山内一豊の妻・千代は夫の立身出世を支えた「内助の功」で知られる。しかし二人の関係は、盟友であった戦国武士の夫婦のあり方を示す典型例であることを、池田輝政らの例にふれ最新の女性史研究の成果に基づいて明らかにする。

二度の火事場泥棒で勝ち組となった腹黒い狸オヤジは論外として、信長や秀吉と比べるとどうしても見劣りしてしまう山内一豊だが、堅実に出世している事に驚いた。関ヶ原で上手く立ち回って国持ち大名になったようなイメージがあったのだけど、それ以前も順当に手柄を立てて普通に出世している。

千代があまりにも有能すぎるので、一豊が普通の人に見えてしまうけど、出世の仕方を見れば結構優秀だったのだろう。マイナーどころなので、太閤立志伝プレイでは使いませんけどね(笑)。

題名がこれなので、山内一豊の話だけで良かったと思うのだが、最初に御先祖様の話、最後に毛利の話が入っているので少し退屈した。

火車

2009年6月5日 芥川賞・直木賞
休職中の刑事、本間俊介は遠縁の男性に頼まれて彼の婚約者、関根彰子の行方を捜すことになった。自らの意思で失踪、しかも徹底的に足取りを消して―なぜ彰子はそこまでして自分の存在を消さねばならなかったのか?いったい彼女は何者なのか?謎を解く鍵は、カード会社の犠牲ともいうべき自己破産者の凄惨な人生に隠されていた。山本周五郎賞に輝いたミステリー史に残る傑作。

宮部みゆき攻略確認用。


第108回直木賞候補作。

「龍は眠る」を読んでみたものの、淡々としているのが肌に合わなかったところ、ならこれはどうだと宮部みゆきファンから渡された第二の課題図書(笑)がコレ。

題名が「火車」。思わず、台所が火の車というのを連想してしまうが、ずばりそのまま借金地獄の話だった。キチガイ殺人鬼とかではなくて、資本主義という名の悪魔に蝕まれて堕ちて行く者の悲劇が物悲しい。

龍は眠る

2009年6月4日 読書
嵐の晩だった。雑誌記者の高坂昭吾は、車で東京に向かう道すがら、道端で自転車をパンクさせ、立ち往生していた少年を拾った。何となく不思議なところがあるその少年、稲村慎司は言った。「僕は超常能力者なんだ」。その言葉を証明するかのように、二人が走行中に遭遇した死亡事故の真相を語り始めた。それが全ての始まりだったのだ…宮部みゆきのブロックバスター待望の文庫化。

宮部みゆき攻略確認用。

「レベル7」を読んだと言ったら、宮部みゆきファンな方からこっちの方が良作だと渡されてしまった課題図書? な一冊。

超能力者の苦悩を描いたミステリーなのだが、淡々としすぎで起伏に乏しい。超能力があるからと言って、ご都合主義的に派手なサイキック・バトルが展開される訳でもない。終盤は面白くなるけど、どちらかと言えば「レベル7」のほうが好みだった。

レベル7

2009年6月3日 読書
レベル7まで行ったら戻れない―。謎の言葉を残して失踪した女子高生。記憶を全て失って目覚めた若い男女の腕に浮かび上がった「Level7」の文字。少女の行方を探すカウンセラーと自分たちが何者なのかを調べる二人。二つの追跡行はやがて交錯し、思いもかけない凶悪な殺人事件へと導いていく。ツイストに次ぐツイスト、緊迫の四日間。気鋭のミステリー作家が放つ力作長編。

宮部みゆき攻略確認用。

宮部みゆきが面白いと薦められ、一番最初に読んだのがコレ。SFなのかと思ったけど、ミステリー。なかなか物語の核心が見えてこないので、分厚さにもめげず、一気に最後まで読んでしまう。

これでも力作だと思うのだが、薦めてくれた宮部みゆきファンからは、これはイマイチだと言われる。今となっては、ラストが全然思い出せないので、やはり宮部作品の中では並なのかもしれない。

うーん、随分と昔に読んだからなぁ……。
誰か三行で内容を教えて

ペンキや

2009年6月1日 読書
しんやは小さい頃に亡くなった父親と同じペンキ屋になった。お客のもっとも望む色を探し出し、人々を幸せにするペンキ屋に…。一人の職人の一生を、異国的なタッチの絵と静かな言葉で奏でるファンタジックな本。

