ISBN:4087747867 書籍 三崎亜記 集英社 2005/11/26 ¥1365
あの『となり町戦争』に続く衝撃作! 話題のデビュー作に続く注目の第2作。バスジャックブームの昨今、人々はこの新種の娯楽を求めて高速バスに殺到するが…。表題作他、奇想あり抒情ありの多彩な筆致で描いた全7編を収録。
題名が嫌な感じなので躊躇したのだが、ネオ麦茶事件を彷彿させるような内容ではなく、やはり妙な話だった。この作者は妙な物語を考えるのが得意だが、文体が淡々としすぎで設定厨っぽいところが多くて微妙。これは短編集なので、表題作以外にもいろいろ入っているのが良い。
表題作の「バスジャック」は、バスジャックが認められており、様々なルールのもとに乗客参加型で行われるという妙な物語。バスジャック初デビューの人々が乗っ取りを試みるが乗客の抵抗で失敗、しかしその後で……。
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ラス・マンチャス通信
2008年11月21日 読書ISBN:4104722014 単行本 平山 瑞穂 新潮社 2004/12/21 ¥1,470
僕は常に正しく行動している。姉を犯そうとした「アレ」は始末されるべきだし、頭の足りない無礼なヤンキーが不幸になるのは当然だ。僕のせいではない。でも、なぜか人は僕を遠巻きにする。薄気味悪い虫を見るように―。カフカ+マルケス+?=正体不明の肌触りが、鈴木光司氏の絶賛を浴びた異形の成長小説。第16回日本ファンタジーノベル大賞大賞受賞作。
平山瑞穂デビュー作にして、著書の中で最高評価をされている日本ファンタジーノベル大賞受賞作。ネットリとまとわりつくような、気味の悪い連作短編の連なり。結末が明かされぬままに次の話に飛んでしまったりして、やや消化不良になる。
物語に登場する、人間ではない様々な何かも、描写が少なくてよく判らない。これは、描写不足というよりも、あえてボカす事により不気味さを醸し出す為だと思うけど、何がいるのか非常に気になる。
いつも不条理な出来事に翻弄され続ける一人の男。姉を救う為にアレを殺したのに、施設に入れられてしまう。施設でも不条理な事だらけで、出てから就職した先でも酷い仕打ちを受けた上、馬鹿上司に代わり退職させられる。続いて世話された先でも、妙な状況に陥った挙句、得体の知れない何かに殺されそうになる。
何が襲ってきたか明かされぬまま、その後の話になり、詐欺師として働くうちに姉と再会。姉は何かに連れ去られ、そいつを生かすために子供をさらって食わせていた。さらに時が過ぎ、裏社会のフィクサーみたいな男の屋敷で下働きする事になるのだが、そこにいた人形が……。
なんか不条理だらけで救いが無いな。異色だけど、読了後に幸せな気分になれない。乙一系統の気持ち悪い話が大好きな人には堪らないかもしれない。
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憂鬱アンドロイド
2008年11月21日 このライトノベルがすごい?ISBN:4840230412 文庫 真嶋 磨言 メディアワークス 2005/05 ¥578
「ぼくは、アンドロイド。完全防水加工の、水陸両用なのさ」自分をアンドロイドだと信じ切っている少年・小田桐正機。「君は正真正銘、決定的に、もう言い逃れできないくらい―人間、なんだよ」純真だが変人と呼ばれる正機を愛する少女・桜野茜。ちぐはぐな想いを抱えながらも、ただそこにある現実を追い求める二人を巡って様々な人間模様が交錯する。「わたしが憂鬱なのはきっと―」アンドロイドになりきれない少年と、人間の気持ちを見つけられない人間たちの、憂鬱で純粋な愛の物語。
これ、文章は下手でもないのだが、どうも薄口すぎる。雰囲気だけで、あまり美味しくない。自分がアンドロイドだと信じている少年と、彼を護る少女、設定は面白そうなのだが、淡々と盛り上がらないままの短編を羅列しただけなのは惜しい。各話における主人公の独り語りが多すぎるし、雰囲気だけで内容があんまり無い。詩や散文じゃないのだから、ページの下半分がスカスカなのは如何なものか。
