格差はつくられた―保守派がアメリカを支配し続けるための呆れた戦略
2009年2月11日 読書少数派の代弁者にすぎない共和党が、平等な中流社会を壊して格差社会を築き上げた驚くべき方法とは?世界が注目する経済学者が急遽打ち出したアメリカの病根への処方箋。
完訳ではなく、削られている部分があるのがちょっと不満。
事例がアメリカで、国家による健康保険制度が存在しない点など、日本と異なる部分は多々あるのだが、病巣の根は同じだと感じた。格差は自然発生的に出来上がったのではなく、為政者の都合でシステムを弄んで意図的に作り出された物である。アメリカは奴隷制度の弊害が今なお残されているといった感じであるが、日本までアメリカ化されて行き、敗者復活戦が無い事でアメリカよりもうんこな国になっているのはどうよ!?
結局、アングロサクソン型資本主義の国は全部駄目という事で。日本、アメリカ、イギリス、どれも酷い国じゃないか。人間としての尊厳を保つためには、やはり西洋型(イギリスを除く)のセーフティネットがある社会じゃないと駄目なのだろう。問答無用の競争主義でも良いけど、それなら出自による格差を是正しないと! 産まれる前から親や先祖の敗北によってペナルティがつけられているのは不味いだろう。せめて教育や健康に関しては平等にしてもらわないと。
日本も西洋ではなくアメリカを真似て、コイズム路線以降、この格差型社会を作って来た訳だが、「小泉さんなら何とかしてくれるぅ♪」なんてほざいていた馬鹿どもが、今になって文句言うのはどうかと思う。今現在、虐げられている人々、貧乏人、派遣切られた人、負け組……。まさか自分を虐げる悪の組織に投票してないだろうな!? 自分で自分の首〆てる奴らは、自業自得だと思う。
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妖狐・玉藻を追って戦国時代からタイムスリップしてきた鎧のお姫様・小田峰壬琴。いきなり斬りかかられ(!)最悪の出逢いだったけど…真面目で凛々しい壬琴に心はどんどん惹かれていく! 玉藻の淫らな妖術を乗り越え、二人の恋は強くなる! たとえ、その先に壬琴が戦国時代に帰る日が待っているとしても…。
戦国時代の姫が、妖狐を自らを犠牲に長持の中へ封印。しかし現代でヘタレ少年が長持を開けてしまい、中から狐の美女妖怪が! さらに、鎧姿の姫まで出てきてしまい、イロイロと大変な事になってしまう。
普通のラノベだったら、妖怪を退治するために格闘シーンで盛り上がるところ、やはり基本エロスなので、かなり長い間、放置プレイ状態で被害者続出。それにしても、微妙に歴史改変してしまっているのだが、大丈夫なのか!? セワシ君方式で強引にバランス取っているのか?
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万物の理論と言われる「超ひも理論」の読み物。光の偏光のように身近な観察や、「電球ではなぜ日焼けしないのか」といった素朴な疑問からスタートして、超ひも理論の基礎にある物理的な考え方をわかりやすく伝える。「端をもつひもが電磁気力を表し、ループ状のひもが重力を表すと考えるのはどうしてなのか」、「なぜ高次元の空間を考える必要があるのか」、「量子力学と一般相対性理論を一緒にしようとすると何が起こるのか」、「最小の長さというものがあるのか」、といった一般の読者が持つ疑問にていねいに答えている。またひもの振動エネルギーを表す数式は、正の整数を全部足しているのに答えは有限でしかもマイナスになるという。この不思議な計算の仕方も紹介している。最先端のトピックとして、超ひも理論の新しい双対性である「ホログラフィック理論」を紹介している。ホログラフィック理論によれば、5次元時空のブラックホールと4次元時空のゲージ理論は同等である。すなわち、ブラックホールを使ってゲージ理論を研究したり、ゲージ理論を使ってブラックホールを研究できるという。
本当に「招待」という感じだった。非常に難解な理論を判りやすく説明してくれているのは良いのだが、それは最初の方だけで、結局、超ひも理論で考えた場合において、何故世界が10次元まで存在しなければならないのかよく判らないままに終わってしまった。