絵本なのに、またしても大人味。ペンキやの息子として生まれ、ペンキやになった男の人生。欧州で他界した父の墓を探して船に乗っている時に、謎の女性にユトリロの白で船を塗るように頼まれるのだが……。

知らない間に仕上がっていたユトリロの白。そして待ち受けていたのが、父と同じ運命。結婚して子供も産まれたので、満たされた人生だったのかもしれないが、この結末はハッピーエンドとして素直に受け入れられない。

結局、現世でどんなに足掻いたところで、上方世界で定められた運命からは逃れられないという事なんかね? あの不気味な女は、死神か?
住人を失ったあなたの家は、その時点から腐りはじめ、100年後には煙突のレンガなどを除く屋根や壁のほとんどは崩れ落ちるだろう。高層ビルを擁する大都市もまた、地下への浸水から崩壊し、長くは持たない。人類なきあとにはどんな動物たちが地上を闊歩するのか。犬はもはや人間なくしては生きられないが、猫は小動物を狩りながら自由を満喫するだろう。アフリカで人間の後釜に座るのはヒヒかもしれない。人間が残したいと願う文化的生産物は、銅像などを除けば、ほとんどが数万年のうちに跡形もなく消え去るが、プラスチック粒子、放射性物質などはその後も地球の生態に大きな影響を及ぼし続ける。また、テレビ番組の電波は宇宙空間を永遠にさまよい続け、どこかの知的生命体の退屈を紛らせるかもしれない…。ニューヨークからパナマ運河、朝鮮半島まで世界中をフィールドに、最新の科学的知見にもとづき、人間の営みを多角的に見つめなおして描き上げる驚愕の未来予測。

ある日、人類が姿を消してしまったら、残された物は一体どうなってしまうのかというシミュレーションである。この仮定自体が荒唐無稽で、致死性病原体なり、遺伝による種の終焉なりの具体例は示されていない。純粋に、もしも人類が急にいなくなったら? という、ほぼ有り得ない仮定の話である。

都市は意外に脆く、すぐに崩壊が始まるらしい。一方、人類が汚染した化学物質や放射能、新素材といったものは、物によっては何十億年も影響を与え続ける。

全人類だけが急にいなくなるという状況は考え難いのだが、一部の地域においては、人類がいなくなった地域というものも存在するので、条件設定はともかく、実際に何が起こるのかという点については、単なる空想だけではない。内戦で分断されたキプロスの境界線や、朝鮮半島の休戦ライン等が、いきなり人類がいなくなった場所の、興味深い具体例ととなっている。

それにしても、人類がいなくなった方が世界が、全てにおいて平和に見えるのがやるせない。ただ一種類が絶滅するだけで、数多くの動植物が助かり、楽園が再来するのである。

やはり、世界平和のために人類は滅亡した方が
リカード、マルクス、スティグリッツ、フリードマン、ケインズ、ワルラス、スミス、セン、クルーグマン…経済学の歴史がこれ一冊で見渡せる。

古典から現代まで、経済学者のエッセンスを抽出したもの。数多くの経済学者を取り上げている分、それぞれの分量は少ない。

よって、本格的に読み込むには不足だろうけど、最近のガルブレイスやクルーグマンならともかく、リカードやメンガーやジェヴォンズといった古典から近代までの経済学者の著書と接する機会なんて、一般人には無いだろうから、どの学者が何を唱えたか、さらりと読み流すには有用だと思う。
雪のふる小屋にこもる主人公は、ある日、日本人形のような白い顔の少女に出会う。「この庭に」と、彼女が語りだす。「この庭に、ミンクがいる気がしてしようがないの」 不思議な魅力ある、もうひとつの「ミケルの庭」の物語。

何だかよく分からない、夢オチみたいな話だったけど、どうやら「ミケルの庭」というやつの続編らしい。

また読む順番間違えてるじゃないかっ!