もう少し物語にメリハリをつけて盛り上がりがあれば良かったのだが。短編もバラバラではなく、物語全体を貫く中心線があれば連作短編っぽくなったと思う。
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ISBN:4087474763 文庫 石田 衣良 集英社 2002/08 ¥560
投資会社のオーナー掛井純一は、何者かに殺され、幽霊となって甦った。死の直前の二年分の記憶を失っていた彼は、真相を探るため、ある新作映画への不可解な金の流れを追いはじめる。映画界の巨匠と敏腕プロデューサー、彼らを裏で操る謎の男たち。そして、一目で魅せられた女優との意外な過去。複雑に交錯する線が一本につながった時、死者の「生」を賭けた、究極の選択が待っていた―。
殺されて幽霊となった男が主人公なのだが、気がついたら死んでいて、最近2年間の記憶が欠如しているので、自分が何故殺されたのか判らない。自らの死の秘密を解くために行動するのだが……。
文章は申し分なく上手いのだが、なんか中身がスカスカだなぁ。幽霊も、やたらと俗物っぽくて霊らしくないし。死者なのに出来の悪い探偵ごっこみたいな事をする。恨みの波動が感じられないし、ちょっと落ちこぼれた幽霊みたいだ。
実行犯らしきヤクザも反吐が出るし、物語が進むにつれ、周囲の人間がことごとく殺害に関与しているので救いが無い。最後のサプライズも憂鬱でしか無いし、ご都合主義的なラストは滅入る。転生みたいになっているけど、じゃあその赤子に元々宿っていた魂はどうなるの?
人気作家だけど、乱筆で密度が薄くなるのは仕方無いのか。読者を美味しく惹き付けるだけの力量はあるけど、消費型作家に過ぎない気がする。きっと、次世代になったらもう読まれてはいないだろう。
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ALWAYS 続・三丁目の夕日
2008年11月21日 映画第29 回日本アカデミー賞を総なめにし、「昭和」ブームを巻き起こすなど“映画”という枠を超え社会現象にまでなった『ALWAYS 三丁目の夕日』が続編を熱望する声に応えて帰ってきた!!前作の高い評価を受け、公開前から話題沸騰、幅広い世代の支持を得て観客動員370 万人を突破し、前作の記録を大きく上回った。また第31 回日本アカデミー賞でも優秀賞を計12 部門(13 人)受賞し、主演・吉岡秀隆はシリーズ2 作連続で最優秀主演男優賞を受賞した(日本アカデミー史上初の快挙)。
TVで放送していたので。出だしから、迫力ある特撮、しかもBGMが……。三丁目の夕日を観ようと思っていたのに、何故かゴジラが始まった(笑)。見せ方も面白い。ようやく映画業界も、関係者だけの自慰行為作品ではなくてハリウッドにも見劣りしないクオリティの娯楽作品が作れるようになって来ましたな。
事業に失敗した親戚の子を預かる事になった鈴木家。やって来たのは落ちぶれたツンデレお嬢様、鈴木美香。演じる小池彩夢が超可愛い! こういう娘が欲しいです誰か下さい(ヲイ!)。
ご近所の茶川家では、淳之介に再び危機が迫る。こんな庶民に混じっていては、高等教育が受けられないのではと危惧する父が、またしても淳之介を連れて行こうとする。って、このお父さん、ななせ再びに出てくるななせのお父さんだ(笑)。淳之介を守ろうと、茶川は全力で芥川賞に挑むのであった。
結局、茶川は芥川賞を超えてしまったみたいだね。あの賞は100点満点だと80点くらいを取らないと貰えないから。選考委員のレベルを超えてしまうと受賞出来ないのは、村上春樹はじめ、数多くの大物を逃している事から明白である。
万年ダメ作家みたいに言われているけど、芥川賞の候補になるだけでも凄い事だから。書き上げた作品が悲劇で終わらないので落としたのだと思うが、その代わりに賞よりも大きなものを手に入れた茶川は勝ち組!