この方面に関する判りやすい書籍がほぼ皆無なので、これだけでも助かる事は確かなのだけど、後半は携わる科学者の現状等に話が移ってしまう。結局、説明に不十分な箇所があるのは、最前線にいる人達でも判らない部分が多すぎるという事なのだろうけど。
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中国の東北部、とあるレストランに勤める林玉玲は、店長から金魚の世話を頼まれる。あるとき、日本に嫁いだ娘の出産のため来日した玉玲は、日本人との再婚を勧められて…。日本と中国、異なる文化の狭間で、玉玲の心は言葉を超える。衝撃の芥川賞受賞から半年、日本と中国をめぐる新たなる感動の恋愛ストーリー。
またしても中年中国人女性が主人公。夫を事故で亡くし、娘は日本で結婚生活。レストランに勤める林玉玲の仕事は、金魚の世話……。後半は、娘の出産に付き添うために来日。すると日本にいて欲しいからと、娘に再婚話を持ちかけられてお見合いしまくり。
なんて事のない純文学系統なのだけど、他の日本人芥川賞系作家の自慰行為的作品と比べたら、まだ楽しく読める範囲内。それにしても、中国人視点だと日本ってそんなに良い国ですかね? 派遣労働とか日雇いとか黒企業奴隷とか家畜人ヤプーとかばかりで、今や高待遇なのは、たまたま運に恵まれた一部の勝ち組だけの様な気がするのだけど……。単に中国よりも給料が高いからか!? 日本でハズレクジ引くと、金魚生活じゃなくて奴隷生活になるぞ(笑)。
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1988年夏、中国の名門大学に進学した2人の学生、梁浩遠(りょう・こうえん)と謝志強(しゃ・しきょう)。様々な地方から入学した学生たちと出会うなかで、2人は「愛国」「民主化」「アメリカ」などについて考え、天安門広場に行き着く――。
大学のキャンパスで浩遠と志強が出会った「我愛中国」とは。同窓の友人たちとの議論や学生生活を通して、現代中国の実像を丹念に描きつつ、中国人の心情がリアルに伝わってくる力作です。物語の後半では日本も登場し、国境を越えるダイナミックな展開から目が離せません。衝撃の前作『ワンちゃん』から半年、スケールアップした新鋭の最新作です。
第139回芥川賞受賞作。
文章が所々おかしいのに芥川賞を受賞してしまい、相当叩かれている感じであるが、賞以前の問題で、青臭い青年のショボい物語を読まされてもちっとも面白くない。文章力自体は、もっと訳判らない変なのにも受賞させているのだから構わないとして、この退屈な物語はもう少し読めるようにならなかったのか……。
民主化に系統した青年が、大学に入学するも酒に酔って暴れて退学。その後は鳴かず飛ばずで駄目人生まっしぐらであるが、自業自得なので同情の余地無し。地に足着いていないのに、民主化の波に洗脳されて人生台無し。この主人公は青臭くて反吐が出そうになる。
夢も希望も無いし、主人公が勝手に転落ショボ人生。どこかの誰かは金儲けで成功したり、あっさりと転向して体制側で甘い汁啜っていたりするのがやるせない。
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ISBN:44104731021 単行本 井上 荒野 新潮社 2008/05 ¥1575
夫以外の男に惹かれることはないと思っていた。彼が島にやってくるまでは……。静かな島で、夫と穏やかで幸福な日々を送るセイの前に、ある日、一人の男が現れる。夫を深く愛していながら、どうしようもなく惹かれてゆくセイ。やがて二人は、これ以上は進めない場所へと向かってゆく。「切羽」とはそれ以上先へは進めない場所のこと。宿命の出会いに揺れる女と男を、緻密な筆に描ききった美しい切なさに満ちた恋愛小説。
第139回直木賞受賞作。
井上荒野はノーマークだったが、念のために図書館の予約を入れておいて大正解。今見たら予約殺到でもう読めない。受賞日前日に押さえたので、順番待ちしなくて良かった私は勝ち組である。井上荒野って女だったんだ。受賞するまで知らなかった。
