話しあえない親子たち(PHP新書039)
2008年9月10日 読書「お前の言っていることは分かるよ。だけど…」と続く親のことばに、子どもはむかついている。大事な時に大事なことをしっかり話しあえないために、人間関係に傷つく人が増えている。相手の言うことを否定し上からの意見を押しつける「対立」のことば=「だけど」から、互いの違いを認め相手を受容する「対位」のことば=「だのに」へ。神戸の街角で二十余年、時代と家族を見つめ続けたカウンセラーが、ひととひととの深く温かなかかわりあいへの願いを綴る。
これは、PHP新書にしては微妙作。話し合えない現状についての分析や、その対策がほとんど書かれていない。接続詞の言い換えによる対話方法の変更だけで上手く行くとは、とても思えない。理論的ではなく、占い師っぽい内容でかなり胡散臭い。結局、カウンセラーって適当な事ばかり言って煙に巻いて、相手からお金を取っているだけなので、占い師とさほど変わらないと思う。
小さな集会に呼ばれ、そんな小さいところにはあまり行きたくないとか、報酬が少ないので気が向かないとか、かなり守銭奴な事を書いていて、読むほうも辟易してくる。そんな自分の不平不満をわざわざ新書で書く必要無いだろう!? ここは有名な台詞「チラシの裏にでも書いとけ!」と言いたい。
チラシの裏が読みたい人以外は必要無いと思う。レベル的には洋泉社新書のハズレ本クオリティ。
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巨大隕石の衝突(PHP新書038)
2008年9月9日 読書ISBN:456955928X 新書 松井 孝典 PHP研究所 1997/12 ¥693
本書では、「隕石」と「衝突現象」をカギに、地球の誕生や進化の謎を解き明かし、さらに最新の検証から恐竜絶滅のシナリオの詳細に迫る。四十六億年の古文書に地球の過去と未来を探る。
題名がこれだから、隕石が衝突した際の大災害について書かれていると思っていたが、むしろ隕石そのものにこだわった本だった。隕石に含まれる内容物の分析や、大気圏突入でどういう現象が起こるのかについて詳しく書かれているが、ディープ・インパクト的なものを期待してはいけない。
隕石だけでなく、原始太陽系の成り立ちや、惑星の形成過程についても言及している。但し、現段階ではまだ完成された理論とは言えず、そのままでは大型ガス惑星が内側軌道に形成されているような系外惑星について上手く説明がつかないので、今後の研究成果を待たねばならないだろう。
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北村薫の創作表現講義―あなたを読む、わたしを書く
2008年9月6日 読書ISBN:4106036037単行本 北村 薫 新潮社 2008/05 ¥1,365
「早稲田大学で教えた二年間、教室でこんな事を話していました」—ドラマ、映画、落語、朗読、短歌、舞台美術、音楽…さまざまな表現に“スパークする”小説家の創作魂。「その人でしかありえない」表現の秘術。より深く味わうための心得、「伝える」こと「分かる」ことの奥義。小説家の頭の中、胸の内を知り、「読書」で自分を深く探る方法を学ぶ。
これは2005年度、2006年度に早稲田大学で行われた講義が元となっている。大学の講義は睡眠兵器かと思いたくなるようなクソツマラナイものが多いのだが、こういうのなら受けてみたい。
材料として、当時駆け出しの三浦しをんを扱っているのだが、北村本人が獲れないのに、三浦しをんが先に直木賞作家(しかも、あんな微妙作で!)になってしまったのは辛いなぁ。ミステリー畑は不遇なので、選考委員を入れ替えない限り、今後もこの状況が続くのだろうけど……。