それにしても、鈴木家って東京タワーのすぐ近くに住んでいるのか。今は貧乏でも、そのうち地価高騰で家が数十億で売れるから、勝ち組になるだろう。
評価:SA
小池彩夢、萌え!
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ALWAYS 三丁目の夕日
2008年11月21日 映画DVD バップ 2006/06/09 ¥3,990
昭和33年。東京の下町の自動車修理工場に、集団就職で青森からひとりの少女が就職してきた。六子は大きな会社を期待していたが、小さな工場でガッカリ。それに怒った社長の則文だが、やがて六子は則文の妻トモエや息子の一平らと仲良くなり、一家になじんでいく。一方、売れない作家の茶川は、飲み屋のおかみのヒロミから、親に捨てられた少年・淳之介を押しつけられ、一緒に生活することに。最初はけむたがっていたが、淳之介が自分が原作を書いている漫画のファンだと知り、次第に距離が縮まっていく。そんなとき、淳之介の本当の父親が現れ…。
畜生っ! すごく臭いストーリー展開なのに、妙に嵌ってしまう感じだ。読んだ事ないけど、1974年から連載されている、昭和30年代(1950年代後半から1960年代前半まで)の「夕日町三丁目」(東京都郊外と思われる)を舞台とする漫画が原作らしい。
芥川龍之介まで出てきて凄い! しかも押し付けられる赤の他人な少年が吉行淳之介じゃないか!(←この時点でもう、思いっきり騙されている)いや、よく考えたら時代が合わないんですけどね。芥川龍之介は1927年に他界してますから。騙されました。芥川みたいな人は茶川竜之介(ちゃがわりゅうのすけ)で、そこに居候する事になる少年は古行淳之介(ふるゆきじゅんのすけ)でした。という事は、この人が偉くなって茶川賞が創設されるんだな。そして、田中啓文があの迷作「蹴りたい田中」で第130回茶川賞を受賞するのか(笑)。
それにしても、まだ何も無かったけど夢と希望に満ちていたあの時代と、欲しい物は揃っているけど夢と希望が無くなった現代、一体どちらが幸せなのだろうか……。現役世代に聞いてみましたが、苦虫を噛み潰したような顔をするばかりで、誰も答えてはくれず……。「そりゃ、今のほうが良いに決まっているだろう」と言い切れない平成の世なのでしょうか。今後、夢と希望だけでなく、まず間違いなく物質も満たされなくなってきますからね。格差社会がどんどん開いて、一部の勝ち組だけは負けた人間を足蹴にしながら、その屍の上で人生を謳歌するのでしょうが……。
評価:SA
いや、面白い。冷蔵庫もテレビもまだ無かったけど、あの頃には夢と希望があった。
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バガージマヌパナス―わが島のはなし
2008年11月20日 読書ISBN:4167615010 文庫 池上 永一 文藝春秋 1998/12 ¥590
「ワジワジーッ(不愉快だわ)」ガジュマルの樹の下で19歳の綾乃は呟く。神様のお告げで、ユタ(巫女)になれと命ぜられたのだ。困った彼女は86歳の大親友オージャーガンマーに相談するが…。あふれる方言、三線の音、沖縄の豊かな伝承を舞台に、儚い物語の幕が上がる。第6回日本ファンタジーノベル大賞受賞作。