そう悪くも無かった。単に、読み手に恋愛小説適正が欠如しているので素直に楽しめないだけである。文章だけ上手くてツマラナイという訳でもないので、ある程度齢を重ねた妙齢女性辺りには受ける物語なんじゃないでしょうかね!? まあ、恋愛小説が面白いと思えない私にとっては、単にネタにするため読み流すレベル。不倫の物語かと思ったが、乱れて泥沼化しているのは主人公じゃなくて別の女性。主人公本人は夫ではない別の男に惹かれつつも淡々としたままなので、ちょっと予想外。
それにしても、今回は伊坂幸太郎が「ゴールデンスランバー」でのノミネートを、執筆に専念したいからという理由で辞退した事が大きい。選考委員はおかしいので、「ゴールデンスランバー」を落としておいて「切羽へ」を受賞させた可能性大である。きっと、「ゴールデンスランバー」が落ちていたら貶しまくっていたと思う。
同じ直木賞なのに、ジャンルで難易度が違いすぎるのは如何なものか。恋愛小説だとそこそこで獲れるのに、ミステリーは完璧じゃないと貰えないからなぁ。女性が恋愛小説で狙うのと、男性がミステリーで狙うのとでは、同じ直木賞でも東大理科2類と東大理科3類くらいには難易度が違う。不公平である。もう、直木賞恋愛2類とか直木賞ミステリー3類とかに分類すれば?(笑)。
悪くはないかもしれないけど、これで受賞出来るなら、森見登美彦、畠中恵、北村薫、白石一文、荻原浩、伊坂幸太郎、恩田陸、恒川光太郎、古川日出男、福井晴敏、馳星周、真保裕一、横山秀夫、諸田玲子あたりにも受賞させないと……。今回だけで見ても「千両花嫁」が落ちて、これが受賞というのも納得出来ない部分が残る。
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テロリストのパラソル
2009年2月4日 芥川賞・直木賞ISBN:4043847017 文庫 藤原 伊織 角川書店 2007/05 ¥620
史上唯一の、直木賞&江戸川乱歩賞ダブル受賞作! 新宿に店を構えるバーテンの島崎。ある日、島崎の目の前で犠牲者55人の爆弾テロが起こる。現場から逃げ出した島崎だったが、その時置き忘れてきたウイスキー瓶には彼の指紋がくっきりと残されていた……。
第114回直木賞受賞作。
江戸川乱歩賞&直木賞のW受賞。藤原伊織の最高傑作だと思うのだが、妙なアンチも多々出没するのがこの作品の特徴。W受賞に踊らされたのが悔しいのか知らないが、これで五段階評価の★ひとつなら、大半の純文学やラノベは★ひとつすら付けられなくなると思うのだが。
ご都合主義的な部分はあれど、無制限に何でもありな訳でもなく、最後はいつも物悲しいのが藤原伊織作品の特徴。これもハッピーエンドでは終わってくれない。痛い描写もあるし、人生の侘しさ、やるせなさを感じる。
どこかで人生を間違えてしまった男のやるせなさにシンクロしてしまったおっさんが高評価しているんじゃないかと勝手に邪推してみたりして……。私も人生の曲がり角をどこかで間違えているので、このやるせなさに同調して密林式五段階評価なら最高点の★★★★★で(笑)。
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ISBN:4163270108 単行本 川上 未映子 文藝春秋 2008/2/22 ¥1200
娘の緑子を連れて豊胸手術のために大阪から上京してきた姉の巻子を迎えるわたし。その三日間に痛快に展開される身体と言葉の交錯!
第138回芥川賞受賞作。
前回の「わたくし率 イン 歯ー、または世界」が相当やばかったので、今回も同じような作品だったら芥川賞に失望どころか絶望してしまいそうだと思いつつ……。
わたくし率ほど酷くはなかった。文体は同じような感じだが、内容面に関しては物語になっているので、芥川賞を受賞しても憤らず妥協出来る範囲に収まっていた。ただ、あからさまに賞を狙いに行っている感じなので萎える。
低所得層の母子家庭を題材とした話は他にもあるが、これは登場人物の心の叫び声みたいなものが、脳内妄想含めて直球攻撃で迫ってくる。しかも、関西弁で! これは、関西人以外には読みづらいのではないだろうか?
