09 ¥620
吹けば飛ぶよな二万五千石の小藩に五十万石の姫君が異例のお輿入れ。そのうえこの姫君、美貌ながら生来のいたずら好きときています。退屈しのぎに屋敷を抜け出し、江戸城下を探検、藩の六不思議の謎解きに血道を上げる日々。ところが、田沼意次も絡んだ陰謀まで探り当てたから、さあ大変。幕府隠密、くノ一、長屋の町人も巻き込み、姫の貞操と藩の命運を賭けた大勝負の始まり始まり。

陸奥磐内藩五十万石国主の末子として産まれためだか姫が、風見藩へ嫁入り。父から縁組を言い渡された当初は、百二万石の前田家か、六十二万石の伊達家か、南国は暑いから島津家、黒田家、細川家、鍋島家は嫌だとか思っていたら、聞いた事も無いような相手が嫁ぎ先。風見藩は、僅か二万五千石の小藩だったのだ。これには姫もちょっとビックリ。しかし、相手が弱小でも我侭言わずにちゃんと嫁いでしまう。しかも、結構気に入っているっぽい。

題名は退屈姫君だが、やる事がなくて退屈していたのは最初だけ。田沼意次が改易を狙って、陰謀を張り巡らしてくるのである。なんとか風見藩を守ろうと、じゃじゃ馬姫が奮闘を始める。田村が相手じゃ退屈している暇なんてありませぬ。

それにしても、田沼意次って悪役に最適で、ある意味、素敵ですな。是非、究極悪代官の称号を贈りたい。悪評の何割かは失脚後、反対派によって捏造されている部分もあるし、政治センスはあったのだから必ずしも悪代官タイプとは言い切れない部分もあるのだが、やはり「奇麗事だけで政治は出来ない」とか「政治には金がかかる」という言い訳は現代の某汚職まみれ大政党を含めて、絶対に認めたくはないので。イメージは典型的悪役タイプなままでOKです。

今回はなんとか田沼の陰謀を阻止出来たのだが、勿論、このままでは終わらないのだろう。シリーズ化しているので続編も読みたい。

おしゃべり怪談

2007年12月9日 読書
ISBN:4062093766 単行本 藤野 千夜 講談社 1998/09 ¥1,680
納会帰りに雀荘へ寄った四人のOLが、おしゃべりな男に包丁を突きつけられながら、延々と麻雀をする羽目に陥る表題作ほか、コミカルで、繊細で、温かく、ちょっぴり怖い四篇を収録した作品集。若者の日常に潜むいつもは見えない不安や心のほころび、性の揺れを優しくリリカルに描いた野間文芸新人賞受賞作。

題名に惹かれて借りてはみたのだが、どれもこれも微妙。表題作なんて、ちっとも怪談じゃなくて、キチガイが起こす事件に巻き込まれて、包丁で脅されながら延々と麻雀させられるだけの話だし。

最初にある「BJ」も、借りた部屋に得体の知れない何かがいて、髪を引っ張られたりするのだが、本当に何かがいるのか、本人の精神が病んでいてそう感じるだけなのか明らかにされないまま物語が途切れてしまうので、非常に歯切れが悪い。

なんだか、劣化した恩田陸を読まされている感じだ。恩田陸は前半面白いのに後半グダグダだけど、この人のは面白くもなくてグダグダになって途切れる。

猫のあしあと

2007年12月8日 読書
ISBN:4062143224 単行本 町田 康 講談社 2007/10 ¥1,680

「猫にかまけて」の続き。いなくなった猫もいるが、ヘッケの兄弟がいたら保護したいとボランティア団体に申し出たところ、関係無い猫が次々と持ち込まれ、どんどん増えていく。これ、町田康なら飼ってくれるだろうという打算で、わざと連れて来ているんだと思うよ。探している猫じゃないから要らないとは言えず、引き受ける事になる町田康。お釈迦様の様に偉い人だ。もはや人類にしておくのは惜しい! 猫の治療費とか、かなり出費があって大変だろう。

反対に、もう飽きたとか、もう楽しんだからと理由をつけて動物を捨てに来る腐れ外道もいる。こういう奴は人類にしておきたくない。寝ている間に死神に寝首を掻かれ黄泉平坂を転げ落ち、奈落の底まで堕ちて逝って欲しいところである。

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