冥王星パーティ

2008年11月16日 読書
ISBN:4104722030 単行本 平山 瑞穂 新潮社 2007/03 ¥1,575

なんだか、題名だけ見るとSFっぽいのだが、全然違う。ちょっとやるせない感じの青春物語。

偶然見つけたホームページで淫らな画像を掲載しているのは、あの娘かもしれないと男は思った。顔は隠されているものの、同姓同名の女性が作るページの記録に、あの夜の出来事が書かれているのを読み、それは確信へと変わっていく。

かつては素朴で純情、今ではやり手に華麗なる変身を遂げた男と、出会う男に翻弄されて少しずつ人生が狂っていく女の、二人の主人公視点から物語が綴られる。せつなく、やるせない物語だが、今回も上手い! この作品は微妙という声が多いけれども、飽くまでも平山瑞穂著作としてはという但し書きがつくべきであって、やはり高水準な出来だと思う。ごくごく平凡な物語なのに、最後まで飽きずに読ませる。

嫉妬して女を追い落とそうとする汚らしい友人や、ストーカーっぽい金持ちバカボン、他人の業績を掠め取る糞男など、脇役も非常にクセがあってよろしい。人間の汚らしさがよく描かれている。

あの日が人生の分岐点だったかもしれないと、再開した二人は思う。互いに自らが歩んできた道を修正するために、お互いの軌道が一瞬だけ交差する。しかし、人生をあと戻りする事は出来ないのだ。あの日、もしも一緒に過ごしていたらどうなっていたかと想いを馳せながらも、もう二度と交差する事は無いであろう互いの人生へと踏み出していく。

 

2008年11月15日 読書

怪笑小説

2008年11月15日 読書
ISBN:4087488462 単行本 東野 圭吾 集英社 1998/08 ¥520
仕事場に通う途中に思いつき、目の前にいる人々の心境を想像した作品「鬱積電車」。怪しい笑いが新たな不気味な笑いを呼ぶ9編からなるユーモアあふれる作品集。怪しい笑いに酔いしれたい方に最適。

怪笑するまでには至らなかったが、ニヤリとするようなブラックユーモアが多い。度が過ぎて、人間の汚さに辟易する話もあるが。「鬱積電車」は、混雑した電車内での、ジコチュー人間達の心の囁きを描く。クソみたいな人間だらけの中、一見、いつも通りの日常のまま終わるのだが……。最後の最後で自白剤を誤って巻いてしまった男が出てきて終わる。この後、修羅場になるのだろうな。「しかばね台分譲住宅」は、町に死体が転がっており、風評被害でこれ以上値下がりしてたまるかと、死体を隣の住宅街へ捨てに行くのだが、相手も同じ事を考え、死体の押し付け合いに! 「一徹おやじ」は巨人の星だし、「あるジーサンに線香を」は、そのままアルジャーノンのオマージュ。
ISBN:4152089423 単行本 吉田 親司 早川書房 2008/07 ¥1785
教祖・葵飛巫子の卓越した指導力で、国際社会に影響力を持つマザーズ教団。その真の目的を知った4人の男たちが、全てを賭け軌道エレベータ建造に挑む! 架空戦記の俊英、初の本格SF長篇。(Amazonに解説が無かったので早川書房の紹介より)

インド亜大陸とスリランカに架かる巨大な橋を拠点とするマザーズ教団。難病の子供達を看取るという表の顔とは別に、裏では臓器売買を手掛けているという疑惑が浮上。しかし、これが敵ではなくてインドにいる野心ある政治家が悪玉になる。教団側は黒い一面を見せつつも、教祖飛巫女に惚れてしまった四人の男が命懸けで彼女を守るという、妙な方向へ。

国境無き医師団の潜入捜査官である天才医師、天才ハッカー、裏家業で富を築いた男、世界最強の傭兵、この四人が飛巫女らぶらぶ! で、彼女を救うために戦う。なんか、動機が微妙ですな。飛巫女の魅力もいまいち伝わって来ないし。

人類存亡の危機も迫る中、世界を救うためではなく、教祖様を救うために、世界初の軌道エレベーターを建造しようとする四人組。物語は突拍子も無い方向へと転がって行くが、「この時はまだほにゃららである事に気づいていなかった」形式のネタバレだらけで興醒めしてしまう。

四人のうちの誰かに視点を合わせてくれないので、誰を軸にして読み進めたら良いのか判らずに戸惑うし。まあ、最後の方で次々と……な訳で、これでは誰も主人公に据える事は出来ないけどね(汗)。