話が繋がっていたり、関連したりするシリーズならば、もっと判るように書いておいてくれよ。Orz

で、検索すると「ミケルの庭」なんて本は見当たらない。さらに調べると、「リカさん」の中に含まれていて、読む順番は「リカさん」→「からくりからくさ」→「この庭に」という流れの様である。

主人公が家を借りて、オイルサーディン食いながら酒浸りの日々を過ごしていたところ、不思議な少女が迷い込んできて、ミンクを探していると言うのだが……。最後のほうで主人公の立ち位置がガラリと変わってしまい、よく分からない結末を迎える。なんか、「胡蝶の夢」みたいなオチの物語だった。
「この会社は毎日何が起こるかわからないから、ほんとに楽しい」。高畑勲・宮崎駿の両監督はじめ、異能の人々が集まるジブリでは、日々思いもかけない出来事の連続。だがその日常にこそ「今」という時代があり、作品の芽がある―「好きなものを好きなように」作りつづけてきた創造の現場を、世界のジブリ・プロデューサーが語る。

表から見ているだけでは分からない、ジブリの裏事情。とはいっても、黒企業じゃないので、腹黒い事を暴露している訳ではない。ナウシカのエンディングが当初は違ったとか、トトロも最初から出まくる設定だったとか、そういう感じの裏事情である。

それにしても、無茶苦茶な人が多くて驚く。職人気質というか……。これは普通の企業じゃないよね。好き嫌いで席を決める人とか、いきなり逆ギレする人とか、突き抜けすぎている面々が多すぎる。破天荒だからこそ、名作を生み出せるのかもしれないけど、あまり関わりたくはないタイプだよなぁ。

危うい橋を渡りつつ、結果は良い方向に収まっているのが見事。最初、ナウシカのエンディングは王蟲の前に降り立つシーンで終わっていたらしい。やはり、金色の野に降り立つナウシカ再生シーン無くしては中途半端な作品で終わっただろう。「風の戦士ナウシカ」なんて名前も、宣伝プロデューサーのセンス悪すぎるし。これではすぐ打ち切りになるジャンプマンガの題名みたいだ。「もののけ姫」も「アシタカせっ記」では売り上げ落ちただろうな。

忍びの国

2009年5月19日 読書
伊賀一の忍び、無門は西国からさらってきた侍大将の娘、お国の尻に敷かれ、忍び働きを怠けていた。主から示された百文の小銭欲しさに二年ぶりに敵の伊賀者を殺める。そこには「天正伊賀の乱」に導く謀略が張り巡らされていた。史実に基づく壮大なドラマ、われらの時代の歴史小説。

伊賀者の物語なのだが、前作のように主人公がきっちりハマっている状態ではないので、感情移入し難い。忍び達が殺人兵器と化しすぎて、人間的な感情が欠如しているので、修羅の国みたいで気味悪い。

天正伊賀の乱の頃の物語で、第一次部分に該当する。伊賀衆が姦計により織田を挑発、これに踊らされて伊勢を任される織田家の次男信雄が攻め入るものの、大敗を喫する事に。

織田家に勝ち名声が高まったと喜ぶのもつかの間、僅か二年後には激怒した信長の本隊が侵攻、あっけなく滅ぼされてしまうのだが、自業自得というべきか。
時は乱世。天下統一を目指す秀吉の軍勢が唯一、落とせない城があった。武州・忍城。周囲を湖で囲まれ、「浮城」と呼ばれていた。城主・成田長親は、領民から「のぼう様」と呼ばれ、泰然としている男。智も仁も勇もないが、しかし、誰も及ばぬ「人気」があった―。

第139回直木賞候補作。

“のぼう”って何かと思ったら、でくのぼうの事だった。領民からものぼう様と呼ばれる成田長親。一見、馬鹿にされているようだが、実は慕われているのである。それにしても、こんな呼ばれ方をして怒らないとは、ただものではない。

そんなのぼう様が、未だ屈しない北条を討伐するために押し寄せてきた豊臣方と対峙する。石田光成が率いる二万を超える大軍に対して、成田長親が篭る忍城の兵力は僅か二千。

相手が光成という部分をのぞいても、これほどの兵力差で無謀にも戦を挑み、一歩も譲らないのは爽快である。結局、難攻不落だった小田原城が先に落ちてしまい、唯一落ちなかった忍城も豊臣方に明け渡す事になるのだが。

学園いちの美少女・瑞希がトラックにはねられ事故死した―。葬式も終わり、クラスメイトたちに日常が戻りつつあったある日、その事件は唐突に起こった。「み、瑞希さんっ…ど、どうして?」なんと死んだはずの瑞希が登校してきたのだ!!そんな彼女の正体は、姉に憑かれた双子の弟・高志(♂)だった!成仏したい姉に女装を強要され、高志の学園ライフは大混乱。「こんな可愛い子が男…?」「可愛いければ性別なんて!」男女ともに大盛り上がりの中、“女装少年”になってしまった高志の運命やいかに―。

学園一の美少女がトラックにはねられ死亡した。話が始まる前から、なんて可哀想な死亡フラグが……。だが、他界したはずの瑞希さんは何事も無かったかのように登校し、教室内の生徒達を驚かせる。しかし、その正体は双子の弟、高志だった。

という訳で、
こんな可愛い子が女の子なはずないじゃない!!