胸が萎んでしまい、大きくする手術を受けようとする母、自分の中に子供を産む細胞がある事が厭で堪らない娘のギクシャクした家族模様が描かれているのだが、特に娘のほうの思考が痛々しい。乳が母で卵が娘か!? 最後の卵攻撃は……。
多くの人が指摘している文章の読みにくさ。ダラダラと一文が長く、改行も少なめで、所謂悪文。特に、娘視点の時が酷い。これは作者が下手なのではなく、明らかに狙っている訳だが、それでもこの文体はマイナス評価だな。こういう文章を小学生が書いたら、先生に貶されるだろうから。小学生が悪文を書いたら駄目で、芥川賞作家だと許されるというのはおかしいので、やはり減点である。
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ISBN:4062145367 単行本 中山 智幸 講談社 2008/2/2 ¥1575
妻に内緒で、兄の彼女と旅に出た。その行き着くところは…。現代人に特有の「自転からはぐれたみたいな」孤独を描き出す。表題作のほか「木曜日に産まれた」を収録。『群像』『文学界』掲載作品をまとめ書籍化。
第138回芥川賞候補作。
事故に遭った兄の代わりに、兄の元カノと打ち上げを見るために種子島宇宙センターまで旅行をする男の話。面白くなりそうで、ならないまま唐突に物語が終わってしまう。文章もギクシャクした感じで、一応は物語になっているのだけれども、この面白くない感じは、やはり芥川賞系統の作品らしい。不倫っぽい旅行で元カノに迫り、蹴り入れられるだけのショボイ物語であった。
「木曜日に産まれた」も、流産してしまった夫婦の男性側が悶々としているだけで、どこかの面白くも無い日常を描いただけ。実験作や自慰作品じゃない分、他よりはマシか……。
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白雪ぱにみくす! 3
2009年2月4日 アニメ・マンガ
魔界から来た新たな敵に魂を抜かれてしまう白雪姫。どうやら黒幕は魔界の名門貴族らしいが、こうも公然と王族に敵対して来るとは、女王の力はあまり無いのか!? 仕方が無いので、白雪姫の中の人として、シンコの友達である幽霊に入ってもらう事に。
魔界へのゲートをくぐるために、管理者の空木にお願いするが、見返りの無い事をするのは嫌だと言われ、シンコを要求される。兄としては不本意かもしれないが、普通じゃないものが大好きなシンコと異界の存在である空木、結構お似合いなんじゃないのか?
結局、ほぼ無償で魔界へと辿り着く事に成功したのだが、敵側陣営が腹黒い兄妹で、ミドリ&シンコとは対照的だ。これ、絵は綺麗だけど、ヒロインはじめ女性キャラ達の境遇が結構悲惨だなぁ。妹は虐められっ子だし、敵側の末娘も虐められっ子だし、白雪姫は呪い扱いだし、付き人に至っては死亡フラグ立ってるかもしれないし(死亡確定シーンが無いので、まだ生きている可能性はあるけど)。
魔界へのゲートをくぐるために、管理者の空木にお願いするが、見返りの無い事をするのは嫌だと言われ、シンコを要求される。兄としては不本意かもしれないが、普通じゃないものが大好きなシンコと異界の存在である空木、結構お似合いなんじゃないのか?
結局、ほぼ無償で魔界へと辿り着く事に成功したのだが、敵側陣営が腹黒い兄妹で、ミドリ&シンコとは対照的だ。これ、絵は綺麗だけど、ヒロインはじめ女性キャラ達の境遇が結構悲惨だなぁ。妹は虐められっ子だし、敵側の末娘も虐められっ子だし、白雪姫は呪い扱いだし、付き人に至っては死亡フラグ立ってるかもしれないし(死亡確定シーンが無いので、まだ生きている可能性はあるけど)。
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白雪ぱにみくす! 2
2009年2月4日 アニメ・マンガ
続きゲットできた。突然現れた謎の扉を抜けて異世界へと消えてしまった妹を追って、一向も謎の場所へ。いきなり参戦してきた武器マニアな風紀委員長が危ない(笑)。全ての世界へ繋がる場所の管理人みたいなやつに捕まった妹シンコがエロい。
2巻開幕直後にある、「せっかくだから、俺はこの赤の扉を選ぶぜ!」という謎の台詞は、訳が判らず検索……。元ネタがまたマニアックな(笑)。
それにしても、管理人が敵になるのかと思いきや、バトルは盛り上がらずにアッサリと開放。その後、魔界から元付き人と少女が現れてキナ臭くなって来る。白雪姫の故郷って魔界だったのか! という事は魔界の姫!? 魔界とはいっても魔族の世界ではなくて、魔法が使えるだけの世界みたいですが。
2巻開幕直後にある、「せっかくだから、俺はこの赤の扉を選ぶぜ!」という謎の台詞は、訳が判らず検索……。元ネタがまたマニアックな(笑)。
それにしても、管理人が敵になるのかと思いきや、バトルは盛り上がらずにアッサリと開放。その後、魔界から元付き人と少女が現れてキナ臭くなって来る。白雪姫の故郷って魔界だったのか! という事は魔界の姫!? 魔界とはいっても魔族の世界ではなくて、魔法が使えるだけの世界みたいですが。
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ISBN:4163268804 単行本 楊 逸 文藝春秋 2008/01 ¥1200
「王愛勤」ことワンちゃんは、名前のとおりの働きもの。女好きの前夫に愛想をつかし、見合いで四国の旦那のもとへ。姑の面倒をみながら、独身男たちを中国へ連れていき、お見合いツアーを仕切るのだ。
第138回芥川賞候補作。
同じ回の「カツラ美容室別室」は、論外に酷かったが、これは結構読ませる。ちょっと日本語として違和感がある部分はあれど、中国と日本の文化の違いが、なかなか新鮮に思えた。
題名にあるワンちゃんは、犬ではなくて王(ワン)ちゃんだった。駄目男で散々苦労して、逃げても逃げても追いかけられ、ついには日本まで逃げて来るのだが、育った息子もまた、母を財布としか思っていないような駄目男に成長していてやるせない。
女は何故か駄目男やDV男に惹かれるという不思議現象があるよね。選択肢が無くてそういうハズレを選んでいるのならともかく、いい人と言われる男がこれだけ余っている現状を見ると、自ら不幸の泥沼に飛び込んでいく自業自得女なんて、傍から見ていても可哀想だとは思えない。
最近の芥川賞系統には珍しく、オナニーや実験作じゃなかったので良かった。自慰行為ではなく、小説として読めるように仕上がっているし、古き良き時代の芥川賞っぽさがあってよい。頼むから、受賞した「乳と卵」は、これより格上であってくれっ!!