強引な力技でラストまで運びつつ、最後の最後で大風呂敷を広げて物語が終わる。なんだか蛇の足っぽいエピローグだなぁ。どうもラノベ臭さが抜けきらず、力量不足が目立つ作品だった。

ハイドラ

2008年11月14日 読書
ISBN:4103045310 単行本 金原 ひとみ 新潮社 2007/04 ¥1,260

またしても拒食症ガリガリ女が主人公で、ペラくてチャラチャラした人々が繰り広げるつまらない日常。なんか、こういうのばかりだね。女である事を武器にしている間は、女流作家の域を超えられないと思うぞ。こういうの、チャラくて若い女が読めば共感するのかもしれないけど。
ISBN:4087748308 単行本 三崎 亜記 集英社 2006/11 ¥1,680
30年に一度起こる町の「消滅」。忽然と「失われる」住民たち。喪失を抱えて「日常」を生きる残された人々の悲しみ、そして願いとは。大切な誰かを失った者。帰るべき場所を失った者。「消滅」によって人生を狂わされた人々が、運命に導かれるように「失われた町」月ケ瀬に集う。消滅を食い止めることはできるのか? 悲しみを乗り越えることはできるのか? 時を超えた人と人のつながりを描く、最新長編900枚。

第136回直木賞候補作。

賛否両論、読み手により当たり外れの大きい本書であるが……。勘弁して下さい。面白くない。ハイパー面白くない! これはもう三浦しをんどころではない。30年に一度町が消滅するという、とても魅力的な世界設定なのに、その特異な現状に成す術も無く翻弄される人間模様が主体であるが故に、魅力半減。淡々としすぎで盛り上がらないし、特殊な設定なのに十分な情報が与えられないので、読んでいて苦痛すら感じる。

町の消滅という現象について、語られない部分があまりにも多すぎて上手く物語に入り込めない。不親切なまでに説明が不足しているので苛立ってくる。意図的にやっていると見る向きもある様だが、本作品では説明されない事によるメリットは見当たらない。平山瑞穂の「ラスマンチャス通信」のように、描写や説明を省略する事によって物語の不気味さが増す様な場合にはやる意味があると思うが。作者は自らの脳内妄想でこの特殊な状況を把握しているだろうが、読み手はちゃんと説明して貰わないと理解出来ません。

「ニルスの不思議な旅」に出てくる封印されてしまった町や、手塚治虫の「プライムローズ」みたいに町が未来世界へ移転させられてしまうような物語を期待していたのだが……。消滅してしまうという部分だけ見ても平山瑞穂の「忘れないと誓った僕がいた」に負けている気がするよ。

木洩れ日に泳ぐ魚

2008年11月14日 読書
ISBN:4120038513 単行本 恩田陸 中央公論新社 2007/07 ¥1470
一組の男女が迎えた最後の夜。明らかにされなければならない、ある男の死。それはすべて、あの旅から始まった――。運命と記憶、愛と葛藤が絡み合う、恩田陸の新たな世界。

出だしは良くても、また後半はグダグダになって中途半端なまま煙に巻かれるんだろうと思いながら読み始めたのだが、この作者には珍しく、ちゃんと結末まで導いてくれた。

登場人物は引越しを控えた男女二人だけ。今後は別々の人生を歩むという事で、最後の夜を過ごす部屋の中が物語の舞台となり、ほぼ回想シーンで進行するが、実際の時間は夜更けから夜明けまでの間である。

最初に出てくる小道具が一枚の写真で、この男女の他に三人目の中年男性が写っているのだが、すでに故人である。そして、この第三の男を殺したのが相手ではないかと互いに疑い、真実を突き止めようと腹を探り合うのである。

最初は別れる寸前の男女に絡んだ殺人ミステリーなのかと思ったが、一緒に住んではいるけれども、実は恋人同士ではなかった。真実を解き明かそうと記憶を探るうちに明らかとなって行く二人の関係。いつも通りに淡々と物語が進んでは行くけれども、後半ダレる事無く、最後でさらにもう一段階サプライズが用意されていたのが良い感じである。
ISBN:4163269207 単行本 竹本建治 文藝春秋 2008/05 ¥1,600
僕らの「どじっ娘」メイド、キララが帰ってきた。孤島で、謎の研究所で、怪しげな廃屋で、美少女アイドル達と一緒に大活躍。美少女メイド青春ミステリー第2弾。

竹本健治、またもやってくれました(笑)。竹本健治がメイド物。しかも、文藝春秋から。シリーズ二作目だけど、依然として違和感が拭えない。

ミステリーとしては中途半端で、わざわざメイドでやらなくても良い気がするが、メイド無しで単なるミステリーなら、きっと読まない訳で……。要は、ミステリーは関係なく、人工知能搭載型メイドに萌えられるかどうかが勝負の分かれ目か!?