終わりの方に赤木かん子の手書き文章がそのまま載っているのだが、これは秀逸である! 東京に雪が積もった日、彼女はかまくらを作るのだが、脚色して作文に躍動感溢れる文章を書いたところ、先生からの一言は「ウソを書くのはやめましょう」であった。これが原因で、彼女は心に深い傷を負うのであるが……。まさに、天才と凡人が出会った際に生じる典型的な悲劇である。人は、自分よりレベルの高い人間を教える事など出来ない。彼女の悲劇は、自分よりもレベルが低い先生に当たってしまった事にある。この文才を見抜けないなんて、この先生は相当阿呆に違いない。
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ISBN:4062113953 単行本 舞城 王太郎 講談社 2002/10 ¥1,680
何が飛び出すか誰にもわからない最強の純文学! 圧倒的文圧で疾走する表題作『熊の場所』を含む全3編を収録。僕がまー君の猫殺しに気がついたのは僕とまー君が2人とも11の時、つまり同じ保育所に通っていた僕たちが一緒に西暁小学校に上がり、同じ教室で勉強し始めて5年目の頃だった。
「阿修羅ガール」は嫌いだが、これは上手いと思う。短編集なので「熊の場所」「バット男」「ピコーン!」の3編が収録されているが、断然「熊の場所」が良い。でも、やはり文章の決まりごとを無視しているんだよなぁ。「ピコーン!」は「阿修羅ガール」みたいな下品さがあって個人的には……。軽い文体で書かれているが、3編とも人が死んでいるので、内容自体はエグイ。
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ISBN:4048735292 文庫 貴志 祐介 角川書店 2007/10 ¥780
日曜の昼下がり、株式上場を目前に、出社を余儀なくされた介護会社の役員たち。エレベーターには暗証番号、廊下には監視カメラ、有人のフロア。厳重なセキュリティ網を破り、自室で社長は撲殺された。凶器は。殺害方法は。すべてが不明のまま、逮捕されたのは、続き扉の向こうで仮眠をとっていた専務・久永だった。青砥純子は、弁護を担当することになった久永の無実を信じ、密室の謎を解くべく、防犯コンサルタント榎本径の許を訪れるが―。
この作者は上手いのだけど、寡作。この水準を保ったままで恩田陸くらい乱発出来たら、きっとすごい売れっ子になるだろう。もう少しペース上がらないものかね?
今回は高層階で発生した密室殺人が題材となっている。なかなか真実にたどり着けないのでハラハラする。二転三転する推理。まあ、情報がすべて開示されていないから本格には入れたくないのだが、謎解きをするタイプじゃなくて、純粋に読み進めて楽しむミステリーだと思えば、非常に水準が高い。緻密に計算されたプロットは、最後まで辿り着いた後で第一部を読み返すと、さらに味が出る。
胡散臭いコンサルタントと弁護士が推理していく第一部と、実行犯人の立場で描かれた第二部に分かれる。第二部は、「青の炎」のような後味の悪さが残ってせつない。国家は、法律の及ばない悪意から、小市民を保護してはくれないのだ。出来れば、犯人がそいつらに復讐を果たしてくれたら気分爽快になれたのに……。
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あくじゃれ―瓢六捕物帖
2008年9月3日 芥川賞・直木賞ISBN:4167677024 文庫 諸田 玲子 文藝春秋 2004/11 ¥650
絶世の色男、粋で頭も切れる目利きの瓢六が、つまらぬことで小伝馬町の牢屋敷に放り込まれた。ところが丁度同じ頃起きた難事件解決に瓢六の知恵を借りるため、与力・菅野一之助は日限を切っての解き放ちを決める。不承不承お目付役を務める堅物の定廻り同心・篠崎弥左衛門との二人組による痛快捕物帖。
第126回直木賞候補作。
時代物だけど読みやすい文章なのが良い。切れ者の瓢六が賭博で座敷牢に放り込まれ、江戸の町で起こる事件を解決するため、使役させられてしまう。世渡りが下手そうな堅物同心の篠崎弥左衛門が良い味を出している。何度も瓢六の助けを借りるうち、次第に柔らかくなる篠崎弥左衛門。利用するために投獄を引き伸ばす、意外に策士な与力、菅野一之助。事件はいろいろと巻き起こるが、江戸を舞台とした推理物ではない。事情により裏家業へと身を堕とした男と同心を中心とした人情劇といった感じか。江戸時代は嫌いなのだが、これは素直に読める。