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ISBN:4163264302 単行本 桜庭 一樹 文藝春秋 2008/02/19 ¥1,628
お父さんからは夜の匂いがした。狂気にみちた愛のもとでは善と悪の境もない。暗い北の海から逃げてきた父と娘の過去を、美しく力強い筆致で抉りだす著者の真骨頂『私の男』。
第138回直木賞受賞作。
やたらとブーイングが多かったこの作品だが、直木賞を受賞してしまったという点を除外すれば、そう悪くもないと思う。やはり、最大の汚点は直木賞を受賞させてしまったという事に尽きると思う。近親相姦も殺人も、もはや小説や現実世界に溢れかえっているし、芥川賞でエロ小説が選ばれてしまう時代だからネタとしては問題無いだろう。
それにしても直木賞はラノベ越境型の女性作家に甘いですな。実は、この人だけでなく今までにも数多くの移籍組が受賞しているのですよ。
第121回直木賞『柔らかな頬』の桐野夏生はMOE文庫スイートハート。第124回直木賞『プラナリア』の山本文緒、第126回直木賞『肩ごしの恋人』の唯川恵、第132回直木賞『対岸の彼女』の角田光代は集英社コバルト文庫。第129回直木賞『星々の舟』の村山由佳はジャンプJノベル。そして今回の桜庭一樹はファミ通文庫。
別に越境してきても、直木賞に相応しい出来栄えで受賞してくれたら問題無い訳であるが、これって前回の『赤朽葉家の伝説』よりもレベルが落ちてるんじゃないか? どっちにしても、未だ受賞させて貰えないベテラン組より落ちるのは明白。
ミステリー畑の作家があれ程不遇なのに、三浦しをんの時といい、今回の桜庭一樹といい、女に採点甘いのは何故だろう……。きっと、選考委員はスケベばかりなんだろうな。
三浦しをんの時にも言ったけど、もう一度言うよ!
桜庭一樹が受賞するなら、森見登美彦、畠中恵、北村薫、白石一文、荻原浩、伊坂幸太郎、恩田陸、恒川光太郎、古川日出男、福井晴敏、馳星周、真保裕一、横山秀夫、諸田玲子あたりにも受賞させないと不味いだろ!?