それにしても、今回の暴走っぷりは凄い。最初の二話は単なるラノベ風味メイド物ミステリーだけど、最後の一話はどう読んでも18禁エロ小説としか思えませんが(笑)。キャンベル博士、ちょっとハジけすぎ!

キララ、探偵す。

2008年11月13日 読書
ISBN:4163255400 単行本 竹本建治 文藝春秋 2007/01/27 ¥1,700
愚図なドジっ娘メイド・キララの正体は最新鋭アンドロイド。ご主人様のためならあんなコトもこんなコトも! 青春メイドミステリー。

竹本建治二冊目挑戦にして、なんだかマニアックなものを引き当ててしまった。短編集と全然違うじゃないか。なんだかラノベっぽいキャラクター小説になっているぞ。

帯にも
僕たちにはメイドが必要だ。
とか書いているし。

ヘタレ青年が親戚の天才科学者が開発したメイド型アンドロイドのモニターを行う事になるという、どこかで良く聞くような内容。良くも悪くもお決まりのパターンだから目新しくも何とも無い。ラノベラーは良いかもしれないけど、従来の固定ファンはきっと複雑な思いだろうなぁ。それにしても、メディアワークスやメディアファクトリーならともかく、文藝春秋からメイド物というのが笑える。
ISBN:4048733435 単行本 竹本 健治 角川書店 2002/08 ¥1,785
誰もが経験する、少年時代の輝かしい夏。そして、夏の終わりとともに訪れる、生まれて初めての別離と孤独―。少年の無垢な魂が結晶した、待望の第二短編集。

竹本建治初挑戦にして短編集だった。そして、最初のほうに収録されているやつが面白くなかったので途中で投げかけた。後半はそこそこイケるのが入っていたので良かったが。危ない、もし途中で投げていたら、ダメ作家に分類してしまうところだった。(ちなみに、今までに投げたのは某山田君とか角田とか……。)

短くても凝縮されて纏っていたら良いのだけど、結末がボヤけていて何だかよく判らないのが多いのはちょっと微妙。推理物は信じられない位の力技で唖然としてしまう。月を土星に偽装したトリックなんて、馬鹿らしいから他の誰もやらないだろう。無茶苦茶すぎるから、かえって笑える。純文学っぽいやつよりも、後半にあるSF風の作品が好きだな。

変身

2008年11月12日 読書
ISBN:4093861854 単行本 嶽本 野ばら 小学館 2007/03/30 ¥1,470
ある朝、星沢皇児が妙に気掛かりな夢から眼を醒ますと、自分が寝床の中で見知らぬハンサムな男に変わっているのを発見した…。売れない漫画家や人気アイドルたちが織り成す、笑いと涙のスーパーエンターテインメント。

ある日、目覚めると、超不細工男が美形に変身していたという、カフカをパロった作品。こういうのは、最後で元の木阿弥となり、悲惨な結末を迎えるのがセオリーだから、読み進めるのが億劫だったのだが、思っていたような、万人が思い浮かべる結末ではなかったので良かった。

どうしようもない不細工男が美形に変身しても、ちっとも幸せに至らないのが哀れ。絡んで来る三人の美女にして糞女がムカつきます。そして、唯一のピュアなキャラが超絶不細工女のゲロ子という、悲しい設定。ああっ、ゲロ子だけが本物だよ。コンビニ女とキャリア女と芸能女は糞だ。どうせなら、ゲロ子も変身させてくれたら……。

 

2008年11月12日 読書

つばき、時跳び

2008年11月11日 SF特集
ISBN:458283342X 単行本 梶尾 真治 平凡社 2006/10/19 ¥1,575
幽霊伝説のある旧家に住むことになった「私」は、ある日、突然出現した不思議な少女に魅せられる。150年の「時の壁」を超える恋の行方は? 「黄泉がえり」の作者が放つ、究極のタイムトラベル・ロマンス。