別に女装癖があるという訳ではなく、成仏出来なかった姉が、憑依して身体を乗っ取っているだけなのだが、たった一人の身内を失った精神的ショックで解離性同一性障害になったという事にされてしまい……。

身体の主導権を取り戻した時、姉のセーラー服を着て登校している自分に気づいて驚く高志。なんと言う羞恥プレイ(笑)。だが、この恥ずかしさはこんなものでは終わらない。ノミネートされていたミスコンも、弟の身体を使って出る気満々な姉。水着審査まであるのだから、恐ろしすぎる。

幼なじみが女装趣味になってしまったと信じて疑わない隣のツインテールなツンデレ娘、ミスコン出場予定のお嬢様、様々な思いが交錯する。姉が好きだった謎のイケメン、姉の事故は仕組まれたものではなかったのか、ちょっとミステリー方向へと傾くのかと思いきや、最初から最後まで一貫してこんな可愛い子が女の子なはずないじゃない!! という内容。

なんだ、ミステリー要素はなくて、最後まで女装萌えだけで引っ張るんだね(笑)。姉のターンになっている時に、ツンデレを口説いてキスしてしまうのだけど、一見すると百合、だが片方は男なのでノーマル、しかし男が完璧女装なのでやはりアブノーマルというのが笑える。
ルーヴル美術館で殺された館長の周りに残された不可解な暗号。容疑者として現場につれてこられたラングドンは、館長の孫娘で暗号解読者のソフィーに助け出される。ファーシュ警部をはじめとするフランス司法警察に追跡されながら、暗号の謎を解き始めるふたり。そこには歴史を覆す驚愕の真実が…!

TVでやっていたので観た。最近、新作の地上波投入時期がやたら早いと思ったら、続編を映画館で観てもらうための戦略か。確かに、これを観たうちの何人かは、我慢出来なくなって映画館に足を運ぶだろうから有効だろう。

原作は、予約が殺到して恐ろしい待ち人数になっているのに萎えて読まず。聖杯伝説が絡んでくるので、インディー・ジョーンズみたいにもっと弾けた、謎のオー・パーツが登場するようなアドベンチャー物なのかと思っていたのだが、意外に真面目で手堅い歴史ミステリーなんだね……。

トム・ハンクス扮する主役のラングドン教授だが、ジョーンズ博士みたいに好んで厄介事に首を突っ込むタイプではない。望まないのに陰謀に巻き込まれ、散々な目に遭ってしまうのである。

殺害された館長が残した謎の暗号を手掛かりに、歴史の闇に隠されてきたキリスト教世界を揺るがしかねない秘密に迫っていく。これは、ある程度キリスト教に関する予備知識が頭に入ってないと分かりにくいだろう。

マグダラのマリアと、テンプル騎士団の迫害が上手く結びついていた。結末については、最初に出てきた館長の娘の存在自体で、もうバレバレな気はしますが(笑)。
漆黒の森、底知れぬ闇をたたえた深い山。光なき、黒い影に囲まれた山村「庫宇治村」。単位の足りない生徒のため組まれた課外学習の一環でこの村を訪れた、立花玲佳たち七人の生徒と引率の片平教諭は、この地に隠された恐ろしい伝承と名状しがたきものの存在を目にする。そして村に黒い雨が降るとき、耐え難き苦痛の記憶とともに死んだはずの者たちが目覚める。この村に隠された秘密とは。そして、黒き雨の降る地に花咲き実る、鮮血の色をした果実「アカモロ」の正体とは何か?新進気鋭のホラー作家、黒史郎による渾身の閉鎖村ホラー、ここに開幕。