本作における選考委員の動向
浅田 次郎 ◎
阿刀田 高 ○
五木 寛之 ○
井上 ひさし ○
北方 謙三 ○
林 真理子 ●
平岩 弓枝 □
宮城谷 昌光 ■
渡辺 淳一 ●
◎ 積極的な賛成、自発的に推薦、最も高い評価
○ 中立的な賛成、最終的に賛成、2番目に高い評価
□ 消極的な賛成、授賞に異議はなし、やや評価
△ 態度不明、賛成か反対か読み取れず
■ 中立的な反対、賛成・態度不明から最終的に反対、長所も認めるが結果的に反対
● 積極的な反対
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ISBN:4334924727 単行本 荻原 浩 光文社 2005/10/20 ¥1,575
元エリート銀行員だった牧村伸郎は、上司へのたった一言でキャリアを閉ざされ、自ら退社した。いまはタクシー運転手。公認会計士試験を受けるまでの腰掛のつもりだったが、乗車業務に疲れて帰ってくる毎日では参考書にも埃がたまるばかり。営業ノルマに追いかけられ、気づけば娘や息子と会話が成立しなくなっている。ある日、たまたま客を降ろしたのが学生時代に住んでいたアパートの近くだった。あの時違う選択をしていたら…。
第134回直木賞候補作。
題名と、帯の説明から、てっきり『バック・トゥ・ザ・フューチャー』みたいに過去に遡って人生をやり直したりするSFかと思っていたのだが、全然違った。別の人生に入り込むのは、中年タクシードライバーの脳内妄想が展開されている瞬間だけなのだ。
糞みたいな銀行を辞めざるを得なくなり、タクシードライバーとなった中年男。妻とも会話がなくなってきて、娘には無視されるし、息子はゲームばかりで言う事を聞かないしで、どうにもやるせない状況に。せっぱつまって腰掛け就職したタクシー会社も、営業成績が振るわず、もしもあの時ああしていれば……、という脳内妄想に逃避しまくるのである。
人生、何やっても糞だらけです。読んでいる自分までが、やるせなくなってくる前半。そのうち、視点をほんの少しズラして、人生の賽の目が違って来る。とはいっても、劇的に好転するというご都合主義な展開は微塵も無い。かつて別れた女性の家付近でタクシーを止め、ちょっとストーカーっぽくなっている中年男性は、その場所で長距離客を拾い始め、営業成績が上がりだす。単なる偶然による幸運かと思いきや、そうでは無かった。何事も、理由の無い幸せなど無いのである。(理由無き、理不尽な不幸ならあるけど。)
最初は嫌な奴らにしか思えなかった家族が結構いい人達で、別れてしまったがために理想化された女性も悪魔な部分があったりと、後半の展開は絶妙。最後の、元上司が泥酔して乗車して来たからいたぶるシーンはストレス解消になった。
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まほろ駅前多田便利軒
2009年2月3日 芥川賞・直木賞東京のはずれに位置する“まほろ市”。この街の駅前でひっそり営まれる便利屋稼業。今日の依頼人は何をもちこんでくるのか。痛快無比。開巷有益。やがて切ない便利屋物語。
第135回直木賞受賞作。
まあ、無難に面白かった。便利屋を営む多田の前に、ある日現れたのはかつての同級生である行天。こいつがまた性格破綻した男で、微妙にズレた事ばかりして多田は翻弄される。行く所が無いという行天を泊めてしまったが運の尽き、そのまま居つかれてしまうのだ。たいして役に立つ訳でもないのに、仕事場にはついて来たがる行天。二人の微妙な空気のズレが楽しい。しかし、何で便利屋や探偵のところに転がり込んでくるのはこういうタイプばかりなんだろうか。
悪くはないのだけれど、これで直木賞受賞というのはちょっと酷いんじゃないか。もっと力作出している人達がまだ貰えていないのに、これは売るための打算入っているんじゃないのか?
三浦しをんが受賞するなら、森見登美彦、畠中恵、桜庭一樹、北村薫、白石一文、荻原浩、伊坂幸太郎、恩田陸、恒川光太郎、古川日出男、福井晴敏、馳星周、真保裕一、横山秀夫、諸田玲子あたりにも受賞させないと不味いだろ!?
つまり、普通に面白いけど、直木賞候補作の中では並程度の面白さであって、別に受賞させる程レベルが高いとも思えないのだが……。
この回の選考委員は、阿刀田高、五木寛之、井上ひさし、北方謙三、津本陽(欠席)、林真理子、平岩弓枝、宮城谷昌光、渡辺淳一。彼らの作品も読破して、その功罪を問いたいところである。
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人は変化する世界を言葉によって把握する。どんな状況においても、言葉を媒介に誰かと繋がっていたいと願う…。語られることによって生き延びてきた物語である「日本昔話」を語り変えた書下ろし7編を収録。
第133回直木賞候補作。
三浦しをんの小説は、あんまり面白くないと聞いたのだが、そう悪くもないと思う。一見すると普通の短編でありながら、実は繋がっていて連作になっている。どこがどう繋がっているのか判らない話も入っていたが……。
それにしても、昔話と書かれた物語の関連性がよく判らない。昔話を元ネタにインスパイアされたものを書いたのか? あまりにも昔話とかけ離れた内容で、一体、三浦しをんが何をしたかったのか、その意図が掴めない。
ありがち恋愛小説がたくさん入っているだけかと思ったら、地球に巨大隕石が衝突して滅びるというSFネタが背景になってきて、ごく一部の人間だけが火星や木星へと逃れる事が出来るという事で、助かった者、死に行く者の一人語りとなる。
せっかくのSF設定だが、致命的な欠陥があって、一気に萎えた。木星圏まで宇宙船で20年程。しかし船内では1年しか時間か経過していないという記述がチラリと。シリウス経由で木星まで行ってるんでしょうか? 三浦しをん、ウラシマ効果を正しく理解していないのでは!?