第6回日本ファンタジーノベル大賞受賞作。
この賞は、本当にファンタジーっぽくない作品だらけだな。個性的な作品が多いから、変な話を読みたい人には都合が良いけど。
石垣島が舞台だから、南の離島へ旅立ちたくなる。何も考えず、潮風に吹かれながら南の島でゴロゴロしたい。蟻か何かの消耗品のように働きまくる日本人よりも、この物語の主人公のようにゆったりと日々を過ごしている人々のほうが精神的には遥かに豊かだと思う。
高校を卒業してからも好き放題に生きる美少女綾乃。近所の婆さんとつるんで悪戯もし放題。そんな彼女が神託を受け、ユタ(巫女)になれと神から言われてしまうが、面倒臭いので頑なに拒否。業を煮やした神は、天罰を与えまくって脅しをかける。なんだか、すごく人間臭い神だな。
ちょっと方言で書かれている部分が多くて読みにくいけれども、標準語のままだと、きっとこの物語の魅力は半減してしまう。ちゃんと標準語訳もついているから、気にせず読むべし。
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2001年9月11日午前8時42分にニュージャージー州ニューアークからサンフランシスコに向けて飛び立ったユナイテッド93便。テロリストに占拠された直後、乗客たちは家族との電話から彼らが今置かれている状況を知る。自分たちもどこかのターゲットに向かっていることを・・・。愛する者に最期のメッセージを残して彼らは行動を開始した―。
TVでやっていたので、何も知らずに見始めた。なんか普通の映画と違ってドキュメンタリー風で、9.11事件っぽいなと思っていたら、そのものだった。ハイジャックが成功した四機のうち、唯一目標に到達しなかったのが93便である。
テロリスト達から機を取り戻すため、乗客達が立ち上がるのだが生還する事は叶わず。誰も生き残らなかったので、実際に何が起こったのかは謎である。機内の様子も想像でしかない。
記入するために資料を検索すると、様々な疑惑が浮上している……。何故、まとまった残骸が見つからないのか? どうして数マイル離れたインディアン湖に機体の一部が落下しているのか? 周囲に航空機はいなかった事になっているのに、別のジェット機や戦闘機を目撃したと言う人が存在するのは何故? 遺体の一部すら見つからないのに、都合良くハイジャック犯の所持品とされる赤いバンダナとパスポートが見つかったのは何故? 地震観測所の記録と公式発表で3分もズレがあるのは何故? 削られた3分間に一体何が!?
実際のところ、こうも疑惑が浮上してくると、疑いたくもなって来る。果たして、93便は墜落したのか、撃墜されたのか? 墜落したのならノンフィクション風ドキュメンタリー映画だけど、撃墜されていたのなら、ブッシュ政権が捏造した単なるプロパガンダ映画になってしまうので、ここ重要!
どちらにせよ乗っていた方が殺されたという事だけが動かぬ事実。普通の映画だと、こういう時にはスティーブン・セガールみたいなのが乗っていて、テロリストを叩きのめすのだが、現実世界ではそう上手くは行かない。
未だにJFKの真実も封印されたままだし、仮に撃墜されていたとしても、隠蔽されたままになるのだろう。アメリカ史上最低最悪の大統領だけに、何をやってもおかしくないから、ますます怪しく見えてくるんだよなぁ……。
評価:?