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隣のドッペルさん―瞳の中の妖精
2008年9月2日 このライトノベルがすごい?ISBN:4086302659 文庫 砂浦 俊一 集英社 2005/10 ¥560
愛美は演劇部に所属してて成績は中の上。千早と親友で、同級生の優と恋人未満のんびり恋愛進行形。だが、愛美は記憶の底から何かを思い出してしまう。ケータイから聞こえる囀りは恐怖の始まりだった。連続する学生の自殺。突然の殺人未遂。超常の力を持った千早すら対抗できぬ敵とは?そして、彼女達を狙うものの正体とは!?千早に恋する危ない少女も登場!戦慄の学園ホラー&バトル。
これも二冊目で終わってますな。少しマシになった気もするけど、やはり場面転換が……。後は物語としてメリハリがあまり無いから、読者を引っ張れないのが駄目だったのだろう。ここまでで終わっています。単発で読んでも大丈夫な話になっているから良いけど、シリーズとして考えたら未完結で放置されてしまう可能性大。
前作で倒した虎斑木菟の化け物を探してやってきた仲間のツグミが人間を惑わせる。最後には鵺に変形して襲い掛かるが、小麦粉(笑)で撃退っ! 最後に謎の敵が現れて、妙な伏線を張ったまま終わる。続き出さないのなら、伏線は張らないで頂きたい。
未完結放置による減点 ★
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隣のドッペルさん
2008年9月1日 このライトノベルがすごい?ISBN:4086302233 文庫 砂浦 俊一 集英社 2005/01 ¥580
少女の危機! 世界は虚ろなるモノに恐怖する。
高校生・愛美の日常は崩壊した。目前に現れたドッペルゲンガー。恋人・優や同級生のドッペルさんも発生し、御珠高校はパニックに…それすら戦いの始まりに過ぎなかった。次世代新伝奇アクション!
ある日、いないハズの自分が目撃されてしまう。そのうち自らも、もう一人の自分に出会ってしまい……。ドッペルゲンガーを題材にした、ちょっとダークな内容だけど、ホラーという程怖くは無い。場面転換がイケてない部分もあるけど、全体としてはそう悪く無いと思う。最後に、これが最初の事件であると結んでいるので、続ける気が満々ですな。
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ISBN:4334925359 単行本 大道 珠貴 光文社 2007/02 ¥1,575
だんなさんの家族を、私がちゃんと看取らなきゃならない―日々のなかで明るくユーモラスに死を嗅ぎ取るお嫁さんの、泣き笑いの“介護日誌”。
会社を辞めて旅に出てしまった夫の頼みで、夫の両親と一緒に暮らす事になった女性。義父と義母とお手伝いさんの黄泉、そして犬と猫……。犬と猫は、彼女が近づくと「オニが来た〜」と逃げていく。
うーむ、またしても電波入った主人公だな。『蝶か蛾か』の主人公よりは遥かにマシではあるが、これは著者が中年入ったから、こういうキャラばかり出てくるのか? なんか、著者も電波中年な気がする。
「日々のなかで明るくユーモラスに死を嗅ぎ取るお嫁さんの、泣き笑いの“介護日誌”」
なんて書かれているけど、ちっとも介護なんかしていないじゃないか。死ぬのも犬だけだし。ページの上に空白がありすぎて、会話文だらけだからスカスカなのが微妙なところ。これで1500円は高いだろう。図書館で借りたからいいけど、自腹ならブックオフでラノベ15冊買ったほうが遥かに有意義だ。
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見えないドアと鶴の空
2008年8月27日 読書ISBN:4334924239 単行本 白石 一文 光文社 2004/02/19 ¥1,575