時間の流れが変わるのは、亜光速に到達してからですからね。宇宙船で20年で船内が1年なら、加速減速の時間を差し引いても、20光年以内のかなり遠方まで飛んでいないとおかしい。ちょっと調べられなかったのだが、ウラシマ効果が得られる速度で冥王星まで飛んでも5時間程。木星なら2〜3時間くらいでいけるのでは? (ちなみに、太陽まで8分、月へは1秒!)もっとも、そんな急激に加減速したら、中にいる人間は死ぬでしょうけど。
つまり、木星まで20年かけて到達しているのに、宇宙船の中は1年しか経過していない三浦しをん設定だと、とてつもなく遠回りしているとしか考えられないのだ。シリウス星系なら片道8.7光年。地球からシリウス経由で木星行き、人類が死なない程度の加減速にかかる時間を計算に入れると、まあ妥協できる範囲なのではないでしょうか……。
それにしても、核融合エンジンごときでは亜光速は難しいだろう。ウラシマ効果が見られるという事は光速の90%以上は出せるテクノロジーを有しているという事で、宇宙船の動力は少なくとも対消滅エンジン以上。ならば接近してくる小惑星に対消滅爆弾をぶち込んで破壊すれば人類は滅亡しないだろうに……。
参考計算式(ネット上で正しく記述するのはブログだと無理なので、各自確認して下さい。)
Δt´=1/√1-(v/c)2Δt
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主人公は27歳の青年。タクシーの運転手をして生計を立てている。親から捨てられた子供たちのいる施設で育ち、養子として引き取った遠い親戚は殴る、蹴るの暴力を彼に与えた。彼は「恐怖に感情が乱され続けたことで、恐怖が癖のように、血肉のようになって、彼の身体に染みついている」。彼の周囲には、いっそう暴力が横溢していく。自ら恐怖を求めてしまうかのような彼は、恐怖を克服して生きてゆけるのか。主人公の恐怖、渇望、逼迫感が今まで以上に丹念に描写された、力作。表題作に、短編「蜘蛛の声」を併録。
第133回芥川賞受賞作。
「銃」「遮光」と受賞を逃した中村文則、今作品でようやく受賞に至る。親に見捨てられて施設にいた影響か、自虐的で精神を病んだ男の話。徹底して自分を痛めつけ、破壊しようとする衝動にとらわれる男。意味も無く暴走族っぽい集団に絡んでフルボッコになり死にかけたりする。ラスト付近ではタクシー強盗に殺害されそうになるし、どうも自虐的に痛いのは好きになれない。
中村作品の中では、個人的には微妙作。これよりも、「銃」と「遮光」のほうが良かったのに……。後半に収録されている「蜘蛛の声」で描かれる狂気のほうが好きだなぁ。
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昨日、私は拳銃を拾った。これ程美しいものを、他に知らない-。銃に魅せられてゆく青年の心象と運命を、サスペンスあふれる文体で描く。第34回新潮新人賞受賞作、第128回芥川賞候補作。
第128回芥川賞候補作。
偶然手に入れた銃によって、日常が少しずつ狂っていく男の話。ある日、橋の下でピストル自殺したと思われる男の死体を発見してしまった主人公。そこには、男の死体と銃が転がっていた。思わず、その銃を手に入れてしまった男。用心深く、注意を払いながら銃を隠し持つ事で狂っていく日常生活。ある日、死にかけの猫を見て、思わず発砲してしまうのだが、警察に目をつけられてしまう。このままだと破滅するので、以前から考えていた場所に銃を捨ててしまおうと電車に乗るのだが……。
中村文則が描く人間の狂気は、自分の身にも起こりえる身近な感じがある。ちょっと人を殺してみたくてバスジャックしたり、子供の首を切断して飾るようなキティを見ても他人事で、自分がそのようなキティになるとは考えられないが、もしも銃を手にしていたら、些細な諍いで思わず……、という事は有り得そうで怖い。
これも力作なのだが候補作止まり。この回は大道珠貴が受賞しているが、出来は良いのだろうか? 大道作品は、たまたま読んだのが二作続けて地雷だったからまだ未読だが、中村文則よりもダメ作品だったら嫌だなぁ。
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ISBN:4488023932 単行本 桜庭 一樹 東京創元社 2006/12/28 ¥1,785
「山の民」に置き去られた赤ん坊。この子は村の若夫婦に引き取られ、のちには製鉄業で財を成した旧家赤朽葉家に望まれて輿入れし、赤朽葉家の「千里眼奥様」と呼ばれることになる。これが、わたしの祖母である赤朽葉万葉だ。――千里眼の祖母、漫画家の母、そしてニートのわたし。高度経済成長、バブル崩壊を経て平成の世に至る現代史を背景に、鳥取の旧家に生きる3代の女たち、そして彼女たちを取り巻く不思議な一族の血脈を比類ない筆致で鮮やかに描き上げた渾身の雄編。2006年を締め括る著者の新たなる代表作、桜庭一樹はここまで凄かった!