ノンフィクションなのかプロパガンダなのか判別出来ないので。
モルダー捜査官、真実を暴いてくれ。
ISBN:4344013182 単行本 朱川 湊人 幻冬舎 2007/04 ¥1,260
なんか題名がいつもの路線と違う……。表紙も妙なマンガかラノベみたいだし、一体、どんな小説を出してきたのかと思いきや、これは小説ではなくてエッセイだった。題名通りに、本当にスッポ抜けていて、なんだか朱川湊人らしからぬユルユルな内容だが、面白さを追求した割りには、どうもイマイチな気がする。(普通くらいには面白いけど。)
作家って、小説が面白いタイプとエッセイのほうが面白いタイプに分かれていて、両方面白い人は少ない気がする。(無論、両方面白くないなんて人は論外!)そして、朱川湊人は前者。絶対に小説のほうが面白い。面白く書こうとしてネタに走ってはいるものの、やはりエッセイに関しては、原田宗典には及ばない。まぁ、この作家の意外な面が覗けたのは良かった。
それにしても、出てきた時から結構、完成度が高かったけど、デビューするまでに相当苦労している様で……。適当に書いたラノベでデビューする男子高校生がいたり、訳判らん文章作法無視な駄文でデビューする女子高生や女子中学生がいたりするのに、朱川湊人が作家になるべく会社を辞めてから8年間もデビュー出来ないのを考えると、作家になるのも運なのかと思ってしまう。もっとも、ペラいままで運良くデビューしてしまった人の大半はすぐに消え去るので、ずっと生き残れる実力派としてデビューするための準備期間だと考えれば、一概に運が悪いとは言い切れないのかもしれない。
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ISBN:404873850X 書籍 有川浩 角川グループパブリッシング 2008/7/1 ¥1470
乙女だっておっさんだってオタクだって人妻だって、恋がなければ生きてゆけない。ベタ甘ラブに耐性のない方お断り(もしくはこの機会に溺れてみる?)。の最強短編集。
別冊図書館戦争は予約負けしてしまって読めないのだけど、これは発売前に押さえたので、予約順2番で借りる事に成功した。じゃあなんでこの時期の書き込みなのかと言われそうだが、ほら、放置プレイで画像が出なかったから、やる気が無くなってそのまま……。
何事も、中途半端はいけない。やるなら徹底してやるべきであって、その点、有川浩は申し分ない。「クジラの彼」も凄かったけど、今回も読んでる方が恥ずかしくなって来るくらいに超ベタ甘!
全部自衛官絡みで、しかも実在する人物をネタにしてるっぽいのが素晴らしい。どうでもいいような事ばかり書いてある普通の恋愛小説は好きじゃないのだけど、ここまでベタ甘だと、かえって美味しく読める。それにしても、どれもこれも魅力的な女性に対して、いい人だけど恋に拙い男の組み合わせ。いや、パイロットだけはモテ期か……。
ベタ甘だけど、国防絡みによる辛味成分も入っているので、甘いからと言って、美味しい事だけ選り分けたご都合主義な話でもない。仕事が出来ない身勝手な王様と、ストーカー美女以外は人間失格級のロクデナシも出て来ないので、ストレスも溜まらなくて良い。王様はマジでムカツクけど。
「どんなケンカを前日の晩にしても、翌日の朝には……」というのは、自衛官だけに限らないよね。ただ歩いているだけでキチガイに刺されたりするし、いつどこで何が起こるかわからないのだから。
恋愛ベタ甘なのは構わないが、国家の方針を無視して暴走する上級幹部に対する処分までベタ甘なのはどうかと思う。せっかく有川浩がベタ甘小説で航空自衛隊の株を上げていたのに、あのオッサンのせいで全てが台無しである(超苦笑!)。
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ISBN:4086302004 文庫 阪本 良太 集英社 2004/08 ¥540
自称野良犬は、イヌ耳少女!? 洋輔は、道端で不思議なものを発見する。それは段ボールの中に入って、彼をじっと目で追う一人の少女。「ねえ、拾ってよ」と段ボールの中からせがまれ、洋輔は自称イヌ少女と生活することに……!?
ダンボールに入っていた犬耳の少女に「拾ってよ」と頼まれ、危ない電波さんだと思ったから逃げ出したものの、ストーカーみたいにしつこく追われ、家まで押しかけられてしまう少年の悲劇!?