ラノベでホラーだというので、もっと本格的な物かと期待していたら、単に作者の脳内妄想を垂れ流しただけの、極めて嘘臭く、リアリティ皆無な内容にガッカリする。隔離された過疎の村で恐ろしい事が起こるというのもワンパターンだし、死者みたいな何かが徘徊するというのもよくあるし、目新しさが何も無い。

黒い雨が降ったり、呪われた村で気味の悪い果実を食べた仲間がおかしくなったりと、非常に嘘っぽくてゲーム的な内容なので、ゆとり世代には手頃なのかもしれないけど、まともなホラーを期待していると失望するだろう。

馬鹿な高校生達が自らの意思で呪われた村に踏み込んで、死亡フラグが多発するならまだしも、学校行事で連れて来られて殺されるというのは……。これなら超常的な現象ではなくて、殺人鬼にでも追われるほうがマシである。

場面が飛びすぎで書き込み不足も目立つ。ラノベにしてはバッドエンドに近い結末で、犠牲者が多数出るのもなぁ。なんと言っても、あの娘が捨てキャラなのは納得出来ないぞ(笑)。

とりあえず、イラストだけは良かった。
褒める部分は、イラストだけ! 

★2つ付けるけど、絵がついてなかったら★1つ。
ジャングルでは沢山の命が生まれ、生きるために食べ食べられ、全てが夢であるごとく皆死んでいく。傲慢でジャングル一の嫌われ者のワニは仲間・兄弟さえ食べて生きてきた。だが…。自己中心と他者尊重の境界を問う一冊。

梨木香歩の絵本は、何で考えさせる作品が多いのか。絵本にはなっているけど、内容が大人味だよなぁ。

自分の兄弟すら食ってきた、自己中心的なワニ。彼は自分がライオンの友達だと思っており、他の生き物を食って生きている。ある日、見つけたカメレオンを食おうとしたところ、カメレオンは同じ爬虫類で、仲間だから食うなと言われてしまう。

そんな事を言い出したら何も食えなくなるので、構わず食ってしまうのだが、腹の中からナカマ、ナカマと声が聞こえ続ける。堪らずワニは、ライオンに相談しに行くのだが……。

途中で挟まれる「ジャングルの憂鬱」と「草原の無関心」という、ただ一言だけしかないシーン。無力感と無関係が滲み出ていて、考えさせられる場面である。

なんというか、この世は残酷な修羅世界だよな。こんな不完全な世界を創ったやつが何処かにいるとしたら、物凄く性格が悪いに違いない。自分に似せて人間を作ったから、人間も邪悪で性格が悪いんですねわかります(笑)!

蟹塚縁起

2009年5月12日 絵本
あなたがその恨みを手放さぬ限り…蒼白い月の光は、時間を超えたいくつもの魂の旅路を優しく照らし出す。幻灯のように浮かび上がる、静かな一夜の物語。とうきち自身気づかずにいた前世の無念は、律儀な蟹の群れと共に月夜に昇華される。幻想的絵本。

名主の馬鹿息子が、沢蟹を捕まえて脚をむしり取っているのを見て、蟹を奪って逃がした男。しかし、馬鹿親の名主に怒られ、「蟹を返せないなら牛を貰う」と、牛を奪われてしまう。

牛がいなくなっても、自分一人だけなら何とかなると思っていたら、いきなり押しかけ嫁が! しかし、横歩きしているので、すぐに蟹の恩返しだとバレてしまう。鶴と違って、相手が蟹だと、やはり微妙だよなぁ(笑)。

蟹の大軍団は、牛を取り返そうと名主の家に押し寄せるのだが、ここで前世の因縁が明らかとなる。恨みを晴らして一件落着とならない手堅い結末なのが、ちょっと好みに合わなかった。まんが日本昔話に時々混ざっている、暗い物語みたいだった。

マジョモリ

2009年5月11日 絵本
春のマジョモリは花が満開。ある朝つばきは、森から届いた招待状を手に初めて森の奥へ。そこで出会ったハナさんとノギクやサクラのお茶でティーパーティー。後からもう一人来た女の子は誰? 「小さな女の子の時間」を描く。

入ってはいけないマジョモリへ招待されてしまった少女つばき。ちょっとホラーなのかと思いきや、行った先で待っていたのは、森の精霊みたいな緑の髪をしたハナさんという女の人だった。そこでお菓子を勧められるのだが、それはお供え物の美味しくないやつだった。