勤めていた出版社を辞め、妻の代わりに家事をこなしながら日々を送る主人公、昂一。ある日、妻の親友である由香里と肉体関係を持ったことから、昂一は奇妙な事態に巻き込まれていく。由香里の持つ特殊な「力」や、常識では説明できない出来事の数々。その疑問を解くため向かった土地で、昂一が探し当てたのは、由香里の不幸な生い立ちと、妻の知られざる少女時代の姿だった。
旦那と妻と妻の親友。男一人、女二人で繰り広げる奇妙な三角関係。このままだったら陳腐でありふれた恋愛小説以外の何物でもないのだが、少し違った。妻の親友にして幼なじみが、超能力女だったのだ! そんなに大それた事は出来ないのだが、未来を視たり、触れずに物を動かせたり、壊れたモノを直せたり治せたり……。
親友の結婚相手を誘惑して寝取ってしまう女。だが妻のほうも同じく他所で不倫疑惑が浮上していた!? 女二人に隠された過去が明らかになるにつれて、泥沼状態になるヘタレ男。怨霊まで出てきて襲われる。小道具が面白いから楽しめたが、主人公がニートでヘタレな妻帯者なので、脱力感タップリである。
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ISBN:4044253013 文庫 乙一 角川書店 2000/12 ¥580
14歳の冬休み、わたしはいなくなった―。大金持ちのひとり娘ナオはママハハとの大喧嘩のすえ、衝動的に家出!その失踪先は…となりの建物!!こっそりと家族の大騒ぎを監視していたナオだったが、事態は思わぬ方向に転がって…!?心からやすらげる場所を求める果敢で無敵な女の子の物語。その他うまく生きられない「僕」とやさしい幽霊の切ない一瞬、「しあわせは子猫のかたち」を収録。きみが抱える痛みに、そっと触れます。
「しあわせは子猫のかたち」
またしても淡々としていながらも、せつない系。死んでからも家に留まる女性と、新たな住人となった男。幽霊は出てくるけどホラーではない。そこに以前の住人が存在する事は判るのだけど、姿は見えない。飼われていた猫には見えているらしいのだけど。最後の意外な結末も上手い。
「失踪HOLIDAY」
継母と喧嘩して家出した金持ち娘は、なんと使用人の住む離れへ潜伏して母屋を伺う。そのうちに親を困らせようと狂言強盗を思いつき……。これも、娘の浅はかな計画を超えて、事件が意外な結末を迎えるのが上手い!
乙一は初期作品から完成度高いな。
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恋愛写真―もうひとつの物語
2008年8月25日 読書ISBN:4093861196 単行本 市川 拓司 小学館 2003/06 ¥1,365
カメラマン志望の大学生・瀬川誠人(まこと)は、個性的でとても謎めいた女の子・里中静流(しずる)と知り合う。誠人は女の子にかなりの奥手だったが、静流とは自然にうちとけるようになる。やがて誠人は静流に思いを告げられるが、誠人には好きな人があり、その思いを受け取ることはできなかった。卒業を待たずに清流は姿を消した。
ああっ! この結末は十分予測出来たし、実際に寸分違わずに正解していたから全く意外性も無かったのに、涙腺緩みそうだった。作者vs読者対決で作者に負けてしまったような気分だ。不覚……。それにしても、この人が書く話はこういう可哀想なのばかりなのか?
とりあえず、『世界の中心で、愛をさけぶ』 読むくらいなら、これのほうがいい。
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どきどきフェノメノン A phenomenon among students
2008年8月24日 読書ISBN:4043891016 文庫 森 博嗣 角川グループパブリッシング 2008/04/25 ¥620
大学院生・佳那の「どきどき」かつ「ミステリィ」な日常。
窪居佳那は大学院のドクターコースに在籍中。指導教官である相澤助教授に密かに憧れを抱いていると思っているのは本人だけで、助教授の前で佳那が挙動不審になることは講座の全員が気付いているのだが……?