自分以外には普通の犬に見えているという設定で、少年本人だけが異常なのではないかというおかしさを出そうという試みであるが、物語自体は全く盛り上がらない。女の子が犬だったり猫だったりする話は大量生産されているので目新しくない。完全に犬扱いだからラブコメ要素は入っていないし、どうして少年だけが犬耳人間ミケを女の子として認識しているのかという説明は皆無だし、肝心の物語も捻りが無さすぎる。
飼い犬になりたくて追いかけてくるミケと、嫌がって逃げる少年が鬼ごっこに終始するドタバタコメディ。相手が犬なだけじゃなくて、もう少し何か盛り込まないと、味付けが足りない。
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ていうか経済ってムズカシイじゃないですか
2008年11月18日 読書ISBN:4532149401 書籍 中尊寺ゆつこ 日本経済新聞社 2001/10 ¥1000
今やビジネスマンに限らず、主婦やOLにとっても「経済」は最も気になるテーマの1つだ。ただ経済書はとかく難解で近寄り難い。かつて「オヤジギャル」という流行語を生み出した漫画家である筆者は、独自の感性で最新の経済用語を読み解き、経済を身近な問題として捉えようと試みている。
今や「ちょっと落ち目だけどそのうちまた日は昇るさ」という状況ではなく、完璧に転落国家スパイラルで再起不能に近くなってしまった日本であるが、駄目になってしまった男とは違って、これに出てくる女性達のしたたかさは健在のように思える。
日本経済新聞に連載されたビジネスマンガの蘭子課長が登場するので、なにかと島耕作と比較されるが、組織に翻弄される島よりも、蘭子のほうがしたたかで上手である。組織に縛られない潔さが心地良い。
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ISBN:434401314X 単行本 万城目 学 幻冬舎 2007/04 ¥1,575
「さあ、神無月だ――出番だよ、先生」。二学期限定で奈良の女子高に赴任した「おれ」。ちょっぴり神経質な彼に下された、空前絶後の救国指令!?「並みの天才じゃない」と金原瑞人氏激賞!
第137回直木賞候補作。
作家にとって重要なのは二作目だと思う。確かに一作目も大切だが、最初は十分な準備期間があるから作家にとっての最高水準のものが出来て当然。そして、一定レベル以上のものが出来上がらなければ入賞しないので、駄目であってもそれは一作目にはならない。問題は二作目。デビューしたら間を置かずに次を出さなければ忘れ去られてしまう。デビュー作を読んだ人間は当然、期待して待っているから、一作目以上のものを出して来なければならない。ここで面白いものを投入して来られるならば、その書き手はホンモノだと思う。
さてさて、万城目学。二作目にして直木賞候補作にまでなってしまった。出てきたのが微妙な感じのボイルドエッグ。デビュー作品も「鴨川ホルモー」という、ホルモンの誤植なんじゃないかと思ってしまう変な名前。他のボイルドエッグ作品が全部ハズレだったのでちっとも期待していなかったのだが、読んでみたら石に混じった玉だった。二作目も「鹿男あをによし」とかいう妙な題名だが、今回は期待度大!
本当はすぐに読みたかったのだが、図書館での予約数の多さにめげてしまい、今の時期までずれ込んでしまった。この回の直木賞レースは同系統の森見登美彦もいるから無理だろうとは思っていたが、決して負けてはいない。というか、少なくとも第135回で受賞してしまった三浦しをんには勝っている気がするのだが……。なんで受賞出来ないの?
大学の研究室から出されて奈良の女子高に赴任する羽目になってしまった男。最初は普通の小説っぽかったので、今回は奇抜設定じゃなくて普通の物語なのかと落胆しかけたら、突如鹿が喋り始めた。「さあ、神無月だ――出番だよ、先生」
今回も期待を裏切らず、見事なまでに妙な世界へ突入して行く。鹿に選ばれてしまった男は、京都の狐からある物を渡される役目を担うのだが、大阪の鼠が邪魔をして、受け取る事に失敗してしまうのだ。このままでは日本が危ない! 任務に失敗した男は、ペナルティとして鹿男に!?