第137回直木賞候補作。
鳥取の名家を舞台にした、三代に亘る女の物語。三部構成で祖母、母、娘と主人公が変わるのだが、全体を通して娘による視点で、一部、二部は過去の出来事となっている。
正体不明の民に置き去りにされ、拾われて育てられた祖母が名門、赤朽葉家の嫁に指名されてしまう第一部。この祖母は千里眼を持っており、少しだけ不思議な話。第二部は自由奔放に育ち、不良娘として中国地方制覇に燃えるレディースの頭、引退後はその体験を描き少女漫画家として大成するも、それがライフワークであったかのように、最終回を描き切った直後に燃え尽きる。三部はごく普通の女性で、印象としては一番弱い。
各時代ごとの出来事に翻弄されつつも生き続ける一族絵巻といった感じだが、物語が中国地方に限定されているだけに、ジェフリー・アーチャーの「ケインとアベル」や「ロスノフスキ家の娘」を、スケール小さくした感じが否めない。
もう少し不思議テイストがあれば良かった。千里眼能力が代々引き継がれたら、もう少し面白かったのだが。それにしても、ラノベから出てきた作家が直木賞候補に名を連ねるまでになるのは凄い。
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大きな熊が来る前に、おやすみ。
2009年2月3日 芥川賞・直木賞ISBN:4103020318 単行本 島本 理生 新潮社 2007/03 ¥1,365
徹平と暮らし始めて、もうすぐ半年になる。だけど手放しで幸せ、という気分ではあまりなくて、転覆するかも知れない船に乗って、岸から離れようとしている、そんな気持ちがまとわりついていた――。新しい恋を始めた3人の女性を主人公に、人を好きになること、誰かと暮らすことの、危うさと幸福感を、みずみずしく描き上げる感動の小説集。書き下ろし1編を併録。
第135回芥川賞候補作。
随分上手くなってきた。とは言っても、初期の二作しか読んではいないけれども。もしこれを高校生くらいで書いてデビュー作だったら、話題性で芥川賞取れたかもしれないのに。惜しい。他の若手と少し違うと思ったら、島本理生は群像新人文学賞受賞組なんだな。道理で文藝賞の奴らとは毛並みが違うわけだ。ちなみに、群像新人文学賞は村上春樹、村上龍も受賞している由緒正しき? 賞なので、やはり有象無象の新人賞とは違うのでしょう。とはいっても、最近は妙なのも受賞してますが……。
表題作は、今は無き父が未だにトラウマとなっている女性の話。悪い子は大きな熊が来て食べられてしまうと聞かされ、逆に熊が来て父親ごと自分を食べてしまう事を望んだままに、大人になってしまった不安定な女性の心情を描く。もう少し抉り込んだら芥川賞に届いたかも知れないのに、惜しい。でもこの回って伊藤たかみが受賞してるんだよな。その次は青山七恵だし、その程度なら島本理生にもダブル受賞であげてしまって良かったんじゃないのか? どうせイロモノなんだし(笑)。というか、今からでも太宰にあげろよ! もう本人いないけどさ。なんで太宰が貰えないものを、伊藤とか青山が貰っているんだ!?
「クロコダイルの午睡」は、色気の無い女と、彼女がいるクセに上手い手料理が食いたくて通ってくる男の微妙な関係を描いた作品。苦労しているとは言え、せっかく女に生まれておいて、それを武器として使わないのは頂けません。一説によれば、女は結婚するまでに男が費やしてくれるお金が一千万円くらい差が出てしまうらしいからな。武器にしないと損だ。俺が女に生まれていたら一億は貢がせているだろう。
「猫と君のとなり」は、個人的には一番好き。猫が出てくるからか!? モテナイ女が酔っぱらった学生時代の後輩を介抱して、翌日告白される話。なんか、島本理生の小説にはモテナイ女がたくさん出てくるな。地味だけど背伸びしない日常視線でいいと思う。エンタとしては物足りないから、賞を目指すならもっと金原とか綿矢みたいにあざとくやったほうが良いだろうけど。
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