先祖が残した百椿庵という古い建物に住む事になった作家。そこには女の幽霊が出ると伝えられているのだが、何故か女性にしか見えないと言われていた。しかし、作家は男として初めて幽霊に出会ってしまう。若く美しい幽霊にまた逢いたいと思った彼は、百椿庵を調べるうちに、屋根裏に奇妙な物を見つけてしまう。

ある日、外出して百椿庵に戻ると幽霊が、生身の体で存在していた。幽霊の正体はつばきという女性で、どうやら150年前に百椿庵に住んでいたらしい。次第につばきに惹かれていく作家であったが……。

違う時代に生きた二人にどういう結末が訪れるのか、ハッピーエンドか、せつない離別か、最後まで目が離せない。カジシンだけに、細かい部分で突っ込みどころは多々あるけど、その辺はサラリと読み流して、あんまり気にしないほうがよろしい。ラストが、ややアッサリしすぎなのは残念。もう少し感動的に描けたら名作になったのに。
ISBN:4840238901 文庫 佐野 しなの メディアワークス 2007/06 ¥620

これも、ちょっと微妙だなぁ……。ある朝、少年が目覚めたら、自分のベッドに別の自分がいて、それを見ている自分はオリジナルに似た女の子になっていたというTS物。元の体には、事故死した別の男が入り込んでいて、未練があるから成仏出来ないという設定。成仏させる為には、自分自身の体(中身は憑依した別の男)に、女になった自分がキスしなければならないという、BLなんだかノーマルなんだかよく判らなくなってくる仕様。

ちょっと捻った設定は良いのだが、語彙が貧弱。女性化してしまった自らを「美少女」という三文字だけで強引に描写し続ける。しかし、絵がコレだから、そんなにレベルの高い美少女には見えない件。筆力不足を絵だけで補うのならば、せめて絵師は高苗京鈴とかささきむつみ、七尾奈留レベルにして、誰が見ようと美少女にしか見えないようにして欲しかった。この表紙では、ブサイクではないものの、ボーイッシュで普通の女の子にしか見えません。むしろ、作中に出てくるやっさんという変な同級生のほうが可愛く見えるし……。

多少気持ち悪いかもしれないが、自分の顔にキスすれば元の体に戻れるという設定なのだから、さっさとすれば良いものの、吐くから無理と連呼しまくりで、下手なドタバタコメディのまま、作者と主人公だけが盛り上がったまま内容が無い様系でラストまで突っ走って行く。実は、嫌悪感を催すのでキス出来ないのではなく、ちゃんと伏線があるのだが、その部分をきちんと文章で説明していないので、主人公が駄々こねているようにしか思えないのだ。最後まで読まなくても判るよう、冒頭付近で書いておかないのは下手すぎる。
ISBN:4757734190 文庫 富永 浩史 エンターブレイン 2007/02/28 ¥609
陸軍魔法士官学校で箒で空飛び大バトル!? 目下最大のエリーナの悩みは、体が大きく(特に胸!)重いこと。なぜならここは陸軍魔法士官学校飛行科。時代遅れと言わば言え、飛行兵を養成する魔法使いの学校だ。いくら魔法の力でも、空を飛ぶにはとにかく軽く、小さい方が有利なのだ……。 高く、高く遙かなる空へ。「飛びたい!」ただそれだけを胸にがんばる落ちこぼれ少女と同期生たち、それを見守る(?)人間やドラゴンやグリフォンの教師陣の、痛快飛行バトルファンタジー、堂々登場!

作品としてはそう悪くもないと思うのだが、ヒロインが大女という設定は萌えないよなぁ……。そして、ヒロインにやたらと突っかかる同期の少年はチビっ子。

魔法が存在するファンタジー世界設定で、使用するには免許が必要なのだが、その免許は軍に入らないと貰えないという嫌な感じの国が舞台となる。エリーナは箒に乗って空を飛びたいから陸軍魔法士官学校に入るのだが、落ちこぼれのはずが帝国側の竜騎士に目をつけられたものだから、チビっ子少年とともに試合に出る事になってしまう。

それにしても、領土の一部が帝国に占領されたままの状態で、二カ国合同で軍事演習なんてやるかね? 普通はやらないでしょ!? 帝国の竜騎士と空を翔る試合という見せ場を作るためとはいえ、ちと強引すぎる。北海道が占領された状態で、自衛隊とロシア軍が合同軍事演習を行う位、不自然だよなぁ。