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学院衛星を救え!―ベーカー・マティジュの繁盛記
2008年11月17日 このライトノベルがすごい?ISBN:4044276021 文庫 都築 由浩 角川書店 2002/10 ¥560
月軌道上に浮かぶ学院衛星・オーフェリー女学院で、ちょっとした騒動がおこっていた。身に覚えのない疑いをかけられた女生徒が、退学処分を受けたのだ。しかし、それは巨大な陰謀の始まりにすぎなかった…。事件を調査する始末人のガイに暗闇から次々と迫る謎の刺客。相次ぐ襲撃からガイは女生徒たちを守り、その真相を解き明かすことができるのか!?フィオとマティジュの名コンビもパワーアップ、新感覚スペース・アクション。
ストーリー自体は、前作よりもスッキリとして読みやすく、バランスもよく小奇麗にまとまっている。今回の舞台は月の軌道上にある名門女学院。衛星自体が学校となっており、良家の娘が学ぶ月の名門校。ここの女生徒から作り出したクローンによる犯罪が発生し、始末屋ガイが警備員として潜入捜査するのだが……。
ガイのパン屋は、すっかりマティジュに乗っ取られてますな。前作で知り合った世間知らずお嬢様フィオにくっついて、何故かメイド見習いの形で同学院に。チビっ子だからか、メイド姿が全然似合ってませんが。
これ、単品で読めばそれなりに良いのだが、ラストでチラリと黒幕が出てくるのはどうかと思う。このまま続けたかったのだろうけど、続編出ずに終わってるしね……。
単品なら★★★、未完結放置で減点。
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密航者、月へ行く。―ベーカー・マティジュの繁盛記
2008年11月17日 このライトノベルがすごい?ISBN:4044276013 文庫 都築 由浩 角川書店 2002/01 ¥540
あこがれの月へ行こうと、宇宙船ブランデンブルグ号に密航したマティジュは、通風管のなかで途方にくれていた。船は、木星の第3衛星アマルテアの港を出発してから2時間後に、乗っ取り犯に占拠されていたのだ。船中で恩を受けたフィオ嬢を助けたかった彼女は、どんな結末が待っているかも知らず、もう一人の密航者、始末人のガイの力を借りることにした。おとぼけ男ガイと元気少女マティジュが巻き起こす新感覚スペース・アクション。
アウトローな賞金稼ぎが、悪党の策略に巻き込まれて仕方なく暴れまわるというお約束パターンで、ちっとも意外性が無い。文章自体はさほど悪くないのだが、話の展開に意外性が無いから良くも悪くも優等生的なラノベに仕上がっていて、全て先が見えてしまう。設定も細かい部分で適当なのが気になる。宇宙巡洋艦の艦長を務める女性の階級が少尉とか……。いくらなんでも少尉で巡洋艦はダメだと思うぞ。
登場人物も、アウトローな賞金稼ぎ、常識知らずの馬鹿娘、そしてお金持ちで電波なお嬢様と、判りやすいけどイライラする。敵も単純明快な雑魚キャラ、ちょっとキチガイ入った専門家で切り捨てられる奴、クールな殺し屋だけど最後は惨めに死んでしまう奴と、全部が定型化されていて、予想を裏切るような展開が微塵も無い。まあ、この頃はこういう単純明快なパターンでもウケたんだろう。
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現代小説のレッスン(講談社現代新書1791)
2008年11月16日 読書ISBN:406149791X 新書 石川 忠司 講談社 2005/06/17 ¥756
村上竜の描写力、保坂和志の孤独、「海辺のカフカ」の新しさ、舞城王太郎の全能感-。文字界をリードする作家たちの成功と失敗を、気鋭の評論家が抉り出す。異色の文学入門誕生!
日本語はペラいと断じる著者の文芸批評。確かに最近ペラくなった講談社現代新書には似つかわしくない高尚な文章。一瞬、間違えて岩波新書を借りてきたのかと思う程。
しかし、所詮は他人の褌で相撲と取っているだけ。作家が創り上げた作品を、後付けの理由で論評しているだけにすぎない。何より、日本語はペラいとする論理構成が不十分すぎる。中国語との比較しかされていないが、表意文字より表音文字が劣るならば、欧米諸国言語はさらにペラい筈ですな。
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