ミステリーではなくて恋愛物? これはこれでいいんだけど、いつものような論理構成による切れ味はない。個人的には犀川&萌絵シリーズのような理数系的なほうが好きだな。様々のジャンルのものを書けるという事で、森博嗣の才能の高さを再認識させられる作品ではある。
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ISBN:4796615660 文庫 別冊宝島編集部 宝島社 1999/07 ¥550
地下鉄サリン事件の現場にはなぜ幽霊が出ないのか…怪奇物件はいかにして現実社会で洗われてゆくのか…四肢切断された「だるま女」の伝承の真偽は…サイコパス系都市伝説から、バラバラ死体遺棄、呪いのビデオ、奇病、心霊事件、電脳怪異譚の深層まで、世紀末ニッポンを跳梁する「ぶきみな話」「怖い話」の正体を追った怪作ホラーノンフィクション。
これ、怖い話を集めただけかと思ったら、違った。都市伝説や幽霊話が生み出される理由をさらって行くのである。手法は科学的とは言えない部分もあるが、そもそも題材が人類の科学では解明出来ないモノであるから仕方が無い。
ライターが創作してるのではないかと思えるような軽快なタッチの文章もあって、読み物としても面白いと思う。半面、怖がりたい人には物足りないかもしれない。
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死神姫の再婚
2008年8月22日 このライトノベルがすごい?ISBN:4757737440 文庫 小野上 明夜 エンターブレイン 2007/9/15 ¥546
旦那様、お買い上げありがとうございます! 没落貧乏貴族の娘で14歳・天然系のアリシアは、後見人の叔父により借金の返済と持参金目当てのために家名が欲しい金持ちへ嫁ぐが、なんと結婚式の途中新郎が急死してしまう!! この『事件』がもとで『死神姫』と呼ばれてしまったアリシアだが、なんと再婚話が持ち上がった。相手は新興貴族の成り上がり者でとかく噂のある〈強公爵〉ライセン。馬車に揺られて着いた先は、恐ろしげな装飾を施された屋敷と結婚相手ライセンの愛人と主張するメイドのノーラ!? 彼女の前にどんな未来が待ち受けているのか?
死神姫という部分に釣られてしまった訳だが、実際に死神だったり、人を殺せる特殊能力者だったりはせず、単に政略結婚の相手が結婚式の最中に急死してしまったから、そういう異名を付けられてしまっただけだった。ラノベなのに冒頭からいきなりバツイチになっているヒロインなんて初めて見た(笑)。
家の格式だけは高いのだが、没落してしまい貧乏貴族に転落。格を高めたい貴族に嫁ぐという身売り同然の行為でしか家を保てないほど落ちぶれているのだが、式中に新郎が急死するという縁起の悪さでは、まともな相手が現れる筈もなく……。
やっと出てきた再婚相手は、家格を高めたい強公爵! それっておかしくないか!? 子爵や男爵ならともかく、公爵が地方伯の娘を貰っても、格は高くならんでしょうに。やはりラノベ、こういう部分に適当なものが多いですな。
皇帝>王>大公(大公爵)>公爵>侯爵>辺境伯爵>伯爵>子爵>男爵ですから! 公爵が伯爵の家格を加えても、偉くなりませんから! 一代でのし上がった公爵という設定にはなっているけど、常識外れな無理やり設定による力技が多いなぁ。
ストーリーとしては、淡々としてはいるけど、そう悪くも無いと思う。それなりに人気も出たのか、シリーズ化して続きが出ているね。
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ISBN:4087712168 単行本 橋本 紡 集英社 2008/03 ¥1365
大切な人を、自分の心を取り戻す再生の物語。大学生のゆきなのもとに突然現われた、もういるはずのない兄。奇妙で心地よい二人の生活は、しかし永遠には続かなかった。母からの手紙が失われた記憶を蘇らせ、ゆきなの心は壊れていく…。