学校の先生に、何故かグリフォンとドラゴンまでいるのだが、名前がグリペン先生とドラケン先生である。単にスウェーデン語なだけなのか、SAAB社のアレから取ったのか……。
ISBN:4408535176 単行本 恩田 陸 実業之日本社 2007/12/14 ¥1,575
恩田ワールドの原点への熱きオマージュ。ホラー、SF、ミステリ、ファンタジー……クレイジーで壮大なイマジネーションが跋扈する、幻惑的で摩訶不思議な作品集。

妙な話だらけで、本当に摩訶不思議な作品集に仕上がっている。15編入っていて全部が短編だから、長編作品のようなグダグダ感が無く綺麗に纏っている。変な話がたくさん入っているので、お気に入りから全然面白さが判らないものまで様々。

奇抜な設定だらけなのは良いのだが、オチの弱い物が多いので、サプライズはあまり感じる事が出来なかった。これで唸らせる終り方ばかりなら神作品なのだが……。各話については、内容に触れすぎると、読んだ時の面白さが削がれてしまうので控える事にする。
ISBN:4150102074 文庫 矢野 徹 早川書房 1976/10 ¥966
西暦2076年、地球の流刑地である月は、地球政府が管轄する月世界行政府の圧政に苦しんでいた。自我を持つ月世界のメインコンピュータ″マイク″と、彼の唯一の友達である機械技師マヌエルは、抗議集会に参加したことをきっかけに、地球からの独立運動の戦いに次第に巻き込まれてゆく。しかし月世界は1隻の戦艦、1発のミサイルも保持していなかった…。

原題を勝手に変えてしまうというのはよくある話で、実はこれもそのまま訳したら「月はきびしい女教師」になってしまうのだ。時々、センスの無い人が的外れな邦題つけている場合もあるが、これに関しては見事というしかない。女教師では売れないだろう。絶対に、無慈悲な女王のほうが良い。

近未来世界において、月は世界連邦の植民地となっていたが、実情は犯罪者や政治犯を投げ込んだだけの究極の監獄であった。どこにも逃げられない、最強の監獄である。すでに、犯罪者だけではなくてその子孫も生まれ、独自の世界を形成してはいるのだが、一方的に搾取されるだけの存在である事は、従来の植民地と何も変わらなかった。

ここで、人工知能コンピューターが登場する。それは人間同様に思考する事が出来た。しかし、その事は彼(コンピューター)に関るエンジニアしか知らなかった。他に誰も、機械が自律的に思考するなどと考えはしなかったのだ。彼は生きていた! 攻殻機動隊的に言えば、ゴーストが宿ったのだ。その人工知能を仲間にして、月世界を独立させるための戦いが始まる。

経過がアメリカ独立戦争に似ていて面白い。これは自国に対する、ハインラインの皮肉なのでしょうか? ともかく、作者が巷で言われているような単なる右翼ではないという事は、本書を読めば判るでしょう。

それはそうと、矢野様ともあろうお方が、翻訳の日本語が少しおかしいし、誤字もあるのは如何なものかと。偉そうな割には、仕事が甘いんじゃないですか?

 

2008年11月8日 読書

 

2008年11月8日 読書

寂しい国の殺人

2008年11月7日 読書
ISBN:4938737337 単行本 村上 龍 シングルカット 1998/01 ¥1,890
現代をおおう寂しさは、過去のどの時代にも存在しなかった。近代化達成による喪失感は近代化以前にはないから。今の子どもたちが抱く淋しさは日本で初めてのものなのだ…。日本の近代化終焉を告げるヴィジュアル・テキスト。

過去掲載分。密林に画像が追加されたので入れなおし。

神戸のあの事件を題材に、『近代化の終焉』というテーマで村上龍が挑んだ作品。右側に日本語、左側には英語と画像。なかなか良い感じのデザインだ。
 
あれから随分と経つが、当然の事ながら被害者は殺されたままだ。そして、バモイドイキ神様の忠実なるしもべは、どこかに就職したらしい。ニートなみなさん、頑張りましょう。小学生の首をちょん切るようなキティでも、ちゃんと就職出来ますから。職歴が無いとか技能が無いなんてレベル、首切り殺人鬼と比べたらどうって事無いです。

それにしても、被害者は首を切られたまま、加害者は社会のどこかでのうのうと生活している。もはやこの国に正義など存在しない。悪の栄える現代のバビロンよ、滅びたまえ!
 
キチガイを外界に解き放って、また誰かの首が切断されたら、誰が責任取るんだろうね?

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