生クリームは食べた事が無いとハナさんが言うので、つばきは急いで家に戻り、母親に生クリームを頼む。招待されていない母親が悲しんでいると、自分にも招待状が届いて……。

招待されたのに、母親が全然出てこないと思ったら、そういう事かっ!! 最後のほうでネタバレする前に分かったけど、思わずもう一度読み返してしまった。ところで、ハナさんは森の精霊とかではなくて、木花咲耶姫だったのか。

町の中小葬儀屋・セレモニー黒真珠は、忙しかったり、ヒマだったり。いちおうまだ20代なのに40代にもまちがわれるほどシッカリしすぎな29歳女性・笹島に、悩めるメガネ男子26歳・木崎、何やらワケアリ気味の新人女性派遣社員21歳・妹尾。葬儀屋を舞台に男女3人の仕事と恋愛を描く連作短編集。宮木あや子流ラブコメは、泣けるラブコメ。

切り絵みたいな感じのイラストが洒落ている。無論、内容も良い。何かと思ったら、今度は葬儀屋の話だった。小さな会社だけど地域に根付いているので手堅く商売をしているセレモニー黒真珠。

ここに、いろいろと訳アリな人々が集う。ロクデナシの親を持ち、苦難の人生を歩んで来た若き女性は、一緒になれなかった男を弔うため、派遣社員として黒真珠へ。先輩の女性社員はブライダル会社から葬儀屋へと転進。名門大学を出た男は、幼少の頃より死の儀式に魅入られて、新卒で就職。この男は死者の声まで聞こえてしまうという危ない眼鏡男子(笑)。

連作になっているので、主人公と視点は変わって行く。

群青

2009年5月9日 読書
離島の女と男をめぐる生と死と再生の物語。長澤まさみ主演、沖縄・八重山諸島を舞台にした映画「群青」の原作小説。愛する女のために命を懸けて海に潜る男たちの熱く純粋な思い、そして最愛の人を失った女の絶望と再生を鮮やかかつ官能的に描いた恋愛小説。

舞台は八重山諸島にある(という設定の)南風原島。石垣島から高速船でさらに南へ。実際には、そんな島は存在しない訳だが、設定にソックリな島に波照間島というのがあり、これは実在する。という訳で、これは波照間の話なのだろうけど、人口600人弱の小さな島なので、そのまま使うには何かと不都合だったのかなぁと思いつつ……。

島にやって来たひとりの美女。妙齢というにも微妙な年齢になっていたが、過疎の島では十分に若い娘として話題となる。実は、病気療養のため、島を訪れた売れっ子ピアニストなのだが、患っているのは死病であった。

婚約者を振り切りつつ、島の漁師とデキてしまうが、病が進行してしまい、娘を産み落としてアッサリと死亡フラグ確定。という訳で、「紺碧」→「三原色」→「群青」と続くのだが、「三原色」からは主人公交代で、娘の物語となる。

同年代は僅か三人。娘と二人の少年と来れば、この後の展開はもう、あだち充の「タッチ」みたいになる事が容易に推測される訳で。ああ、やっぱりそうなるか(笑)。しかし、母子揃って不幸のコンボ状態で、憂鬱な物語である。親の才能を引き継いだ天才少女の物語とかなら、もっと楽しめたのに。
女は待ち、男は孤独を知る。清和、陽成、宇多天皇、いつの時代も女に生まれれば同じこと。平安王朝にまつわる男女の尽きせぬ狂おしい想い。

知らない間に宮木あや子の新刊が増殖していたので、慌てて読む。初手からハイレベルだったけど、やはり引き出しが大きい。何を書いても金太郎飴的に同じな女流作家とは一味違う。

平安時代を舞台にした物語で、作っているのかと思いきや、実在した人物が数多く登場する。間違いなく力作なのだが、平安時代なのでいまいち食指が動かない。

この時代は本当にドロドロしている。庶民は飢えているというのに、支配者達は何の役にも立たないお遊びばかりしていて辟易する。貴族に産まれても、親の権威でそのポストが決まるのだからやるせない。女は子を産ますための政争の道具でしかないし、好きでもない相手を強引にあてがわれる帝も大変だ。

しかし自分の努力ではないところで物事が決まる閉塞感は、平安も平成も変わらないね(超苦笑)。

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