9話入っているけれども、登場人物は全部同じ。それぞれの話が、各話タイトルとなっている文学作品とリンクする。
最初の話で、突然戻ってきた兄の正体がネタバレする。本来はそこにいてはいけない存在だが、怖くは無いのでホラーではなくファンタジー。いない筈なのに、あまりにも存在感がありすぎる兄がちょっと嘘臭いけれども、芥川賞を受賞したイトヤマ作品と比べたら、許容出来る範囲。
兄の存在だけが非日常だけど、物語自体は淡々とした日常風景か。ゆるい感じだけど、ちゃんとオチがついているので、雰囲気だけで最後にオチ無い恩田陸よりは良い。
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ISBN:4041880025 文庫 鈴木 光司 角川書店 1997/09 ¥560
大都市の欲望を呑みつくす東京湾。ゴミ、汚物、夢、憎悪…あらゆる残骸が堆積する埋立地。この不安定な領域に浮かんでは消える不可思議な出来事。実は皆が知っているのだ…海が邪悪を胎んでいることを。
第115回直木賞候補作。
映画を観る位なら、原作を読んだほうが良い。というより、映画は駄作なので観なくていいと思う。水に絡んだ怖い話の短編集だけど、最初と最後で一つに連なるような感じ。『仄暗い水の底から』として映画化されたのは、この中の短編の一つである。
映画は、映像の薄暗さで安易に雰囲気出そうとしているので、非常に見づらい。水死した(と思われる)子どもが出てくるとこは少しだけ気味が悪いけど、そんなに怖くない。結局、貯水タンクに沈む死体も出てこないし、母親がどうなったかもわからないまま、意味不明のエンディング。黒木瞳が出るという以外に褒める点が見当たらない。
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ISBN:9784043838011 文庫 遠藤 徹 角川書店 2006/11 ¥438
蚊吸豚による、村の繁栄を祝う脂祭りの夜、小学生だった僕は縁日で初めて「姉」を見る。姉はからだを串刺しにされ、伸び放題の髪と爪を振り回しながら凶暴にうめき叫んでいた。第10回日本ホラー小説大賞受賞作他全4編収録。
題名だけで判断すると、姉を飼いならす近親相姦的なエロスを連想してしまいそうだが、全く違う。出てくる姉は、血の繋がった姉ではなくて、「姉」と呼ばれる化け物のような何かである。かなり気持ち悪い話だが、一気に読まされてしまった。従来の作品には見られないようなホラーである。
4つの短編から成っているけど、やはり題名になっている「姉飼」が他を圧倒している。怖くは無いけれども、とりあえず気色悪さは天下一品。
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ISBN:4167109085 文庫 ディーン・R・クーンツ 文芸春秋 1989/10 ¥700
いまは流行作家としてときめくローラ・シェーン、かつては孤児院で辛酸をなめた薄倖の美少女だった。これまでの生涯、何度か人生の危機や事故に見舞われそうになったが、そのつど、どこからともなく立ち現われて危難から救ってくれた“騎士”がいた。そのたびに、空には閃光が…。ジャンルを超えた傑作スーパー・スリラー。
人生に危機が訪れる度に雷鳴とともに現れて救ってくれる謎の男。彼は歳もとらず、同じ姿のままでローラのもとへ駆けつける。一体、何者なのか?
こんな感じのストーリーですが、時間旅行をテーマにしたものではかなりの秀作。過去は変えられないという命題を破綻させること無く書き上げるアイデアは見事っ! これは凄い。普通の頭では、そこまで捻った設定なんて考えつきもしないだろう。ネタバレになるから詳しくは書けないけど。
それにしても、これほど面白い作品なのに、クーンツ本人にとっては駄作なのか、自ら版権を買い取って封印してしまったらしい。故に、もう読めません。この本は売らず、永久保存しておく。
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